リレー小説5
<Rel5.SeventhTrumpet1>

 

 

   火星、イオルコス、
   SeventhTrumpetイオルコス支部

 

上等なソファーにどっかりと腰を下ろした長髪の中年男性が、
SeventhTrumpet職員から手渡された資料を見て、眉を顰めながら言う。

「はぁ? フォボスだぁ?
 今日はエイプリルフールだったか?」

「嘘でも冗談でもない。
 次の勤務地はフォボスの遺跡だ」

中年男ことヴァルカレスタの率いる傭兵団は、
SeventhTrumpetの指示に従って聖地カナンの遺跡に入り、
中に巣食っていた野良エネミー達を粗方掃討した上、カナン遺跡にある全ての区画を調査し尽した。
……遺跡最深部にある『障壁』の先を除いて。

「(……STの連中、あの障壁が何か知ってるような素振りあるンだよなぁ。
  部下共が探った所『デリングの扉』とか呼ばれてるみてぇだが……
  匂うぜ、お宝の匂いがプンプンとよぉ)」

SeventhTrumpetは『デリングの扉』以外の全区画の調査完了を聞き届けるなり、
カナン遺跡調査の任務終了を通達し、ヴァルカレスタの傭兵団を引き上げさせた。
ヴァルカレスタが勘繰るのも当然だった。
だが、其れについてアレやらコレやらと口出す間もなく、次の任務が下された訳だが、
其れが火星の衛星であるフォボスで発見された遺跡の調査と来た。

「おいおい、俺達が知らねぇとでも思ったか?
 フォボス調査隊みたいな死に様晒せってか?」

「其れは傭兵団長殿の実力次第さ」

「あのなぁ……
 フォボス調査隊の他の連中は知らんが、
 ハルマーやテンペストに御坂、ノルトーラレベルの連中が纏めて返り討ちってのは笑えねぇよ。
 正直、この報酬じゃあやってらんねぇ」

第一次フォボス遺跡調査隊の惨状を見た各国が、
戦闘力の高い能力者達を雇って結成した第二次調査隊だったが、
フォボス遺跡の『守護者(ガーディアン)3体の前に惨敗し全滅。
生還者2名。
しかも自力脱出などではなく、
精神崩壊してしまった其の2名を見せしめとする為、意図的に送り返されたに過ぎない。
『守護者』1体だけでも手に余るというのに、3体など馬鹿げているにも程がある。
こんな舐めた依頼は蹴るに限ると、
ヴァルカレスタは、SeventhTrumpetの担当官が寄越した、
第二次調査隊の惨状を示した資料を、ソファーの後ろへと投げ捨てるが……

「きひ……意外と綺麗なやられ方ですねぇ〜
 リサイクルすれば、きっと凄い力になります。きひひ」

ヴァルカレスタが座るソファーの後ろで寝転んでいた少女アールヴが、
資料を拾って、其処に写るグロ死体を面白そうに眺めていた。

「……おい、何だコイツぁ?」

「ああ、アールヴさん、そんなトコに寝転んで。
 駄目ですって、汚いでしょうが」

SeventhTrumpetが保護した能力者アールヴ・ペルエムヘヴだ。
頭にある負傷が原因なのか言動がアレだが、従順かつ戦闘技能が高いという事で、
SeventhTrumpetの能力者集団への編入も考えられているという。
恐らくアークエンジェルズの事だろう。
ヴァルカレスタに言わせれば、如何に能力があろうと、
こんなヘラヘラした奴を大衆向けのアークエンジェルズに参加させようなど、
SeventhTrumpet教祖であるサミュエル枢機卿の正気を疑わざるを得ない。

「……貴方ぁ……『恐慌の邪龍』ですよねぇ?
 きひひ、乗りましょうよ依頼、きひっ!入れ食いですよ入れ食い、きひひ!」

何が「入れ食い」なのか全く解らないが、聞くに値する話ではない。
ヴァルカレスタがアーティファクト『八姉妹の結晶』を捜索しているのは確かだが、
フォボス遺跡のアーティファクト『エンピレオ』などに興味はない。
別に何かの思想信条でもって八姉妹の結晶を探している訳でもない。
単純に金になりそうだから……というだけの話だ。

「兎に角、フォボス遺跡なんぞに付き合ってらんねぇ。
 どうやらSeventhTrumpetとは、此処までの関係みたいだな」

マトモな儲け話を持って来れないなら、もう此処に用は無い。
ソファーから立って、部下達に荷物を纏めておくよう伝えようかと思ったヴァルカレスタに……

「いえ、そういう訳にもいかないんです」

上背のある童顔の白人男性が声を掛けた。

「ヘクターと申します。
 第三次フォボス調査隊編成の任を枢機卿猊下より賜っております。
 恐慌の邪龍とも呼ばれたヴァルカレスタ殿の力、
 是非ともフォボス遺跡の調査に役立てて頂きたい。
 カナン遺跡の三倍の報酬を支払いましょう。どうかお願い致します」
執筆者…is-lies
inserted by FC2 system