リレー小説5
<Rel5.ナナシ1>

 

 

  火星、某所

 

「ウボァー!!」
なんか某皇帝みたいな叫び声を上げナナシは飛び起きた。
嗅ぎ覚えの無い匂い。そして見た事もない風景。
さっきまで居たところではない事をナナシは理解した。

作りはどこかの乗り物の宿泊施設のような所だ。
だがさっきまで乗っていた列車ではない。
止まっているのか、揺れは感じない。

そして徐々に寝ぼけたナナシの目は覚めていき、
まず最初に目に入ったのは同じ顔をした黒髪の少年少女だった。

んふ〜。

ナナシ顔をしかめ鼻で思いっきり大きなため息をついた。
彼らはばたばたとナナシの部屋から出て行った。

「ここどこだ?俺・・・確か・・・あいててて・・・
右腕が痛む。
左腕で右腕の痛む部分を押さえようとする・・・
が・・・あるはずの右手の感触がない。

ナナシは自分の右腕を見た・・・がそこには彼の右腕は存在しなかった。

「なんじゃこりゃああぁぁぁああ!!!?」

「おおー、気がついたかね。」

自分の身に起こった事に驚愕するナナシをよそに、先ほどの少年達と
共に40代前半の大昔のローマ人の学者みたいな男がのんきな台詞とともに入ってきた。

「いやあ無事でよかった。何せ一週間以上m・・・」

「俺の右手はどしたぁぁぁあアアアアアァァァ!!!」

男目掛けて低空飛行ミサイル頭突きをかますナナシ。
男はほぎゃぱぁーという叫び声とともに廊下の壁をぶち抜いて外の荒野に飛び出していった。

「俺の腕を何処にやったァァアア!!そしてお前は何者だアアアア!!
 ナナミはどしたぁァァァアアアア!そしてあの根暗眼鏡はどこへ行った!
 出身地は?!好きな食べ物は!?何から何まで全て吐けえええええ!!」

とりあえず落ち着けナナシ。  
執筆者…R.S様

「まああれだ・・・我々が見つけた時は君一人であり、
 君の腕もなくなっていたわけだ・・・。」

「あそう。」

錯乱(?)していたナナシによって熱によって変形したプラスチックの如く、顔がべコベコになってしまった男は、
落ち着きを取り戻したナナシに一通り説明をしていた。

「そして私達は君の言う根暗眼鏡・・・もとい小桃嬢の
 依頼で君を捜索していたんだ。」

「そして俺は助けられたと・・・そういうことか。」

「ああ、私はドゥネイールから支援を受けている生物学者
 ググ・レカスというものだ?」

「ググレカス?バカにしてんのかてめーわ。」

「名前を続けて読むんじゃない!ググと呼んでくれ・・・」

「まあいいや・・・ところでドゥネイールってなんだ?
 生物学者って言ってるけど高津の仲間かなんかか?」

「質問は一つずつにしたまえ・・・。
 ドゥネイールとは・・・」

《ドゥネイールとは火星アテネにある定食屋だ。》

ググの傍にいる少年が持つPCから音声がした。

「定食屋ぁ?定食屋に資金貰ってんのか?
 ますますアホか。」

ナナシはバカを見るような目でググを見る。
続け様PCから音声がする。

《定食屋は仮の姿。
 正体は細川財団反春英派の集まりだ。
 そして彼は元高津の同僚だった男だ。》

「そーなのかって・・・何故にPCでしゃべっとんねん・・・」

ナナシはそう言いながら少年のPCを覗き込んだ。
そして一気に鬼を見たかのような表情になった。

《その少年は喋れんのだ。・・・相変わらずのバカっぷりだな、ナナシ。
 サルよりは賢くなれとは言わんが少しは知能を働かせてみたらどうだ?》

PCに映っていた人物・・・それは行方がわからなくなっていたと思っていたメイド服姿のヨミだった。

「ゲェーッ!!ヨミ姉!!」

お前は某アメリカ超人か。ナナシ。 

《相変わらず騒がしい奴だ。まるで鬼を見たかのような顔をしているな?》

「いや実際に鬼みてるし・・・いやなんでもないっす・・・」

PC越しにヨミの無言の迫力に負けるナナシ。
ヨミは相変わらず無表情だった。
そしてヨミは少々考えるような仕草をした。

「・・・ふむ、この格好か?
 この格好はドゥネイールの従業員の制服らしくてな。動きにくいが中々悪くはないぞ。」

「そ・・・そーか・・・って俺が驚いてるのはそこじゃないんだけど・・・」
ひらひらした格好のヨミの姿を見て似合わねーと内心爆笑しつつナナシは笑いを堪えていた。
モニター越しに見える他の女性従業員は普通のエプロンに三角巾なのになんでヨミだけメイドなんだと・・・
そしてまんざらではないヨミが滑稽に見えて可笑しくてしょうがない。

「さてt・・・」

《おー!無事だったk・・・《うるさい黙れ》あじゃぱぁー!!

「ちょっとまて、いまスフィンクスいたよね?ねえ。」

《気のせいだ。》

「いやだって・・・あじゃぱーって・・・」

《きのせいだ。》

「きのせいなんかぁあァァアアア!!今お前なんかぶん殴ったよね!?
 お前の背後になんか見覚えのある奴が壁にめり込んでるぞおおおお!!」

《うるさい黙れ。これはスフィンクスではない。スフィンクスヘッドだ。》

「だからスフィンクスでもまかり通るだろうがぁああああ!!」

ギャアギャアと煩くナナシはヨミに抗議する。
その横で煩そうに耳を押さえる少年とやれやれと言わんばかりにため息をつくググだった。

「ミス・ヨミ、そろそろ本題に入ってもらえないだろうか。」

《ああ、すまない先ほどからアホが煩いもんでな。》

「なにさらりと人に責任丸投げしてんだおめーは。
 元はおまえがスフィンクスを・・・」

「まぁまぁ」

ナナシは文句を言おうとするが少女に制止された。

《まずはお前の捜索を頼んだ人物・・・すでに自己紹介が終わっているが改めて紹介しよう。彼の名はググ・レカス、
 高津の元同僚である生物学者だ。》

「改めてよろしく」

ヨミに紹介されググは軽く会釈をした。

《そしてそこの二人はゴウアシュリー。
 お前と同じキメラだ。》

「なんだとぉ?」

キメラと聞いて一瞬顔をしかめ、ナナシは二人を見た。

「私がアシュリー。そしてこっちがゴウ。
 よろしくね。」

可愛らしくウィンクしてみせる、黒髪ロングヘアーの薔薇の形の髪飾りをつけている黒いゴスロリドレスをきた少女、
アシュリー。

そして先程からナナシの傍に居る、黒髪のこれといった特徴のない髪型の青いパーカー、ズボンを着ている少年、
ゴウはナナシのほうを向きよろしくと言わんばかりの眼差しでナナシを見ていた。

「キメラって・・・高津の・・・じゃなさそうだな・・・?」

ぼそりとナナシは呟いた。
ナナシは知っている。
高津ナンバーのDキメラは大体が獣のようなパーツがあり、戦闘用に作られている。
ところがアシュリーはともかく、
ゴウはどう見ても戦いに適してるとは思えない。
そして何より二人にはキメラの特徴の獣のパーツが見えない。

ちなみにナナシとナナミとでは、ナナシが攻撃に周り、
ナナミがサポートすると言う役割分担として、
つがいと言われるキメラ兄弟と言うものが存在するが
この二人はどうもそのつがいとは違う。

《その二人については後々話してやろう。
 これからお前は俺のところに来てもらう。お前に逢いたいと言う人物がいるのだ。》

「んんー?」

ナナシは少々困惑気味な顔して唸った。
その数分後、エンジン音と共にナナシ達が乗ってると思われる乗り物は火星の空へと飛び立って行った。  
執筆者…R.S様
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