リレー小説5
<Rel5.ミンス党2>

 

  ネオス日本共和国、首都・ネオ東京、港区赤坂、汚沢マンション

 

鉛雨街に西側を幾分か浸食された形となっている港区も、
ネオス日本共和国の最前線の一つであった。
無法のスラムから流出してくる異能者達を食い止める為、
そして異能者達を利用しようと企む勢力が介入しないように見張る為、
警視庁公安部も目を光らせていた……のだが…

「…ミニエンジェルが……俺のミニエンジェルがぁあッ!!」

微妙にスネオヘアーな筋骨隆々の男が
手にした携帯電話を、其の恐るべき握力で握り潰し、
カーペットに両膝をつき両手を掲げプラトーンしていた。
すぐ傍のテーブルに座っていた3人組が何事かと注視する。

「何やってんの、呂理坂(ろりさか)君?」

微妙にスネオヘアーな男…警視庁公安部の刑事・呂理坂に、
ネオス日本共和国最大野党ミンス党の代表…党首たる汚沢が訝しげに問う。

「ミニエンジェルが…
 鉛雨街の抗争に巻き込まれて倒壊してしまったと…情報が…」

「ああ…あの児童買春クラブね。
 呂理坂君は会員だったっけ?お気の毒様」

「うっ…ううううぅ……汚沢先生っ…!
 俺はこれから何を心の支えに生きていけば良いのですかッ!?
 巷でヨイショされまくってるババア達が実はキュートな美少女であるという、
 タチの悪い洗脳を俺も受けろと言うのですかッ!?
 あのおぞましい17歳教団に入れと言うのですかッ!?
 うぅうううぅうううあぁあああああああああああああああああぁぁぁあっ!!
 もうロリが強姦されて裂けた幼膣から鮮血が迸る様で慰められないなんて…
 秘蔵のコンバウン幼女食糞飲尿コレクションで何とか我慢しなければいけないなんて……
 コソヴォのスラブ系女装ショタがユーゴセルビア女兵士に去勢される光景すら……もう……!」

「……死ねよ底辺のクズ」 

喚き散らす呂理坂に汚沢が冷たく言い放つ。
呂理坂の痛ましい様子に、今度は代表代行のが暖かい手を差し伸べる。

「まぁまぁ…どうです呂理坂さん?
 今夜辺り、私オススメの娘を紹介してあげますから。
 たまにはもっと年上を相手するのも乙なものかも知れませんよ。
 ほいほい決まり!これにて解決!はい、完っ!」

「ワリキリ(援助交際)でイチニイ(ホテル代別一万二千円)の超韓売春婦っしょ?」

「…張っ倒すぞこんガキャ」

警視庁公安部の刑事を既に中国共産党直伝の懐柔術で取り込んで、
鉛雨街との取引を行う事にも成功…決して短くない付き合いを続けるに至っていた。
だが最近になって汚沢は、呂理坂刑事の嗜好が些か特殊である事…
そして、彼へ常に満足なレベルの快楽を提供し続ける事が困難である事に気付く。
彼が自らの汚点を上に報告するような事はないだろうとも思っていたが、
其れが楽観過ぎると考えを改め、別の攻め手を考えるべきだと頭を痛ませていたのだった。

「落ち着いて下さい呂理坂さん。
 ほら…ヂャスコで買って来た熱々の餃子があるんで是非一口」

フランケンシュタインの怪物染みた風貌の男…オカラ副代表が、
泣き喚く呂理坂の口の中へと、箸で摘んだ餃子を放り込む。

「こ…これは……あぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ…(ドサッ)」

呂理坂刑事は全身を痙攣させ泡を吐いた挙句、白目剥いて倒れてしまった。

「良くやったオカラ君。
 早めに彼の嗜好を満たせる店を探さないとな。
 ……ところで其の餃子、何を入れたんだい?」

「?いえ、何も」
「は?…だって今………」

「ヂャスコの商品に何か拙いものでも?」
「…イエ、ナンデモナイデス」
気絶した呂理坂をベッドへ放り投げ漸く一息吐こうとした其の時…
玄関付近から何やら慌てたような警備員の声が聞こえて来る。

「ちょっとジイさん達、何してんの?」

「ワシは誰だ?」

「……えーっと…困ったな…痴呆の徘徊か」

「無礼者がっ!
 汚沢達にキングメーカーが会いに来た」と早々に告げぃ!早ぅせんか!」

声や口調以前に其の傍若無人さから誰が来たのか見当がつき、
溜め息の後、汚沢達3人は玄関に行って招かれざる来訪者達と対面する。
一人は頭でっかちの老人。
一人は紳士服を着たカマキリの獣人。
一人は日本皇国の軍服を纏った男。
「ちょっと困りますね、キム先生。
 もう引退した先生と違って、こっちは現役で激務に追われているんですから」
「せめて事前に連絡くらいはして欲しいものですね」

汚沢にキム先生と呼ばれたのは、口やかましく怒鳴っていた老人とは別…
彼の隣に控えた紳士服姿のカマキリ獣人キム・ファンシンであった。
今でこそ老人に代表格を明け渡してはいるものの、
嘗ては老人と汚沢、そしてジオン党UF産業相の師でもあった古株の元政治家だ。
無視された事にも気付かず、自称・キングメーカーの老人が受け答えを行う。
「ふん!中国詣で党を挙げて国会を投げ出した連中が良ぅ言うわ」
「中国に対する其の赤心は見上げた物ですが、
 最近、少々手緩いのではありませんか?」

「は?」東アジア共同体構想を旧世紀レベルにまで引き上げ、
 引き続き贖罪と賠償を行う必要があるというのに、何をちんたらしているのか」

「うむ。ネオス日本は中国、超韓、北超鮮、ロ連と共にEUのような国作りをせねばならん。
 既に超韓民国は北超鮮との垣根を越えて統一国家になろうとすらしている。
 其れなのに何故、今尚ジオン党の独裁が続いている?お前達が不甲斐無いからだろうがっ!」

(何その罰ゲーム?)」
「(垣根を越えて…って南が北に泣きついただけだろjk)」
「(いや…アンタそもそも元・ジオン幹事長……)売国党かつらい良明にはワシも期待していた。
 特定アジア第一主義を貫くと公言したあやつならば東アジア共同体も進むだろうと思った。
 なのに与党となった直後に起こった大戦で無様に逃げ出し、
 逆に国民を怒らせてジオン党に流れを戻してしまいおった!
 無能な彼奴等も許せんが、そんな無能を選ばせた貴様等ミンス党は更に腹立たしい!」

(お前は何を言ってるんだ?)」
「(かつらいのアホを担いでたのはオメーだろーが)」
「(どーせテメーは勝ち馬に乗るから関係ないっしょ?)

「そもそも汚沢!貴様らは北超鮮に対して強硬過ぎる!
 バカ共が吠えても拉致被害者なんて帰って来ないんだ!
 隣国が困っているのに援助せず心を通わせないで諸問題が解決するのか?
 拉致疑惑があるから物資を送るなとの意見が強いが、
 ワシに言わせれば北超鮮との間には慰安婦や植民地支配、強制連行があるっ!」

(え?俺、金渡して被害者返して貰おうとすら言ったんデスケド…)」
「(…あー…おじいちゃん、そろそろ病院に戻りましょう?)」
「(もう駄目だ、この耄碌ジジイ…)

お題目は立派。
慈愛と信頼、友情に満ちた美しい未来…
だが其の形成を求められるのは、関わる全ての人間。
不平等と差別の撲滅を謳い其の実、不平等と差別を招くだけ。
汚沢達は内心、馬鹿馬鹿しいと思いつつも、
表向きは老人に合わせ直立不動のまま清聴、時折頷いたりしておく。

「ぜぇ…ぜぇ……ワシは誰だァ!?」

「「「キングメーカーぬらりひょん大先生です」」」

「其の通りだ!
 お前達の首などワシの気分一つでいつでも飛ぶ事を忘れるな!
 良いかっ!?
 世論調査をネタに今度こそ小泉に解散総選挙を行わせよ!
 特にライナルビンは最悪だ!
 間違ってあの女が首相になどなろうものなら、この国は終わりだ!
 あいつは会合の席で、このワシを差別しおった!絶対許さん!

「「「(この期に及んで私怨かよ)」」」

「今度、政権交代に失敗しおったら、
 ワシゃ貴様等を見捨ててジオンの江口達を選ぶ!
 お前達ミンスに、このワシが力添えしてやっているのは、
 自治労連や解同からの要望に答えられる最良の政党がミンス党だから…其れだけだ!
 肝に銘じておけぇえ!!」

「以上だ。お前達が我等、妖怪の要望に応えられる事を期待している」
老人ぬらりひょんが下がり、軍服男が締めを担当する。
「君いたの?」と汚沢達が心の中で其の影の薄さを揶揄するのは元皇国将校であり、
ネオス日本共和国を影から牛耳る…と称する『3大妖怪』の一角曾根内だ。
(だが、ぬらりひょん老人は3大妖怪とは別格の存在であり、
 今この場に現れた3大妖怪は2体のみという事になる)
まだ愚痴ってるぬらりひょんを連れ、ファンシンと曾根内は汚沢マンションを後にした。

 

「…なぁにがキングメーカーだボケ。
 小泉にジオンを追い出された今じゃ、
 もう政治家でも何でもないただの痴呆老人だろーが。
 そんな関係ない事憂慮してないで、てめぇのオムツの現状を憂慮してろ」
「世論調査が解散迫る理由になるなら、
 そもそも選挙なんざ必要ねぇっての」
「まぁ…政権交代の為にも使えそうなものは何でも使っておこう。
 幸い秋葉原隔離区のゴタゴタもあるし…攻撃材料には事欠かないよ」
執筆者…is-lies
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