リレー小説5
<Rel5.カイト・シルヴィス1>

 

  ネオス日本共和国、首都・ネオ東京

 

《ご利用有難う御座いました。
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スカイライムから降車してネオ東京の一区…文京区へと到着した一行。
今はスラム化してしまった旧ヤマノテ放置区こと鉛雨街と、
千代田区・台東区の一部がオタク達に占領された秋葉原隔離区と隣接している為、
ネオ東京の最前線として扱われる一区である。

「此処も随分と…車が少ないね……?」

獣人の少年がガラガラに空いた道路を見て呟く。
年はまだ10にも届かないであろう獣人少年の顔は人間の其れであり、
犬耳さえなければ普通の人間の少年にすら見える。
獣人の血が第一世代よりも薄い第二世代獣人であるが故だった。

「ネオス日本共和国では自動車は結晶動力の車しか認められていないみたい。
 後、一般道路を車で走るのにもお金が掛かるそうだし、誰も走りたがらないんだろうね」

答えたのは先の獣人少年と同い年くらいの金髪少年。
燈篭を模したルビーの首飾りを提げ、片手にはネオス日本共和国のガイドブックを持っている。

「…何だそりゃ?」

2人の少年の保護者染みた存在である、青い髪をした青年が言う。
後ろ首…延髄部分にあるジャック穴に携帯端末のコードを繋げている辺り、
改造人間かアンドロイドか…何れにせよ普通の人間ではないのだろう。

「旧世紀に発足したエコロジーの一環だって聞いた事ありますけれど…」

「馬鹿馬鹿しい。
 人間如きが星を食い潰せるとでも本気で考えてるのか?
 人間の歴史なんざ星から見ればほんの瞬き程度のもんだ。
 無駄な努力ってやつさ。
 其れに…ほら、現に空気も綺麗なもんじゃないか。
 必要ないだろ?」

「ええ、でも『八姉妹遵守宣言』っていって、
 地球の環境を修復してくれた八姉妹の為にも、
 よりエコロジーを心掛けましょうって法律みたいなんです」

第三次世界大戦によって地球の環境は壊滅的な打撃を被り、
いよいよ人間の住める土地ではなくなろうとしていたのだが、
其れを自らの命と引き換えに浄化し、
地球と人類を救った8人の英雄的女性こそが八姉妹である。

「八姉妹遵守宣言?
 …どれどれ…」

接続した携帯端末から情報を収集する青髪の青年。
だが得られた情報はというと……

「文化財維持費原則廃止、
 研究機関への援助原則無期限停止、
 畜産業原則禁止、
 冷暖房使用原則禁止、
 結晶動力以外の自動車原則禁止、
 夜間の照明使用・イルミネーション原則禁止、
 個人端末の使用原則禁止、
 夜間の店舗営業原則禁止、
 …………
 …ひでぇ……何だこりゃ?
 原則ってあれか?金払えばOKっていう、実質的な有料化か?」

「ええ、今は低所得層への控除も議論されているみたいですけれど」

こんな訳の解らない、どこぞの独裁国家みたいな制限を強いるとは、
勝手に名前を使われている八姉妹とやらも気の毒なものだと青年は呆れる。

「(…にしても八姉妹……とはな、
  もうエンパイアの事件を繰り返すお膳立ては済んでたって事か)」

「何か…火星よりもずっと胡散臭そうな国だね」

「仕方ないよ、くん。
 ネオス日本にはSeventTrumpetもいないし、何より平和みたいだし」

「まぁ良いさ。
 俺達がこれから腰を下ろすのはネオス日本なんかじゃないんだからな。
 この携帯端末も見付かったら面倒だ、さっさと行こう」

青髪の青年は2人の少年を引き連れ、其の場を後にするのだった。
執筆者…is-lies
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