リレー小説5
<Rel5.エルミタージュ美術館4>

 

 

  ロシア連邦、北西連邦管区、サンクトペテルブルク
  エルミタージュ美術館、エルミタージュ劇場2F
  ロシア軍、ザロージェンヌィエ・ポコーイニキ

 

格調高き緞帳で有名な円形劇場は、誰もが劇を見れるようにとの趣向で小さめに設計されていた。
其の舞台の上で堂々と構えているニコライ大佐の前に、
3体の異形を引き連れた青年が歩み出た。
蛇女、青肌男、双頭犬といった奇怪な異形達を率いている割に、平凡な外見だった。
何処にでもいそうな眼鏡を掛けた青年は、耳にイアホンをして何かの音楽を聴いているらしく、
鼻歌しつつ両指を指揮棒に見立てリズムを取るような仕草を暫く続ける。

「…やっぱりムサベツポイズンが一番かな。神野とは珍しくこれだけ好みが合わなかったけどね。
 さて……まずは相互理解の為に一つ自己紹介させて貰いましょか」
「僕は『ハインツ・カール』。このザロージェンヌィエ・ポコーイニキのユニット01…
 ちょっと違うけど現地リーダーみたいなものだと思って良いよ」

「…うぅううう!」

ハインツの背後に控えている蛇女が、牙を剥いて威嚇するような唸り声を上げる。
喉か何かを弄くられているのか、妙に良く響く声をしている。

「この子はユニット03『ディーヴァ』。たまに白目剥いて不気味に笑うケド根は良い子なんだよ。
 で、こっちのちょっと顔の怖い人がユニット06『アルアジフ』…」

顔の半分が髑髏の青肌男はケラケラと笑い続けている。
髑髏の眼窩に満ちる闇から僅かに覗く脳は既に正常な稼働を行っていないのだろう。

「最後に、この犬が『オルトロス』ね。
 あまり僕は懐かれていないみたいだけど」

最も人型から離れた双頭の犬だが、
爛々とした妖しい眼光で、微動だにせずニコライ大佐を見遣る様子は、
この異形集団の中では一番知性を感じられるものだった。

「私に何の用だ?」

「ありゃりゃ、直球だね。なら単刀直入に言おっか。
 僕達と共に研究学園都市へ来て貰えないかな?
 何でも、ロシアに歯向かった君の罪を帳消しにするチャンスが与えられるんだってさ」

「どういう事だ?」

「さぁ?上からの命令でね、君はメドヴェージェフに引き渡す事になっている。
 其ん時にでも直接メドヴェージェフに聞いてみたら?
 羨ましいなー、反逆者が無罪だってさー。僕もそうありたかったなー」

「詰まりお前達は知らない訳か」

「そーだよー」

瞬間、ニコライ大佐の声が変わる。
今まで微動だにしなかった表情が動いた瞬間、
首や眼の辺りに微妙な差異が浮かび上がる。

「なら……もう話す事もないか」

ハインツが、今まで話し掛けていた相手がニコライ大佐とは別人であると悟るよりも早く、
舞台の袖から新たな役者が其の姿を表した。
ロングストレートの茶髪を揺らしながら歩み出た女は、
ハインツ達を一瞥すると、劇場に相応しい芝居掛かった仕草で挨拶して見せる。

「さあさ、お立会い。
 センチュリオン『キリフェナ』の花火大会の始まり始まりー」

キリフェナと名乗った女を中心に、無数の魔方陣が空中に形成される。
オルトロスがハインツらの前に出て其の目を光らせ、何かの能力を発動させるが、
そんなもの無意味とばかりに魔方陣から間髪入れずに魔力の塊が撃ち出される。
直接ハインツ達に向かって殺到するもの、緩やかな楕円軌道で迫るもの、
まるでビーム照射のように放たれるもの、隙間のない弾幕となるもの、途中で散弾のように爆ぜるもの、
兎に角、バリエーションに富んでいて精彩のある魔力弾だ。
無関係な場所で見ている分には、さぞ派手で楽しそうな絵となるだろう。
其の力を向けられた当人達にとっては地獄絵図に他ならないが。
「巧くいったな」

ニコライ大佐のマスクを脱ぐユヴァヤ。
大佐の考え通り、敵にはニコライ大佐を生け捕りにしたい思惑があるようだが、
具体的な内容についてはメドヴェージェフしか知らないという。
メドヴェージェフ議員については名前くらいしか聞いた事が無く、ノーマークだったが、
どうも早々に接触して色々と聞き出さねばならない相手のようだと認識を改めるユヴァヤ。

「まずは大佐に報告を………
 ……待て、何だこりゃ?」

弛緩し掛かった思考を内心で叱咤し、ユヴァヤはアサルトライフルを構える。
キリフェナは魔法弾で砕かれ粉塵の舞う観客席を見遣ったまま、ふと呟く。

「…どうやら、あのワンちゃんがMVP(最優秀選手)のようね」

「なに…?」

粉塵が晴れると、其処には無傷のザロージェンヌィエ・ポコーイニキらが姿を現わした。
あれだけの数の魔法弾を受けて傷一つ無い…考えられない事だった。

「どういう能力かは知らないけれど…
 私の『炎渦の顎門』が、まるで効果を及ぼせていないわ」

半径50m圏内に無数の魔方陣を形成し、様々な種類の魔力弾を放つという、
ニコライ派の中で最も大規模火力に優れるキリフェナの能力だが、
其れがこうも無力化されるとは想定していなかった。

「成程。オルトロスじゃなくって僕が真っ先に見付けたから妙に思ってたけど…
 そうかぁ…偽者だったかぁ……あー、めんどい。
 なら此処の掃除はディーヴァに任せるよ。僕達は本物の捜索に戻るから」

そう言ってスーツに付いた埃を払いつつハインツは、もと来た道を戻り始め、
其の後ろにオルトロス、アルアジフが続く。

「いかせるかよッ!」

オルトロスの能力は解らないものの、相当に危険な相手と看做し、
この場で仕留めねばとユヴァヤとキリフェナが其々銃を構えるが…
其の前に蛇女ディーヴァが立ち塞がり、不気味な笑みを浮かべる。

このまま速攻で仕留め、何としてでもさっきの犬を…
其処まで考えてから…ユヴァヤの勘が告げる。
無効化されたとはいえキリフェナの超火力を見て尚、単独で立ち向かってくるコイツを、
果たしてそんな楽な相手と見て良いのか?

ほぼ直感と…最悪のケースを想定した選択だった。
ユヴァヤは照準の安定を欠く事を承知で、片手をキリフェナの背へと回す。
次の瞬間、ディーヴァの絶叫が劇場を覆い尽くした。
結晶能力でもあるディーヴァの叫びは、耳にした者の脳を即座に破壊してしまう。
キリフェナの大規模破壊能力に比肩し得る、大規模生体破壊…
耳を塞ぐ程度で無効化されてしまうという弱みはあるものの、
不意打ちすれば如何なる精鋭達といえど壊滅的な被害を免れない恐るべき力であった。

「だが、判断ミスだぜハインツ」
「今度はMVPユヴァヤね」
執筆者…is-lies

  ロシア連邦、北西連邦管区、サンクトペテルブルク
  エルミタージュ美術館、新エルミタージュ2F、ラファエロのロッジア
  ニコライ派、リスティー・フィオ・リエル・オーディア

 

嘗てバチカンの宮殿にあったラファエロ回廊のフレスコ画を欲した女帝が修道士達に命じ、
長年掛けて精巧に模写させ……其の大量の複製画を何処に仕舞うか悩んだ挙句、
ラファエロ回廊そのものをそっくり構築してしまうという暴挙に出たという、
金持ちは何考えてんだか解らん的エピソードを持つ回廊を、リスティー達はしんどそうに歩いていた。
壁にはラファエロがデザインした不可思議な生物、植物のフレスコ画が並び、
天井で繰り返されるアーチには、聖書にある52ものテーマを基にした、
天地創造から始まりキリストの最後の晩餐で終わる「ラファエロの聖書」 が描かれているが、
其の何れもリスティー達の歩みを止めるようなものではなかった。

「むー、蟻さん達を見失ってしまいましたわ」
《やっぱ頭ン中にでも発信機仕込んどくべきだったぜー!》

暴走してリゲイルを追い掛けるアリオストの速さは驚異的であり、
追い縋る事すら出来ず置き去りにされてしまったのだ。

「さて…アリオスト氏は兎も角、賊を見逃す訳にもいきません
 手分けして探しましょう」

「そうですわね…
 何かあったら連絡下さいな」

RBとリスティーが別々に行動を開始する。
無用心…とは言えない。元レギオン…SFESの兵隊でもあったRBとリスティーなのだ。
其れなりに腕に覚えがあっての判断であった。

「さて…どうしましたもの…か……?」

独りで回廊から出ようとしたリスティーの前に、白いサマードレス姿の少女が立ち塞がった。

「ウフ…ウフフ……クヒャヒャ!…みっけみっけターゲットみっけ」

肩から蔓を生やした其の異形の少女は、
ウサギか何かのヌイグルミを抱えながら悠々と歩み寄ってくる。
目深に被った麦藁帽子の為に、リスティーから彼女の目を見る事は出来ないが、
恐らく、肉食獣のようなギラついた目をしているに違いない。駄々漏れの殺気からリスティーはそう判断した。

「あたしユニット04『死鬼森』。こんばんは、そしてさようなら」

死鬼森が麦藁帽子の位置を手で直すのを合図とするように、
彼女の全身から一斉に大量の蔓が生え、触手の如くリスティーへと殺到する。

「ムッ、同属性対決ですの!?」

対するリスティーは背中から、此方も蔓を出す。
食虫植物を模したような顎や、葉っぱのような盾もある。
死鬼森の蔓を難無く防ぎ、食い千切る。

「ふーん、お姉ちゃんも植物使うんだ?クヒャ!じゃあ、あたしも本気でいこっかなぁ」

死鬼森の蔓が先程とは比べ物にならない数にまで増大する。
リスティーの蔓が貧弱に見える程の量であり、圧倒的な物量で叩き潰す気でいるのだ。
《お嬢様、助太刀に戻りましょうか?》
「いいえ、結構ですわ。
 このお城の城主として最低限の務めはさせて下さいな」

ガッデムちゃんを介したRBからの通信に、矜持を持って答えるリスティー。

《ゲヒャヒャ!生意気にも同じ植物使いたなぁ!
 オラ、頭パー子!格の違いって奴を見せ付けてやりゃああ!!
 ぶっ飛ばしてふん縛ってトーチャーチェンバー(拷問の間)に御招待ーーー!!》

ラファエロの聖書・始まりのテーマ『天地創造』創世記1:1-4
神による創造の業を描いた作品の下で、2人は蔓を伸ばし合い衝突した。
執筆者…is-lies

  ロシア連邦、北西連邦管区、サンクトペテルブルク
  エルミタージュ美術館、冬宮2F、暗い廊下
  ニコライ派、ビルクレイダ・ヘクトケール

 

サブマシンガンを脇に抱えながら、ビルクレイダ大尉は息を殺して暗闇に潜んでいる。
廊下の最奥、ロトンダ(円形ドーム状の間)から近寄ってくる来客の気配を察し臨戦態勢へと入った彼は、
残忍な悦びと、其れでも決して油断せず全身の神経を研ぎ澄ます冷静な思考を維持している。
蠢く大量の蜘蛛(しもべ)達によって、正にビルクレイダの巣と化している其処に…

「お…」

無思慮に足を踏み入れる馬鹿が其の姿を現した。
キノコのような帽子を被った少女…
ザロージェンヌィエ・ポコーイニキのユニット12『解体屋エリス』は目も口も閉じたまま微笑みを浮かべ、
片手に持った大バサミをジャキジャキと鳴らしながら、
蜘蛛だらけの異様な光景に驚く事も怯える事も無く悠然とビルクレイダに歩み寄る。

「こんにちは、わたしエリス(ニコッ ☆彡)」

明朗快活な声でそう名乗る。

「そーかいそーかいエリスちゃんよぉ。
 しっかし…こんにちはって時間かァ?むしろお前の場合『お休みなさい』じゃねェのか?」

ビルクレイダは引き金を引く指に力を入れる。。
今まで一番多かった相手の反応は『死ぬのはお前だ』という類のもので、
そう言い切ったと同時に撃ち殺しては笑い転げていたものだ。
だが…

「こんにちは、わたしエリス(ニコッ ☆彡)」

「…聞いたっつーの」

予想外の切り返しに毒気を抜かる。

「こんにちは、わたしエリス(ニコッ ☆彡)」

こいつ頭大丈夫か?
壊れたラジオ宜しく同じ挨拶を繰り返しながらエリスは其のまま進んでいく。
流石に其れを見逃してやる謂れは無い。

「この蜘蛛の網に掛かって生き延びようたァ、頭も覚悟も足りてねェなァ!?」

周囲に展開させていた蜘蛛達が、瞬く間にエリスを覆い尽くす。
黒いオブジェと化した其の中で、無数の牙がエリスの首といわず手足といわず全身余す所無く突き立てられる。
つい先程、広場のディーカヤ・コーシカ達がこの蜘蛛達によって干物にされていたが、
其れは蜘蛛達に備わる生命力吸収の力によるものだ。
これだけの量の蜘蛛に集られては、骨と皮だけに成り果てるのに10秒もしない。
…筈だが、展開はビルクレイダの望む方向へは転がらなかった。

「こんにちは、わたしエリス(ニコッ ☆彡)」

「…あ?」

蜘蛛達を無視してエリスは前進を続ける。
有り得ない。
もうとっくに生命力は吸い尽くされている筈なのに、まるで衰えている様子が無い。

「……いや、吸えてない?
 まさかコイツ……生きてねぇ…のか?」

ユニット11のLLと同様、彼女…エリスもSFESの粘菌状生体兵器『I-ショゴス』の改造実験体であった。
LLが『増殖・膨張』に重きを置いたのに対し、彼女は『自己維持』に主眼を置かれている。
彼女が作られてから今日に至るまで…彼女は身体的な変化を何一つ起さずにいる。
永遠不変をテーマに改造された彼女は或る意味、其の存在目的を達成していた。
変化しない記憶、変化しない言葉、変化しない表情…
既に体の内部は粘菌に侵し尽くされ、脳も臓器も其れに取って代わられている。
今、こうして動いているのはペーシャオ・バガモールによる操作以外の何ものでもない。
詰まり…文字通りペーシャオ・バガモールの人形でしかない。

「こんにちは、わたしエリス(ニコッ ☆彡)」

ビルクレイダからの銃撃も物ともせずに進み続け、大バサミを分解…2本の太刀に変えて跳躍する。
鈍重な動き故に、すぐにビルクレイダは後退して太刀の直撃を避けるものの、
直撃した大型の蜘蛛達は一撃で爆ぜ砕けてしまう。
恐らく、パワードスーツを着込んだビルクレイダが喰らったとしても同じ末路に至るであろう怪力だった。

「!」

エリスの片手から投げ飛ばされた太刀がビルクレイダの首目掛け、空気を切り裂きながら飛来する。
咄嗟に身を反らしたビルクレイダだったが肩のプロテクターが太刀に掠ってしまい粉々に砕けてしまった。

「こんのクソアマ…いや、バケモンか?
 上等キメてくれるじゃねぇかよォ。
 良いぜぇ!掛かって来やがれゃああああアアアァァッ!」

「こんにちは、わたしエリス(ニコッ ☆彡)」
執筆者…is-lies

  ロシア連邦、北西連邦管区、サンクトペテルブルク
  エルミタージュ美術館、屋上
  ニコライ派、レゼフェイ・ヘイドナーン

 

「やれやれ」

通信の絶えたユディト准尉の増援として赴いたレゼフェイ中佐は、
暫くババ・ヤーガ迎撃を続けながらユディト准尉を探し続けていた。
ユディトには及ばないものの着実にババ・ヤーガを撃墜していって…遂に其れに気付く。

「どうやら一杯食わされたみたいだよ大佐。
 変だと思ったんだよね。
 幾らAMFより安価とはいえ結晶粉末を大量に…無駄にばら撒いてると思ったら…
 …ババ・ヤーガが撒いてるのは結晶でも何でもない。ありゃガラス粉か何かだよ」

《ほう…スヴァローグでの戦訓から、我々を相手取るに当たって能力の封印は必ず行うと見ていたのだがね。
 どうやら今回は相手側が結晶能力に依存しているようだね》

スヴァローグ島でのロシア軍VSニコライ派の戦闘では、
ニコライ派のセンチュリオンが、大規模破壊能力でロシア軍の主力艦隊を一蹴していたのだ。
故に今回は結晶能力の制限から入ると読んでいた訳だが、敵…ディーカヤ・コーシカの方針は違っていたようだ。

「だね。敵陣の増援にとんでもないのがいるよ。
 ペーシャオ・バガモール…あのロシア最強の能力者さ。
 危険過ぎて研究学園都市にずーっと幽閉されてたって聞いてたけど…あんなの持ち出すとはね」

宮殿広場に陣取るペーシャオ・バガモール、オセロット、六反田らと目が合う。
来るなら来いといった挑発の色が篭った視線であった。
AMFは存在しないのだろうが、こうなると不可視防壁(スカトラ・ミステリオサ)が実に鬱陶しい。

「中にいるゲテモノ連中…どうもアイツが操ってるみたいだ。
 どうします?」
《相手は今、どうしているのかな?》

「悠然と構えてますよ。其れだけの自信があるんだろうね」

ロシア最強の能力者ペーシャオ・バガモールに加え、
KGB精鋭部隊ディーカヤ・コーシカ隊長オセロットに、
今は無きSFES最大戦力レギオンの元・師団長である六反田もいるのだ。さもありなん。
現にペーシャオ・バガモールの操る異形兵団ザロージェンヌィエ・ポコーイニキだけでも手間取っているのだから。

《敢えて挑発に乗ってやろうなどとは思わないように。
 どうせなら後で数十倍にして返してやろう。
 其れに…手塩に掛けた異形部隊を正面から返り討ちにしてやるというのも面白そうだとは思わないか?》

冗談めいた喋り口で釘を刺すニコライ大佐。
だが後半の口調は挑発に対する嘲笑、己の部隊を甘く見るなと明白に言っている。

「はは、そりゃ出来れば愉快ではありそうだね。
 ツァウドル曹長の報告にあったデカブツが一番の難関になりそうだけど。
 でも、大佐としてはナシャ・パベーダ…いや、
 リゲイルとの再会に水を差されたくないから早々に排除したいってところでしょ?」

《くく、やはり解るか。
 遺児としての私ではなく戦士としての私の願望だ。
 君達には申し訳ない話だがね。私としてもこれは譲れないのだ》

「はいはい。困った大佐だよ。
 まぁ、僕も興味が無い訳じゃないし…あの見苦しい生ゴミ達をさっさと片付けちゃおう」

レゼフェイ中佐は通信を切るとユディト准尉捜索に戻る。
外周部から落ちた様子が無い事を確認すると共に時計塔の辺りで交戦の痕跡を発見する。
周囲に目を凝らしてみれば案の定、其れらしく盛大に割れた天窓があった。
用心しながら覗いてみると、巨大な地球儀のようなものの上で大の字となったユディト准尉、
其の下で痙攣するドラゴン型の異形が共に血を流していた。
目を見開きレゼフェイ中佐は即座に天窓へと飛び込む。
三角跳びのように周囲の壁を蹴って落下の衝撃を緩和して地球儀の上に難無く着地する。
途中、壁にあった彫像や絵画などの美術品が蹴りで砕けたりしたけどキニシナイ。

「…死…ん…ではいないけど、こっ酷くやられたね。
 早めに連れて………ん?」

息がある事を確認してから気絶したユディトを抱えたレゼフェイ中佐は、
今、自分が足にしている地球儀状のものに何かを感じ取る。

「まさか……これは」
執筆者…is-lies

 

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