リレー小説5
<Rel5.エーガ1>

 

 

「はーい!皆、今日も激しく行くわよっ!」

煌びやかな舞台の上でカラフルにライトアップさせされた女を、若者達の歓声が包み込む。

「うぉおお!待ってましたぁー!!」
ロリロリ幼女!!ロリロリ幼女!!
国民的アイドルを前に会場は湧き立ち熱気を振りまいている。
ロリ幼女と呼ばれている、このアイドルであるが、
其のカラダは大人の肉感を備え、更に其れを強調するよう、
赤いのボンテージレザーを基本とした際どい衣装に身を包んでいたのだった。
否、衣装というのも憚られる。
極端に面積の少なく露出度の激しい其れは水着とか布切れと言った方が良い。
幼女アイドルの体をキツく締め上げている黒いベルト以外、
チューブトップとビキニ、オーバーニーロングブーツ、ロンググローブ全てが、
彼女の情熱的な踊りに合わせた燃える炎のような真紅。
これだけならばセンス云々ではなく勢いのみを優先させたかのような、
少々、幼女アイドルという名に相応しくないものであったろうが、
其れらは白いフリルで飾られており、
幼女アイドルの可愛らしさを引き出そうと試みられていたのである。

「おおおおおお!!!よ…幼女のお尻…お尻……ッ!!」
「くそっ!もう結晶切れかよ、このカメラ!」
「何撮影してやがる、この野郎!」

激しく腰を振りながら歌い踊るアイドルに、若者達の興奮は最高潮に達している。
張りのある尻肉を揉みしだく様を妄想し、両手をアイドルに向かって突き出す者すらおり、
際どくカットされたビキニに、会場にいる若者達の視線が集中し、アイドルを視姦していた。
一方のアイドルは、そんな光景を満足げに見遣りながら、
併し、ふと不満げに寂しそうな眼をして溜息を吐く。
彼女こそ、この国最大のアイドル…

 

 

 

 

 

ロリロリ幼女アイドル
『サッチー』73歳である。

 

 

 

ロリロリ幼女アイドル・サッチーがズンドコとケツを振る。つーかトドマン。
沸きあがる歓声。狂気の宴。
ロリロリ幼女アイドル・サッチーが股座開いて其の食い込みを誇示する。つーかボンレスハム。
恍惚の余りに奇声を発し身悶え失神する若者達。
幼女アイドルが歌い終えた後、自力で立っていた者は一人もいなかった。
執筆者…is-lies
「皆も知ってると思うけど、幼女の定義は73歳以上に伸ばされない事になっちゃったわ。
 アタシ、もうロリロリ幼女アイドルを続ける事は出来ないの。
 だから今回を最後にアイドルを引退する事に決定したのよ、解る?」

「そんなぁ!?」
「いやだぁああ!!辞めないで!」
「うぉおお、サッチー!!」

幼女アイドル・サッチーの発表を受け、一旦は沈静化した会場が再炎上する。
併し国民的アイドルにとってはそんなものどうという事も無し。
片腕の動き一つで即座に鎮めてしまう。
「でも大丈夫よ。
 ミンス党の汚沢党首からお誘いが来て、アタシ政治家になるワ!
 そしてロリの定義を30歳から90歳にまで引き伸ばしてやるのよ!

現在のネオス日本共和国に於ける幼女の定義は、
75歳未満までとされていた其れを見直し30歳以上70歳未満。
因みに70歳以上80歳未満が少女であり、
80歳以上90歳未満が熟女。90歳以上が老女である。
0歳以上30歳未満は鬼熊豚臭醜女(おにぐまとんしゅうしこめ)と定義されている。

国民的アイドル・サッチーを政治家として抱えれば票に繋がる。
本来ならば人気取りと批判されるであろう其の判断とて、汚沢の前では問題にならない。
剛腕と称される、ネオス日本共和国最大野党ミンス党の汚沢党首であるが、
実際のところ彼は、纏まらないものを纏める力がある…という訳ではなく、
纏まらないものを纏めず己で判断を下す…其の強引さ故に剛腕と称されているのだ。
要するに…票が稼げれば何でも良し。
「安心して。
 元SM女王の田中女王議員や、元暴走族でキャバ嬢の太田一人議員ってのもいて、
 この二人の話を聞いて、アタシも安心して政治家になれるわ。
 偏差値38に出来てアタシに出来ないって事ぁないわよ!
 其れに予想される対抗馬なんて新党・代地の衣麻・桃子くらい!
 あんなのタダのAV女優ぢゃない!逮捕歴もあるし、ビッチよビッチ!
 どっからでもかかって来なさいヨ!
 後、例の秋葉原隔離区浄化プランにもアタシからビシッと言ってやるわ!
 3次元から2次元へと現実逃避しているキモヲタ達はさっさと処分した方が為になるってね」
歯に衣着せぬ毒舌に、併しファン達はサッチーコールで応えるのであった。

 

 

 

「あんなトドでも人気なのだな…」
「くすくす…どこかの将軍様みたい。
 でもまぁ…仕方ないのかなぁ?
 だって彼等は、そういうものだという世界に生きているんだもの。
 誰でも選択すべきものを、彼等にはそもそも選択肢が与えられていない。
 其れしか知らない。無知ではなく其の世界の生き方として。
 そして結局其の世界の生き方に順応出来たんなら…其れは其れで良いんじゃない?
 たとえトドを薔薇と言い張る世界であったとしても…ね。くすくす」
「…薔薇で譬えてくれるな。不愉快だ。
 其れより此処の種はもう十分だ。放っておいても隔離区の開発は強行される。
 件の将軍がお前を気に入っている以上、遺跡は我々の管理下に入る事になるだろう。
 次の手を打った方が良い。
 お前の話を聞くに、相手も黙って此方の手を進めさせてはくれないぞ」

 

 

 

一通りファン達に自分への支持を念押しした後、
サッチーは少し遠い目をしながら控えめな口調で其れを口にする。

「最後にカミングアウトしとくわ。
 アタシ…実は恋人がいるの」

場は一気に騒然となる。
ロリロリ幼女アイドルに恋人が?初耳だ!誰なんだ其の羨ましい奴は?
驚愕と嫉妬に混乱を来たすファン達の、
幼女アイドル・サッチーは更に其の思い出を語り出す。

「両想いだと確信出来るけれど、
 一緒に居たのはほんの数十分だけ。其の人から直に名前を聞かされた事も無いわ。
 でも其の人がエーガって呼ばれていた事だけは知っているの。
 幼女アイドルのアタシに何の遠慮もしないで手刀かましてくれたのは、あの人だけ…
 あの人にもう一度会って、今度こそアタシの全てを捧げたい…!
 アタシが幼女アイドルの座を目指して戦う事を決めたのも、
 全ては彼に、いつまでも若々しい幼女のアタシを味わって欲しいからなの。
 …ねぇ、聞いているダーリン?
 いつまでアタシを一人ぼっちにする積もり?
 アタシの心も肉体も既にアナタのものなのよ!
 さぁ、恥ずかしがらないで勇気を出して、この豊満なボディーに飛び込んで来てっ!!」
執筆者…is-lies

「チェンジ」

情熱溢れるロリロリ幼女アイドル・サッチーの求愛を、
眉間に皺を寄せ、まるで汚らわしいものでも見るかのように片目を細め、
「心の底からお断りします」という偽らざる本音を剥き出しにした声で拒絶する男こそが、
サッチーの求めて止まないダーリンことエーガ其の人であった。

「エーガ様…あれが……」

黒髪をポニーテールにした青年…副頭領セートが青褪めた顔で、
モニターに映るサッチーの顔を見ながら呟く。

「…あー…エーガさん、其の…同情するよ」

「ぷ……」

「…………」

安宿の一室に集まった盗賊団メンバーは、
頭領エーガの両思いの恋人を名乗るトドおばはんの存在を知り、
セートの様にドン引きしたり、からかいのネタが出来たとほくそ笑んだり、
或いは今後のエーガの行動に支障が出るかもと気にしたりしていた。

「てか帰れ。土に還れ」

エーガがリモコンでTVのチャンネルを変えて漸く部屋は落ち着きを取り戻す。
其れでも一部のメンバーはまだニヤケ面を浮かべたり、思い出し笑いをしたりするが…。

「併しエーガさん、やっぱ最近のネオス日本は…
 …まぁ、今までも十分変だったけどさ、其れでも異常だよ。
 あの秋葉原隔離区浄化プランっていうのが、碌な反対も無いまま通ろうとしてる」

「自由を唱える平和主義者達…とだけ見たのならばおかしいだろうが、
 そういった皮を被った別物こそが本性と見れば何も不思議は無い」

「其れにメディアの煽り方も随分と激しいね。
 楽観的な事ばかり言ってる…」

ニュースの特集では、軍事行動であるというのに、
何かの明るいイベントであるかのようにお気楽な物言いで話を進めていた。

《性犯罪の温床である秋葉原隔離区を撲滅する貴重な第一歩です。
 勇気を持って我々で其の一歩を踏み出そうではありませんか!
 これが表現の自由を奪うファシズムに繋がるのではという意見も極少数ありますが、
 なぁに、駄目ならまた変えれば良いのです!
 具体的な被害損害を計算などする必要もありません、手間隙の無駄です。無駄を省きましょう》

「駄目なら変えれば良い……
 なぁ、このコメンテーター無責任で駄目っぽいから変えれば良いんじゃね?」

「其の駄目ってのは、
 一体全体いつ、どうやって明らかになるのかねぇ。
 駄目だとしても次のある強者の目線で、
 駄目だったら次の無い弱者を振り回してるように見えるぞ」

「併し、この様子では浄化プランは確実に行われる事になるのでしょうね。
 …エーガ様、プランが実行される前に『例の遺跡』とやらを確認しに行きましょう」

「……ハウシンカって奴の情報がどんだけ頼りになるかは知らんが、
 細川が乗り気なんじゃ…行くっきゃないしなぁ…かったりぃ。
 …まぁ、いちおー命の恩人からの頼みだし、さっさと済ましてさっさと御暇すっかな」
執筆者…is-lies
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