リレー小説5
<Rel5.ビッグヘッド1>
蒸かした馬鈴薯にバターを乗せたものと若鶏のグリル焼きの馥郁たる香りが上祐の口内を唾液で満たさせる。 アグレッシヴな花瓶や蛇の装飾を施された燭台が置かれたロングテーブルには其の他にも、 ナクソス産のワイン、フルーツの盛り合わせ、ロブスターといった品が並べられており宮廷晩餐会宛らの光景であった。 「はは、素晴らしいじゃないか。他の連中をこうも出し抜けるとは」 《其れが『流れ』を支配するという事。 台本を持った関係者にとって劇の全てが徹頭徹尾定められているのと同じく、 舞台裏を知るものにとっては此度の騒動も茶番に過ぎない》 下座の上祐と相対して上座に座っているのは甲殻に包まれた異形の生命体…チューンドキメラ。 これは生体通信が可能な生体兵器であり、遠隔操作されているロボットのようなものに過ぎず、 今、上祐が持て成されている屋敷…コリントス北部にある豪邸の所有者はこの異形を介して上祐と接しているのみ。 「嬉しいね。私がそんな舞台裏に招き入れられたなんて」 《君が最も適した立ち位置にあった…其れだけの事だよ》 「ふふ、この時をどれ程待ち侘びたか… Ω真理教が潰れてしまった時は途方に暮れたものだが…こうなるならば寧ろ歓迎すべきだった。 真相を知る私は超鮮とプロフェートの双方の仲立ちを行い、双方を意のままに操れる。 これならば…SeventhTrumpetを再びΩに…いや、流石に名前は変えざるを得ないか…アレーフ…アレーフが良いな」 新たな組織の結成を夢想しほくそ笑む上祐の側に使用人が立つ。 上祐は持っていたワイングラスから酒が無くなっている事に気付き、内心慌てつつ併し表面は涼しい顔を装う。 《そう。其の処理が残っている》 上祐の手から、ワイングラスが零れ落ちる。赤い…鮮血の如く赤い液体が純白のテーブルクロスへと染み入る。 「そ…んな……ビッグ…ヘッド………」 《君の役目は事実を捻じ曲げ統一超鮮をプロフェートへと紹介した時点で終わっている。 お休みだ、木偶人形》
執筆者…is-lies