リレー小説5
<Rel5.アデル1>

 

 

S-TA首相アデルは会議を終え、
休憩所で独り今後の展開を想定していた。

S-TAは前支配者でベイルス家に対抗する方針を選択した。
とはいえイギリス攻撃反対派は多いし、
ベイルス家を味方に引き入れようという意見もあった。
前支配者復活を決めた覇王アデルも多少は思う所があり、
クリスとの交渉の内容や、心変わりの理由など、
可能ならば聞き出せるなら聞き出して味方に誘っても良いかと考えていた。
S-TA立ち上げにも賛同せずに沈黙を続けたベイルス家だが、
前支配者の圧倒的な力を前にすれば、また違う対応をしてくるだろう。
詰まるところ武力を背景にした恐喝だ。

「(前支配者には其れだけの力がある。
  ふっ、超古代の遺産が此処まで我らが手中に納まるとは……
  この南極遺跡、システム・セイフォート、前支配者か。全く素晴らしい!)」

対ベイルスの目途が立った事に気を良くし、手にした紅茶を一飲みにするアデル。
南極遺跡の発見は、其のままS-TA建国へと直結している。
この発見さえなければ第三次世界大戦の発生はもう少し遅くなっていただろう。
遺産の大半は用途不明な上に、マハコラの天才達が調べたところで使えたのは極一部。
其の極一部だけでも十分な代物だったからこそ……だ。
だが其れでもベイルス家に対抗するには心許ないものもあるし、
システム・セイフォートに至ってはリスクから早々大きな物事相手には手を出せずにいた。
前支配者という解り易い力が手に入った事は大きな強みであった。

だがマハコラは自らの存在意義さえも見失っている。
力だけは貯め込めるだけ貯め込んだ。なのに其の使い道を喪失していた。
今でこそ能力者国家という理想に力を使っているが、其れが叶った後……其の展望が一切ない。
この存在意義を失った組織を如何にして、己の力として回収するか……
そういったマチルダのような思考をしたエンパイリアンが現れるのは、何も不思議な事ではないのだ。

「あ、アデル様……」

もう一杯、コーヒーを飲もうと自販機に向かったアデルに、ばったりと出くわしたのは金髪の女、
八姉妹『イルフィーダ』だ。

S-TA最高幹部・八姉妹=オグドアスは、
ゼノキラ、ミラルカ、オルトノア、玲佳、マチルダ、セシリア、イルフィーダの7人。
……そう、7人。
組織マハコラはシステム・セイフォートの行使に、
ユーザーとして登録された8人と7人……オグドアス(8者)とヘプドマス(7者)が必要である事を知り、
次世代の支配者として八姉妹(オグドアス)を結成した。
だがマハコラは8人を揃える事が出来なかった。どうしようが揃えられなかったのだ。
其れこそが八姉妹『ルチナハト』最初からオグドアスとして登録されており、其の登録をオルトノアでさえ消す事が出来なかったのだ。
よって八姉妹とは名前だけだ。実質的な席は7つ。

このイルフィーダも其の7人の1人なのだが、
アデルも扱いに困ってしまう程の……無能であった。
確かにエンパイリアンだし能力者でもあるし、
相応に適正は高くオグドアスの登録条件も満たしていた。
だが無能であった。
能力の高さと其れを適切に扱う力は全くの別物、
そう思い知らされる……そんな無能であった。
当然、S-TAの会議に於いても彼女イルフィーダの発言権など無きにも等しい。
とはいえオグドアスの登録条件に一致する能力の持ち主でもあり捨ておく訳にもいかないと、
人数を満たす為だけの『狸の置物』程度の扱いしかされていない。
マチルダ辺りには裏で扱き使われているとも聞く。

「……」

アデルも彼女の事は好いていない。というよりは嫌ってさえいる。
こんな無能がオグドアスになれるというのに、何故自分が? そう考えずにはいられない。

「ご、ごごごめんなさい! ま、マチルダ様に呼ばれていました!
 失礼いたしますっっ!」

小動物的な本能でアデルの不快感を見抜いたのか、
イルフィーダは意味も解らずに頭を下げて謝ると、脱兎の如く其の場から逃げ出した。

「(同じ八姉妹の同僚に様付けとは……情けない奴め。あれでは従者か何かではないか。
  全く……落ちも落ちたりだ。あの名家がな)
執筆者…is-lies
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