リレー小説4
<Rel4.リヴン1>

 

  火星、アテネ
  リゼルハンク社SP演習所。

 

緑髪の少年リヴンは苛立っていた。
その理由は、今特殊手錠をかけて引き摺っているこの男にある。
	三日前。
	「リヴン、例の『骨』の捕獲に行ってくれ。今、人手が割けなくてな」
	「…分かった」
	「とりあえず明々後日までにはアテネ第7研究所に届けていてくれよ。
    解っていると思うが…其の次の日が『スルトの日』だ。遅れるな」
	「…分かってる」
上司であるライズにこう言われたのが三日前。
そして、今日で三日目。期限切れでその『骨の男』を捕まえたのだ。
いかに自他共に認める無愛想な自分でも、
セイフォートの骨というある意味危険度最高クラスの男を捕まえたのだ。それは喜ぶ。
だが、それでもリヴンは苛立っていた。
まず一つ目に、やっとのことで捕まえたことをライズに報告しようとしたら、電話が繋がらなかった。
念のためライズの部下ヘイルシュメルにも電話をしたのだが、こちらも繋がらない。
他の誰かに電話しようとしても、他に電話番号を知っているのはペンギン太郎だけだ。
リヴンはこのペンギンが嫌いだった。
二つ目は、今引き摺っている『骨の男』がブツブツ呪詛を吐いていることだった。
「いい加減これ取れクソ餓鬼今なら半殺しで許してやるから」
「あー、五月蝿い」
「五月蝿いとはなんだこの野郎ぶっ殺すぞオイ」
一気にベラベラ喋る『骨』を無視して、リヴンはアテネ第7研究所に向かって歩き続けた。
ようやく辿り着いた研究所だが、なにやら様子がおかしい。人の影も形も無い。
「………なんだよ、コレ」
リヴンは慌てて地下への階段へと向かった。
どうやら探しているものは地下にいるらしい。
『骨』はその腕に手錠をはめたまま、何となくリヴンについていくことにした。
地下への階段を降りていくと、地下八階あたりで長い廊下が現れた。
そして、沢山の格子も見えてくる。
そのうちの一つで、リヴンの足が止まる。
それを覗き込むと、長い緑髪を持った少女が、ボロボロになって死んでいた。
「こりゃあどう見ても頚動脈に傷がついて死んでるなぁ。
 多分鞭にトゲでもついてたんだろーな。(あのペンギンの仕業だな、絶対)」
『骨』が陽気に分析する。
「妹か?似てるねぇ」
「………ああ」
「まぁ、あの人間じゃねー奴が殺したんじゃないだろーな」
「…………そうみたい、だな」
「他にも牢屋ん中で死んでた奴が多かったな」
「………どうすれば…いい?」
「知るかよ。俺に聞くな」
「俺は…兵器として育てられて…リオが人質だって言われて…
 それで…リオが解放されれば…いつでも裏切ろうとしてた…」
「ふーん。まぁ、俺には関係ねぇな。つーかこの手錠とれよ」
「…クク…」
リヴンの口から、笑い声が漏れる。
そして、笑顔で『骨』の方に向いた。
「…ってことは俺は自由か!はは!妹が死んで何が自由だよ!」
「知るかクレイジーヘッドが」
ふっ、とリヴンの表情が、無くなる。
「そうか…俺、狂ってたんだな…はは」
「だから知らないっての。さっさと手錠とれ」
「嫌だね」
突然、リヴンは嫌な笑みを浮かべた。
「…はい?」
「面白そうだからこのままにしておこう」
「…」
本当に、面白そうにリヴンは笑った。 
執筆者…夜空屋様
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