リレー小説4
<Rel4.プロフェート1>

 

   コリントス中部、法皇庁舎

 

法皇代理となった元大司教…サミュエル・スタンダード枢機卿が、
清浄なる間へ篭った法皇との取次ぎ役として法皇庁舎内に居ついてから、
庁舎内に於けるSeventhTrumpet関係者の割合は日に日に増加していた。
誰の眼から見ても明らかな侵食であるが、
其れも法皇の命とあらば誰にも何も言えなかった。

正に独裁。

そんな法皇庁舎の一室で、と或る会合が密やかに執り行われていた。
部屋の中は電気を付けられておらず、
蝋燭の弱々しい灯火で幽かに闇より浮き彫りにされているのは、
円卓に着いた23人の男女だけであった。

 

「そうだ。この話はサミュエル大司教…いや、枢機卿にも秘密だ。
 場合によっては彼奴もこの件、一枚噛んでいるやも知れぬ」

「いや、枢機卿は我々の側だろう。
 …我々ほど積極的に動かぬにせよ前教祖様の教えを守っている」

「さて…どうでしょうかアウストリ卿…
 サミュエル枢機卿は我々を毛嫌いしている印象があります」

「とはいえサミュエルが火星帝に肩入れする様な事はあるまい。
 寧ろ逆だ。表向き反抗はせんが…場合によっては火星帝をも敵に回す覚悟がある。
 そうだろう?上祐」

彼等の話題は少し前に起きた火星衛星異常の事件と同時に発生した或る拉致事件のものであった。

とはいえこの事件は表沙汰にはなっていない。なる筈がない。
古代火星文明の遺産『守護者』と、偶然そのマスターとなってしまった少年を、
火星帝国立ロボット技術研究所が拉致した事件など表沙汰になる訳がない。
併し彼等にとっての問題はそんな事ではなかった。
火星帝へ古代火星文明の情報をリークし、
更にこの拉致事件を唆した存在がSeventhTrumpet内部に存在するという事だ。

「火星帝への連絡の形跡、火星帝が古代文明の遺跡の発掘を積極的に始めた次期、
 そして拉致事件ともタイミングが一致する。
 誰がやったにせよ下っ端でない事だけは確かだが…
 ……余計な事をしてくれたものだ」

「何にせよ、まずはユダを炙り出さねばなるまいて。
 ワシはやはりサミュエルが臭いと睨んでおる…彼奴の言う『御使い』…」

「……うむ、サミュエルにも御使いとやらにも探りを入れるか。
 もし『御使い』が火星帝国と繋がっているのだとしたら排除せねばなるまい。
 このままでは火星帝国のパワーバランスが突出してしまう。巧く調整せねばな」

「…神は暇潰しの見世物を要求しておいでだ。
 そして結果の解らないゲームが一番好みであらせられる」

SeventhTrumpet本来の教義…
到底表向きには出来ない教義の為の集まり…
其れがSeventhTrumpetの司教・大司教でもって構成されたSeventhTrumpet評議会…
通称「プロフェート」であった。

「………現状では火星帝国が有利過ぎる。対抗馬を育てねばならぬが…候補はあるかね?」

「そんなもの聞くまでもあるまい。アメリカだ。
 伝も武力も申し分ないし、何よりも表向きどう言おうと反火星。
 未だに地球はアメリカ権力の…」

「其の地球も破滅現象の為に崩壊の危機にある…という設定だろう?
 勘付かれるのは厄介だ。アメリカとの接触には細心の注意を払うべきさ。
 アメリカの中のSeventhTrumpet信者を使うなり何なりしてな」

其処でプロフェートの一員、司教の老人が挙手をする。

「ああ、其れについてはワシに一任しては貰えぬか?
 ……明日、アメリカの要人とパルテノンで会う事となっておる。
 幸いアメリカは八姉妹の結晶捜索に力を入れとる…
 神具発掘の為と言って協力を申し込めば何の問題もない」

「明日にパルテノン?…ああ、確かチャリティライブが開かれるんでしたね」

「だがまぁそういう事ならばアウストリ卿にアメリカを任せよう。
 だが火星とアメリカだけでなく更に捻りが欲しいところでもあるか…
 神へと捧げる終末の日…決して無様なものは作れまい」
執筆者…is-lies
inserted by FC2 system