リレー小説4
<Rel4.ムーヴァイツレン1>

 

  アテネ、国際連合第三庁舎前

 

今後の方針確認を終えたドイツ首相ムーヴァイツレンは、
隣にポンチョ姿の怪しげな男を伴い、黒塗りの高級車へと乗り込む。

「いやぁ…散々だったみたいですなぁ…」

「正気を疑わざるを得んよ…
 しかも今度は国連脱退と来た」

話題はつい先程通達されたベルトンの国連脱退。
脱退そのものについてムーヴァイツレンはこれで良かったとも思っていた。
ベルトンの傍若無人振りを身を以って知ったのだから無理も無い事だ。

「併しベルトン…何ですか、最近エラく高圧的じゃありませんか。
 何かあったんですかね?閣下は何か御存知で?」

「何も。
 全く…議長にも困ったものだ。
 あんな弱小の新興国家が増長するのも元を糺せば」

「未だベルトンの事をイギリスと呼ぶ人が大半ですからなぁ。
 ていうか自国民の中でも浸透し切ってないんでしたっけか?
 デリング大統領も甘やかしが過ぎたって事ですわええ。
 ま、解らん事もありませんが…
 もう50年も前のものに未練たらしい事です」

ベルトン国は、第三次世界大戦の最初期に能力者側の奇襲で崩壊したイギリスで、
現ベルトン首相ディノラシオールの一族が主導して建国した新興国家である。
其の後は各国…特にアメリカがベルトン支援に熱を出した。
また、様々な人材が派遣され、後のベルトンに於ける多民族性を生み出す事となる。
第四次世界大戦後、アメリカ合衆国の臨時大統領であったトールマンに代わりビンザー・デリングが大統領となり、
彼もまた先代大統領と同じく…否、其れ以上にベルトンへの支援を強化したのであった。
何故、其処まで……という疑問は誰も抱かない。
かつてのベルトン、いやイギリスには『神』が存在した。
この『神』には予知や瞬間移動を初めとする数多の超々能力があり、数々の大国が其の恩恵に与った。
アメリカとて其の例外ではない。マフィアのような非合法組織すらも例外ではない。
これらの恩恵は莫大な金によって国家人種民族宗教主義を問わず与えられ、
この金によって『神』は更に大きな力を得たのだった。
引き抜きは様々なところから幾度も行なわれたが、何れも失敗に終わっている。
強硬手段に訴えようとした輩もいたが、全て返り討ちの憂き目に遭った。
50年程前から「力が薄れてきた」とだけ言い残して引き篭もり誰も相手にしなくなったが、
其れでも各国は『神』のいる地としてイギリスを特別扱いして来たのである。

『神』の名を『ベイルス家』という。

執筆者…is-lies
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