リレー小説4
<Rel4.神野1>

 

  火星、コリントス南部

 

イオルコスに用意されていた転送リングを使ってコリントスの砂浜に着いた時には
既に黒い天幕は消え失せ、火星の朝が始まろうとしていた。
骨の男…
神野緋貝、血の少年…リヴン、人質の少女フレーグの3人は、
組織の者の導きに従い海辺の廃教会へと進んでゆく。

「そうかい、お前もSFESとの縁があったんか。
 …改めて考えるとあの組織、随分と触手広げてたんだな」

フレーグの手を引いて先を行く神野が会話しているのは人質のフレーグ本人であった。
取り敢えずは会話が可能な程度、フレーグも落ち着きを取り戻している様である。

「…あまり見られない特殊なタイプの力を顕現させる可能性があるからと…
 其の御蔭で色々と支援をして貰っていた訳ですけれど…」

言うまでも無い事だがフレーグは戦闘に長けている訳ではない。
唯単に潜在的な能力者反応が陽性だったというだけのアイドルに過ぎない。
多少物珍しい能力であったとしても、其れだけで支援など酔狂にも程がある。

「まぁた『力』か。
 
…我等が信ずるは力。我等がナントカは力。我等がナンタラは力…
リヴンが曖昧な記憶からSFESの教義を掬い取って呟いてみせる。

「あー懐かしいな。其れ。ってかうろ覚えかよ」

「君も同じでしょ。
 別にSFESの主義主張に共感して入ったクチでもないんだから」

組織SFESの「力への執着」は偏執的を超えて物狂いの域に達していた。
そして其の「力」というのは結晶能力に限らず、身体的な力、権力、知力…
凡そありとあらゆる「力」を、傍目からは不必要と思えるほどに掻き集めていた。

(其れでもあんなアッサリ滅んじまったんだから不甲斐無ェもんだ)

執筆者…is-lies


廃教会の教壇に座っていたのはグレッグ・サマーズ…
詰まりは今現在のリヴンを手駒に置く裏社会の王者である。
リヴン達の到着を確認すると芝居掛かった様、大仰に拍手して見せる。

「よぅ、何とか逃げ延びたみたいだな。最新の武装ヘリを乗り捨てなんて贅沢な奴等だ。
 んで、そっちのお前が神野緋貝か。
 お前も俺様の傘下に入れ。なぁに…リヴンと同じ元SFESだし優遇してやるよ。
 ……ところで…この小娘は?」

「ただの人質。特に襲撃も無かったし無事に合流出来たし…もう要らないケドね」

「あのなぁ…だったら途中で捨ててけよ」

「うん、世間話してる内に忘れてた」
あっけらかんと言うリヴン。
神野にしても特に気にしてはいなかったようで、グレッグは溜息をつく。

「ったく、しゃぁねぇな…此処で始末しとくか」

執筆者…is-lies
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