リレー小説3
<Rel3.月アルカトラス2>

 

 

「オーイ、此処には何も無さそうだぜ?」
「…戻るぞ。何処かに別の通路がある筈だ」
ゴレティウに言われるまでも無くグレナレフは其の場を後にする
「ちょ…待てってば!お前、早過ぎ……くそっ、苦しいぞ」
ヨロヨロと付いてくるゴレティウを尻目に、
鬼気迫る表情で駆け出すグレナレフ。
兎も角、隠し通路を探し出さなければ話にならない。
歩きながらも手の中の鍵束と睨み合いを続ける。
通路を発見するまでにパスワードの目星を付けていなければならない。
鍵にパースワードが隠されているであろうという発想は悪くないかも知れない。
こんな鍵束にカードキー…第一印象からの違和感ではあるが、
可能性としては決して低くはないし、考えを煮詰めているような余裕も無い。
「…問題は………」
鍵は鉄製のリングに括り付けられており、
鍵そのものの順番やらには意味が無いと見ても良さそうだ。
併し其れで居てパスワードを検出出来るようなもの…其れが一体何であるのか…。
其々の鍵やカードキーを見ても順番やらが解る様なものは無いし、
パスワードそのものに順番を示唆するものが含まれているのか、
或いは順番など必要の無いパスワード入力になっているのか…
何にせよパスワード入出力の機構を見付けられない事には話にならない。
「デブ、何か見付かったか!?」
「ん…いや、全然……あ、あれは」 
「………扉…か。いや、これはアタリか?」
厳重にロックされた扉の横にあるのはパスワード入力の装置。
出力面には10桁程の明きがあり、キーがヒントになっているという線が強まる。
普通ならば此処からキーの謎を解析しようという流れになるのだろうが、
生憎とそんな悠長な事を言っている程、時間的な余裕は無い。
何よりもグレナレフという男はそんな面倒な事を必要としない力の持ち主でもあるのだ。
装置から記憶を引き出しパスワードを探るなど、
サイコメトラー・グレナレフにとっては造作も無い。
写真を撮ってオシマイである。
「よぉし……パスワードは『OPENSESAME』だ!」
淀み無く軽快にパスワードを入力していくグレナレフ。
だが一方のゴレティウはパスワードが間違っているのではないかと、
心配げに少々離れたところから様子を窺っていた。
自身にパスワードが解らないのに、グレナレフがあっさりと入力を進めたという事…
其れに生来の気弱さも混ざっての事かも知れない。
「な…なぁ、どうしてパスワード解ったんだ?」
「勘だよ」
別にゴレティウに能力を教えてやる必要は無いと適当に答える。
実際にはディンプルキーが表していたモールス信号を解読すれば出るパスワードだったのだが。
入力を受け付けロックが解除された。
自動で開いた扉を潜り抜けると、先程までの息苦しさが多少安らぐ。
どうやら先程のところよりは人の出入りがある様子だが、
其れでもまだ長く居られる様な所ではない。2人は足早に奥へと急いだ。
執筆者…is-lies

「ではリゼルハンク本社まで行って参りますわ」
「うむ、ああ…総裁殿に宜しく言っておいてくれ。
 私も今やSFESの権力者…
 総裁殿に付いて行けばもっと甘い汁を吸えるぞ!
 フォードゥンも啜ってみたくはないか?」
「ホホホ、実に魅力的ですわね。
 ワタクシもSFES側につくのが賢明と思っていましてよ」
連れて来られた素体達をコンテナに入れ、
小型航宙機のカーゴルームに積み込みロックも掛けた。
後は航宙機の最終点検を終えて搭乗し発進するだけ。
其の間、暫しの歓談に耽っているのは、
月アルカトラス刑務所長のダーイン・ヘル、
生体兵器開発組織LWOSの副所長ジェールウォント・カディエンス、
そして其の部下であり航宙機の警護役を任せられたフォードゥン・アーカーレフだ。
乗員は哀れな素体達とフォードゥンだけ。
オートで火星のリゼルハンク施設に到着する様、航宙機にはプログラミングが為されており、
最低限の人数での輸送計画となっていた。
…しかも乗員はジェールウォントが信頼する部下1人。
組織LWOSが、組織SFESの隠れ蓑であるリゼルハンク社の傘下に収まったのはつい最近、
従順そうに振舞ってはいるものの、反SFESの感情は根強く残っている。
そんな連中にこの依頼を失敗させられて、SFES総裁からの評価を落す訳には行かない。
其の辺りを注意し、親SFES派のジェールウォントは慎重に事を進めていた。
「さて…長居が過ぎましたね。
 そろそろ私は刑務所まで引き上げさせて貰います」
「おお、御気を付けてダーイン殿。
 航宙機の発進準備も整ったし、宜しく頼むぞフォードゥン」
ダーインが退室すると同時に、フォードゥンが航宙機へ乗り込もうとする。
執筆者…is-lies

グレナレフとゴレティウは、ダーイン達が歓談に浸っていた其の場所に居合わせていた
ジェールウォントも先程、退室してしまった。
彼らはいくつか機材が山積みになっている場所、そこに隠れている。
(で、どうすんだよ!?もうすぐ発進しちまうぞ!?)
ゴレティウが焦る。事の次第を知らない彼は単に、脱獄しようとしているのだと思っているのだ。
(静かにしろ。…そうだな)
グレナレフはしばらく考え、横を見る。
丁度物陰に隠れつつ、高いところにある場所…。
彼の能力は隣の強制的に注目されちゃいます最臭兵器と、その場所で最高の条件がそろう。
(少し遠い、か。まぁ…大丈夫かな?)
躊躇っている暇は無い。
どうやらメンテナンスも終わり、カーゴルームに細身の男が入ろうとしている。
一瞬の判断。グレナレフは、
ゴレティウを思いっきり蹴飛ばした。
「なああああぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
思いっきり床に転がり、その弾みで強烈な臭いが発生した。
もちろん強制的にゴレティウ臭に注目してしまうフォードゥン。
グレナレフはすぐに高めの場所で物陰になる場所に行く。気付かれていない。
そしてすぐにカメラを構え、何度もシャッターを押した。
すぐにその行動の意味は、彼の能力によって明らかになる。
床に転がったゴレティウは、自分を蹴飛ばした犯人を捜そうとするが、
その前に自分の腹に、誰かの脚が喰い込んだことに気付いた。
その、自分を踏みつけている青年には、見覚えがあった。
「ゲッッ…忌梨(きり)…」
この黒髪の青年は刑務所内では有名だった。
何でも掌でビルを吹き飛ばした能力者らしい。
「いやー、僕って有名だね。君みたいな変態すら僕を知ってるなんて、ね」
忌梨は明るい口調で言うが、その脚はさらに腹に食い込む。
フォノゥの姿もある。
(ふぅ、気付かれなかったみたいだな。
  あばよゴレティウ。もう少し活用できそうだったがな。
  …さて、と)
グレナレフの手元の何枚かの写真が、同じ風景のハズなのに様々な人物を写していった。
それを見て、口元が歪む。
(さて…次はどうやって脱獄するか…
  いや…待て……落ち着くんだ。
  …ハウシンカの奴を探しておかないと……
  依頼を受けたのは飽く迄ハウシンカだし、
  このまま置き去りにしてく訳にもいかないか。
  フフ、我ながら現金なもんだよなミラルカ…
  あれだけ脱走する気無かったってのに、
  今じゃ航宙機を一目見て、こんな逸っちまうとは)
それに先程、航宙機を写した写真には、
怪しげな男達と話し合うダーイン所長…
そして簀巻きにされたハウシンカ他数名の姿しかなかった。
このままではまだまだ証拠不十分である。
早々にハウシンカとコンタクトして情報を仕入れ、
よりはっきりとした証拠を掴まなくてはならないだろう。
写真に写っていた事から見ても、
ハウシンカがこの辺りまで連れて来られたのは間違いないとして…
問題は其の後、何処に運ばれたか…である。
撮った写真を捲りながらハウシンカの軌跡を追うグレナレフ。
そして見付かったハウシンカの行き先とは…
「オイオイ……戻れってかぁ?」
ゴレティウを蹴り飛ばした辺りであるところの航宙機カーゴルーム入り口だ。
執筆者…夜空屋様、is-lies

ゴレティウを踏み付けていた筈の忌梨だが、
其の悪臭を前に平然としていられるものでは無い。
直ぐに危険を感じてほぼ反射的にゴレティウより飛び退くが、
至近距離で嗅いだゴレティウの悪臭は、忌梨の冷静さを奪い取るに十分足りた。
「っ……こいつぅ…!」 
不愉快な腐臭の根源を消し飛ばすべく、
忌梨は片手で鼻を摘まみつつゴレティウへと駆け寄ろうとする。
ゴレティウも捕まってなるものかとドテドテ走って逃げようとするが、
デブ故のノロさで距離を詰められる一方。
能力であるところの超体臭でも、
既に警戒されてしまった今、そうそう通用したりはしない。
あっさりと追い付かれる。
「ち、畜生!」
「悪いけどさっさと寝てくれるか?」
忌梨の手がゴレティウの体に触れた瞬間、
ゴレティウの巨体が錐揉みしながら吹き飛び、
室内にあったコンテナへと衝突する。
体脂肪の鎧で護られたゴレティウの肉体にはそう深刻なダメージは無いが、
其のあまりの衝撃故に、ゴレティウの意識は一時的に途切れてしまった。
「あー…やっちまったか?
 …くそ……ヘマかましやがって…」
能力の発動が停止した事を確認し、
ゆっくりと油断無くゴレティウに近付く忌梨。
其のすぐ隣で待機していた航宙機の扉が開き、
フォードゥンが顔を出す。
「ホホホ、侵入者ですか。
 まあ…もう捕まえたみたいですが。
 忌梨さん、フォノゥさん、お疲れ様ですわ。
 其の生ゴミは侵入者として警備員に引き渡して下さい」
「あいあいさー。
 心配は要らないからフォードゥンさんは航宙機を動かすのに専念して下さい。
 発進遅れさせたら後で俺達が所長に油搾られそうなんで」
「ホホホ、其れは大変で御座いますわね。
 では遅れ分を取り戻す為、直ぐにでも出発致しますわ」
雅やかに笑いながらフォードゥンは航宙機の中へと戻って行く。
ダーインが残していった護衛囚人達によって侵入者は捕まえられた。
これから先はLWOS警備室の仕事である。
もうすぐ火星へと飛び立つフォードゥンが気にする事ではない。
其の判断が間違いである事に彼が気付くには、
少々、忌梨やフォノゥ等との付き合いが短過ぎた。
「……行ったか……全く、もう少しスマートにいけないもんかね」
小声で呟くフォノゥに、ゴレティウを担いだ忌梨が不服そうに突っ掛かる。
「そもそも相手を間違えてるんじゃないの?
 こんな簡単に見付かる様な奴等を出しても碌な事にならないと思うけどね」
「無駄口叩くな。
 オマエはオマエの仕事をすれば良い」
執筆者…is-lies

グレナレフが航宙機のカーゴブロック扉前まで来た時には、
既にゴレティウの姿は無かった。速攻捕まってしまったのだろう。
「やれやれ…まあ良いか。見張りは居ないし、入り込むなら今の内っと」 
グレナレフは素早くカーゴブロックに飛び乗り、
コンテナの影に身を潜めながら、扉の外に誰もいないのを確認した。
ゴレティウが捕まったことで警備兵達も解散したようだ。
フォノゥ達がそうさせてくれたのだろう。
しかし、彼等が誤魔化してくれたとしても、
グレナレフという囚人が一人行方不明なったことが発覚するのも時間の問題ではある。
(すまねェな、フォノゥ、忌梨、ゴレティウ…
  俺が上手くやれば、アルカトラスも少しはマシになるかもな。
  …まぁ、アイツら犯罪者には変わりないけど…)
カーゴブロックの扉がゆっくりと閉じ、
真っ暗になった室内に、シューっとエアパッキンが加圧される音が響く。
気密性が確保されると同時に航宙機のエンジンに火が入った。
グレナレフはコンテナにしがみついたまま加速に耐え、
間も無く、その体は重力から開放された。
(さぁて、行き先は火星か…
  このまま火星に着いてしまえば、法王の計画どおり…
  だが、こっちの証拠も揃ってる、この船の中にな…
  ルークフェイド…、ハウシンカも俺もここにいるぞ。
  今この船を抑えればいいんだ。
  …って、こっちの状況を解るハズがないか、どうするつもりだ?
  チャンスはそう多くはないぞ…)
執筆者…is-lies、Gawie様

「チャンスは、そう多くはない…」
アルカトラス月面刑務所より、火星側に約1000万km離れたスペースダスト群―――
戦艦二隻と十数機の機動兵器で編成された艦隊が息を潜めるように静かに停泊していた。
そのレーダーに映る一つの機影が艦隊の前を過ぎ去る。
戦艦のメインブリッジで指揮を執る若い司令官はモニターを眼で追いながら言葉も発せず、
互いに識別コードを送受信しただけで、艦隊の哨戒機も微動だにしないまま、その機影を見送った。
「…今のは?」
「LWOSの輸送船ですね
 予定より3分遅れか…」
「3分遅れ……」
「航宙機が5,6分遅れるのは普通ですが、
 LWOSに限って言えば……」
(アルカトラス…
  それなりの金さえ払えば入るのは容易いが、
  受刑者に対して僅かでも脱獄を仄めかすような事をすれば、
  即座に囚人と同等の扱いを受けることになる…
  あの手紙だけでも十分に危うい… あれから5日…
  手当たり次第では、奴等も警戒を強めるだけだろう。
  チャンスは多くとも三度…
  僅かなサインも見落とせない……)
「RR殿、私の『勘』も、
 今のが賊だと言っていますが」
「その勘がハズれれば、まず軍法会議は免れませんよ?」
「承知しております。
 ですが、貴方に迷惑をかけることはありませんよ。
 悪い意味で言えば、
 我軍もようやく優秀な能力者の獲得に乗り出したと言った所です。
 でなければ、A+プロの要請と言えど、一国の軍が極秘に動く事などありません」
「助かります。カーリュオン中佐…」
互いに含みのある遣り取りを交わした後、
カーリュオンと呼ばれた若い艦隊指令は静かに命令を下した。
「ヴァリアント全機、
 LWOS所属機を拿捕せよ」
命令と同時に、十数機のヴァリアント宇宙戦用装甲が、まるでプログラム制御されたような動きで飛び立つと、
ものの数分と経たない内に先程のLWOS輸送船を捉えて戻って来た。
「フランス宇宙軍、クライム・フォン・カーリュオンだ。
 貴船の所属、行先、目的を述べよ」
《…識別コードを確認していなかったのですか?
 機体のLWOSの文字が見えないですか?》
「近頃そういう名を騙った賊もおりまして…
 念のため積荷を調べさせていただきます」
《そ、そんな、企業秘密ですよ。一体何の権限で…》
「海賊退治、保安のためです。
 先日、我艦隊は正体不明の攻撃を受けました。
 その調査でもあります。
 勿論、航宙法に則り其方の機密は保障致します。
 LWOSと言えど、無条件に拒否できる特権はない筈ですが?」
《わ、分りました。
 本部に連絡を取りますので、お待ちを…》
通信の声を聞いただけでも、相手の焦り様が伝わってくる。
実際、LWOS輸送機を一人で任せれていたフォードゥンは5分もの間言葉を失っていた。
軍隊は便利に動いてくれる唯の駒、それくらいにしか考えていなかったのだ。
権力を妄信していたこの男にとって、武力を突き付けられる事など全くの想定外だった。
執筆者…Gawie様

(フランス軍だと……
  我々に資金援助も出来ないようなフツーの国じゃないか。
  忌々しい、本物の力というものを知らないから偉そうな事が言えるのだ。
  しかし、とは言え、これはマズい、マズいぞ…
  落ち着け、落ち着け……
  オートパイロットの異常は本部にも伝わっているハズ…
  そうですよ。やはり今すぐ本部に連絡を…
  いや、ダメだ。通信を傍受される可能性が高い。
  囚人とは言え人身売買が明るみなれば…ワタクシは…
  これはワタクシの失態…?
  違う! ワタクシには何の責任もないハズだ。
  責任は所長にある。
  だがこの場合…所長なら………)
どうにか責任逃れを考えるフォードゥンだったが、
権力の理不尽さが、彼自身の最悪の結果を想像させてしまった。
揉み消されるのは自分かも知れないという事を。
(や、やるしかない……
  戦艦二隻ならこちらの方が足が速い。
  回りの人型も航続距離は精々数百キロ。
  逃げ切れさえすれば…逃げ切れさえすれば……)
震える手で輸送機の操縦をオートからマニュアルに切り替え、
フォードゥンは無謀な決断を下した。
執筆者…Gawie様

 

「そろそろ返答を頂けますか?」
カーリュオン中佐は砲塔を向ける合図をしながら催促する。
《…了解しました。
 今コンテナを開けますので好きなだけご確認ください》
そう言うと同時に、フォードゥンは積んでいたミサイルを全弾放出し、一気にブースターを吹かす。
だが、フォードゥンにナメられるほどフランス軍のヴァリアントの性能は悪くはなかった。
ミサイルの不意打ちをものともせず、あっという間に距離を詰め、フォードゥンを取り囲み、その照準に収めた。
《ま、待て!投降する!》
(…力を得ることで見失ったか…
  自分がどれほど危ない橋を渡っているのかという事に気付かない…)
「RR殿」
「はい、コクピットのみを破壊し、コンテナは回収してください」
「やれ」
《ワ、ワタクシがぁ! こんなことで!!
 うわぁぁぁッ!!!!
 …………………………………………………………………》
フォードゥンの最後の言葉は、規則正しい爆撃音にかき消された。
「被害状況を報告します。
 目標からのミサイル攻撃により、
 ヴァリアント1機が中破、3機が小破。パイロットはいずれも軽傷。
 本艦も右舷装甲を一部損傷しましたが、航行に支障はありません」
「よし、修理はしなくていい。
 『演習中に所属不明機を発見、拿捕したが、
  攻撃を受けたのでやむを得ず撃墜した』
 本国にはそう伝えておけ」
「LWOSの方は、いかかがなさいます?」
副艦長のヴァサロ大尉としても、被害状況よりも、
やはりLWOSへの対応が気になるようだが、
「こちらからは何も言う必要はない」
カーリュオン中佐はさして気にする様子もなく、淡々と指示を出した。
何も言う必要はないと言うより、LWOSの方こそ余計な事は言えないだろうと確信していた。
「コンテナを収容しました」
「よし、私が行くまでそのまま警戒。
 ヴァサロ大尉、ブリッジを任せる。私は格納庫へ向かう。
 グランハルトにも伝えてくれ。
 では、RR殿…」
RRことルークフェイドも、カーリュオンとはそこまで打ち合わせをしていた訳ではない。
会うのもこの作戦を持ちかけた時が初めてだった。
『上には後で話を通す』と言って、二つ返事で依頼を引き受けてくれたカーリュオンを、ルークフェイドも一目で信用した。
指揮も的確。仮にLWOSが今後何か圧力をかけて来たとしても一切の弱みも見せないだろうし、
ルークフェイド達の目論見に無理に加担する事もしないだろう。
単に破滅現象の対抗策だけに止まらない各国の急な軍備増強の裏に、
LWOSに対する彼なりの先見もあったのかもしれない。
軍人にしては珍しく、実直さとしたたかさを兼ね備えた彼は、ルークフェイドに好印象を与えたのだった。
執筆者…Gawie様
二人が格納庫に到着すると、
すでにもう一人の艦隊司令がそこに待ち構えていた。
「解り易い相手で良かったな、クライム」
今度の相手であったLWOSのフォードゥンを解り易い相手だったと笑ったのは
グランハルト・フォン・ベーゼルアイス中佐だ。
「LWOSとやらがあんなのばかりだと助かるな。
 ま、直接コトを構えるつもりはないが…」
「まだ油断は出来ない。
 狙撃班構え!
 ゆっくりハッチを開けろ」
兵士の一人がコンテナのハッチをそっと開き、狙撃班が一斉にそこへ照準を合わせる。
「ハウシンカさん、グレナレフさん、ご無事ですか?
 ルークフェイドです」
ルークフェイドの声に応え、コンテナの扉から男が一人顔を覗かせた。
「ル、ルークフェイドか…?
 ここは、どこだ?」
その男の声を聞いて、二人の艦隊司令は今100%作戦が成功したことを確信し、
凛とした表情に初めて安堵の息が零れた。
直に狙撃班を後退させ、二人はコンテナに歩み寄る。
「フランス軍、
 クライム・カーリュオン中佐です」
「同じく、
 グランハルト・ベーゼルアイス中佐です。
 我軍は貴方を保護します」
二人とも、『フォン』という仰々しいミドルネームを省略し、簡単に自己紹介を済ませた。
「はじめまして、グレナレフ・オールブランさん。
 ルークフェイド・リディナーツです」
「アンタがルークフェイドか、若いな、
 もっとオッサンかと思ってたぜ」
「ハウシンカさんもご一緒ですね?」
「中のカプセルの中だ。
 大人しく寝てるから起こさなくてもいいぜ」
カーリュオンの合図と同時に兵士がコンテナ内に入り、
ハウシンカと、他数人の素体が眠るカプセルを運び出してきた。
「LWOSがアルカトラスの囚人を何かに利用していたのか…」
「LWOSに限ったことではないだろうがな…
 キレイな組織などありはしない。
 我軍とて、例外ではないさ…」
「カプセルは全部で7体。
 その内1体は、これはどう見ても死んでいるようにしか…」
「それはモニカの遺体だ…」
「モニカ?
 まさか、モニカ・ザ・マッドカタファルク?」
「あぁ、死体にまで価値があるとは思えないが…
 なぁ、司令官さんよ。頼みなんだが…
 このモニカの遺体は…このまま宇宙に葬ってやってもらえないか?」
「…分りました。
 生存者のカプセルは医務室に運べ。
 コンテナ内の調査が終わり次第、再び宇宙空間に投棄し、主砲で全て破壊する」
カーリュオンはグレナレフの頼みを即答で承諾した。
グレナレフに対して心情的なものもなくはなかったが、
LWOSに対しての証拠隠滅が第一の理由でもあった。
他に生存者がいないか確認した後、モニカ一人を乗せたコンテナを排出し、
カーリュオン艦隊はその空域から離脱しながら、コンテナに主砲の集中砲火を放った。
「作戦終了。
 これより本艦隊はフランス本国へ帰航する」
執筆者…Gawie様
 
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