リレー小説3
<Rel3.統合編 傲慢なる塔の崩壊>

 

『その日』に合わせ、
リゼルハンクに総力戦を仕掛けようとするセレクタメンバーはアテネ某所に集結していた。
「いよいよ、明日かぁ…」
「警察も軍も、まだコレと言った動きもありませんし、
 本当にやるのでしょうか?」
「その動きが私達に知られるようじゃダメだけど、
 それにしても、ちょっと静かすぎるわよね」
先日の白き翼との接触の後、
今まで慎重な作戦しか執らなかったユニバースは、
一転して、リゼルハンクに総力戦を仕掛ける決断を下した。
フェイレイ、シストライテ、レシルの三人は静かにその時を待っていた。
ただ、一人浮かないのはフェイレイだ。
元SFESである彼女を縛っているのは、置いて来た弟トキオの安否だった。
「私ね。弟がSFESに捕まってるの…
 戦いになったら、どうなるか……」
「……………………」
(アタシだって…
 アズィム…いるし…)
力で抵抗できるならとっくにやっているのだ。
セレクタがSFESと敵対するのにはメンバーそれぞれに複雑な理由があった。
それこそフェイレイにとっては、ユニーバース達の言うような因縁めいた動機などはどうでもよかったのだ。
「ね、フェイレイ。
 抜け駆けしちゃおうか?」
ここに来てシストライテが、無茶な提案をする。
彼女の思惑は兎も角、心遣いはフェイレイもありがたいと思った。
だが、そんな独断が許させるわけはない。
フェイレイは諦めて、首を横に振った。
「それはいい考えだな」
と、話を盗み聞きしていたGブリテンとガウィーが話に割って入った。
「抜け駆けとはいい考えだ。そうしよう。
 いいな、ユニバース」
「いいですな。そうしましょう。
 セレクタは今から作戦開始。
 既にごとりんさんは地上で待機しとります。
 我々は、地下から、軍、警察より先にリゼルハンクに攻撃を仕掛けます。
 人質をとられる前に、抑えましょう」
「い、今から!?」
「そう、今から直や」
「うわ〜
 って、エーガとかはどうするの?」
「元の連絡先には伝えてある。
 来たきゃくるだろうさ」
「ほな、いきますか。
 セレクタ総力戦や」<Rel3.tougou-s2>
執筆者…Gawie様

「とまぁ、そう言いましても…真正面からやり合う訳にもいきませんからなぁ、あっはっは」
行く手を遮る金網をバーナーで焼き切りながらユニバースが笑ったのは。
リゼルハンク本社から1km程離れた下水道の中であった。
其の背後に控えるセレクタの面々の表情は、この暗い下水道内に於いて尚暗い。
「…ありゃバレた…って事か?」
「そりゃありませんなぁ。
 もしバレてると仮定するなら…ワシがネークェリーハだったら即逃げますわ。
 こんな表立って動いたりはしないでしょ、意味無いし」
数十分前、リゼルハンク本社周辺にSFES最大戦力であるレギオン部隊が集合。其のままアテネ中に展開し始めたのだ。
仰々しい兵器を持ち出している訳でもなく、単にセンサーを広げただけだろうが、其れでも強襲難度が一気に跳ね上がる。
「…ごとりんさん、リゼルハンク本社ビルに何か動きありますか?」
《いいや、今のところは何にも。静かなもんじゃ。
 ヘリポートにも動きはないぞい》
「ユニバースさんの言う事も尤もですけど、レギオンが時間稼ぎだとしたらどうです?
 瞬間移動能力者や転送リングを使用してもう逃げてるかも知れませんよ?」
「あのチキンにそんなアナログなもん使う度胸あるとも思えませんがねぇ。
 第一、脱出用に整備された転送リングがあったとしても…転送防止用の結界ありますからな。袋のネズミですわ」
「なら、レギオンの展開は…SFES連中にも何らかの事件が起きた…という事か?
 併しタイミングが良過ぎるぜ。やはりバレたんじゃないのか?
 ネークェリーハにまで話がいかず、強襲を察知した一部が勝手に脱走…とかな」
「何にせよレギオンが当面の障害になるのは間違い無いでしょうね。
 SSを投入される前に早く抑えたいというのに…」
「ボヤいてもしゃあありませんわ。ところで…地図からすれば……」
「ええ、後50mも行けばデジタルバタス社の真下に出ます」
下水道の地図を取り出し、現在位置を指し示しながら説明するレシル。
これよりリゼルハンク下部組織の手の内へ入る事になる。
其のまま何事も無く通り抜けてリゼルハンク本社に行ければ良いが、
現状に於いて其れは流石に楽観視し過ぎと言わざるを得ないだろう。
「…さぁて…皆さん、此処から先…多分……いやぁ、確実にレギオン来ると思って下さい。
 分かれ道とか通気ダクトとかに注意を払うのは勿論、汚水の中や結晶反応にも細心の…」
「言ってる側からあったぜ。ほれ、ユニバース止まれ…お前の足元」
ビタミンNが顎で示したところには、糸らしきもの無数に張り巡らされていた。
其れは両脇のパイプで固定されており、更に下水道の奥や通気ダクトへと続き…
途中の空中にて途切れていた。
「…うわぁ…糸……ですか」
「しかも御丁寧に結晶能力使って透明にしてやがら。
 …こりゃユニバースの能力無ければ流石に引っ掛かってたかもな」
「切っちゃいましょか?」
「これが警報とかだったら厄介ですな。何とか切らずに進みたいものですが…」
糸が張り巡らされた前で立ち尽くす面々。
「・・・考えても仕方ない、進まないと始まらないぜ」
一歩前に進み出ながらビタミンN。
「それは・・・確かにそうだけどさ・・・」
未だ逡巡するレシルを見て、今までの沈黙を破ったのは珍しく前線まで出張ってきたガウィーであった。
「重要なのは糸じゃない、進むことだ。
 時間が経てば経つほど攻略は難しくなるんだぞ、一時もムダには出来ん」
その言葉に、なんとか全員納得出来たようだ。
「・・・とりあえず結晶反応はありませんしな、罠になってるかもしれませんがこの辺から切ってみますか」
ナイフを取り出しつつ、丁度1番通りづらい位置にある糸に
ユニバースが近寄る。そして、慎重かつ丁寧に・・・
糸を切った。
張り詰めれているという状態の支えを失って、糸は重力に身を任せだらりと垂れ下がった。
しばらく全員が固唾を呑んでその光景を見守っていたが、特に何かが起こる気配はなかった。
「・・・単純に足止めするだけの見せ掛け・・・か?」
「みたいね・・・。ホント、いらない時間を食わされたわね・・・。」
切れて虚空に垂れ下がった糸を恨めしそうに眺めつつ一行は再び進軍を開始した。
今までのタイムロスを取り戻すように、今度はより迅速に、そしてより慎重に。
ユニバースの能力無効化によって糸は丸見えであり、
無害とわかった以上それは蜘蛛の巣程度にしかならなかった。<Rel3.tougou-s3>
執筆者…is-lies、ぽぴゅら〜様
どれくらい進んだであろうか。
迅速とは言っても、ただの散歩と違い
周囲にあるもの全てに注意を払わなければならない以上、その歩みは寧ろ遅い部類に入る。
また、薄暗く外と離れている地下下水道では、時間間隔や距離感が減退してしまう。
かなり進んだようにも思えるし、全然進んでいないようにも思えてくる。
実際の所は漸くデジタルバタス社から数えて3つ目を通過しリゼンハルクも目の前に迫って来ているくらいであった。
が、その時、ヘリで空からの偵察を続けるごとりん博士から無線が入った。
≪そろそろ軍や警察も準備が整ってきているようじゃ。
 奴等の出動が何時になるかは流石にわからんから動き始めたら追って連絡するぞい。
 ・・・それから依然リゼンハルクの方にはやはり動きは見られんが・・・こちらも急いだ方がよさそうじゃ≫
「・・・了解」
《これ以上ヘリで上空を旋回するのは不自然で目立ちすぎる。
 こっちは次のポイントに移動するぞ。
 空からの偵察は終わりじゃ。
 後はお前等、しっかり頼むぞ》
「了解。急ぎましょう」
勇んだフェイレイがユニバースを追い越して前に出た瞬間、
その足に絡んだ糸の細い感触が弾けた。
「あ…ッ!
 また糸…!」
「気にするな」
「そう、気にせずブチブチ切っちゃって。
 私が後からバイパス繋いどくから」
セレクタメンバーが走り抜けた後から、
最後尾を務めるフルーツレイドが切られた糸を即座に繋ぎ合わせる。
現に、糸を切っただけでは今のところその場では何も起こってはいない。
「仮に糸が敵のレーダーだったとしても…
 なぁに、レーダーならこっちにもある。
 周囲500メートル以内に敵らしき人影はない。
 (広範囲に広げた煙では視覚聴覚機能はないが…
  後から…8人、9人か…?
  敵ではないな…やはりアイツ等も来たか…)
 問題ない。このまま進め!」
ガウィーがいつの間にレーダーを張ったのかは分らないが、
今になって言う辺り、それも隠していた能力の一つなのだろう。
今はそんな詮索している時ではない。
一向は更に歩みを速め、そして間も無く―――
リゼルハンクの敷地付近まで到達した。
そこから狭い通風孔を抜けると、大型車両も通れそうな広い地下通路に出た。
ついに、セレクタはリゼルハンクの敷地内にまで足を踏み入れたのだ。

 

「止まれ、流石にここまで来ると、見張りくらいはいるようだ…」
通路の奥から男女の話し声が聞こえてきた。

 

「納得いか〜〜〜ん!!!
 何故オレ様がこんな目立たない地下で地味な警備なんかやってんだ?
 きょ、今日重役会議じゃなかったっけ?」
「紅葉たち重役の警備なの〜」
「オレ様は重役会議に出席しなくても良いんデスカ?」
「重役とはぜんぜん無縁なの〜」
間抜けな会話からして一目瞭然だが、
一応、見張りのようだ。
「…流石に、一応見張りはいるようだが、どうする?」
「突破」
「異議なし」
全員異議なし。黙って頷き、
セレクタは見張りの二人が守る扉を目がけて一気に駆け出した。<Rel3.tougou-s4>
執筆者…ぽぴゅら〜様、Gawie様
…が、その二人の見張りの一方、男の方のリアクションは奇妙だった。
驚くでもなく、何故か嬉々と、チープなペイントを施した槍を構え、
セレクタの前に堂々と立ち塞がった。
「来たな!オレ様の読みどおり!
 こう見えても見かけによらず社交的なオレ様は一度見た相手の手配者写真の顔は忘れない。
 セレクタ!
 仕事もしねェで唯大きいモノに反発してみたいだけの社会問題の塊であるかのようなお前等!
 いつまでも中学生みたいな気分のお前等!
 これから、このエリート、孤高の戦士みつお様が社会の厳しさというものを…
 教えてやるぜ!!
 あ、その前に、
 そこにマンホールの蓋があるだろ?
 実はそれセーブポイント&回復ポイントなんだぜ。
 黙って待っててやるからセーブして回復してきな。
 まぁ、お前等にリセットなんてないって事を思い知らせてやるがな」
「思い知らせてやるなの〜」
「…な、何? コイツ…」
「ウザッ! これも新手の能力?」
「まとめてかかって来いッ!!
 …って言いたいところだが、
 正々堂々とサシでやるか。
 そこの槍男!
 まずはお前からだ、来な……」
どうやらみつおと言う男はガウィーを指名したようだが、
「…相手にするな…
 適当にあしらって先を急ぐぞ」
「ち、ちょっと待て!
 ライバル登場って場面でそのつれない態度はなんだ!?
 さびしいこと言うなよ〜」
「…孤高の戦士さんが寂しがってますよ?」
「見るな、聞くな、リアクションするな」
「む、寂しがり屋さんに鞭打ちような言葉…
 こうなったら問答無用!!」
槍vs槍。
みつおの先制攻撃をガウィーが弾き返す。
「やるな。
 狂った朝の光にも似たオレ様のこの01ランスをかわすとは」
「……………………」
ガウィーの顔色が変わった。
石突でみつおの攻撃を弾き、そのまま柄を返してカウンターを仕掛けたつもりが、
それと同時に同じようにしてみつおもガウィーの反撃を弾いていたのだ。
「なるほど、SFESは伊達じゃないか…
 だが、致命的に、馬鹿だ…
 問題は…あっちのガキの方だな」
あくまでみつおを無視するガウィー。
間違いなく相当な戦闘センスの持ち主ではあったが、
相手が本気で立ち向かって来てくれないと実力以上の力を発揮出来ない。
みつおはそんなタイプの典型であった。
「こっちはワシが相手しましょ。
 こう見えても子供の相手は得意なんや」
まさかユニバースが受けて立つとは全員思いもよらなかった。
流石にセレクタの司令塔をこの場に残していく訳にもいかないが、
未だSFESとの因縁が明確ではないガウィーとユニバースの二人以外は逸る気持ちの方が大きい。
「ユニバースとガウィーなら心配ない。
 俺達は先を急ぐぞ」
「で、でも…」
迷っているのはライーダとレシルだ。
と、そこへ懐かしい顔の一団が現れた。
「お前ら何やってんだよ。
 さっさと片付けて先急ぐぞ」
「エーガ!?」
「こんな戦いなんて無意味だと思うけどな。
 ま、俺もまだ一応セレクタメンバーだし、やるとしますか」
「カッコいい〜!
 ほな、エーガさんコイツ等任せましたで
「え?」
「何だ、増援か?足止めか?…って、お前…宇宙ステーションで会った…
 …こりゃ良い。何だかよー解らん白ブタに潰された恨み…
 何の理由も必然性も無くお前に100倍返しにしてやるぜ!
 どれだけ人数揃えようが所詮は昨日今日会ったばかりの雑魚!
 同一グラフィックの大量生産型金太郎飴!
 超一流である俺様の前ではお前等三流なんぞ、
 カレーの福神漬けとかアナコンの振動パックとかそういったものなのだ!」
「肉料理の輪切りレモンとかポケットティッシュの広告とかそういったものなのー」
エーガ盗賊団の侵入にも狼狽えずハイな態度を続けるみつお達。
単に無鉄砲なのか、其れだけの力を有しているのか…
相手が相手だけに読み切れないところが不気味でもある。
「か…勝手な事言ってんじゃねェぞお前等ーーー!!
 ユニバースもいきなし押し付けてンじゃねぇ!」
「なっはっはー。大丈夫!エーガさん達なら見事凌げます。
 ワシ等もなるべく早く総裁ネークェリーハを仕留めますから、
 まぁ…其れまで何とか耐え切って下さい、ええ。
 ほらほら…来ますよ。頑張ってー」
エーガの抗議も受け付けず、一方的にそう言い切り、
みつお達がエーガへと襲い掛かるのを見届けるや否や、
脱兎の如く其の場を走り抜ける。
「くそ…覚えてろよユニバース…」
「エーガ様、其れより…前!」<Rel3.tougou-s5>
執筆者…Gawie様、is-lies

「エーガさん達だけで大丈夫でしょうか?」
「平気でしょ、アイツ等かなりやるもん」
101便内でセート等エーガ盗賊団を見たシストライテの科白には、
多少の説得力があるものの、やはりそう長持ちするとは思えない。
これからあの2人以外にもゴロゴロと増援が来る事になるハズだ。
「他人の心配よかこっちの心配しましょうや。
 エーガさんよかずーっと危険な状況に入ってるんですからな、こっちは。
 この先、普段は使われていない搬入用大型エレベーターがあります。
 そいつでもって70階の会議室…75階の社長室…同時に突入します。
 さっきの警備員との交戦でもう、ワシ等の侵入も気付かれている事でしょう。
 SFESがSSやレギオンを配置し終える前に速攻で勝負付けましょ」
エレベーターの扉を発見、間髪置かずスイッチを押す。
現在、エレベーターは地下6階。すぐ側にある階数表示板を見るに現在位置は地下4階。
上がって来るのもすぐであろう。
「併し…拍子抜けですね。
 そんなに厳重な警備でもありませんし」
「まぁ確かに…レギオンやらが外に出てるってのもあるかも知れんが…
 ……其れにしてもザル警備だな」
確かに見張りというのも先のみつお達にしか会っておらず、
此方へ増員が来る様な気配も特にない。静か過ぎる。
「……あれ?まだ来ないんですかエレベーター」
「…?何か搬入でもやってるんでしょうかねぇ?
 変ですな……普段は使われてないらしいんですが…」
「其れって表向きに出てる情報だろ?
 此処はもうSFESの腹中だぜ?普段でも使ってるってこったろ。
 どうする?エレベーターを待つか?
 其れとも…階段を突破するか?」
(…エレベーターか、階段か…
 いや、問題は…上か、下かや…
 ネークェリーハは間違いなく社長室…
 それなりの面子も警護についとるやろう…
 しかし、SFESの研究…
 その中枢は、恐らくここよりも地下や)
ユニバースは判断に迷うような素振りは見せず、
持っていたステッキから刃を抜くと、
それをエレベーターのドアの隙間に突き刺した。
「両方いきますか。
 エレベーターを待つ必要もありまへん。
 シャフト内に進入して、ケージが来たら乗り移りましょう。
 ガウィーさんとフルーツレイドさんはこの階で、
 上がってくるエレベーターに誰か乗っているかを確認してから、
 階段でお願いします」
「了解だ。
 (…オレ達は下か…)
「ほな、ワシ等は先に行きますで」
ユニバースがドアに差し込んだ刃をテコにして隙間を開け、
ビタミンNが両手でドアを一気にこじ開けた。
真っ暗なシャフト内から突風が吹き上げてくる。

 

 

意を決し、飛び込もうとした時だった―――

 

虫の知らせか、野生の勘か、
何とも例え様のない嫌な予感がビタミンNを怖気づかせた。
同時に上の方で何かがビルにぶつかる音が聞こえ、
エレベーターのワイヤーがビュンと震えたかと思うと、
下からケージが火花を散らす勢いで目の前を過ぎ去った。
地震とも違う、爆発や崩落でもない、
這いずり回る様な破壊の衝撃が地下空間を覆いつくした。
「何だ!?
 上の連中がもう仕かけたのか!?」
「それにしても、これは一体…!」
真っ暗だったシャフト内に日の光が差し込んでいる。
あり得ないことだが、上の階が根こそぎなくなったという事だ。
「こりゃあかん…
 …逃げろォォォォ!!!」
ユニバースの叫びとともに、更に激しい衝撃が襲い、
爆風と瓦礫が降り注ぐ。
衝撃に仰け反る勢いそのままに、ユニバース達は駆け出し、
後ろを振り返る余裕もなく、地下通路を走り抜けた。<Rel3.tougou-s6>
執筆者…is-lies、Gawie様

間一髪だった。
「リ、リゼルハンクのビル、崩れたよな。
 間違いなく…」
「何だったんだ、この作戦は…
 これでSFESが倒せれば苦労はねェぜ」
「そうでもありませんよ。
 現に今までリゼルハンクに直接攻撃なんて誰もやった事なかったんですから」
「確かに、そうだが…」
(…リゼルハンクを…建物ごとだと…
  アズ・リアン…一体何をしでかしたんだ…?)
「しかし、あのみつおとかいう人の邪魔がなかったら、
 私達も今頃生き埋めでしたね」
「あ、そういえば、エーガ達は?」
一応心配はしていたのか、
思い出したようにシストライテが振り返ると…
この状況においてもヤツはいた。
「ふ、オレ様の機転を利かせたナイス判断が、
 敵味方を問わず、窮地を救ったのさ」
みつおである。
この男は変な意味で底が知れない。
「お前は真先に逃げ出しただけだろうが!」
どうやらエーガ達も無事だったようだ。
「なんとでも罵るがいいさ。
 敵の三流雑魚の窮地まで救ってやった、
 オレ様の優しさを解せぬ心の狭いヤツめ」
「そうかい。
 じゃ、お前の今の窮地はどう切り抜ける?」
今日のエーガは何をムキになっているのか、
何時になく無慈悲というか意地悪だった。
みつおも漸く、セレクタに取り囲まれている事に気が付いた。
「…多勢に無勢か…
 …ごめんなさい。すいません。
 …でもアレだぜ旦那。
 そうやって恩を仇で返して良心は痛まない?
 会社つぶしてくれて、どうしてくれんだよ!?
 オレ様明日から路頭に迷って絵に描いたような泣ける物語!」
「こいつ…
 それで白を切るつもりか。
 お前には聞きたい事が山ほどある。
 リゼルハンクの崩壊は一体どういう事なんだ」
「知るか!
 どうせオレ様下っ端さ。
 いや、本当は割りと重役なんだけど、今日だけは下っ端。
 あーッ!! 考えてみると腹立ってきた!
 自暴自棄になったオレ様もう何するか分らないぞ!!」
「もういい黙れ。
 お前の安月給くらいこっちで払ってやる」
「金で解決か!
 お前等らしい問題の多さに気付いていない解決法!
 オレ様の気が変わらない内にそれで手を打ってやろう」
ガウィーは手っ取り早く金で解決させた。
こんなのに構っている暇はない。
セレクタとはとりあえずみつお達を拘束し、次の行動に移った。
ガウィーがどこかに連絡を取ろうと、
携帯端末の電源を入れた直後、直に着信音が鳴った。
電話の相手は、青だった。
「……………………
 そうか分った。
 オレも今近くにいる。
 そっちに向かおう」
予想以上に、地上は大変な事になっているとのことだった。
青達の方も相当混乱しているようだ。
「青だ。タカチマン博士達も一緒らしい。
 合流したいそうだが、どうする?」
「その方が良さそうですな。
 では、ワシとガウィーさん、カタリナさんで行きましょう。
 他の方はごとりんさんと合流して待機しててください」

 

張り詰めていた緊張感が切れ、どっと疲れが押し寄せる。
セレクタが地上に出ると、
辺りには、まるで戦場のように瓦礫が散乱していて、
ほんの数時間前の整然とした街並みは見る影もない。
まだアテネの街全体が粉塵で覆われ関すんでいたが、
どう見ても、明らかにリゼルハンク本社ビルがそこにはない。
異様な違和感を覚えつつも、やはりリゼルハンクは崩壊してしまったのだという事を実感するしかなかった。<Rel3.tougou-s7>
執筆者…Gawie様

「この作戦で、
 英雄達の部隊の指揮をとっていたのは、
 たしかシュタインドルフとか言ったよな」
「あぁ、なんでも火星帝の隠し子だとか…
 どんな奴なんだ…?」
「またユニバース達だけに任せて大丈夫?」
「それは仕方ねェな。
 俺達がセレクタとして出て行ったら、
 それはそれで面倒な事になるからな」
「はぁ…、いやんなっちゃう…」
崩壊現場から避難する一般市民に紛れ、
ビタミンN達はごとりんとの合流を急いだ。
結局振るわれる事のなかった武器を引きずりなら歩くこの集団が、
崩壊したリゼルハンクを攻撃するつもりでいた事など、
周囲の誰も気付きもしないだろう。
彼等には今の自分達の後姿が惨めというか、滑稽にすら思えていた。
「そ、それにしても、エーガさん。
 よく戻ってきたくれましたね」
「そ、それはまぁ…
 俺も一応…」
どさくさに紛れて忘れるところだった。
なんとか取り持とうと、気を利かせたライーダがエーガとの再会を歓迎した。
だが、ビタミンNは今更エーガを歓迎するつもりにもなれなかったし、
なぜ今頃戻ってきたのかと問い詰める気力もなかった。
「けッ、どうせお前はあのサリシェラとかいう女が気になっただけだろ。
 いい関係になってたみたいだしなぁ」
と、エーガはあからさまに不信任を叩きつけられた。
エーガも反論は出来ない。
更に、なんとか穏便に取り持とうとしたライーダも、
ビタミンNが言った冷たいツッコミには聞き捨てならない内容があった。
「え……?
 サリシェラとかいう女が気になったって…
 いい関係って…
 エーガさん、それどういう事なんですか!?」
「ち、違…
 それは、子供には分んねェし、
 いや、そうじゃないし…」
もうボロボロだった。
リゼルハンクビルの崩壊。
いかにSFESと言えども、これで無傷で済むはずはないだろう。
しかし、こんな事で単純に喜べる者はセレクタにはいない。
何者かに獲物を横取りされたか、或いはSFESが予想外の作戦に出た、
と考えるのが当然だった。
SFES打倒が目的でありながら、自分達が何もしていないのに相手が消滅してしまうのは納得できない。
状況が分らないのでは何とも言えないが、
これでSFESが滅びたのなら、素直にそれを受け入れるしかない。
受け入れられなければ、セレクタは復讐の鬼でしかなかったと言う事だ。
これでSFESの行方を失ってしまったのなら、
スタート地点に戻されたことになる。
どうせなら、その方がいい。
皆心のどこかでそう思っていた。
そうでなくては、セレクタは存在意義を失ってしまうことになる。
忘れて終わりにすることなど、出来なかった。<Rel3.tougou-s8>
執筆者…Gawie様
inserted by FC2 system