リレー小説3
<Rel3.タカチ魔導研究所1>

 

  タルシス、タカチ魔導研究所から少々離れた裏路地

 

「…そんじゃ予定通りに行きますか」 
車の中でジルケットが手袋を嵌め直しながら、 
気乗りしない様な口調で言う。 
銀色の死神と呼ばれる殺人狂ジルケット・グリース… 
嘗て暗殺者ギルドがイスラム共栄圏で行ったSFES殲滅作戦に於ける、 
暗殺者ギルド側の数少ない生存者の1人である。 
そんな彼としてはたっぷりと雪辱を晴らしたいのだろうが、 
今回は潜入が主な役目。派手に殺る事は出来ない。 
……少なくともタカチマン達にデータを確保させるまでは。 
其れさえ終わればじっくりと楽しめるだろうが、 
其処に至るまでの御預けは少々辛い。
「言っとくけど途中で暴走したらシバくかんね?」 
マガジンを挿入し終えたトカレフを片手に、 
リーダー・ハウシンカがジルケットに釘を刺す。 
「へぇ…そりゃ残念」 
「まあ良いじゃない。早く終わらせましょ」 
ジルケットに向って言ったハウシンカの科白だったが、 
其れに答えたのは2人の暗殺者…ジェイナス姉弟だ。 
殺人狂ジルケットほど露骨でないにしろ、 
彼女等もどちらかと言えば殺しを楽しむタイプらしい。
「ではタカチマン博士、 
 我々は下水道から施設内へと侵入する」 
無線機に向ってポーザが行動開始を告げる。 
バイヤーを装って潜入する方法は確かに楽だろう。 
だが相応の見張りが付く事も確実。 
更にゼペートレイネ達が研究所を餌にしている時点で、 
武器類のチェックはほぼ間違いなく実行されると見て良い。 
真正面から交戦となるか、丸腰のままで敵陣の中へ行くか… 
どちらも無謀である。相手もそう易々と端末には近付けさせないだろう。 
ならば最初から其の存在を知らさない方が有利だ。
《……解った。接続の手順は説明した通りだ。 
 ……………………死ぬなよ》
通信機を介し、指揮車に待機しているタカチマンが呟く。 
向こうから協力を申し出て来たとはいえ、 
本来、SFESの一件は自分達で解決すべき問題である。 
101便の時の様、其の問題で、 
又無関係な人間に死なれるのは気分の良いものではない。 
聞いているのか聞いていないのか、 
暗殺者の面々は返事をする事無く無線を切り、車から出て行く。

 

夜の帳が下りたものの観光スポットのタルシスの賑わいは続いている。 
そんな中、5つの影は路地裏を音も無く駆け抜ける。 
下水道に続くマンホールに着いた頃には喧騒もすっかり遠退いていた。 
タルシスにマンホールは数多くあるが、 
人目を避けられ、逃亡ルートにも適したものとなると少ない。
「行くよ」 
ジェイナス姉弟がマンホールの蓋を抉じ開ける。 
まるで地の底まで続くかのような深淵が姿を現すものの、 
其れに怯む様な人間は此処には居なかった。 
闇など見飽きた人間ばかりである。
「ん?」 
ふとジェイナス姉弟の片割れ… 
姉の方であるローズがマンホールの蓋に何か違和感を感じる。

 

 

 

  タカチ魔導研究所から少々離れたアパート内

 

SFESの構成員リトは暇を感じていた。 
ゼペートレイネ博士が総指揮する今回の作戦のターゲット… 
即ちタカチマン博士が現れるまではずっと見張っていなければならない。 
既に5日近くが経過している。 
己の才能を見出し施設から引き取ってくれた上、 
充実した生活と十分な教育を施してくれたSFESには感謝はしているが、 
既に死んだかもしれない人間が来るのを待つなど馬鹿げていると、 
今回の作戦に対しては不満も少なからずある様だ。 
食料も尽きつつあるし、そろそろ交代して貰いたいものだ… 
そんな事を考えていた其の時…
「…………?」 
…何かを感じ取った様にリトは虚空に手を添え、 
其の手を、まるで見えない竪琴を弾くかの様に宙に滑らせる。
「来た!??」 
壁に掛けてあった特異な形状のライフルを手に取り、 
頬と肩に挟んだ通信機に連絡を入れながら流れる様な動作でベランダへと出、 
…姿を消した。足音だけを其の場に響かせ、其の姿のみが消える。
執筆者…is-lies

「…どうかしたの姉貴?」 
ジェイナス姉弟の弟の方、ブラストは、 
既に外したマンホールの蓋に注目している姉に気付き、 
既に下水道へと降りて行ったジルケット等の後を追おうとする足を止める。
ローズ・ジェイナスはマンホールを外す時、僅かな抵抗を感じていた。 
本当に僅かな…神経を研ぎ澄まし手に集中させていなければ解らない程に微弱な抵抗… 
いや、正確に言えば途中まであった抵抗が、 
或る程度まで蓋を持ち上げたら無くなった…と言った方が正しいかも知れない。 
だが蓋の周囲にもマンホールの奥にも何も見えない。
「ん…いや、何でもないわ。 
 其れよりも早く進みましょ」 
単純に気の所為と片付け、ハウシンカ達に遅れない様、 
小走りになって下水道を進むローズ。ブラストも其れに従う。

 

「ちょい待ち」 
或る程度進んだところで先頭を歩いていたハウシンカが、 
ゆっくりと曲がり角から顔を出して先を窺う。 
下水道の壁の所々に設置されている蛍光灯の鈍い光が、 
曲がり角の奥に照らし出しているのは数人の人影だった。 
足音を殺して確実に此方へ向って来ている。
「……お客さん来てるし……… 
 市街戦の訓練みっちり受けてる感じ…」 
「あの足運び……軍隊崩れか何か? 
 …っかし早いな…思った以上に良いセンサーがあるらしい」
ざっと見て来た所、途中で隠れられる様な場所は無いし、 
此方の侵入がバレているのだとしたら、退路を塞がれている可能性もある。 
もう少し先に行けば出口のマンホールや、隠れられそうな場所もあるのだが、 
此方へと近付いてくる人影が、そうそう簡単には通してくれないだろう。
「まあ良いさ。ちょっと下がれ」 
仲間が数歩だけ下がるのを見届けた後、 
ブラスト・ジェイナスが片手を振る。 
と同時に、一行の足元の汚水が軽い水飛沫を上げた。
「さぁて、何人掛かるかなっと」 
特殊ワイヤーで罠を仕掛け、 
糸使いの姉弟…『青い糸使い』の異名をとる青髪の美青年ブラストは、 
含み笑いをしながら踵を返す。 
執筆者…is-lies

  タルシス、タカチ魔導研究所周辺の路地裏

 

先程、暗殺者達が入っていったマンホールを覗き込む様にして見ている2人… 
タカチマン達を尾行して此処まで付いて来たミレン&ケイムであった。 
相変わらず巧妙に変装しているのは流石と言ったところだ。
「……あんな連中が下水道に何の用だ……? 
 …………何か匂うよな、今度こそ」 
鼻をクンクンと鳴らせてみせるケイム。
「………そりゃまぁ下水道だし……」 
真似して匂いを嗅ぎ、至極マジメな顔で答えるミレン。
「ちげーよ。お宝の匂いだ。 
 もしかしたら古代火星文明の遺跡でもあったのかもよ?」 
「無い無い」 
言いつつもやはり気になるのか、 
マンホールの中をちらっと覗き見してみる2人。
飽く迄、タカチマン博士を追って来ただけだし深入りする気は無い。
其の積りだったのだが…
「フリーズ!動かないでくださーイ!」 
微妙にイントネーションのおかしな間延び声が、 
ミレン達の背後から唐突に掛けられた。 
飛び跳ねるようにして後ろから間合いを取るミレン達。
「まだこんなトコロに居たなんてビックリですケド、 
 大人しく御縄について下さいネ」 
奇形のライフルを構えたリトが其の銃口をミレン達に向けていた。 
ミレン達の脳裏に浮かんだ可能性は3つ。 
先ず、この女性はタカチマン博士達(もしくは暗殺者達)の仲間で、 
尾行していた自分達に気付いて接触して来たという可能性… 
もしくは巧く誘い込まれたという可能性か。 
だが今、この女が言った台詞で気に掛かるところもある。 
…「まだこんなトコロに居たなんてビックリ」… 
……少なくとも先程、入っていった連中の仲間ではなさそうだ。 
…となると残るのは最後にして最悪の可能性。 
其れはタカチマン博士一行を尾行している内、 
再び大きな事件に巻き込まれたという可能性である。 
そして其れで連想出来るのは……やはりというかSFESであった。
「…ちょっと待ってくれよ。 
 俺達は…此処、ちょっと寄っただけなんだよ。 
 変な人影が見えたもんだからさ、気になって…」 
「……だとシても拘束させて貰いまス」
何にせよ此処で捕まる訳にもいかない。 
幸いに相手は1人。十分に対処出来る。
「……Are you ready?」
ケイムが呟く。
「ほえ?」
其の瞬間、ケイムが装備していたブレスレットが一瞬で、 
彼の拳から肘までを覆うナックルと化した。一種のマジックアイテムである。
「Go!!」 
ナックルに包まれた拳を振り被ってリトに迫るケイム。 
一撃で昏倒させるべく相手の脇腹を狙って繰り出された渾身のパンチ、 
だが併し、目前のリトに炸裂する事は無かった。 
外見からは予想も出来ない恐るべき身軽さでリトが宙を跳び、
迫るケイムを軽々と跳び越し、マンホール前に着地した。 
だが先制の失敗になど一々驚かずケイムは、
間髪入れずに後ろ蹴りにてリトを蹴飛ばし、態勢を整え直す。
が…
「ぐっ…動いチゃ駄目でスってば…」 
急にケイムの体が動かなくなる。 
まるで何かにがっちりと固定されている様に。
「ケイム!?」 
「ふゥ…貴方も結構場慣れしテタみたいデスけど… 
 一応、私達も仕事なノで… 
 ……事前に罠張らせて貰ってましタ」 
ミレンに銃口を当てたままそう言うと、 
頭と肩に挟んでいた通信機に口をやる。
「もしもしー?………はいはい。そーです。一応連行しますヨ。 
 ヘプティちゃんとヴィーリちゃん寄越して下さいネ」
執筆者…is-lies

   タルシス下水道内

 

 

やがて、一歩一歩注意深く進んで来た数人の人影が、 
ブラストの仕掛けた罠の辺りに足を踏み入れた。
バシャーーー!!!
蜘蛛の巣状に張り巡らされた特殊ワイヤーが、 
上に乗っかった数人を包み込む様にしながら天井へと上がり、 
やって来た敵の殆どを一気に捕らえていた。
「よっしゃっ!5人ゲット!」
残ったのは大柄な影が1つ。 
速攻で仕留めるべく暗殺者チーム内の3人… 
ハウシンカ、ポーザ、ジルケットが飛び出す。 
ポーザの投げナイフ、ジルケットのハンドガンが、 
ほぼ同時にターゲットの巨体を揺らし、 
トドメとばかりにハウシンカのトカレフが撃ち込まれた。 
だが……
「あーー……痛いんだな。 
 でも見付かったからまあ良いんだな」 
大柄な影は銃弾やナイフをマトモに喰らったのにも関わらず、 
地に伏す事無く仁王立ちとなってポーザ達を見据えている。 
影がゆらりと動く。其れを見てポーザ達の脳裏に危険信号が点った。
「退けェ!!」 
刹那、ポーザ達の隠れていた曲がり角が爆発する。 
ジルケットの叫び声で何とか爆発には巻き込まれなかった暗殺者達だが、 
狭い下水道内故に其の爆風はもろに彼等の体を吹き飛ばしていた。
「っ……アンタ等、無事?」 
「………そっちこそ……… 
 …っかし、今のは…ロケットランチャーか!? 無茶しやがる…」
巧く受け身を取ってダメージを軽減したものの、 
退路は曲がり角があるだけの一本道。隠れられる様な場所も無い。 
更に退路は塞がれている可能性が極めて高い。 
かといって前進すれば重火器の格好の餌食となる。 
しかも相手は確実に防弾チョッキなりを着込んでいると見て良い。
「逃げ場は無いんだな。大人しく投降するか死ぬんだな」 
大柄な男の声が響き渡る。 
其の姿はまだ曲がり角から出て来ていないが、 
ジャブジャブとした水音から、 
緩慢とした足取りで徐々に近付いて来るのが解る。
「……次、あのデカいのが角から出て来たら一斉攻撃。 
 さっきちらっと見えたけど、やっこさん頭は無防備だったから」 
「あいよ」
其々武器を構えて其の場に留まる。 
一同、敵の立てる水音がやけに響く様に感じる。 
心臓の鼓動は聞こえない。この程度は何という事でも無いのだろう。 
ぬっと姿を現したのは、ロケットランチャーを構え、 
ブ厚い防弾コートに身を包んだ禿頭の巨漢…というかデブだ。 
暗殺者チームの3人は一瞬で其の禿頭に照準を定め、 
ナイフを投げ、引き金を引く。
殺った。
だが其の予想に反し、 
横から現れた魔力の塊が3人の攻撃を全て防いでしまっていた。 
間髪入れずに発射される2発目のロケット弾が3人を襲う。
「ちぃい!何だ今のは!?」
射線から何とか外れる様にして再び後退を余儀無くされる5人。 
今度もロケット弾は回避出来たものの、爆風はそうにはいかない。 
吹き飛ばされて奥の曲がり角に叩き付けられる。 
今のダメージは決して少ないものではないだろう。
「……ぐっ…今の魔力…結晶能力か!?」
暗殺者一行は転がり込むようにして角へと逃げ込み、 
ポーザがそっと相手の様子をさっと覗き見る。 
デブの後ろには戒めを断ち切った5人の敵兵がライフルを構え、 
先の屈辱を晴らすべく前進して来ていた。
「…マズいな。増援も時間の問題だ」 
「っかし何だ?やけに強いのが紛れてないか敵?」 
「ンな事よりずっと問題なのが武装よ。 
 こんな場所じゃ相手の独壇場だし…だからって退く訳にも… 
 ……しゃあない…」
執筆者…is-lies
「どうしたんだな?もう終わりなんだな?」
再び曲がり角から重武装デブが姿を現す。 
間髪入れずハウシンカの放ったトカレフ弾が、 
デブの巨体を仰け反らせるものの決定打には至らない。 
だが先程の様に魔力の介入で全く効果が無くなっている訳でもない。 
デブの動きが止まった其の隙に、 
ワイヤーを天井のパイプに巻き付けていたジェイナス姉弟が、 
振り子よろしくデブの頭上を擦過して行く。 
頭上を取られ一瞬動揺した敵兵達を、 
次々特殊ワイヤーで切り裂いて行くローズ・ジェイナス。 
赤い糸使いの異名通り、 
彼女は敵兵の血を満身に浴びて恍惚染みた微笑を浮かべる。 
其の攻撃…約0.2ミリの特殊ワイヤーによる斬撃は、 
無論、デブの頭上にも降り注いでいたが、其の全てが魔力で防御される。 
慌ててデブがロケットランチャーをローズに向けるが、 
ロケット弾がローズに放たれるよりも早く、 
ポーザの投げナイフがデブの全身に突き刺さり、其の巨体を倒す。 
其の場に動いているものはもう居ない。 
長居は無用。早くタカチ魔道研究所まで侵入しなくてはいけない。
奥に向って走り出そうとした其の時。 
ハウシンカ、ジルケット、ポーザの背に悪寒が走る。 
何が起こったのか解らないといった表情のジェイナス姉弟を、 
ポーザが体当たりする様な形で壁に押し付ける。
「な!?何す……」
ポーザの背後スレスレをロケット弾が通り過ぎる。 
見ると先程のデブが立ち上がってロケットランチャーを構えていた。 
どうやら先のナイフもあまり効いてはいなかったのだろう。 
更に其の背後にもう1人居た。スーツを着込んだ若い娘だ。
「い…今の攻撃避けれるなんて普通じゃないんだな」 
鉛雨街……多分、鉛雨街の出身者ですよ。 
 でも…『英雄』ポーザ… 
 『銀色の死神』ジルケット・グリース… 
 噂に違わぬ凄腕ぶりで………」 
娘の科白が言い終わらぬ内にジルケットの銃弾が、 
彼女の額に向って放たれたが、直前で魔力で弾かれる。 
娘は淡く発光する札のようなものを片手に持っており、 
其処から魔力の気配を感じ取る事が出来る。 
彼女が先程から魔力でデブへの攻撃を防いでいる能力者なのだろう。
「…まあ良いでしょう。 
 何にせよ大人しくなって貰いましょうか。 
 手足の2〜3本取ってもショック死したりしませんよね?」 
スーツ娘が何枚もの札を重ね合わせ魔力を集中するのと同時に、 
重装備デブもロケット弾を発射する。 
併し既に敵は後ろ。此処で相手をしてやる必要は無い。 
其れに何より増援が来ては面倒だろう。 
ロケット弾にのみ注意すれば決して逃げ切れない相手ではない。 
放たれたロケット弾の爆風を背にハウシンカ一行が奥へと走り出す。
執筆者…is-lies

  タルシス、タカチ魔導研究所内

 

 

「はぁ…現在、下水道内ではベムブル班が侵入者と交戦中。 
 侵入者は5名程との事ですが今のところ詳細は不明です。 
 又、退路はエイキンスキアルディ班で封鎖完了。 
 周辺はドールグスラシル班に調査させています。 
 後、ヘプティとヴィーリは件の目撃者を護送中です」
黒スーツの中年の報告を聞いているのかいないのか、 
ゼペートレイネは端末のディスプレイと睨めっこをしたままだ。 
「とっとと連れて来なさいよー。 
 あー、自白剤も用意しといてね。 
 ………タカっちの奴…今度は逃がさないんだから」
「はぁ…ゼペートレイネ博士。少々感情的になり過ぎでは? 
 貴女らしくも無い…」
「感情的にもなるわよ。 
 ウルグザハニル発射の事件はアンタも知ってるでしょ? 
 エンパイア時代の遺産よ? 源泉…其れが開かれようとしている! 
 なのにキーマンのタカっちが私達から離れてちゃ意味無いわ。 
 挙句の果てには八姉妹の結晶もまだ位置が把握出来てないのもある。 
 トルだってそんなしない内に動き出す筈… 
 私はこんなトコで足止めなんてまっぴらよ? 
 オジジ達は隠遁決め込む積もりだけどそーはいくもんですか。 
 私はタカっちを手に入れる!もう手段なんてどーでも良いわ。 
 そうしないと私はオルトノアを越えられない… 
 私、ゼペートレイネ・フィヴリーザという名の意味が無くなる! 
 そんな事ぁあっちゃいけないのよ!」
徐々にゼペートレイネの表情が険しく語気も荒くなり、 
又、キーボードを叩く指も力んで来、ミスタッチも多くなっていた。
「…はぁ……決定事項に逆らっても良い事はありませんよ」
「うっさいわ。其れよりお客は?」
「はぁ…ラーズスヴィズ班が案内しています。まあ形式だけですが。 
 後、トゥラド班も警備に当たって貰っています」
「……トゥラド? ああ…あの新入り 
 …どう?信用出来そう?」
「はぁ…戦績も腕も確かですよ。 
 …ですが少々……いえ、何でもありません。 
 さて、自白剤を用意して来ます」
「戦績も腕も確かか… 
 兵隊なら間に合ってるし、 
 少し悪知恵が働くくらいが扱い易いんだけどね。 
 ベムブル班の方は大丈夫でしょうね? 
 戦力でこっちが有利なのは解り切ってるんだから、 
 バカみたいに追い詰めても意味ないのよ」
「はぁ、それはもう…。 
 今までにも何度か侵入した者はいましたが、 
 それらは全てただの物取り。 
 しかし今回の侵入者は、相応に腕も立ち、 
 そして何より、この複雑に入り組んだ下水道内であるにも拘らず、 
 迷うことなくライブラシステムの部屋に向かっています。 
 間違いなく『本命』であると、 
 ベムブル等もそう判断したようです」
「そう、ならいいわ。 
 そいつ等が例のプロテクトを解除した場合の作戦変更… 
 悟られないようにね」
執筆者…is-lies、Gawie様

  再び下水道内

 

 

ロケット弾の爆煙に紛れ、 
ハウシンカ達はどうにか敵の目を逃れた。 
周囲に敵の気配がないか警戒しながら、 
地図を広げ、一旦現在地を確認した。 
既に研究所の真下まで来ており、目的の部屋はもう目前だ。 
今来た通路はロケット弾で破壊されたので、敵も直に追っては来れないだろう。
「しっかし、思いっきりバレてるし〜。 
 何?アンタ等、顔ワレてんの?暗殺者のくせに」 
「…お前は大して名も知られていないからな」
「言い争いは後だ。 
 それよりも、こんな場所でロケット弾を使ってくるとは、 
 意図的に通路を塞いでいるようにも思える… 
 いや、この作戦自体もはや失敗した考えるべきだな」 
「だな。どうする? リーダー?」
「…前方に活路を…! 
 それがあたし流。行きましょ。
 まだこれで終わりじゃないよ。 
 失敗ってなあ、てめえがおっ死んじまうか、
 ターゲットがふっとんじまうかした時にいうんだよ。わかる?その辺。」 
爆風の砂塵にかすむ下水道内、ハウシンカの囁きがかすかに空気をふるわせる。
「へえ、前方に云々、ってことはまだ何か策があるのかい?」 
ジルケットがハウシンカの顔をのぞき込む。
「まあねん。」 
ウィンクをするとハウシンカは腰に下がったウェストポーチから地図を取り出すと、無造作に広げて見せた。 
「ま、下水道ってのはこのとーり何通りも道があるわけ。 
 この一本がふさがってもまだルートは残ってんのね、これが。」 
一同は地図をたどるハウシンカの指先を見つめた。
「で?どーすんだよ、こんだけ道があるけどどのルートに行くんだ?」 
「それよ。」 
投げ出すようにハウシンカが呟く。
「この際二手に分かれて別々のルートから入って落ち合うのが良さそうだ。 
 敵を欺く為に正規のルートを行く者、離れた他のルートに行く者に分けた方が良さそうだな。」 
ポーザが全員の顔を見回す。 
「あ〜、それ今あたしが言おうと思ったのにぃ!」 
ハウシンカが不機嫌そうに眉間にしわを寄せた。 
「そんなことは良いわ。 
 早くしないと追っ手が来かねないし、セキュリティーも厳しくなる。
 早いところ決めちゃいましょ。」 
それを制したのはジェイナス姉弟の姉・ローズだった。
「そりゃそーだわ。んで?どーするよリーダー。」 
ジルケットが冷やかすようにハウシンカの方を見る。
「ん〜っと…とりあえず正面突破チームと回り道チーム、 
 それぞれリーダーが必要だね。」
「俺がやろう。」 
間髪入れずにポーザが名乗りを上げる。
「ナイスタイミングvちょ〜どアンタに任せようと思ってたんだよね。」 
さっきとは打って変わって上機嫌な仕草のハウシンカ。 
「とりあえず正面突破隊は戦力重視、
 別路潜入隊は機動力重視だな、リーダー、どうする?」
「俺は断然正面突破よ!バリバリやりあえるんだろ?
 ククク…武者震いがおきるぜぇ…」 
ジルケットがたまらないと言う表情でハンドガンのマガジンを詰め直す。 
「俺も正面志願だ、敵の足止めなら任せときな。」 
ブラストも指でワイヤーを繰りながら言う。 
その目は得も言われぬ殺気でぎらついていた。 
「なら俺はこいつらのお目付役だな。」 
ポーザがにやりと口元をゆがめる。 
「言うこと聞かなかったらヤキ入れちゃってもいいかんね?」 
ハウシンカがポーザを見ながらおどけて言う。
「つ〜ことはなにか?あたしとおねーさまなわけね? 
 おねーさま、二言はありませんこと?」 
「わかったわ、私はリーダーに従うまでよ。」
「それじゃあ…」
ポーザが皆の前に手を差し出す。 
「我らの作戦の成功を祈り…」 
ポーザが言うと皆それぞれ彼の手の上に手のひらを重ねる。 
「あ〜、それあたしがやろうと思ってたのにぃ!」 
言いながらハウシンカも手をのせる。 
「じゃ、お互い生きてたらまた会いましょ♪」 
こうしてそれぞれ、円陣を離れた。

 

 

「つうか。」 
再び歩き出したハウシンカがぽつりと呟いた。 
「どうかした?」 
ローズがちらりとハウシンカの方を見やって問う。 
「な〜んかやなよかんがすんのな。 
 タカチのだんな、ぶじかなあ。」 
はっとしたような表情でローズが再びハウシンカを見やる。 
「ま、いっかv 
 あたしたちはあたし達の仕事仕事♪
 …っと、おいでなすった」 
背後から聞こえて来る水音を聞き、出来得るだけ遠くへ… 
出来得るだけ正面突破隊から引き離す様、2人は走り出す。
執筆者…Gawie様、錆龍様、is-lies

ポーザ班はサクサクと先に進み、遂に1つの梯子の前に到着する。 
タカチマン博士が住んでいた頃、緊急脱出用に作ったものだ。 
さっき沸いて出た敵達は此処から下水道内に入り込んだのだろう。 
あの重武装デブもスーツ娘も追い付いて来てはいない。 
ハウシンカ班が巧く攪乱してくれていると見て良さそうだ。 
今の内にさっさと侵入してしまいたいところだが…
「…上は十中八九敵が俺達を待ち構えて固めている。 
 さあどうする?」
「俺の幻術で行こう。 
 敵の攻撃タイミングを外し、一気に…… 
 ……いや、待て……」 
会話を一時中断し、ポーザは梯子を上ってマンホール蓋に近付く。 
暫し感覚を研ぎ澄ます様に眼を瞑ってから言う。
「……誰も居ない」
「は?そんな訳があるか。 
 敵だったら此処で………」 
「英雄様の言ってる事ぁホントみたいだぜ。上からは何も感じられない…。 
 まあ毒ガスやらが無いとは言い切れないから、 
 慎重に行かなきゃいけないってのは変わりがねーけどな」
ポーザに続きジルケットが躊躇い無く梯子を上る。 
下で其れを眺めながらブラスト・ジェイナスは思考に耽っていた。 
この2人…いやハウシンカを含め3人…彼等は何かが違う。 
先のロケット弾の不意打ちを察知した其の勘…とでもいうのか… 
ブラストやローズも手練の暗殺者ではあるが、 
この3人の反応力は姉弟の其れを遥かに上回る様に感じられた。 
先程、スーツ娘が『鉛雨街』と漏らしていたのを思い出す。 
噂だけならジェイナス姉弟も聞いていたが、 
何でも其の街は東日本で有名なスラム街で、あまりの危険さ故か、 
其処の住人の「気配や危険を感じ取る能力」は人間離れしていると言う。 
ハウシンカ、ポーザ、ジルケット… 
彼等は鉛雨街の出身なのだろうか。 
鍛錬で得た力が全てと考え、鉛雨街の噂は一笑に付していたが、 
実際に其の力を目の当たりにしたブラストの精神的ショックは軽くない。 
生まれた世界そのものが違う… 
越えられない壁がある… 
一瞬だけ浮かび上がった劣等感をすぐさまに払いのけ、 
ブラストも2人の後を追ってタカチ魔導研究所へ侵入した。

 

狭いマンホールから出てみると其処は厨房の様な一室で、 
丁度、流し場の隣から出て来た感じだ。 
………近くには…誰も居ない。異臭も無ければ煙の様なものも無い。 
だが油断は禁物だ。
「…待て、人の気配、…多いな」 
気配と言っても今までのような殺気だけではない。 
ポーザ達が警戒しながら厨房を出ると、 
それは人の気配と言うまでもなく、話し声や笑い声までもが聞えてきた。 
考えてみれば当然の事である。 
この物件は裏ではSFESが操っていても、表向きはあくまで競売であり、 
研究所の建物も一般公開されている。 
真っ当な不動産業者や何も知らない一般客も建物に出入りしているのだ。
ポーザ達が柱の陰に隠れて息を潜めていると、 
回廊の曲がり角の向こうから足音が近付いてきた。
「えぇ、この先が厨房になります。 
 前の所有者はほとんど使ってなかったようで、キレイなもんですよ」
建物の説明をしながら近付いてきたのはスーツ姿の青年だ。 
その後にいるは、客か、或いは不動産会社の社長だろうか、 
高級そうな毛皮のコートを来た中年女性だ。 
もちろん暗殺者の殺気などには気付きもしない。 
突然、柱の陰からジルケットが飛び出した。
「うわ! あ、あぁなんだ。 
 どうも、ご苦労様です」 
スーツ姿の青年は驚いて立ち止まったが、 
ジルケットを見て、何故か笑顔で挨拶をすると、 
そのまま、無防備な歩を進め、殺人鬼の間合いに踏み込んだ。 
その瞬間。 
音もなく、鮮血が舞った。 
青年と中年女性は悲鳴を上げる間もなく、死神の餌食となった。
「こいつら一般人か、運がなかったな。ククク…」 
「どうやら我々をリゼルハンクの人間と勘違いしていたようだが… 
 厄介だな、これでは見分けがつかない」 
ポーザが二つの死体の所持品を確認しながら呟くが… 
「簡単。片っ端から殺ればいいのさ」 
「そういうこった」 
と言って、殺人狂二人は返り血を拭いながら悦に浸っている。
「…殺人狂三人に、リーダーは素人の無鉄砲娘か…やれやれ…」 
「あ? 不満でもあるのか?」 
「何でもない。 
 それより、向こうの階段を上がればもうすぐ目的の…………」 
階段を指差しながら、何故かポーザが言葉を詰まらせる。 
「どうした?」 
「…しまった。 
 例のアダプタはハウシンカが持ったままだ…」
正面突破隊として先行したまでは良かったが、 
目的地の目前まで来て、その目的を得る手段を持ち合わせていなかったのだ。 
こうなったらそれこそ陽動作戦か? 
いや、無駄だ。
ここはタカチ魔導研究所。そこに態々潜入する目的と言えば唯一つ。 
潜入が知られた以上、下手に行動しても陽動であるのはバレバレである。
「仕方ない。本来のやり方で、 
 密かに、少しずつでも敵の戦力を削っておくか…」
執筆者…is-lies、Gawie様

「あ。」 
漆黒の闇に閉ざされた下水道、その最深部で小さくこぼしたのはハウシンカである。 
「あっちゃ〜、やっちまったよ、アダプタ渡すの忘れちったv」 
軽い調子で頭をかくハウシンカ。 
それを見やって顔色を変えたのはローズ・ジェイナスである。 
「ちょ、ちょっと、それどういうこと?忘れちゃったで済むと思ってるの?!」 
珍しく声を荒げるローズとは対照的にハウシンカはこれといって自体を悲観する節はない。 
ただ、 
「忘れたもんは忘れたんだからしかたねーじゃん。 
 次ぎ会ったときにでも渡しましょーや。」 
手の上でアダプタを弄びながらハウシンカは悠々と歩を進める。
…ローズはため息をついた。 
本来、自分の得意分野はブラスト同様戦闘である。 
それがリーダーの御達しとはいえ、裏方に回った挙句、 
同伴者がこの通りシロウトの、それも常軌を逸した変人と来ている。 
暗殺者としての仕事を営む以上、彼女にだってプライドがある。 
ことにローズほどの手練となるとその怒りや不満はなおさらである。
「これからどうするつもり? 
 正面突破班は研究所に到着してるはずだわ。 
 それに合わせてアダプタを渡さないと、時間のロスどころか 
 作戦そのものがおじゃんだわ。」 
冷たい視線をハウシンカに向け、ローズは落ち着いた口調で…むしろ諭すような口調で言った。 
「だから言ったじゃん、 
 『てめえがおっ死んじまうか、目標がふっ飛ぶかしねえと失敗にゃあならねえ』ってさ。 
 それ以前にこっちのポカを大声で言うなよな。 
 …あ〜あ、ばれちゃったじゃん。」 
気だるい感じでハウシンカが歩みを止めた。 
「居るんだったら出ておいで、今度は野暮なこたあ抜きでやろうや。」 
ハウシンカが振り返り際、ぽつりと言った。 
「…?」 
ローズもつられて振り返る。
その瞬間、ローズは息を呑んだ。
「さすがは鉛雨街の『ツートンカラーアイズ・デス』ハウシンカ。 
我々の気配など、とうにお見通しだったわけですね。」
聞きなれた声がした。
「いやあ、むしろここ出る前に掃除しちゃいたくてさ。 
 ゴミも刺客も、そのまんまにしとくと後々めんどーじゃん。」 
まるで危機感というものが感じられない口調でハウシンカは声の主に…
スーツ娘と、その後ろに控えるデブに言った。
「あんたも好きなんだな。」 
デブが呟く。
「さあて、始めましょうかおねーさま。 
 刺客、二名様ごあんな〜い♪」 
言われて、ローズが身構える。
「なるほど、誘導作戦だったわけですか。 
 しかし貴方たちは私たちを甘く見過ぎた。 
 …ここで消えてもらいます。」 
スーツ娘が身構えた。 
「な〜るほどね、わざと引っかかってくれたんだ。 
 それじゃこっちも殺り甲斐があるってもんでしょう♪ 
 でも始めに言っとくわ。」 
言うとハウシンカはおもむろに背中から何か取り出した。
…有刺鉄線やら釘やらが飛び出したバットである。 
それをホームラン宣言のように二人に向ける。
「言っとっけど、邪魔したら殺すから。」
執筆者…錆龍様
「最初っからそのつもりでやってんの! 
 喧嘩じゃないんだから」 
いつもの暗殺任務とはノリが違いすぎて、 
ローズも少々調子が狂ってしまう。 
アンダーソンが態々ギルド以外の者にチームリーダーを依頼した理由… 
解らなくはない。大凡予想は付く。 
だが、ハウシンカの性格まではあまり考えていなかったようだ。 
それは兎も角、 
ハッタリかましている場合ではないし、 
ツコッミ入れてる場合でもない。 
第2ラウンド開始だ。
「バット? 
 接近戦はいいけど、私の間合いでモタついたら、 
 構わず一緒に切り刻むわよ」 
「上等〜!」
先の戦闘で、火器の撃ち合いでは火力、防御力共に不利と見たハウシンカは、 
エモノをバットに持ち替え、近接戦闘に切り替えた。 
ローズもその武器の性質上、相手と自分の立位置が入れ代るくらいの動きが必要。 
接近戦は望むところだ。 
敵の重火器を封じるためには、先攻を許してはならない。 
ローズとハウシンカは素早くその距離を詰める。
「やってみなさいッ!」 
スーツ娘が十数枚の札をハウシンカ等に向って投げ飛ばす。 
すると其れは通路を塞ぐほど巨大な龍の口の形を取り、 
目前の2人を飲み込もうと飛んで来る。
「…冗談キツ〜」 
幾らなんでも大き過ぎる。 
直ぐ横にある分かれ道に入り込み何とかやり過ごすが、 
其の間に敵の姿は見えなくなっていた。 
攻撃と防御を両立した能力… 
更にこの様な狭い場所では相手の視界を遮る効果もあった。 
デブの大雑把な攻撃の隙を突いて来た敵を、 
其のまま一網打尽にする積もりだったのだろうが、 
直ぐに第二射を放たずに逃げ隠れたとなると連射は不可能らしい。 
実力はほぼ同じ…寧ろどちらかと言うとハウシンカ達の方が上だが、 
下水道内という場所が回避にも攻撃にも制限を設けさせており、 
逆に敵はこういう場所を得意とする構成なのだろう。 
今の攻撃にしても連射出来るような軽い技ではなさそうだったし、 
回避されてしまえば其れでお終い。デブのロケットランチャーも同様。 
広い場所ならば其れこそ瞬殺出来るだろうが…
「……次、連中が何処から来るか解る?」 
ローズに聞かれ、ハウシンカが耳を澄ませる… 
…と同時に場そのものの気配を敏感に感じ取ってみる。 
頭の中に描き出された地図に敵の大体の位置を結び付けようとしたが…
(…ったく、そう簡単には読み取らせないってか?)
彼女の耳に響いて来たのは遠くからの爆音。 
此方が鉛雨街の人間と知って相手も其れなりに目晦ましを試みているのだろう。 
だが其れでも確実に近付く音と気配を捉え、大雑把ながらも位置を把握する。 
足音一つ、呼吸の一つ、骨の軋み、引き金に指を掛けた音、 
毎日の如く其の全てを感じ取った鉛雨街での暮らしに比べればこの程度は動作も無い。
「………ん〜…増援と合流して2手に分かれたみたい。 
 …一方は大きく回って背後に、もう一方は右側」 
「やっぱり…貴女、さっきの奴が言ってた通り鉛雨街の出身者だったのね。 
 ………大した能力だわ」 
「さぁ、あんま大きい能力ってのも考えものかもよ? 
 ………其れよりホラホラ、もう来るゾ♪」 
手にした釘バットを弄びながらハウシンカが言う。 
ロングレンジでの攻撃が無謀な事は先の通り。 
先程の様に巧く接近し一撃必殺のみを狙う。
やがて左側の通路からスーツ娘と重武装デブ、数名の増援が姿を現す。 
デブが今度は片手にサブマシンガンを構え発砲する。 
不意打ちの銃弾は水面に次々と水柱を立てながらハウシンカ達に向って来るが、 
其の程度が避けられない彼女達ではない。 
続いて発射されたロケット弾と併せて軽々回避し、 
増援達を銃弾で牽制しながらデブとの接近戦に臨む。 
併し間髪入れずにスーツ娘が札から再び龍の口を創り出し、 
通路全体を塞がせたままハウシンカ達に向って飛ばす。
「終わりですね。此処まで接近してしまっていれば、逃げる事も…」
だが、2人の女狩人は怯む事も速度を落とす事も無く異形の口へと向かう。
「はぁあああッ!!」 
ローズ・ジェイナスが両腕を左右に広げ、 
一気に上へと伸ばして頭上でクロスさせたのと同時に、 
異形の口に幾つもの縦線、横線が走った。 
敵が来る方向は或る程度解っていたので、 
予めローズのワイヤーを左右下に設置しておいたのだ。
「第一球〜!!」 
自ら呑み込まれようとするかの如く口に向って飛び込むハウシンカ。 
捻りを利かせて振り被った釘バットが口に叩き込まれたと同時に、 
ワイヤーで切り裂かれていた口が呆気なくバラバラになって崩壊する。
「な…何…げふっ!?
同時に直に釘バットで殴られた部分が吹き飛び、 
口の後ろに居たスーツ娘を直撃して下水に沈めさせた。 
何が起こったのか解らない様な表情のデブ達を前に、 
ハウシンカとローズがニヤリと笑う。
「アンタの能力ってさぁ、 
 相手の視界も塞ぐけど手前達の視界も塞いじゃうんだよねぇ〜」
執筆者…Gawie様、is-lies

 

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