リレー小説3
<Rel3.タカチマン1>

 

太陽系第4惑星……火星。 
人類の長い期間をかけてのテラ・フォーミング計画により、 
この星の4割程は第2の地球とも呼べる環境に変化していた。 
人々は『ポリス』と呼ばれる都市郡を形成し、独自の文化を築き上げていった。 
併し、光ある所には常に影がある。 
火星の繁栄が光なら、影は『獣人』達であろう。
地球で起こった、能力者と非能力者の戦争… 
即ち第三次世界大戦中に、 
日本皇国が生み出した改造人間…其れが超人兵器・獣人である。 
彼等の活躍により、力では能力者に劣る非能力者を、 第三次世界大戦の勝者にする事が出来た。 
だが、同時に利用価値の無くなった獣人は、 
開拓途上の火星へと送られ、死ぬまで強制労働を強いられる事となった。 
其の重荷に悲鳴を上げ、逃げ出そうとする者は容赦無く殺される。
何という事は無い。使い切る場所が変わっただけなのだ。
戦場から開拓地へ…。結局のところ消耗品の道具としか彼等は看做されなかった。

 

 火星・アテネ

 

火星最大のポリスであるアテネでは、獣人の姿はあまり見られない。 
既に獣人達は未開発区画の開拓に連れ出されているからだ。 
彼等の苦痛や懊悩など知る由も無く、 
血管の中を流れる血の様に、人々は道を歩いていく。 
血は体内を循環して体を動かす。 
彼等も同じだ。循環してアテネという巨人を動かす。 
但し、巨人の意思は血に委ねられない。 
どれ程重要であろうが、血もまた所詮、使い捨ての道具に過ぎない。
「アンタ、どこ見てんのさ?」
眼下の人々を眺めてボーっとしていた気弱そうな少年ことバンガスが、 
其の声にハッとして姿勢を正す。 
隣にいる九尾の狐おトメさんは、 
「つい〜ん」と妙な鳴き声を出して主を心配する。
「い…いえ……別に…… 
 …で……SFES……に付いての情報…ですけど…」
アテネにあるテナントビルの屋上… 
あるか無いか程度の高さしかないPL法に引っ掛かりそうなフェンスの上に、 
器用に立っているのは、頭にターバンを巻いた色白の女。 
彼女はオドオドした口調のバンガスをからかう様に言ってみせる。
「アンタ、火星は初めて? 
 SFESなんて随分と大手の名前を出して来たね、コイツぁ。 
 そりゃ、奴等の行動を聞きたがる連中は山程いるけど… 
 いきなり『SFESとは何ですか?』とはねぇ〜」
「う…良いじゃないですか…… 
 ……本当に…知らないんですし…」
少々ムッとした感じで…併し語気を押さえながら言うバンガス。 
いや、ちょっとでも自分の意志を表せられただけ成長していると言えよう。 
ズルズルと兄貴分ユーキンに引き摺られて盗賊にされ、
更には火星へと連れ込まれたのだから。 
併し、今では其の事に何の不満もないし、 
そもそも今は地球よりも火星の方が絶対に安全だ。 
『破滅現象』という訳の解らない現象で、崩壊の危機にある地球よりは…
「おーけおーけ。料金に見合う程度の情報しかないけどね。 
 最近いきなり裏に現われて話題沸騰中の組織… 
 でも13〜4年程度前から、 
 存在を明確に示す文書が残ってたりして訳解らんし。 
 武器売買、暗殺、誘拐… 
 …まぁ、要するにあたしと似た様な事してる訳よコレが」
いけしゃあしゃあと凄まじい事を言ってのける女。 
バンガスの体が傍から見ていても解る程に強張る。 
寂れた酒場で知り合った、安上がりな情報提供者だが、 
危ない臭いがプンプンと漂って来る。 
あまり深入りしない方が得策の様だ。
「但し、連中は自分達で兵器開発してるみたい。 
 お偉方とは割と付き合いあるみたいで、 
 国家間暗黙の了解って奴を得て活動している場合も多々。 
 因みに連中が何処に居て今、何してるのかは解んない。 
 いちおー、アテネ周辺に潜伏してるみたいだけど… いつ動き出すか… 
 つーかコイツ等、マジ解らん。 
 さっき言ったけど最近になって突然現われた組織だかんね。 
 其のクセに滅茶苦茶力はあるし、何故か顧客も多い。 
 あたしを含め、同業者が掴めてる情報も高が知れてるよ。
 ってか土台、あたしってばSFESには大して興味ねぇし。 
 まぁ…何にせよ餅は餅屋。 
 もっと詳しい情報が欲しけりゃ相応の相手を探すんだね。 
 情報屋ガウィーや…なんかが有名所かな? 
 Dは怖いよ〜、本場モンの暗殺者にして情報屋って話。
 交渉で1歩ヘマかましたら頭の通風を良くされるかも!」
「い……いえ……もう良いです…ハイ」
妙にハイな口調で物騒な事を言う女が怖くなり、 
紙幣を渡して其の場を立ち去るバンガス&おトメさん。 
屋上への扉を閉め、階段で溜息を吐く。
(き……緊張する……やっぱ…スジモノだよあの人… 
  親分…自分だけは宿でのほほんとしてるクセにぃ… 
  で…でも……この位は…やらないとね…… 
  タカチマンさんには…お金出して貰ってるんだし……)
執筆者…is-lies

  アテネスラム・萎びた宿の一室

 

「そうか………アレクサンドリア市の依頼……か……」
ベッドの上に腰掛け、砂嵐と年季の入ったボロTVのモニタを眺めるのは、 
101便事件の発端であり、其れを生き抜いたタカチマン博士である。 
食事の用意をしているのは助手のナオキング少年。同業者のジョニーも一緒だ。
隣のベッドには、薄汚い盗賊然とした少年ユーキンが座っている。 
憧れのメイへの無事情報提供が無事に済み、 
もう火星に居なくても良いという其の時に地球で破滅現象が起き、 
良く宛てもなく、機内で知り合ったタカチマンに付いて来た彼は、 
宿代をタカチマンに出して貰う替わりに、情報収集を買って出たのだ。 
とは言え、片腕をなくした事を理由にバンガスに押し付けサボってるが…
TVでやってるのは何という事もないニュース… 
アレクサンドリア市内で能力者達による麻薬シンジケートの存在が発覚。 
大規模な戦闘となる事が想定されるという理由で、 
アレクサンドリアがリゼルハンクに医療機器などの運送を依頼したとの事だ。
「麻薬シンジケート…か……実際のところはどうなのだか……」
既にリゼルハンクがSFESの隠れ家である事を知っている彼等は、 
リゼルハンクの情報を鵜呑みにする事は出来なかった。
「ただいま〜」
ボロい上に蝶番が緩んでガタガタいってる扉を開け、 
タカチマン達の部屋…203号室に入って来たのは、 
先程、情報収集を終えたバンガスとおトメさんであった。
「御頭、一応…情報集めましたけど…」
「おお!戻ったかバンガスにおトメさん! 
 では早速、報告し給え!!」
サボってたクセに、こういう時はリーダーらしく振舞うユーキン。 
彼のそんな調子の良い態度にも、 
長年付き合ってきたバンガスは溜息1つで済まし、 
簡潔に事の次第を説明し始める。
「…ふぅん……SFESって良く解んないな。 
 でも…ガウィーってかなり有名人だったんか…」 
「御頭ぁ、そりゃ僕達もですってば」
バンガスの言う様、第4次世界大戦で
大戦首謀者『本田宗太郎』と戦ったユーキンやバンガスも、 
或る種の有名人となっていた。日本国内以外では悪い意味でだが… 
勝手に戦争を終結させたユーキン達は、 
各国からして見れば、己の活躍の場を奪った悪人でしかない。 
実際、其の為に色々とバンガス達も苦労したものだ。
「まあ、何にせよ…其のガウィーさんやDさんっていう、 
 本格的な情報屋と接触しなきゃいけないみたいですね… 
 其の人達の居場所とか…そういう事は聞けたんですか?」
タカチマンの好物であるところのお茶漬けをテキパキと用意しながら、 
ナオキングが口を挟むが、バンガスは其れに首を左右に振ってみせる。
「色んな人に聞いたんですけど…… 
 かなり…お金取られちゃうみたいで…」
「だーからボクは最初から言ったんだろーが! 
 おトメさんの妖術で、金なんか幾らだって……」
「駄目です!許可しません!却下です! 
 おトメさんに金の偽造なんて…そんな悪事させられません!!」
連れの妖狐おトメさんの力を以ってすれば、 
木の葉を札束に変化させる事も出来たのだが、 
おトメさんを何か溺愛しているバンガスはGOサインを出さなかった。 
この少年、おトメさんの事になるとユーキンにも退かない。
「まあ良いだろう。もう日も暮れた… 
 情報収集は明日にでもして…今日のところは休め」
タカチマンに言われてユーキン、バンガス、おトメさんは部屋へと戻った。 
この203号室の隣にある、202号室こそがユーキン達の部屋だ。 
後もう1人リリィというアンドロイドも其の部屋に居る。 
201号室には破滅現象で店を無くしたであろう不運の銃砲店主リュージ、 
其のバイトのリエ、常連のハッカー…ジード、獣人の少年カフュが泊まっている。 
偶然知り合い、行動を共にした者や、 
嘗てからの知己であった者も混ぜこぜになっているし、 
彼等の目的も其々だ。 
だが…今すべき事は同じだ。
情報を集める事。
魔物を使ってジョニーの命を狙った者の正体… 
タカチマンを追い求めるSFESの行動… 
地球で起こっている破滅現象の正体…
リュージやリエはタカチマンからの依頼で… 
ユーキン一行は居候させて貰ってる恩返しに…
兎にも角にも情報が必要だった。
執筆者…is-lies
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