リレー小説3
<Rel3.SeventhTrumpet3>

 

 

  中央教会の3階、
壁に悪龍の首に槍を突き刺す天使のタペストリーのかかった会議室にて。
向かって奥には色々なコスチュームをまとったST関係者が、
手前にはSWAT装備をまとった警察が座っている。 
最初に口を開いたのは奥上座に腰を下ろしているごま塩混じりの頭の男だった。
胸には能力者対策部のバッジと中規模組織の長を表すリボンが輝いている。 
「今回訪問したのは、この度の“地球難民”の問題について政府が決定した対策によるものだ。 
 現在、無秩序状態にあり土地と生産力の非効率な利用の行われている地域の再開発を行う事を決定した。」
「無秩序状態の地区か…要は、モーロックだな。 
 で…。それが我々にどう関係するというのかね?
 まさか警察の力ではモーロックに入ることも出来ないとでも言うのか?ミスタ・キャメロン。」
ST側のアフロ頭をした筋肉質の黒人が言う。
「くしし…」 
その右隣、誰もいない様に見える席から笑い声が漏れる。
アフロ男が眉をしかめて、その何もない空間に向けて喋る。 
アンビジョン、一体何がおかしい? 
 それから、靴をテーブルに載せちゃいかんと何度言ったら覚えるんだ?」 
「ちぇ、分かったりましたよ、ウィルさん。静かにしますともさ。」 
アフロ男ウィルがアンビジョンと呼んでいた空間から声と、床に足が着く音?がした。
恐らく不可視の能力を持つエージェントなのであろう。
「…ちっ、そういうことだ。 
 残念な事に旧市街を占拠している集団武装した悪質な能力者共を説得するには我々では分が悪い。
 特にアテネ旧市街あそこは厄介だ。 
 それに、もし交渉に失敗して人死にが出ては支持率に関わる。
 そこで、君達の協力が必要というわけなのだよ。」
キャメロンと呼ばれた男が続ける。
「お断りだ!我々の中にはモーロック出身の者もいる、
 そんな無駄な血を流すための闘いは出来ない。 
 すぐに帰ってもらおうか!」 
黄色のコスチューム・ヘッドギアをまとった
若干筋肉質ながらバランスのいい体に細面のそこそこ美形な顔の青年が声を荒げて言う。
警察官が腰の警棒に手をかけるが、ウィルが止めたので大事にはならなかった。
「…ところが、君達には選択権は無くなったのだよ。 
 今回の旧市街の再開発の決定と同時に能力者に対する法にも変更が加えられる。 
 今までのように敵対的と認められなければ逮捕できなかったのが、
 今後は非協力的であるだけで拘束する権利を行使できるようになったのだよ。 
 どうするね?法の改正から心証を悪くしても良い事は無いぞ?」 
キャメロン氏が続ける。
「貴様、弱みに付け込むとは!!!」
黄色のコスチュームの男が再び叫ぶ。 
シェイクヘッドお前は黙ってろ!! 
 少し考えさせてくれ…それと、2,3質問させて貰おう。
 答えてもらえるかミスタ・キャメロン?」
ウィルが尋ねる。
「もちろんだ。」
キャメロン氏が答える。 
「オーケー。では、まず1つ目、そのミッションで戦闘の危険性は?確実に制圧できるプランはあるのか? 
 2つ目、この件の後我々やモーロックの能力者をどう扱うつもりだ? 
 3つ目だ。我々がこれに協力するとしてそのことを外部に漏らさないことはできるか?」
ウィルが質問する。
「関与した事を隠したいか…ちょうど良い。もとよりその予定だ。 
 検挙した能力者の処遇だが…
 今のところ危険な能力者は旧市街再開発に作られる臨時の刑務所、そこで拘束する予定だ。
 一般の能力者の方は現状維持だ。 
 それから、説得が失敗した場合の対策としては…
 『ヴォイス』の能力を使って抵抗力を奪うことを狙っているようだな。
 情報を流さないつもりなのはそれも関係している。」
「…。 
 『ヴォイス』…ウォン牧師か。なるほど確実だな。しかし、彼がやると言うかな? 
 よし、我々はそのミッション受けよう。 
 ただし…我々が協力するにはアテネ旧市街だけだ。それ以上はあんたたちでやってくれ。」 
ウィルが承諾する。
「良かろう、上には言っておこう。では、決行日は追って連絡する。 
 それから…君達には再び監視が付くようになった。 
 紹介しようブルース・セト。彼の能力は限定的な未来予知、
 それによって致命的な誤選択を前もって知る事でそれを回避することが出来る。」 
キャメロン氏がその隣にいる、黒スーツの若い日系人の男を紹介する。 
「…よろしく。」
ブルースと呼ばれた男が軽く会釈する。
「歓迎するぜブルース。 
 っと…、致命的な誤選択の回避か…
 コードネームはフェイタル・ファーラー(Fatal failure)なんかどうだい?」 
何も無いところから声がする。先ほどウィルにアンビジョンと呼ばれていた人物の声であろう。 
「…よしてくれ。コードネームなんてバカみたいなことあんたたちだけでやってくれ。 
 俺はあくまで監視役だ。前任の誰かさんみたいに馴れ合うつもりは無い。」 
ブルースはそういうと、ST側の左の方にいる男をキっと睨む。
「あー、コホン。とりあえず今日はこれで終了だ。解散してよし。 
 ブルースはそのまま彼らに協力するように。 
 …それから、ヘクター、個人的に話がある。来なさい。」  
キャメロン氏が会議の終了を告げる。
後半は先ほどブルースに睨まれていた男に向かっての発言。
執筆者…Mr.Universe様
「なんです“お義父さん”?」
へクターと呼ばれた男が、キャメロン氏のそばに立つ。
彼は上背のある白人男性で、緑色の瞳とブラウンの髪・どこか子供っぽい感じの残る顔をしている。
「…前から言っているだろうが、お前に“お義父さん”と呼ばれるぐらい腹の立つ事は無いと。 
 まぁ、それはいいとして…その…お前達の間に二人目が出来たって本当か?」 
キャメロン氏は決まり悪そうに小声で喋る。
「ええ!先週、ナンシーと医者に行った所2ヶ月ということです。 
 それと…羊水検査の結果、能力者反応が陽性でした。」
「…くっ…どうせあいつのことだ、堕ろせと言っても産むんだろうな。 
 陽性だからと言って確実に覚醒するわけでもないし、勝手にしろ。ただ、パメラには連絡を入れるようにな。 
 …全く、お前のような奴を監視役に選ぶんじゃなかった。」
「おっと、私のせいじゃありませんよ。 
 “お義父さん”が能力者の取締りをしていたから
 その反動でナンシーが、SeventhTrumpetに入ったんですから。
 それにナンシーに接触するように言ったのは“お義父さん”じゃありませんか。 
 “お義母さん”にはナンシーから電話を入れさせておきます。」 
ぐうの音も出ないキャメロン氏。
「分かった分かった。今日はこれで帰らせてもらうぞ。 
 …それから、ナンシーやロブを悲しませるような事をしたらただじゃおかんからな!」
執筆者…Mr.Universe様
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