リレー小説3
<Rel3.SeventhTrumpet1>

 

 

  火星内某所

 

「地球が滅亡かぁ。実感ないなぁ…。」
「え?ヨナタン、何か言った?」 
金髪碧眼だが肌は黒人の色の少女が、青年の顔におしろいをはたきながら言う。
「いや、独り言だよ。ハンナ」 
返事をする青年ことヨナタン・スタンダード。
彼は新興宗教Seventh Trumpetの主宰サミュエルの息子であり、有数の治療能力者である。 
「それにしても…ハンナ、おしろいは必要ないと思うんだけどなぁ…。 
 それにこのポーズ辛いし。」 
顔を少女の手に届くところに下ろしているため背中が痛い。
「あ、ダメダメ。今日の説教は新聞社の人も来るんだから、カメラ写りを良くしなくちゃ。」 
少女はハンナ・テンプルトン。
かって事故で大怪我を負い身寄りをなくしたが、
ヨナタンの治療で傷を回復しSeventh Trumpetの孤児院に引き取られた少女である。 
何故ハンナがヨナタンの顔におしろいをしているかというと、
Seventh Trumpetの本部教会で行う定時説教に新聞社が来るためであった。 
そしてまた数日前、地球で起きた破滅現象による地球脱出によって
火星へとやってきた難民をSeventh Trumpetが受け入れる事を公にする日でもあった。
「おはようございます!ヨナタン様、法衣を持ってまいりました。 
 あら、ハンナちゃん今日も早いのね。」 
マホガニーのドアを開けて女性職員が顔を出す。
手には純白に金をあしらった法衣を持っている。
「うん、今日は特別だからね!」 
快活な声で答えるハンナ 
「そう。じゃぁ今日はがんばらなきゃね。」

 

SeventhTrumpet…
組織名は黙示録の7つのラッパの最後のラッパより。
キリスト教系の新興宗教。最後の審判はもうすぐだと主張し、
その証拠として能力者たちの出現は神の力の表れだと説いている。
そのため、能力者を敵視しているバチカンとは仲が良くなく、
能力者に対する偏見の少ない現法皇のとりなしがなければ異端扱いされていたに違いない。
表向きの目的は、最後の審判のその日までに
悪魔の代理人である「悪しき者」・悪の支配者の手から人々を守ること
及び神の代理人である「善き者」の保護。
具体的に言えば政府から迫害される能力者を社会的に保護し、
戦闘力的に優れた能力者がテロリストや
違法な活動をする資産家の手から己を守る術を持たない人々を守っている。
そのため、世間一般からの反応は良い。
説教や会合をするための普通の教会の他に、
孤児院・救貧院、そして能力者の保護のための施設を幾つか所有。
其の中には選ばれし者たちの学び舎というものもあり、
此処では自分の力を上手く扱えない能力者に、
その能力の使い方を教えるとともに、年少の能力者の精神的フォローを行っている。
ここで力の使い方を学んだものの殆どは
そのままSeventhTrumpetの実行部隊アークエンジェルズに編入されるが、
彼等の一部がテロリストになったり、失踪したりしていて、
それがSeventhTrumpet批判の理由になっている
執筆者…Mr.Universe様

  数時間後

 

礼拝堂の天井裏、4人の少年少女がキャットウォークに腰をかけている。
彼と彼女らは原色の…なんというか派手で珍妙なスーツをきており、
一人を除いて見分けが付かないような顔をしているが、
それ以上にその背中からが突き出しているのが異様である。 
その下では、Seventh Trumpet主宰サミュエル・スタンダードが
張りのある声で説教をかれこれ2時間ほど続けている。
その横には法衣をまとった彼の息子、ヨナタンが立っている。
ついでに舞台袖ではハンナ・テンプルトンがそれを心配そうに見ているのだが割愛。 
説教壇の周りには薄汚れた服をまとった難民達がひしめいている。
4人の少年少女…彼女達は会合の最後に礼拝堂を飛び回り、
ご利益のある(と言う触れ込みの)クッキーをばら撒くと言う役である。
「あー、早く話し終わらないかな〜。」 
黄色いスーツの少女がダルそうに言う。
「しょうがないじゃない、アナ。今日は特別なんだから。
 地球から来た人たちの受け入れをするって公にするんだから、
 教主が張り切るのもしょうがないわ。」 
赤いスーツの少女がたしなめる。
「うーん、ナターシャの言う事は正しいんだろうけどさ…。 
 別に地球に人が住めなくなったって言われても正直何が変わるんだか分かんないよ。 
 どうせ前から、地球なんて遠くて関係なかったんだし。」 
アナことアナスタシアが愚痴る。
「でもさ、地球に人が住めないってことは、
 芸能人とかも火星へ行かなきゃ行けないわけだよね? 
 そしたら火星でも一番大きい都市のここに集まってくるんじゃないの?」 
緑色のスーツの少女が話に割り込む。
翼をはためかせてホバリングしながら、うきうきとした口調で言う。
「!!! 
 そっか、それは考えなかった!エレナはそういうのにはすぐ頭回るね。」 
と、アナスタシア。
「そういうのって言うのは余計だよ。
 は〜…いままでCDもテレビも1週間遅れだったのが、生放送とかも見れるのねvv
 もしかしたら、ライブにも行けるかも…。」 
名実ともに舞い上がってるエレナ。
「あんたたちねぇ…もっと、普段の生活の事も考えなさいよ。 
 …とりあえず難民受け入れで私達も2人部屋から4人部屋に変わっるみたいよ。」 
ため息を付くナターシャ。
「いっ?4人部屋!!?」 
素っ頓狂な声を上げたのは青色のスーツで、この4人の中で唯一の男性アレクセイであった。
「違うわよ。エレナとアナの部屋にわたしとサブリナが移ることになってるの。
 あんたたち二人とも物持ちすぎだから掃除が大変ね。」 
ナターシャが冷静に言う。 
「…何、勘違いしてるわけ?あんたとは別部屋よ。 
 さては…どうせまたろくでもないこと考えてたんでしょ?」 
アレクセイを冷たい視線で見るエレナ。
「ちっ、ちげぇよ!」 
顔を真っ赤にして否定するアレクセイ。 
「どうだか〜。先月も着替え中にわざと入ってきたじゃないの。」 
アナスタシアがまぜっかえす。 
「うぅう…あれは、知らなかったんだよ…。
 それに姉ちゃんたちみたいなブスの体なんか見ても…」 
悔し紛れについた悪態で姉達を怒らせてしまった事に気付くアレクセイ。
いつの間にやら3方を囲まれている。 
「アレクセイ、いつの間にそれだけ言えるようになったのかしら?
 痛い目を見ないと分からないみたいね」 
エレナとアナスタシアがステレオで喋る。
これはいかんとアレクセイが蒼い顔で覚悟を決めた時。 
「ケンカはやめましょう。そろそろ出番みたいよ。」
執筆者…Mr.Universe様
下のステージではサミュエルの説教がそろそろ終わろうとしていた。 
「…かようにして、
 バビロンの大淫婦は天の国によって引き摺り下ろされるのである。
 アーメン。 
 これにて、今日の説教は終わりです。何か質問は?」
こうして話を打ち切ろうとしたサミュエルだったが、
聴衆の中から子供を抱えた女性が、ガードマンを必死でふりきって出てきた。
子供の頭は包帯でくるまれていて良く分からない。
かすかに動いているのを見る限り死んではいないようだ。 
「教主様、どうかご慈悲を!
 この子は、破滅現象に巻き込まれ、
 一命は取り留めたものの顔を焼かれて、目が見えなくなって…」 
そこまで言って、ガードマンに捕らえられる女性。

 

 

天井裏では 
「あら?今日は実演の日だったっけ?」 
エレナがつぶやく。
実演とは、サンクチュアリことヨナタンの治療能力を聴衆の目の前で行うことである。
前もって要治療者を見つけておき、
説教の最後辺りでさも聴衆の中から出たように見せて、ステージ上で治療するのである。
まぁぶっちゃけしこみであるが、サンクチュアリの治療能力は本物である。
「いえ、その予定は無いはずよ。
 事実はやらせよりもわざとらしいってことね。」 
ナターシャがさめた声で言う。

 

 

ヨナタンは戸惑っていた。今日は実演は無いはず…。
しかも相手はどうやらかなりの重傷らしい。 
しかし、戸惑っている間に女性は取り押さえられてつまみ出されようとしている。
ヨナタンはちらりと父サミュエルの顔を盗み見るが、苦虫を噛み潰したような顔をしている。 
サミュエルは考えていた。ヨナタンの治療能力は卓越しているとは言え、完全ではない。
多くの人が見ている前で失敗しては大事である。
あらかじめ症状を知っていれば
治療方針を立てて成功率を上げられるが、こう急ではそうする事も出来ない。
ここは無難に流すべきか…。
動かない父を見て、判断できなかったヨナタンはちらりと舞台の袖に視線を走らせた。
そこには彼がかって死より助けた少女ハンナの心配そうな瞳があった。 
ヨナタンには、その瞳があの母子を助けるように願っているような気がした。
そして実際、ハンナはヨナタンが自分で判断して治療能力を使うことを望んでいた。
ヨナタンは大きく息を吸い込んで、足を踏み出した。 
「待ってください!」 
本人は威厳のある声を出したつもりだったが、
実際に出た声は裏返った情けない声だった。
隣のサミュエルは驚いていた。
いつも自分が何か言わなければ動かなかった息子が独断で動いている。
「彼女を放してあげなさい。
 我々は助けを求めるものを追い返すべきではありません!!」 
ガードマンは多少戸惑いながらも手を離す。
子供を抱いたまま倒れこむ女性を起こしながらヨナタンは声をかける。 
「ようこそ、Seventh Trumpetへ、歓迎します。 
 お子さんは私が責任を持って治療します。 
 ところで、他にご家族は?」 
「あぁ…サンクチュアリさま…ありがとうございます。 
 この子は、破滅現象の熱風を頭から浴びてこのように…
 ……夫はその時に死んでしまいました。」 
安心したのか女性は泣き出し始めた。 
「…そうですか…。 
 では、お子さんをお借りします。」 
「お願いします、お願いします。 
 神さま、あわれな羊にはもうこの子しか無いのです。
 どうか取り上げないでください。」 
ヨナタンに子供を渡して神(とヨナタン)に祈る母親。
ヨナタンは子供を抱き上げ、顔の包帯をはがしてみたが…
皮膚は焼け爛れていて、正視出来る物ではなかった。
一瞬これを治療できるかどうか心配になったヨナタンではあったが、
ハンナのときはもっとひどかったのを思い出して、治癒能力である治療の光を送る。

 

 

それからどれだけ経ったのか分からない。
数分かもしれないし数時間かもしれない。
ヨナタンが左手で額の汗をぬぐう…。
「終わりました…けれど…」 
「なっ、なんでしょうか…ダメだったのでしょうか…。」 
息を呑む聴衆と母親。 
「…あの、瞳の色が左右で別になってしまいました。すいません。」 
ヨナタンが本当に申し訳無さそうに言う。
「そっ、それだけでしょうか…他に何か…。」 
「いえ、それ以外は成功です。
 今はまだ気を失っていますが、もうすぐ起きると思います。」 
そういっているヨナタンの腕の中で子供がうなる。 
「う〜ん…」 
カーム!だいじょうぶ!?目は見える??」 
ヨナタンから子供を奪い、話しかける母親。
周りの群集も安堵の息を吐く。 
「うん…ちゃんと、見えるよ…。 
 ねぇ、ママ…パパは?」 
子供が弱った声で言う。 
「カーム、パパはね、パパはね、天国にいるのよ。」 
子供を抱きしめて泣く母親。
「サンクチュアリさま、ありがとうございます。
 私はどうして埋め合わせればよいか…」 
泣きながらヨナタンに頭を下げる母親。 
「いえ、カーム君を癒したのは私ではありません。
 私の体を通した神の癒しの力です。 
 感謝するならば神に感謝してください。」 
照れながら言うヨナタン。
サミュエルはそれを見ながらいまだ苦い顔をしていた。 
「…さて、今日の説教はこれまでにいたします。
 これから炊き出しをしますので、ホールの方へお集まりください」
マイクをつかんで宣言するサミュエル。
上で退屈していた4人はその声であわてて飛び出した。
群衆の上を飛びながら、クッキーの子袋をばらまく。 
聴衆はお互いに争って祝福されているとされるクッキーを取り合い、
ある種殺気だったという感じになっていた。
執筆者…Mr.Universe様
彼女達はクッキーをまき終えると
申し合わせた通りに上部の窓から外へ飛び出し、教会を一周回って屋根に降りた。
「ふぅ…これで今日の仕事はおしまーいと。」 
背伸びをするエレナ。 
「…それにしても今日は人多いね。」 
そういったアナスタシアの眼下には
教会に入りきらず外にひしめいている難民達がいた。 
「…そうね。どんなに関係が無いと思ってても、
 アレだけ大きな事件だもの、生活に影響が出ても仕方が無いわ。」 
ナターシャが冷静に言うと。沈黙する3人。
「…でも、そう悪い事だけじゃないみたいよ。
 エレナ、さっき芸能人が火星に来るかもって言ってたよね、
 それ当たってるよ。 
 1ヵ月後、チャリティライブをパルテノンで開催みたいよ。
 出演はスパイク、ジンジャー、アポカトロスとかだって。」 
ナターシャが明るい声で言う。 
「マジ!?アポカトロス様が来るの!?絶対行かなきゃvvv 
 …でも待てよ、ナターシャってそういうのってあんまり興味なかったよね?
 何で知ってるの?」 
アナスタシアは敬愛するロックグループの名を聞いて黄色い声を上げる。
「ふふふ…アナスタシア君、
 それはだね…警備の依頼が来てたからなのだよ。 
 まぁ、わたし達が選ばれるかどうかはわからないけど、
 簡単な仕事だから選ばれてもおかしくは無いわね。」 
ナターシャは4人の代表として会議に出ているのでこの手の情報は早いのであった。 
「そっか〜、は〜行きたいなそれ。 
 …あ、あそこ見て。警察の車だよ。 
 もしかして、その警備の打ち合わせで来たのかもよvv」 
自分に都合よく考えるエレナであった。
彼女の言う通り、下には警察の車が止まって、
中から良く知っているSeventh Trumpet担当の警官が出てきているところであった。 
「アテネドーム(パルテノン)かぁ〜… 
 私は名物の飛び入り参加の方に興味あるかな…」
「飛び入り参加で成功した人って、かなり居るもんね。 
 まあ、相応に失敗した人も居るけど……」
エレナの呟きにナターシャが、 
笑顔で前半を、後半は眉を顰めて答える。
アレクセイの方は3人の姉達の話には入っていかず、 
ぼんやりと民衆を眺めていた。 
いや、アレクセイ自身は其の民衆を「民衆」としては見ていなかった。 
民衆一人一人の特徴を、出来るだけ把握し、 
出来るだけ個々を見ようと躍起になっている。 
だが、人の流れるスピードに付いて行けず、 
数秒で頭が痛くなって来たので止めた。
(………やっぱ…一括りにした方が手っ取り早いよな…… 
  けど……………俺は…姉ちゃん達とは一括りにされたくない…)
執筆者…Mr.Universe様、is-lies

  数時間後・ST司教室

 

「全く…成功したから良いものの… 
 失敗していたらどうする積りだったのだ……」
大司教、サミュエル・スタンダードは先程、 
息子であるヨナタンへの説教を終えたばかりであった。 
ヨナタンの能力は未だに不明瞭な点が多い。 
あの場で失敗でもされたら、STの威信にも関わっていた。 
警備をもっと強めるべきかとも考えていた其の時、デスクの電話が鳴り響いた。
《大司教様、法王様より連絡事項があるとの事です》 
「解った。此方へ回してくれ」 
《畏まりました………》
パイプオルガンのメロディーが数秒流れた後、 
サミュエルに話を持って来た相手へと繋がる。
「…御無沙汰しております、法王様」 
《地球難民を受け入れるという貴方の姿勢に、 
 神は甚く感心しておられます。 
 リゼルハンク本社も貴方達に資金援助をしようと言って来ているのも、 
 偏に、貴方の信心深さと慈悲の心あってのものでしょう》 
「?あのリゼルハンク社がですか?」 
《はい。私も貴方の清き心に感銘を受けました。 
 貴方が前に言っていたサンクチュアリ…ヨナタン・スタンダードの力… 
 現在の医療を遥かに上回る治癒能力… 
 そして報告されている体質変化も、 
 神が起こす奇跡の「しるし」とも見れましたので、 
 奇跡認定委員会に、奇跡として本日、認められました》 
「本当ですか?」 
《はい。まあ、代わりといっては難ですが… 
 近々、ちょっとした頼み事をするかも知れません》 
「何なりとお申しつけ下さい」 
《ふふ…楽しみにさせて頂きます。 
 其れでは…手短ですが…… 
 貴方の行く先に幸多からん事を、アーメン》
電話が切れた後も暫くサミュエルは受話器を握ったまま笑みを浮かべ、
壁にあるカレンダーを見遣り独り言つ。
「もうすぐ…もうすぐだ……… 
 ……そうだ、『御使い』に連絡でも入れるか。 
 これからは更に資金や人材を提供出来る様になるからな。 
 お喜びになる事だろう」
執筆者…is-lies
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