リレー小説3
<Rel3.セレクタ3人娘1>

 

 

「はぁ、いやんなっちゃう」
「エーガの奴ぅ〜…余計な手間掛けさせてぇ」
「エーガさんは結晶で何をする積もりなのでしょうか…」
セレクタの集会解散から真っ先に動き出した3人… 
即ちフェイレイ、シストライテ、レシルの3人娘は、 
クノッソス繁華街にある電話ボックス内に集まっていた。 
割と広々とした電話ボックスだったので狭苦しく感じる事は無いが、 
何分、もう夜も遅い。レシルは眼を擦っているし、 
シストライテに至ってはだらしなく欠伸をしていたりする。
「明日は起きる時間遅くしとかないと… 
 寝不足はお肌の大敵だしね」 
耳に受話器を押し当てながらフェイレイが言う。
「…まだ……出ないんですか? 其のお相手……」
「ん、まあ…珍しい事じゃないわ…… 
 もうちょっと待っ………あ、出た!」 
どうやら話したかった相手に繋がった様だ。 
其のまま口の方にも受話器を寄せる。
「もしもし? …あ、こっちの話。 
 …でさ送った写真見てくれた? え…画素悪い? 
 解れば良いっしょ。名前はエーガ。出身は日本って事になってるけど… 
 ……そう。其れでさ…心当たりは無い? 
 …ん? …ちょっと待って」 
と言って受話器の口側を手で塞ぎ、 
首だけシストライテに向けるフェイレイ。
「ねぇ、シスト。 
 貴方が会ったエーガの仲間って何て名前だったかしら?」
「リーダー格がセートで… 
 後、レオン、ライハ、ミレン… 
 あー…ケイムってのも居たわね。 
 其れと…10数人位仲間が居るとか言ってたっけ…」
顎に手を添えながらエーガの仲間達の情報を伝えるシストライテ。 
其れを頭の中に叩き込んでフェイレイは再び受話器に口を当てる。 
「…もしもし? リーダー格がセート。 
 他はレオン、ライハ、ケイム、ミレン… 
 仲間は10数人程度の少数精鋭…… 
 …可能性がありそうなので良いからさ…  
 …………『仁内の霧』? ……へぇ……… 
 ……そうなんだ。じゃあ其れ、ちょっと当たってくれない? 
 …解ってるって。前の口座で良いんでしょ。 
 はいはい、其れじゃあ何か解ったら宜しく頼むわ」
情報屋との遣り取りを終えてフェイレイが受話器を下ろす。 
今、解ったのは…
日本の関東を中心に活動していた盗賊に、 
『仁内の霧』と呼ばれた盗賊団があり、 
あまり知られていない割には精鋭揃いだった。 
これは… 
彼等の活動回数そのものが少ない。 
彼等の姿を見た者があまり居ない。 
彼等自ら団名を名乗った事がない。 
…からだ。詰まりは『仁内の霧』というのも、 
何処かの誰かが付けた呼び名に過ぎない。 
主に宝石商や美術館などが被害に遭っている。 
又、彼等は対能力者用の装備で固め、 
メンバーの中にも能力者が居り、空中を移動したり、 
気配を悟られる事無く警備員に近付き気絶させたという話もある。
本格的な情報はまだ無いものの、 
あの空を飛んで行った超結晶の事もあり、 
エーガとも何らかの関連があるのかも知れない。
執筆者…is-lies
火星でもかなり腕利きの情報屋として名高いDなら、 
そんなに長い時間を掛けずに正確な情報を提供してくれるだろう。 
其の辺りの調査はDに任せ、3人娘は今夜の宿を探し歩く。
「ふぅん……盗賊団ねぇ……… 
 …もしそうだとしたらユニバース辺りは知っていたかもね、其の事」
「………其れで泳がせているとなると… 
 ユニバースのあの口振りからして、 
 仁内の霧と険悪な関係になる可能性もあるんじゃない? 
 …いやんなっちゃう。精鋭よ、精鋭」
「…何とか話し合いで解決したいものですね…」
平和主義なレシルは飽く迄、穏便に事を済ませたい様だ。 
其れはシストライテやフェイレイも同じ。 
今ですら前支配者・SFESという大敵が聳え立っているというのに、 
これ以上敵を増やしてややっこしくなるのだけは御免被りたい。
「…?」
繁華街を飾り立てるイルミネーションの中、 
レシルは一つの看板を目に留める。
「ん?どったのレシル?」
「……?…『占い屋』?」 
フェイレイがレシルの視線を追った先にあったのは、 
ぽつんと『占い屋』とだけ書かれた看板を掲げた、 
見るからに即興然りといった外見の胡散臭げなテントだった。
「……魔力を感じます…… 
 …しかも……結構大きな…。 
 済みません、ちょっと寄り道良いでしょうか?」
「あ、アタシ達も一緒に行くよ」
執筆者…is-lies

  クノッソス繁華街・『占い屋』テント

 

「いらっしゃいませ、」
薄暗いテント内で3人娘を迎えたのは美しい青年だった。 
右腕を剥き出しにしたローブを纏い、 
其れらしい水晶玉を載せたテーブルに着いている。 
そして其のテーブルの横端には、 
青年と同じ様な格好をした少年が腰を掛けていた。 
悪魔の様な翼や2本の角があるが、恐らくは作り物だろう。
「あ〜、いらっしゃいませ〜。 
 此方におわすはイギリス生まれの稀代の占術士… 
 ルウ・ベイルス、ルウ・ベイルスに御座いま〜す。 
 地球崩壊にて家財道具一切を失った薄幸の美青年にぃ〜 
 どうか、僅かばかりのお恵みを〜♪」 
少年がクネクネ演技掛かったジェスチャーを取りながら口上を垂れる。
「はいはい…。という訳で私はルウと申します。
 貴方の知りたい事を何でも占って差し上げましょう。
 御代は一回50UDから400UDです」
青年がにっこりと微笑を浮かべる。 
代金の差は恐らく内容によって異なるという事なのだろう。
「………なーんかうっさんくさくない?」 
テント内の訳の解らない魔方陣や紋様を眺めつつシストライテが呟く。 
先の紹介一つとってもどこぞのイカサマ興行師といった感じで、 
到底、占いは当てにならなさそうである。
「…でも…今、ベイルスって言いましたよね? 
 …………同姓同名の別人……って事は無いと思いますけど」
「…こんな大胆な事するんだから……もしかしたら本物かも… 
 …………別人だったら100%エセ占い師ね」
だが、ベイルスという名に何やら思い当たる節でもあるのか、 
レシルとフェイレイは真剣な表情で話し合っていた。
「へ? な…何? 何の話??」
「シスト知らない? 
 イギリスのベイルスっていったら…すんごい有名な占い師一族よ。 
 ……確か…的中率は……90%以上だって聞いたけど……」
「ルウ・ベイルスは…東日本の運び屋としても有名ですね。 
 ……そうですか破滅現象で財産を……………可哀想に……」
心底、同情しているレシルを横目に眺め、 
数日前にもアテネで彼女の甘さを見たフェイレイがレシルの身を案じる。 
正直な話、其の甘さが命取りになる可能性は極めて高い。 
だからこそフェイレイは、年長者としてレシル達を護っていかねばと、 
再び己の心の中で誓いを新たに立てていた。
「? ふ…ふぅん? ま…まあ兎も角、凄い人なの? この人?」 
シストライテが眉を顰めてルウを指差しながら、 
如何にも信じらんなーいといった感じの猜疑心溢れる声で言う。
「……本人目の前にしてゆー会話じゃないよねー」
呆れた口調の少年を他所にルウが水晶玉を覗き込む。 
「まあ…そうですね…実際に見て頂いた方が早いでしょう。 
 ……貴方々が知りたいもの……其れは… 
 宙を浮いて去った輝きと仲間を求めて……違いますか?」
ルウの占い結果に言葉を失う3人娘。 
レシルとフェイレイはTVなどでも良くベイルス家の事は聞いていたが、 
流石に実際目の当たりにして驚いたのだろう。
「……………ふぅん… 
 良いわ、200UDで占ってくれる? 
 占って欲しいのは其の仲間の居場所」
あまり警戒されない様に或る程度支払う金額を抑え、 
エーガの居場所の占いを依頼するフェイレイ。 
満身の笑みでルウは金を受け取り再び水晶玉へと視線を落とす。
「……………ふむ…… 
 東南…遥か彼方…光へ裂いた同胞に会う為… 
 其のお仲間…そして輝きも共にありますね」
東南…そして光…… 
記憶に新しいのは5日前の深夜に起こった謎の現象… 
即ち火星の衛星フォボスとダイモスが、 
東南のアレクサンドリアに向け光を放っていた現象であった。 
となるとエーガが向ったのはアレクサンドリアという事であろうか。
執筆者…is-lies
フェイレイが考えている間に、シストライテとレシルが一歩前に出た。
「……ね、ねぇ…フェイレイさん…。 
 ちょっとアタシ…占って貰って良いかな?」 
「あの…私もお願い出来ます?」
「……あのさぁ……ま、良いけどね。 
 良い機会だし…私もちょっと見て貰おうかしら」
女は占い好きというが、もしそうでなかったとしても、 
このルウであれば誰であれ占って貰いたがるのだろう。
「おーし!んじゃ一番手はアタシ〜!」
(ふぅ……こういう時は子供っぽいんだから…)
元気な返事を返すシストライテを見、微笑ましく感じる。 
まるでSFESに奪われた弟の姿を見ている様な気持ちになっていた事に、 
フェイレイ自身気付いてはいなかったが。
「アタシが知りたいのは…… 
 …アタシの行く末… 
 ……50UDでどう?」 
比較的声を小さくしてシストライテが尋ね、金を出す。 
其れはあまり仲間に聞かれたくないという意思をルウに示していた。 
彼女の意を汲み取ったルウがシストライテの耳に口を近付けて答える。
「……貴方は巨大な鷲の内にて友ならざる者を打ち砕きます。 
 貴方に加勢した友と共に全てを終えるでしょう…」
「………そっか…」 
一言だけ呟きシストライテは踵を返す。 
次にルウの前に来たレシルは、 
何やら思い詰めた様な表情でもって質問した。
「…私の、家族を殺した者の、情報を…御願いします。…200UDで…宜しいでしょうか?」
その言葉を聞いた二人が、レシルの方を見る。 
心なしか、その背中は震えているように見えた。 
レシルの正面に座っていたルウは、一瞬黙りこむが、直ぐに口を開いた。 
その者、名をトゥラド。蒼き髪の双剣使い。汝の実力と互角、もしくはそれ以上也。
 その者、目的の為には手段を選ばす。汝、十分に注意するべし。
さっきよりは割と具体的な占い結果である。 
が、やはりこれだけでは何とも言いようがない。 
敵SFESのメンバーの名も一通りは把握していたが、トゥラドという名は初耳だ。
執筆者…is-lies、鋭殻様、Gawie様
「人の名前と容姿だけでは情報とは言えませんね。 
 他にないのですか?」
「あ、あの、私は情報屋ではなく占い師なんですけど… 
 ただ水晶の中に見えたビジョン… 
 いや、文字だったり、声だけだったりもしますけど、 
 私はそれをそのまま伝えただけでありまして…」
「そうですか…では更に200。 
 私の、近い未来に起こる事を…」 
レシルが少し恐い顔になってルウに詰め寄り、 
強引に水晶玉を覗き込む。
「は、離れてください。 
 え〜、それでは… 
 …見えました… 
 …謀略…策略… 
 古の亡霊に魅せられし者が齎す霧の中、 
 輝石の聖女に呪われし者の罠により、 
 貴女達は仇の一つを打ち倒すでしょう。 
 しかし、貴女の心の霧は晴れることはない。 
 迷いは禁物。選択者たる己を信じて進むがよい…
やはり占いは詩のような抽象的な内容であった。 
それぞれのキーワードが何かしらに当てはまらなくもないが、 
どうもレシルは納得がいかない様子だ。 
すると何を思ったか、いきなり勝手に水晶玉を奪い取った。
「もっと具体的に…! 更に200…!」
「ち、ちょっとレシル! これ占い! これ占いだから!! 
 それに次、私の番だし…」 
慌ててフェイレイが取り押さえた。 
フェイレイから水晶玉を返してもらいながら、 
占い師ルウが困った顔で呟いた。
「やれやれ、貴女方は私の手には少々余りますね」
「あの、最後に私も占いを…」 
フェイレイが謝りながら占いを頼むが…
「申し訳ありませんが、今日はもう店仕舞いです。 
 見てください、コレ。 
 貴女方を占ったら水晶玉が曇ってしまいました。 
 どうやら、とても昏く濁った流れの中にいるご様子… 
 いいですか? 
 占いを信じるも、信じぬもその人次第。 
 当たった人も、当たらなかった人も、 
 よい結果に驕るなかれ、悪い結果にうらぶれるなかれ。 
 運命とは常にたゆたうもの。 
 ゆえに、時に人は迷ったりして。 
 迷い子あれば、私の占いが僅かながらのかがり火となればと、 
 切に願っているのでありました」
…などとよく分からない事を嘯きながら、 
ルウは手際よくテントを畳んでしまった。 
要するに、能力者の占いと言えど、それほど確証はないという事だ。 
何だかボッタくられたような気もしないでもなかったが、 
一応、フェイレイ達はルウに頭を下げ、その場を後にし、 
今日の宿をとった。
執筆者…is-lies、鋭殻様、Gawie様

占いで予定外の出費をしてしまったので、 
三人で一部屋だ。
「申し訳ありません。 
 先程は、取り乱してしまいました」
「まぁいいって、なんかエセっぽかったし」
「けど、心当たりがある部分も多かったわね。 
 東南…遥か彼方…光へ裂いた同胞… 
 お仲間…輝き… 
 そして、トゥラド… 
 曖昧な内容だから、 
 輝き=結晶。 
 仲間=エーガ。 
 と、都合よくは解釈しない方がいいかもね」
「そうね、名前が分ったトゥラドって人の事も含めて、 
 一応、占いの事は報告しておきましょう」
 シストライテ達三人は、その日の報告をまとめた後、 
今後の方針を決めるべく話合いを続けていた。 
…つもりであったが、誰かの何気ない一言をきっかけに、 
いつの間にやら、「団員の中では誰がいい?」とか、 
「胸の大きさではフルーツレイドの姉さんには敵わない」とか、 
他愛のない話にすりかわり、結局旅行気分で夜更かししてしまった。
執筆者…Gawie様

翌朝、三人がチェックアウトした時には、 
既にホテルの朝食の時間もとっくに過ぎており、 
三人は少しの遅めの朝食兼昼食をとるため近くのレストランに足を運んだ。 
逃げたエーガの追跡任務と言っても、 
追い詰めて捕えようという訳ではないので気は楽である。 
と言っても、 
早々にエーガの行方を掴み、警戒すべき第三者の横槍を監視しつつ、 
適度に泳がせなければならないという、 
非常に困難な任務である事に変わりはないのだが。
「…という訳で、作戦会議の続き〜。 
 昨日の占いをストレートに解釈してアレクサンドリア行きもアリだけど、 
 ここは合理的に考えて… 
 まずはエーガが乗っていったドイツのクルーザーだけど、 
 監視衛星とかの情報が取れれば補足は難しくはないと思うわ。 
 しかもユニバースが変な改造とかして、先っちょにベンツのマークとか付いてるし。 
 レーダーに引っ掛かればあんな軍機は直に見つかるわね」
「だから、そのユニバースさんの勝手な改造が問題なのよ。 
 未だにガウィーさんから報告がないということは、 
 やはりヴォイドステルスというのを使われたみたいね」
「え〜っと、なんだっけ? 
 それ、ステルス機能?」
「…やっぱり博士の説明を聞いてなかったようですね。 
 ヴォイドステルスというのは… 
 いえ、私も詳しくは分りませんが… 
 機体を特殊なエネルギーフィールドで包み込んで、 
 熱、音波、電波探知等を一切無効化するという、 
 博士が開発した兵器の一つです。 
 実際には30分以上の連続使用は無理だそうですが、 
 30分もあれば大気圏外に脱出する事も可能です。 
 問題は、それがあのクルーザーにも搭載されていたという事。 
 見た目はドイツ軍の旧式ですが、中身は最新の結晶技術が詰まってます。 
 尤もエーガさんがそれを使えればの話ですけど…」
「つまり、未だに見つからないってことは、 
 もうどこに飛んで行ったか分らないって事。 
 理解出来た? システィ?」
「じゃあ何? 地道に足で探せって事?」
「そういう事」
漸く状況の難しさが飲み込めたシストライテだった。
執筆者…Gawie様

一方、まんまと逃げ遂せたエーガだったが、 
彼は彼で今それどころではない状況に陥っていた。 
ちゃっかりとヴォイドステルスの機能を聞いていて、 
それを計算に入れてクルーザーを盗んだまでは良かったが、 
まさかレーダーに発見されない事がアダになるとは思っても見なかったのだ。
エーガはその頃、 
シストライテ達がいる場所からは180度火星の反対側にいた。 
辺り一面なにもない荒野、小さな簡易テントの中で、 
クノッソスに来る途中に出会ったサリシェラという少女と二人っきりで、寒さに震えていた。
何故こんな状況になってしまったかと言うと…
執筆者…Gawie様
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