リレー小説3
<Rel3.セレクタ編1>

 

 

 

「おーい!連中、巧く引っ掛かってくれたぞ!」
寂れた湾岸倉庫の中、 
積み重ねられた木箱の上に跨っていたセレクタの一員が、 
膝の上に乗せていたノートパソコンを見ながら喜々として叫ぶ。
「本当!?ねぇ、私にも見せて!」 
「おー、こりゃ凄い… 
 ネークェリーハは何て言うんだろうな?」 
「どうせ平和の殉教者云々、 
 心にも無い事垂れ流すに決まってるだろ」 
件の男の元へ向かう数名の男女。
追い詰められた能力者がアジトを自爆させ、 
アレクサンドリア部隊の能力者、
そして居合わせたリゼルハンクの社員が死亡したという速報がニュースで取り上げられていたが、 
其れを文字通りに受け取る人間は此処には1人も居ない。 
リゼルハンクが、セレクタの憎む組織SFESの表の顔だからだ。
「ふぅ…」 
わいわいと騒ぐメンバー達を横目で眺め溜息を吐くのは、 
白いローブを纏った金髪の少女… 
セレクタ最強の女術士でもあるレシルであった。
SFESに一泡吹かせてやれた…其れは良い事だ。 
彼女自身もSFESに対しては深い恨みがある。 
だが優しさ故、どうしても… 
其れが敵であっても、人死にを喜ぶ事は出来なかった。 
そんな自分がこれからセレクタの中で巧くやっていけるのか… 
そういう事も心配でならなかった。
「どうしたの?元気無さそうよ」 
レシルよりも少し年上だろうか? 
東洋人風の女性メンバーがレシルの側に来る。
「…いえ………」 
「良いのよ、ちゃんと言ってみなさい。 
 マズい事があったら他の皆には秘密にしてあげるからさ」 
口の前に人差し指を立て、話してみろと言う女。 
躊躇いながらもレシルは、この女性に心の内を明かしてみせる。
「其の…情けないんですけど… 
 SFESとはいえ…人を殺してしまった事が… 
 ………やはり………… 
 其れに…火星の人々も… 
 さっきの事件で不安がってるかな…って……」
「…成程…貴女、優しいのね。 
 ………ねぇ、貴女は何でセレクタに入ったの?」 
優しく微笑みながら女が問う。 
そういえば組織に入った理由はあまり口外していない。
「………殺されたんです…親を……… 
 SFESの情報を偶然手に入れてしまったというだけで……」 
レシルの心に暗い復讐の焔が灯る。
「そっか…じゃあSFESが憎くて当然よね。 
 私はSFESに捕らえられている弟を助ける為…セレクタに居るの。 
 だから…SFESを倒そうって気は別に無いわ。 
 そんな私じゃ、貴女の気持ちを解ってあげられないと思うけど… 
 誰にも迷惑掛けずにSFESを消せるなんて思えないわ。 
 今の世界は良くも悪くもSFESの上に成り立っているんだもの。 
 ユニバースさんじゃないけど、 
 或る程度の犠牲は今は割り切った方が良いわ」
ユニバース…全体の為には個を無視しようという考えが 
度々他のメンバーとの衝突原因となっている、セレクタの創立者だ。 
レシルもあまり好きな人間ではなく、僅かに其の表情を曇らせる。
「其れに……私ね……そもそもはSFESの工作員だったの。 
 …弟を人質に取られて…働かないと弟がどうなるか解らないって言われて…」 
「そんな……じゃあSFESの中には……」 
「そう。望まないで戦いに身を投じる連中も多いわ。 
 早く彼等を解放出来る様、貴女も努力しましょ? 
 犠牲を悔やむのは其の後からでも遅くないわ」
「そう……ですね…… 
 ごとりん博士も頑張っているそうですし……」
執筆者…is-lies
「こんな所で戦意殺げて貰っても難だしな…」
盗み聞きしていた訳ではないのだが、 
獣人故の耳の良さの為、聞こえてしまったレシル達の会話に、 
何となく呟いて返すビタミンN。
無論、彼女達の耳に入る程の声ではないが。
「ん?何か言った?」 
聞こえたのはビタミンNの目の前で一緒に船の整備をしていたシストライテだ。 
もう少ししたら此処にはガウィーとフルーツレイドが戻って来る。 
直ぐに用意していた船に乗り込んで次のポイントへ向かう予定であった。 
万が一の時の為にも整備はしっかりとしておかないといけない。
「いや、何でもない。 
 其れより…報告にあったアレだ。 
 シルシュレイ……お前はアイツを…どう見る…?」 
「…あのロリコンピアス野郎がそんなに気になるの?」 
ウンザリとした表情で返すシストライテ。 
SFES最強と謳われたシルシュレイに関しては、
ビタミンNから既に根掘り葉掘り訊ねられている。
「当たり前だ。俺をこんな姿に…って、 
 ………ろ…ロリコン?」
「そーよ。レシルから聞いたけど、 
 アイツ、なんか本田ミナにはメチャ甘な感じだったみたいだし。 
 アンタがロリコンピアスを倒したいって気持ちは解るけどさ、 
 ……ありゃ正直……勝てる相手でもなさそうよ? 
 タカチマン博士とかと戦っていた時だって、 
 本気って訳じゃなさそうだったし……ロリコンのクセに」
ビタミンNはシルシュレイへの復讐の為にセレクタに身を置いたのだが、 
其の敵がロリコンであったというのは少々ショックであった。
「……ま…まぁ、人型だったんなら本気じゃないな。
 連中、セイフォートは化物の姿になってからが本番だ。
 ……………そういや…シスト。
 お前…101便内で1体仕留めたんだっけ?」
「ま…まぁね… 
 今までのセイフォートラーバ共じゃなくって、 
 大元のセイフォートシリーズ1体を殴ったわ。 
 …ま、逃げられちゃったんだけどね」 
「……逃げられた……か…。初めてのケースだな」 
「そうね。私の能力受けてからも、 
 其の殴ったセイフォートは能力使ってなかったみたいだし… 
 …流石に自己判断も碌に出来ないSラーバとは違うって事かな? 
 …………まあ何にせよ『セイフォートの翼』は封じたわ」
自信満々に敵の一角を崩したと言うシストライテ。 
101便内で闘った『セイフォートの翼』には、 
実際にはパンチを一撃しか浴びせられていないのにも関わらず。
「…だと良いがな…… 
 お前の能力を受けたセイフォートが生きてリゼルハンクへ戻った… 
 詰まりだ、連中は生きたサンプルを入手したってこった。 
 一朝一夕に対策を立てられる事は無いだろうが… 
 今度からはお前も注意した方が良いぞ」 
「……あ…!あっちゃぁ……マズった…… 
 じゃあ『セイフォートの翼』も戦線復帰とかって…?」 
「知らん。だが用心に越した事は無い。 
 ………後、敵の新兵器だが………」 
解らない事を云々と論じても仕方が無い。注意しろとしか言えないのだから。 
其れよりも更にビタミンNには気掛かりになる事があった。
「新兵器?ああ……欺瞞兵器ね。 
 アズ公を仕留めたって思ったら偽者だったの。 
 ちょっと見た程度じゃ見破れないわね、ありゃ」
「……厄介だな。ニセモノ……か」 
ターゲットのニセモノに踊らされはしないだろうか。 
味方のニセモノに騙されたりはしないだろうか。 
実にえげつのない新兵器の登場に、 
苦虫を噛み潰した様な顔になるビタミンN。
執筆者…is-lies
「…所でガウィー達まだかな?」
時間にルーズなメンバーが多いのには慣れている。 
予想通り、予定の時刻を過ぎてもガウィーとフルーツレイドは現れなかった。
「…遅いわね、置いてく?」 
「だな、1時間待って来なかったら出発するか…」
ビタミンNは判断を時計の針に委ねた。 
それから、予定の時間から1時間が経とうとした時だ。 
足音が近付いてくるのが聞えてきた。 
ハイヒールがアスファルトを叩く音…女性が一人だ。
「ゴメン、お待たせ」 
「フルーツレイドか、ガウィーは?」 
「先に行けってさ。 
 佐竹ちゃんを連れて直接例の連中に会うみたい」 
「101便に乗っていた奴等か、用があったのは佐竹って奴だけだろ? 
 まぁ、名古屋大戦の英雄にも会うなら、 
 確かにお前等は一緒じゃない方が良いのは解るが… 
 しかし、ちょっと一人で勝手にやりすぎじゃないのか?」 
「でも、それ言うと、ごとりん博士やユニバースもかなり解らないわよね」 
「…確かに。あとエーガもね」 
「まだ俺達の知らない何かがあるかもしれないな。 
 現に、戦闘員の中にはセレクタという組織名すら知らない者も多いしな。 
 さっきのSFESの欺瞞兵器の話じゃないが、 
 味方のニセモノ以前に、最初から味方がニセモノだったら…」 
「現状がこれでは仕方ありませんよ。 
 ともかく、3日後には全員が揃うのですから、 
 その時に、それとなく確認してみましょう」
如何せん、セレクタ自体まだ結成されて間もない組織だ。 
仲間同士の連携が上手くいかないのも無理はないだろう。

 

ビタミンNがユニバースの誘いを受けたのは名古屋大戦直後。 
フルーツレイドはごとりん博士に従い、そのまま加入。 
何故かガウィーに接触してきたグレートブリテンを加え、 
結成当初のメンバーは、ビタミンNが知る限りではたったの6人だった。 
ユニバースやガウィーが本田宗太郎と知り合いであったことを考えると、 
最初の3人は名古屋大戦以前から何かしらの繋がりはあったのかも知れないが、 
創始者のユニバースがいつから計画していたのかは謎だ。 
その後、詳しい経緯は分らないが、 
ライーダ、フェイレイ、シストライテ、エーガ、レシルが加わり、 
単独でも作戦行動が可能な実力を持つ11人が集まった。 
同時に、リゼルハンクを快く思っていない組織や、フリーの傭兵などから、 
研究員や戦闘員を取り込み、 
僅か数ヶ月で100人余りの組織となった。
だが、SFESに対抗するという割には、まだまだ圧倒的に戦力不足。 
組織と言う割にはハッキリした上下関係もなく、統率も取れているとは言い難い。 
個人的な理由で参加している者が多く、互い深入りしないのが暗黙の了解であるため、 
仲間を完全に信用することもできない。 
作戦といっても、裏工作やゲリラ戦ばかりでは、埒が明かないだろう。 
そんな不安もあってか、メンバーの間には常に微妙な緊張感が保たれていた。
執筆者…is-lies、Gawie様
inserted by FC2 system