リレー小説3
<Rel3.ナナシ2>

 

 其れは何よりも安らかだった、 
 少年は波に漂う海月の様に…風に吹かれてざわめく木々の様に、 
 唯、心地良かった…。 
 其の世界を揺蕩う侭、其の世界が己の一部である様に… 
 だが、唐突に世界がぼやける。 
 少年は気付いた。 
 これは夢だ。 
 まだ覚めたくない! 
 もっと長い間、此処に居たい。そう思って少年は 
 必死に今の世界を想像して、自身を夢に繋ぎ止めようとするが… 
 其の世界は無常にも、段々と別の世界… 
 即ち、現実の世界へと姿を変えていく。 
 同時に、底へと沈澱した意識が引き戻される感覚。 
 遊離した自身と世界とが接続する感覚。 
 覚醒。
「…………」
1人の男が少年の顔を覗き込んでいた。 
まるでエジプト王族のマスクみたいな髪型をした男であった。 
「…何だてめぇは!?」
  ガスッ!
へぶぉわぁ!?
少年の鉄拳が男の人中を直撃した。
ズザザザザァァ
男はドアの所まで吹っ飛ばされた
「…ここはどこだ!?」 
少年は辺りを見回した、何も無い部屋だった 
あるのは、少年が寝ているベットと、 
ぶっ飛ばされてぴくぴくしている男だけだった

 

「邪魔だ」 
グシャ! 
マシュー!!
ドアが開き、入ってきた少女に男は踏みつけられた、
「…起きたか、」 
「あ…?誰だ?お前…へぶ!」 
ばさ 
「着替えだ、着たらこっちに来い」 
少女は着替えを少年に投げつけ、用件を言うと 
男を起き上がらせて部屋から出て行った、
「…なんだ、あの女は…」 
少女の態度に少年は腹が立った 
少年はああいう態度をとられるのは凄く気に入らなかったのだ 
少年はブツブツ文句を言いながら渡された着替えを着た 
「サイズがでけえよ…」 
そして少女がいる部屋へと行った。
執筆者…is-lies、R.S様
「オイ!来たぞ」 
威勢良く扉を開け、テーブルに座っていた先の少女に言い放つ。 
家は若干古い感じだが、造りはしっかりとしている。 
窓から覗く景色を見るに、2階の様だ。 
外の雨はすっかり止み、朝日と雨の雫とが反射して、 
朝の光を一層、眩くしていた。 
下の階からは子供の声が聞こえて来る辺り、 
古い学校…もしくは孤児院か何かなのだろう。 
状況を省みるに、後者が有力候補か。
「座れ」 
促される侭、少女の反対側の椅子に腰掛ける少年。 
テーブルの上にはフルーツの入ったバスケットや、 
何らかの書類なのか…細かい字の描かれた紙切れが置いてあった。 
天窓から採光された光が少年と少女、其々の姿を霞ませる。
「質問」 
ビシッと片手を上げる少年。 
「何だ?」 
「どうしてオレを助けた?此処は何処だ?お前、誰だ? 
 後、服のサイズ何故デカイんだ?」 
「人の名を聞く前に自分から名を名乗るのが礼儀ではないのか?」 
「く…」
むかつく…少年は心の中で呟いた。
「名前なんて…ねえよ…」 
一応製造ナンバーがあったが、彼にとっては嫌なものなので、 
少年は言わなかった。
「彼女はヨミ、そして私は時田だ。」 
先ほど少年がぶっ飛ばした男が部屋に入り、言った。 
「は?てめえの事なんざ、聞いてねえよ、スフィンクスヘッド
「スフィ…!」 
時田は少年の言葉にショックを受けた。 
気にしていた…というか気づかなかったのだ。 
「なるほど…スフィンクスみたいな頭だ」 
ヨミと言われた少女は納得した、
「お前を助けた理由は二つだ、 
 一つは、お前みたいな行き倒れを拾うのが俺の仕事だ、 
 そして二つ目…お前、キメラだろう、」 
「…よく解ったじゃねえか…」 
意外だった、たかが人間の女が自分の正体を知ってるなんて 
だいたい今まであった、チンピラどもは獣人と間違えていた。 
しかし、この女はすぐにわかったみたいだ…
「服はあいにく俺のしかなかった、」 
「ふん…レースクイーンみたいな格好じゃなくてよかったぜ」 
少年はヨミの服装をみて、嫌味ったらしく言った。
「他に質問はあるか?」 
しかし、ヨミは平然と話を続けていた。 
「ねえよ…じゃあな、」 
少年は席を立ち、窓から外に出ようとした、
「待ちたまえ!どこへ行くつもりだ!?」 
「スフィンクスヘッドはシャラッピング! 
 オレは自由になったんだ!どこかでのんびり暮らすんだ!」 
「そのどこかとはどこだ?」 
少年の発言にヨミは質問した。
「さあな!あばよ!…あぎ!
少年が窓から飛び降りる途中で少年の首が絞まった。 
「お前が逃げんように首輪をしといた」 
ヨミの手には縄がつかまれていた、 
縄の先には少年の首輪があった、
「なんの!こんなもん!んぎぎぎぎ…!」 
少年は首輪を引きちぎろうと手に力をこめた。 
「無駄だ、今のお前の力ではそれを引きちぎる事などできん」 
「ちくしょおおおお!はずしやがれえええ!」
このあと少年がおとなしくなるまでに3時間かかったという…
執筆者…is-lies、R.S様
「キメラは、獣人や素材クローンと同じく人権が無いぞ。 
 更にキメラの能力を考えると必ず捕獲…場合によっては抹殺か… 
 まぁそういった部隊が編成され、騒動を起こしてしまう。 
 此処に居ろ。匿ってやる。これはお前の為でもある」
「ぜえ…ぜえ……選択の余地無しじゃねぇかよ!」 
「そうだな」 
首輪を外そうとして疲れ果てた少年に、 
表情一つ変えずに言い放つヨミ。
「ヨミ、此処は孤児院だ。
 其の子の境遇等は問題ではない」 
「黙れ、スフィンクスヘッド
「お…おまへまで………!!」 
部屋中に「ガーーン」という効果音が響き渡ったような気がしたのは 
少年の錯覚であったのだろうか。
「ちきしょう…仕方無ェ…でもコイツが外れればソッコー逃げるかんな!」 
漸く折れた少年を前に一息付く一同。

 

「時田さーん!お客さんだよー!」 
だが、一階から聞こえて来た子供の声が、 
波乱の始まりを告げていた事等、誰にも予想出来なかった。
「お…イオが呼んでいる 
 …客?誰だ………ちょっと待っていてくれ」 
階段を下りて行く時田を他所に、 
緑髪の少女は少年を眺めて、本題を切り出す。
「所でお前…普通のキメラとは何か違うだろ?」 
「は?そうかァ?」 
唐突なヨミの言に困惑気味の少年。 
何かが違うと言われても、何が違うと言うのか。
「………お前…何処で生まれた?」 
聞かれて思い出した光景…少年は少し苛立って答える。 
「丘の上の広場の地下!其れ以外何も知らないぞ」 
「丘の上の広場………リゼルハンクの演習所か。 
 …妙だな…。多角企業とはいえキメラとは…」 
少年には、これ以上話す事等無い。 
何より今は疲れた身体を休めたかった。
「部屋位は用意してあるんだよな?」 
「…ああ、お前の部屋は………待て。 
 そうだな…いつまでも『お前』はいかんな…… 
 ……ふん……『名前が無い』……か……」 
暫し、考える様な仕草をしてから……
「よし、お前の名は今日から『ナナシ』だ」
当然、血管を浮かばせて抗議する。 
「ンだよ其れ!?適当過ぎだろーがよ!」 
「名が無いよりは遥かにマシだろうが。つべこべ言うな」 
この女、いつか泣かす。そう心に誓うナナシであった。
が…
「やっぱり名前があった方が解り易いなの。JK−112
突如、自分の背後から聞こえて来た少女の声。 
そして得体の知れないプレッシャーを感じて一瞬、金縛りになるナナシ。 
対面のヨミは僅かに眼を開き、ナナシの背後を注視する。 
誰か居る。しかも一瞬で入って来た。
「高津の命令なんかはどうでも良いけど、 
 ライズの降格に繋がると聞いたら黙ってる訳にはいかないなの」 
ライズ…以前、ナナシを追って来た男の名だ。
「何者だ、お前?」 
「紅葉は『紅葉』なの。 
 其処のJK-112ことナナシを大人しく渡して欲しいなの」 
状況を飲み込んだナナシが振り向く。
「これが追っ手かよ…だったら力尽くで……」
目前に佇むのは狐の様な耳と尾のある13歳程の幼い少女。 
だが…其の顔はキョトンとした感じで凍り付いていた。 
「?」 
顔に何か付いているのか? 
そう思ってペタペタと自分の顔を触るナナシ。
ずかずか、 
紅葉と名乗った少女は、ナナシに近づいてきた。
「お…お…」 
「…」 
紅葉の顔はまるで、恋をする乙女のようだった、 
気のせいか紅葉の目は少女漫画のように輝いている。
「よ…よるな!なんかよるな!」 
紅葉の異様な気配に、ナナシは後ずさりした。 
…素敵…
「なんですってぇぇぇ!?」 
惚れられた…ナナシは紅葉の心に気づいた。
「良かったじゃないか、ガールフレンドが出来て。」 
何故かヨミは優雅に紅茶を飲んでいた、 
「こらあ!!何呑気に茶しとるか!ワレァァァ!」
「ナナシ〜、愛してるなの〜」 
「何なんだよ!オメェーはよぉ〜!!くっつくんじゃねえよ〜! 
 オレを連れ戻しに来たんじゃねえのかよ〜!!」 
「あ、そうだったなの…」 
ようやく、紅葉は本来の目的を思い出した、
「ナナシを連れて帰って…ライズに喜んでもらうなの…」 
そういうと紅葉は、ズボンのポケットからカプセルを取り出した。
「そ、それは…!」 
其のカプセルには、見覚えがあった… 
施設で受けた戦闘訓練の時に飲まされてたものだ、 
B・D…」 
ナナシは呟いた、 
B・Dとはバーサーカードラッグの事、 
それを飲んだものは狂戦士になり、破壊の限りを尽くす…
「バ…の、飲むなあ!」 
ナナシが叫んだ時はすでに遅かった、 
紅葉はもうすでにB・Dを飲んでしまった、
「ヌグ…ググググ…!」 
紅葉の目の色が変わってきた、 
「む…いかん…!」 
「おい…」 
「なんだ?」 
「スフィンクスヘッドや、他の人間どもを連れて、 
 失せろ…!こいつは、オレが追い返す!」
流石に戦闘が激しくなるだろうと踏んだヨミは、
ナナシに言われ、下の階へと降りていった。
執筆者…is-lies、R.S様
ナナシはサイを取り出し、紅葉を睨む。 
「うりゃっ!」 
サイを長くして、中距離から殴りかかるナナシ。しかし、あっさりとかわされてしまう。 
「ちっ!」
「…グゥッ!」 
紅葉もチャクラムのような武器を投げ、反撃を開始した。 
「うりゃぁ!」 
その攻撃を避け、再び長くしたサイで薙ぐナナシ。
「…!!」 
「…?」 
辺りに何か強いオーラのようなものが溢れる… 
「なん…だ?」
空間が乱れ、時の波は崩れ、世界の流れが…止まる。 
「…ググググググ…!!」 
動けるはずのないナナシに容赦なく攻撃を仕掛ける紅葉。
ぐあああ!!
ドガア!!
時が動き出した時、ナナシは孤児院近くのゴミの山の方までぶっ飛ばされていた。 

 

 

 

部屋の中で彼等を傍観していた2名…
既に退避していたヨミ達でもない。
白い髪の青年…そして黒い子竜……
魔法で姿を消した彼等は、冷静に紅葉の能力を分析していた。
「面白い能力ですね。世界の動きを止めるとは…」 
「なんで僕達は動けてるのさ?」 
「魔力で防護壁を作ったからですよ。私はなしでも構わないのですが、グレイは動けなくなるでしょうから。」 
「どういう原理なの?この能力。」 
「さぁ…一概に「こう」とは言えませんね。」
執筆者…you様、R.S様
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