リレー小説3
<Rel3.ナナシ1>
  火星、アテネ 
  リゼルハンク社SP演習所。

 

疾走。1つの影が木々の間を駆け抜けていた。 
『其れ』は猪の様な荒々しさ、併し其れでいて機械のような繊細さで、
僅かに梢を折る音を周囲に響かせるのみであった。 
『其れ』は顔面を叩く空気等、意にも介さず唯、走り続ける。 
ふと、空の開けた場所で『其れ』が立ち止まった。
胸にネームプレートらしきものの付いた貫頭衣を着た少年である。 
高く見積もっても12歳位であろう、幼い子供。 
風に舞う髪は月明かりを受け、白く輝いていた。 
ネームプレートにあった文字は『JK−112』。名前ではない。 
少年は人間ではなかった。 
其れを表わす様、貫頭衣の裾からは、蒼く細長い猫の様な尻尾が出ている。 
少年は眼を閉じ、感覚を研ぎ澄ます。 
周囲の空気が変わり、木の葉のざわめきも止む。 
暫しの静寂……少年の長い獣耳がピクンと立った。 
同時に眦を決する。緋色の眼が森の奥の闇に据えられた。 
跳躍。一瞬で少年は20m程離れていた木に飛び乗っていた。
そして後ろに眼を遣る。 
森の奥から幾つもの光が近付いて来た。 
ライトを持った男達だ。全員が武装している。
「おい!地雷が作動してないぞ!?」
「馬鹿言え!俺はちゃんと此処に追い込んだぞ!」
木の上で笑いを堪える少年。 
自分の『追っ手』の何と愚かな事。 
ほんの少し跳べば良いのに、何故気が付かない? 
迷路を早く脱出したいなら、殴って壁を壊せば良い。 
地雷を踏みたくなければ仕掛けの臭いを察して跳べば良い。 
この少年にとって周囲の人間は馬鹿ばかりであった。
「お前等、アレが何なのか知らないのか? 
 跳んだに決まってるだろうが」
静かな声。少年は「おっ」と思い、気を引かれた。 
オロオロする今迄の人間達とは違う様だったからだ。 
先の声の主は、サングラスを掛けた青い髪の青年である。
「併し『ライズ』、この地雷原を……」
ライズと呼ばれた青年がやれやれと答える。
「奴は今迄のキメラとは訳が違うんだぞ? 
 まあ、『楔』はしてあるから、そう遠くへは行ってない。 
 ……探せ」
追っ手の部隊に命令を下すライズ。どうやら地位はある様だ。 
其の時、少年は気付いた。
ライズが自分の方を見ている。其の口は…笑っていた。 
サングラス越しでも解る程の絡み付く視線。 
確実に視られている。 
応援を呼ばれる前にキメラの少年は其の場を後にした。
「…………」
執筆者…is-lies

「チッ!何処に居やがるんだぁ? 
 『脱走した個体のガキ』はよぉ!?」
重武装のヘリを操作する残虐そうな…併し雑魚っぽい男。 
サディスティックそうだけど雑魚っぽそうな顔… 
其れが彼…『みつお01』が子供の頃から言われている事だった。 
嘗て…彼はごとりんという男の組織に所属していた。 
そこそこ地位があったものの、上司のミスで瀕死の重傷を負った。 
其処を現在の組織に拾われた訳だ。今では将校を務めている。
「ムッ其処かァ!!」
森を駆け抜ける白い粒を発見したみつお01。 
速度からして人間ではない。仲間でもない。
「おっしゃ! 発見だぁ!
 暴徒鎮圧弾発射ぁ!」
みつお01は煙幕を森へと撃ちまくる。
燻り出されたキメラ少年がキッとヘリを睨み付けた。
「はっはー! 逃がさんぞ!!」
叫んで暴徒鎮圧弾を次々と撃ち込むみつお01。
「…やった…か?」
煙幕でよくは見えないが、奴の居た辺り一面に 
暴徒鎮圧弾を撃ち込んだ。これではそうそうには…
「どこを見ているんだ?」 
!?
その声に驚き、振り返った先に居たのは、 
先ほどまで森の中に居たはずの「標的」だった。
「なっ!?…!??」
確かに、確認はした…
「死ね。」
執筆者…is-lies、you様
造作もないことだった。煙幕など、意味はない。 
気配で十分に「何か」が幾つも降ってきているのが確認できた。 
一つ目を避けたとき、その「何か」がなんなのか理解した。 
どうやらゴムの塊のようだった。 
爆発したりするような機能はついていないらしい。 
それだけわかれば十分だった。 
次にどこに降ってきているのか見極め、跳んだ。
「な…!?…!??」
目の前の男はまだ理解できていないようだ。 
つくづく馬鹿な奴らだ。笑いがこみ上げてくる。 
どうしてここまで来れたか、簡単なことだ。 
なにせ、こいつがわざわざ「足場」を用意してくれたんだからな。 
その上、煙幕を張って 
こちらの動きを確認できないようにしてくれるというオマケつきでな。
「死ね。」
簪状の武器である釵(サイ)を取り出し、みつお01の胸につきたてようとした次の瞬間、
「…なにか来る…!?」
とっさに危機を感じ、窓を突き破って外に飛び出す。 
刹那、ヘリにミサイルが当たったらしく、爆発した。 
そのまま受身をとり、森の中に着地する。 
どうでもよいが、さっきの男はオレが破った窓から飛び出し、 
オレの着地した近くの木に落ちてきた。 
無事とはいえないが、どうやら生きているらしい。運のいい奴だ。 
そして、信号弾を見てか、続々と集まってきたヘリに視線を戻した。
「こうなったら徹底的にやってやる…。」
サイを持ち、ヘリの群を睨みつけた。
執筆者…you様

丘の上から其の戦いを見守る影があった。 
黒い影。頭の位置には赤い付け鼻もある。
「シシシ、アイツ…重装ヘリを落としてる」 
演習所内に奔る閃光と爆音。 
其の光に照らされても尚、影は『影』であった。
「面白いだろ?」 
「そりゃぁ、オイラ達…そして『前支配者』にも通じるんだ 
 コレ位はして欲しいさシシシ。其れじゃぁ見送って来るよ」 
隣に佇む青年ライズに笑って返し、影は丘から飛び降りる。

 

「ふぃ〜、終わった〜」
ヘリの残骸が散乱する広場で一息吐く少年。 
隊長機を真っ先に潰されて(潰して)統制が取れていなかったとはいえ、 
10機以上の重武装ヘリが返り討ちにされたのだ。
「さて…早めに此処、離れよう」 
直ぐにでも後続部隊が現われるだろう。 
少年は気配を殺して森へと進んでいった。

 

「ふう…力出ない……」
はしゃぎ過ぎたと思いながら、足を引っ張る。
   ぐう〜〜 
腹の虫が喚く。辺りを見回して何か無いか探す少年。 
ふと、一本の樹に幾つかの実が生っていた。 
赤く、甘酸っぱい様な匂いがする実だ。 
表情を綻ばせて少年は樹に近付く。だが、 
途中で強烈な気配を感じ、足を止める。 
良く見ると、樹の上には何者かが腰掛けてた。
「君ぁ外に出た事無いから知ってるのか知らないのか… 
 まあ、コレはリンゴっていう実なんだよ」 
赤い実…リンゴを手に取って弄ぶ影。 
全身黒尽くめで、赤い付け鼻をした男だ。
「オイラはバチカル(無神論)に対応するシャーマーン『トッパナ』。 
 さっきの戦闘、見せて貰ったよ。やるね」 
先のライズという青年に似た感覚。 
知らず知らずの内に少年は身構えていた。
「でもさ、何処かでストップ掛けてるでしょ?」
ニヤリと笑うトッパナ。鋭い牙が幾つも顕わとなる。
明らかに人間ではない。異形の類だ。
「アダムがエヴァに唆されて知恵のリンゴを食べた時、 
 2人の後ろから、神様が声を掛けたんだ。 
 アダムは驚いてリンゴを丸呑みにしてしまった… 
 男性の喉仏って其の名残なんだとさ。知ってたかい?」 
自分の喉を指で軽く叩きながら続ける。
「アダムは、この期に及んで神を畏れていた。 
 だからリンゴを喉に詰まらせたんだ。 
 君も己を創った創造主の事なんてさっさと忘れな」
少年にリンゴを投げて寄越す異形。 
「ソイツを食べたら、もう後戻りは出来ない。 
 楽園追放…其れが嫌じゃなければ食べると良いよ。 
 ああ…喉に詰まらせない様、気を付けな。シシシ」
少年は暫くジーっとリンゴを眺め…… 
  シャリッ
 一齧りした。 
「神なんかクソ喰らえだ」 
鋭い眼でトッパナを睨み、リンゴを食べる。 
其の少年の様子に満足気な笑みを漏らす異形。
「ヒヒヒ…後悔しないって事だね。OK」 
言いながら、鋭い尖った指で西を示すトッパナ。
「出口はあっちだよ。 
 今の君、かなり弱っているから 
 早く行った方が良いよ」 
指差された方向を見る少年。だが、視界に広がるのは一面の闇。 
視線を樹に戻した時…既に異形は其処に居なかった。 
このまま手を拱いていても仕方が無い。 
空腹が少し癒された所で、少年は再び歩き始めた。
異形…トッパナの言に偽りは無かった。
巨大な鉄の門を破壊。電流の流れた有刺鉄線を裂いて脱出した。
執筆者…is-lies

「これが…外の世界………」 
歩いている内に少年は呟いていた。 
今迄彼の居た演習所は、丘の上に建てられていたらしく、 
道路沿いから眼下の町が一眸出来た。 
本で(大半は漫画だが)しか見た事が無かった。 
高速道路を走る自動車…高層ビル… 
無数の灯火が照らし出す『アテネ』の街(ポリス)のシルエットが 
少年に今迄無い程の興奮を与える。
だが、併し……

 

 

一週間後
「腹減った…」 
少年は呟いた、顔色も悪い 
アテネに着いてから一週間、彼は碌に飲み食いしていなかった 
「このままじゃ…危険だ…」 
目の前がぼやけて見える… 
毎日、野良犬と残飯の取り合いをする生活だった
「オレは…死ぬのか…」 
ついに限界が来たのか、少年はその場にばたりと倒れた、
ぽつ…ぽつ…
少年の頬を冷たい水滴が濡らした 
雨が降り始めたのだ、
(雨か…口開けてりゃ、少しぐらいは腹に入るかな…)
ぼ〜っとそんなことを考えてるうちに 
彼はゆっくり目を閉じ眠った 
「(…もう一度…会いたかった…)」
少年の脳裏に1人の女性が浮かんだ 
その女性はにっこりと微笑んでいた
がしゃん…がしゃん…
少年が寝付いて1時間後…機械的な足音が周囲に響いていた 
「なんだよ…うるせーな…腹に響くじゃねーか」 
音のせいで目が覚め、少年は不機嫌になった 
音はどんどん近づいてきた…そして…
ぐしゃ!
あぎゃ!!
少年は何かずっしりしたものに踏み潰された 
@;p¥…!
もう声にならない叫び声を上げ、そのまま失神した
グルルル… 
その少年を踏み潰したものは機械の竜だった 
「?どうした?スマウグ、」 
その機械竜の上には明るい緑の髪のリボンをした少女が乗っていた 
年齢は14から16で黒いコートを着ていた
「…また踏んだのか…」 
少女はふう…とため息をつくと、スマウグと呼ばれた機械竜から飛び降りた。
「…なんだこれは?」 
スマウグが足をどかすと、薄っぺらい紙のようになった少年がいた。 
「…なんて漫画みたいな潰れ方をしているんだ…」 
表情を変えず、呆れたように少女は呟いた。
「ん…?」 
少女はふと少年の、右手の甲を見た。 
「…キメラか…」 
ぼそりと呟くと少女は、少年を抱え、スマウグに乗って、 
来た道を引き返していった。

 

 

雨はもう上がっていて、月が顔を覗かせていた。 
その様子を小さなビルの上から見つめる影が、一つあった。 
「うふふふ…見つけたなの…」 
月の光に照らされて、影は一人の小さな少女の姿を映し出した。 
少女はにこりと笑い、姿を消していった。
執筆者…is-lies、R.S様
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