リレー小説3
<Rel3.クロノ2>

 

「た、ただいま〜」
「あ、お兄ちゃんお帰りなさい」
ミンファか、母ちゃんは?」
「さぁ、お仕事じゃないの」
(仕事?)そっか… 
 ブルーノ達は?」
「あぁ、奥で寝てるわ」
「なぁ、ミンファ… 
 実は…南天先生の所のはもう行けなくなったんだ。 
 新しい病院を探そうな?」
「ふ〜ん、そうなんだ」
「あ、この包帯は気にしなくていいからな。 
 仕事でちょっと怪我しただけだから…」
「ふ〜ん、そうなんだ」
「それでさ………」
「そんな事よりお兄ちゃん。 
 お客さんよ、居間にいらっしゃるわ」
「客…?」
「えぇ、保安部の、エライ人だって…フフフ…」
「……………ッ!?」
自分の心臓の鼓動を感じ取れた。 
今まで見せた事も無い様な邪悪な笑みを浮かべるミンファ… 
いや、其れはミンファなどでは決して無い。 
モーロック内部でルビーに化けたグレートブリテンと会っていた為、 
クロノの頭の中に真っ先に閃いたのは、 
相手が変身能力でミンファに変化しているという事だった。
「……お前……誰だよッ!?」
「うふふふ、声が震えているよお兄ちゃん。 
 …誰ってミンファ以外に誰が居るっていうの? 
 アレクサンドリア・モーロックじゃ兄者が御世話になったみたいね。 
 のクセに随分と度胸がある…でも所詮は猿。賢い選択じゃないわ」
猿…火星政府保安部のバケモノを思い出す。 
今のミンファが纏う雰囲気は正に其れだ。 
尊大で自信に満ち溢れて、他者の全てを見下しているかの様な態度… 
このミンファの姿をした何者かの言う兄者とは、 
あのバケモノの事を指していると見て間違いは無さそうだ。
「……本物のミンファは? ブルーノ達は!? 
 お前、俺の家族はどうしたッ!?」
「ミンファは此処に居るじゃないの。アンタの眼って節穴? 
 ああ…序でに聾みたいね。さっき言ったでしょ? 
 …ブルーノ達は奥で眠ってるってさ。ふかーいふかーい眠りに落ちてる。 
 お母さんが帰って来たら… 
 今度はお兄ちゃんの目の前で眠って貰おうかしら。ふふふ」
其の言葉の意味するところは…
「ッ!……テメェ!!」
相手が妹と全く同じ外見という事も忘れ、 
ただただ激情に任せて拳を振り上げるクロノ。
「うふふふふふ…猿が…。 
 言っておくけど、この体は間違いなく貴方の妹のものよ。 
 私はちょっと体を借りているだけ。 
 お前に妹を殴れるの?」
クロノは一瞬、動く事を忘れた。 
頭の中に入った情報を整理するだけで精一杯となる。
バチンっ!!
無論、そんな隙を見逃す相手ではなかった。 
クロノの胸に押し付けられたミンファの手… 
其の手に握られていたのは未だ軽く放電を続けるスタンガンであった。 
ガクリと地面に倒れ伏すクロノ。
「ふふ、猿の道具も中々面白くなったわね。 
 …其れにしてもこんな子供がマスターと認識されるとは… 
 まあ良いわ。今度はしっかりと洗脳してから使ってあげる」
「ち…畜生……ッ!!」
クロノは痺れて碌に動けず、倒れたままの姿で、 
ヨロヨロと腕をミンファ…の体を乗っ取った者に向って伸ばす。 
だがミンファは侮蔑の表情でクロノを見下しながら、其の手を踏み付けた。 
苦痛に一層、顔を歪めるクロノだが、 
全身の疲労や喰らったスタンガンの効果もあり、 
最早、指一本動かせそうに無い。
執筆者…Gawie様、is-lies
「くっくっく…愚かな猿め… 
 我々から逃げ切れるとでも思ったか?」
居間からぬっと現れたのは白服の男… 
火星保安部のバッジもちゃんと付けてあるが、 
先程サテライトキャノンで吹き飛ばした男とは別人らしい。 
いや、正しくは…体は別人…だろう。
「よくもあんな真似をしてくれたな… 
 耳を千切り取るだけでは恐怖が足らなかったか?」
白服が怒りと酷薄な笑みで顔を歪ませる。 
どうも相手は、人間の体に取り付いて動くタイプの能力者… 
そうでなくばオカルト等にある憑依霊などのバケモノだろう。 
どちらにせよ全く正体不明である事は変わりが無い。
「まあ良いさ。これからはもっと…… 
 ………ん?」
突然、眉間に皺を寄せてクロノの顔を覗き込む白服。
「? 如何なさいました、兄者?」
「これは………貴様に感じるこの感覚… 
 ……そうか…だから貴様は私を此処まで憤らせたのか! 
 …ふはははははははは!! だが愉快だぞ! 
 あの…あの貴様が……とは言え、 
 今ではこんな無力なガキとはなァ!!」
今までの怒りを嘘の様に一転させ、白服が急に笑い出す。 
其れはまるで学校の苛めっ子が良い苛め相手を見付けた時の様な…
「…兄者……まさか、この猿は……」
「ああ、間違いあるまい。 
 ゼムセイレス等と共に我等を散々コケにしてくれた… 
 ……あの忌々しき呪われた者… 
 …其の残滓か…………くくっ」
顔中に余裕の笑みを張り付かせながら白服が倒れたクロノに詰め寄る。
徐々に意識が遠退く。 
これで終わりなのか? 
やっとの事で逃げて来て、其の結果がこれなのか? 
絶望の中でクロノの意識が途切れる。
執筆者…is-lies
「生憎と、其の子はアンタ等にくれてやれる程、安かないのよね」
いつの間に其処に居たのか。 
玄関の縁に寄り掛かり白服達を見やっていたのはアリエスだ。 
もしクロノが起きていれば、バイクで迎えに来たりした事から、 
アリエスの目的がずっと自分にあったという確信を持てただろう。 
だが今、此処に居る白服達にはそんな事、関係無かった。
「ん?貴様は…あの時の猿か。 
 丁度良い。今、この場で縊り殺してやる。 
 …と言いたい所だが…今の私は機嫌が良い。 
 貴様の態度次第では許してやらん事も無いぞ?」
虫けらを見る様な眼でアリエスを見下しながら、 
白服は尊大な態度を崩さずに口の端を吊り上げる。
「…なぁに調子に乗ってんだか…… 
 高がサーヴァントの分際で…」
併しアリエスは全く動じない。小馬鹿にした様な… 
いや、完全に馬鹿にしきって肩を竦めるジェスチャーを取って見せる。 
白服は怒りを露わに…しなかった。 
一瞬だけ体を震わせた後、真剣な表情へと戻り、 
アリエスを睨みつけながら抑揚の無い声で喋る。
「………貴様っ……我等を其の名で呼ぶなッ!! 
 …………いや、待て…… 
 …我等がサーヴァントと呼ばれていた事を知っていたとは… 
 …………まさか貴様、前支配者の手の者か?」
「はぁ? 前支配者ぁ? 
 ……なーんであんな生きた化石共の部下なのよ、この私が。 
 アンタ等もゼムセイレスとかに封じられたからって、 
 何でもかんでも前支配者と繋げてんじゃないわよ」
「……其の口振りからすると… 
 どうやら貴様は我々の事情も少なからず知っている様だな。 
 ………貴様は一体、何者だ?」
「…聞きたい? 
 ………まあ… 
 ……教えてやっても……」
アリエスの動きは素早かった。 
数発の魔法弾を白服へと飛ばし、自らも其れに追い縋る様に突進する。 
不意打ちを喰らった白服は其のまま背後の壁に叩き付けられ、 
近くに居たミンファも余波で奥の部屋へと吹き飛ばされた。 
アリエスは倒れているクロノの手を引っ掴むと一目散に家から走り去る。 
正に一瞬の出来事。
後を追って出て来たミンファと重傷の白服が見たのは、 
側車付きバイクで遠くへと去ってゆくアリエスの姿だった。 
其の側車の中にはクロノとルビーの姿もある。
「……ちっ、兄者!」
「…いや、待て…どうせ追い付けまい。
 其の娘の体は人質にする。 
 確かアリエスと言ったかあの猿…… 
 ……どうも我々の事情に通じている様だ… 
 …其の体をネタに話を聞いてみるのも良いだろう」
「併し、奴は応じるでしょうか?」
「……先の魔法弾、お前は余波で吹き飛ばす程度にしていた。 
 …其れにあのクロノ…だったか? 
 奴を飼っている限りは無視する事も出来まい。 
 無視されたのなら其れは其れまでの事よ」
執筆者…is-lies

絶望だ。
交互に襲ってくる怒りと悲しみにひたすら打ちのめされ、 
他には何もない、唯真暗な絶望の深淵を落ちていく。 
クロノはそんな夢を見ていた。 
(…そうだ。夢に違いない)
クロノは闇を掻き分けながら体を起こし、強引に瞼を抉じ開けた。 
そこはまたしても見慣れぬ風景。現実の悪夢が続いている。 
意識を失ってから見知らぬ場所で目覚めるのはこれで三度目だ。 
今度は何処に連れてこられたのか…。
埃の匂いがする薄暗く人気のない部屋。 
柱や壁の装飾から教会か寺院であることが推測できる。 
おそらく、今は使われていない廃墟のようだ。 
クロノが立ち上がろうとした時だ。 
突然後から伸びた手が、彼の両肩を掴んで引き倒し、 
なにか柔らかい物の上にそっと寝かされた。
「こらこら、いきなり起きるんじゃないよ。 
 まだ包帯替えてる途中なんだから」 
目の前には母親ミントの顔があった。
「母ちゃん…?」 
本当に夢だったのだろうか、 
と、一瞬期待したが…
「…アリエスって子に助けられてね。 
 話は聞いたよ…」 
やはり全てが現実だったようだ。 
室内をよく見れば、アリエスが乗っていたバイクもあるし、 
その側車のシートにはルビーの姿もある。
「ミ…ミンファ達は…?」 
クロノが恐る恐る訊ねるが、 
ミントは黙って首を横に振る。
「逃げるだけで精一杯。 
 可哀相だけど…… 
 今は弔ってあげることさえも出来ないわ」 
…何と言って表現するべきだろうか? 
母親が無事だったのはせめてもの救いだったが、 
自分の力ではなす術もなく、ミンファを奪われ、弟達は殺された。 
言葉もなく、怒りと悲しみと不甲斐なさが、 
唯、大粒の涙と嗚咽となって零れた。
それから一時間。 
クロノは泣き続けているが、無理もない。 
落ち着くまではそっとしておこう、 
泣き疲れれば腹も減るだろう、 
と、そう思ってミントは黙って買い物に出かけた。 

 

暫くして、ミントがコンビニ袋を持って帰ってくると、 
そこにはクロノの姿はなかった。
「…ッたく、世話の焼ける子ね…!」
相変わらず眠ったままのルビーはそのままだ。 
まさかこの子を放って逃げ出すという事は…… 
いや、考えられなくもない。
(まぁ、大方見当はつくけどね…)
執筆者…Gawie様

一方、クロノはというと、 
勿論逃げ出した訳ではなかった。 
母親に言われる前にクロノも決心しておきたかったのだ。 
まずは旅立つ前に友人とバイト先の店長には別れを告げたいと思っていた。 
そのためには母親同伴というのははやり恥ずかしいという思いもあったし、 
単に寂しくて友人に会いたかっただけというのもあったが、 
それがせめてものケジメであると、彼なりに思い込んでいた。
廃墟の教会から山の斜面を回り込むように山道を下ると、 
直にアレクサンドリアの街が見えた。 
ミントがもう少し遠くまでクロノを連れて逃げていれば、 
クロノもこんな気は起さなかったかもしれない。 
まだ、あの悪魔のような者達がその辺りにいるかもしれないという恐怖を振り払い、 
人目につかぬように旧道を必死で駆け下り、 
気付くとクロノはバイト先のラーメン屋の前に立っていた。 
帽子を目深にかぶり直し、いつものように裏口のドアを開いた。
「ちわ〜ッス」 
いつもどおりのあいさつをしながら現われたクロノに、 
驚いたのはラーメン屋の店長だ。
「ク、クロノ…、お前なにやった? 
 今朝、警察とか政府のスーツがオレの所にまで来たぞ」 
殺人犯に出会ってしまったというような解り易い店長のリアクション。 
やはり予想通りの事態になっているようだ。
「おやっさん、実は…」
「まずは中に入れ。 
 清たちも来てる。 
 丁度、お前の話をしてたところだ」 
そう言って店長がクロノを招き入れる。 
広くはない店内に、カウンターとテーブルが4台、 
そして、白海、清、ブー、いつもの仲間だ。 
入院中してからほんの数日だが、妙に懐かしい。 
だが、そんな友人達の様子はやはりいつもと同じという訳にはいかなかった。 
特に、いつも気持ち悪く擦寄って来る白海が妙に余所余所しいのがとても寂しく思えた。 
しばらく間を開けた後、堰を切ったように皆がクロノに問い詰めるが、 
「まぁ待て」と店長が制して、一杯のラーメンを差し出す。 
クロノは黙ってラーメンを啜りながら、一つずつ質問を聞くが…
突然病院からいなくなった事。 
ルビーの事。 
昨夜の衛星発光現象の事。 
頭の包帯の事。 
そして、クロノの家で弟達の遺体が発見されて大騒ぎになっている事。
どれもどう説明したらよいか分からない。 
いや、言ったところで信じてもらえるかどうか。 
況してや、下手に言うと彼等まで巻き込んでしまうかもしれない。 
こうなるとクロノも何しに来たのかも分からなくなってしまった。 
最初は、友人には真実を話し、誤解のないように別れを告げるつもりだったが、 
どうやら、グレートブリテン達の説教が効いているのか、 
それも単なる甘えに思えてきたのだ。
「…やっぱりもう元には戻れないんだな…」 
麺を平らげ、スープを飲み干してから、 
クロノが静かに口を開いた。
「何て言ったらいいんだろ、 
 えーっと、ルビーは元気だよ。 
 俺も大丈夫だ。 
 あとは…よく解んねェけど、色々あったんだ。 
 それで、ちょっと旅に出ようかと思ってる…」
一同呆然。 
白海達は言葉を失った。 
こんなクロノは初めてだ。 
ふと、店長が一度大きな溜息を吐いた後、 
カウンターの奥に入り、直に何かを掴んで戻ってきた。
「そうか、じゃ、バイトは辞めるってんだな?」
「はい、突然ですいません」
「ほれ、今月のバイト代だ」 
店長が封筒をテーブルの上に放り投げた。 
が、クロノが手に取るといつもより封筒が厚い。
「お、おやっさん、コレ多いよ」
「餞別だ。 
 てかお前もここで検めてんじゃねェ、黙って取っとけ。 
 まぁ、なんだ、その… 
 お前はよくやったしな。 
 何があったかは知らねェし、何も聞かねェよ。 
 どうせ俺じゃ力にはなれんだろう。 
 けど、俺は信じてる。がんばれや」
店長の言葉に一同思わず鼻の奥にツ〜ンとくる。 
だが、その時だ。 
カウンター席の隅に座っていた一人の客が突然立ち上がり、 
座っていた椅子を床に叩き付けた。
「クソクソクソクソザルがぁっあ!! 
 いいいいいつまで、そんなクサイ臭い芝居を見せるぅつもりだぁあ!!」
カウンターの隅で置物のように座っていたので気にもならなかった。 
突然騒ぎ始めたのは顔も知らない唯の中年の一般客だ。 
確かに店長のセリフはクサかったが、 
見ず知らずの他人にそこまで言われる筋合いはない。
「おう、お客さんでも聞き捨てならねェな。 
 とりあえず、その椅子、弁償してもらうぜ」
店長がエプロンを投げ捨てながら詰寄る。 
だが、中年が店長の胸倉を掴んだかと思うと、 
なんとそのまま片手で店長をカウンターの奥まで投げ飛ばした。
「な、なんですかぁ!? あなたは!? 
 警察呼びますよ!!」
突然の事に慌てふためく白海達。
「みんな逃げろ… 
 コイツは人間じゃないんだ」
白海達に裏口から逃げるように促し、 
クロノは中年の前に立ちはだかる。
「…来いよ。 
 用があるのは俺なんだろ?」
「くはッははは。 
 お望みなら、そこの友達も殺殺殺殺してやるぞ? 
 簡単なことだ。お前の兄弟のように、首を少し捻ればそれで済む。 
 痛痛痛痛みは一瞬だ。まぁいずれサル共全てそうしてやるがな。 
 だがぁ… 
 クロノ・ファグル、お前は簡単には殺さないィ。 
 我等をコケにしたお前だけには最高の苦苦苦苦しみを与えてやろう」
キレている。そういうつもりなら当たって砕けろだ。 
クロノは少しかじっているだけのボクシングのファイティングポーズをとった。
「なんだぁ?そのフットワークは? 
 足が震えているじゃないか。 
 ほれ!ほれ!ほれほれほれほれ!!
まるで歯が立たず、 
クロノは中年の攻撃に弄ばれる。 
いや、クロノの攻撃も当たらない訳ではない。 
ボクシングとして見るなら、寧ろ中年の方が動きは悪い。 
だが、いくらクロノの拳が相手の顎や鳩尾を捉えても、 
全く効いていないのだ。 
そして、ついにクロノは最初のダウンを奪われた。
「はぁはははッ!! 
 早く起きろ! 
 10カウントで起きなければ後ろのガキを一人殺すぞ」
「う、く…くそッ…」
どうにかカウント5で立ち上がったが、 
もはや気合だけではどうしようもない。 
と、その時だ。 
入口の戸が開き誰かが店に入っていた。
「やっぱりねぇ。 
 こんな事だろうと思ってたわ」
暖簾を潜って現われたのは母親ミントだ。 
目の前の状況を見ても余裕の呆れ顔である。
「バカッ…! 
 母ちゃん、危ねェぞ…!」
「ほう、母親か…」
中年がミントの方に向き直る。 
その瞬間。
「危ないのは…アンタでしょッ!」
一瞬だった。 
突きだったのか蹴りだったのかも判らない。 
ミントが素早く中年の懐に潜り込んだと思ったら、 
いきなり中年がバタリと崩れ落ちたのだ。
「母ちゃん… つ、強いじゃないか…」
あんなにタフだった相手がミントの一撃で、 
白目を剥いて仰向けに倒れている。 
ふと見ると中年の耳の穴から羽虫のようなものが這い出てきた。 
ミントは直にそれを叩き落とし、足で踏み潰した。
「うん、死んではいないね。 
 いい? この男は操られていただけ。 
 これが奴等のやり方よ。 
 なのにアンタは考えもなし突っ込んで… 
 これじゃ先が思いやられるわ」
「母ちゃん… 詳しいんだな」
「ア、アリエスに聞いたのよ。 
 そんな事より、お別れは済んだの? 
 グズグズしてないで、さっさと行くわよ」
店長と中年を病院に運ぶ白海達に、 
クロノは「いつか必ず戻る」と別れを告げ、 
アレクサンドリアの街を離れた。
執筆者…Gawie様

アレクサンドリアから東に海を回り込むように北上し、 
夕日の見える断崖でミントはバイクを停めた。 
大きく屈伸しながら、暫く海を眺めた後、 
夕日を背に、クロノの方に向き直った。
「さっきの中年、見たでしょ? 
 人間に乗り移ったり操ったりするのが奴等の力。 
 アンタの拳じゃ、いくら殴っても本体には届かない。 
 まずはアンタが強くなる事。 
 もしかすると、ミンファはまだ助けられるかもしれないわ。 
 希望を持ちなさい」
クロノは黙って頷く。
「…で、考えたんだけどさ。 
 ここで別れない?」
「はぁ? 母ちゃんは一人でどうするんだよ?」
「自分の心配しなさいよ。 
 それともアンタとそのルビーだけじゃ不安?」
「別に…」
「よろしい。 
 一応、アリエスにはアンタの子守を依頼してあるから、 
 ついでに戦い方も教わりなさい。 
 アテネに着いたら、ここに連絡するといいわ」
よく解らないまま、ミントと別れ、 
クロノはアリエスと再会するため、一路アテネを目指した。 
旅の途中でルビーも漸く目を覚まし、 
寂しさも幾分か和らいだ。
執筆者…Gawie様

 

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