リレー小説3
<Rel3.クロノ1>

 

  火星の一都市(ポリス)・アレクサンドリア
  そしてその都市のある一軒のあばら小屋…
     ぐーぐー
一人の少年が、屋根の上で寝ていた。 
黒髪で、白いTシャツを着ていた、 
頭のてっぺんには赤い石のようなものが刺さっている。 
実に気持ちよさそうな寝顔だ、 
『クロノ』ぽーん!」
「んあ…?」 
クロノと呼ばれた少年は眠たい目をこすりながら身を起こした。
「…なんだ…『清』か…なんだよ…」 
半分寝ぼけながらクロノは屋根から下りていった。
「クロノ!おやっさんが呼んでるぜ!」 
清と呼ばれた少年の隣に立っていた、太った少年が言う。 
「…?今日は店休みだったよなあ… 
 給料日は明日だし…」 
クロノは、ブツブツ言いながら、自転車に乗り、 
バイト先の店へと向かっていった。
執筆者…R.S様

  アレクサンドリア郊外の遺跡

 

「此処か…」 
「守護者と呼ばれる、太古のアンドロイドです、 
 あまり奥に行かないでください… 
 奇妙な生き物も同時に出てきているので…」 
委員会の方には連絡したのか?」 
「はあ…こないだ出てきた、 
 竜みたいなものを送りましたので…」 
「そうか…守護者か…」 
「これです…このグローブ」 
白スーツの男が、黒スーツの男に指で示す。 
遺跡染みた壁の奥に転がされていた赤い髪の少女… 
両端に深いスリットのあるスカートを着用し、 
手にはグローブらしきものを装備していた。 
『守護者』と呼ばれる旧文明のアンドロイド… 
数名の研究員が彼女のグローブを調べていた。 
「間違いありません。『ミスリル』です」
ミスリル…極めて希少な対魔法金属である。 
鋼も凌ぐ硬度、ありとあらゆる魔法を弾く魔法耐性。 
更には重量も少なく、金の十倍以上の値段で取り引きされている。
黒スーツの男…火星エージェントである彼が駆り出されるだけの事はあった。 
ミスリル自体希少だというのに、『守護者』が一緒なのだ。 
其の戦闘能力は人間の軍団が束になったところで敵いはしない。 
心躍る黒スーツの男…だが……… 
  コツン 
ふと、天井の破片が落ちて、黒スーツの男に当たる。 
確認は済んだのだ。早く『守護者』を持ち出して、 
こんな黴臭い所から出よう。そんな事を考える黒スーツの男。 
  パラパラ 
今度は細かな破片が降り注ぐ。 
探索班が無茶な発掘でもしているのか、遺跡そのものが震えていた。
執筆者…R.S様、is-lies
「すいません!ちょっと来てください!!」 
もう1人の白スーツが黒スーツの男たちに声をかけた、 
なにやら慌てた様子だ。
「なんだ?どうした?」 
「これを見て下さい…」 
「…なんだ?この大砲は…?」 
壁の中にはなにやら人間の大人の大きさの、大砲みたいなものがあった。
「なんでも、旧文明の武器らしいです。」 
 『サテライトキャノン』と呼ばれる兵器だとか。」 
「ほう…?それで…動くのか?」 
「いえ、どうやら壊れてるみたいで… 
 ジェネレーターが動きません、」
「そうか…」 
ふー… 
黒スーツは煙草の煙を吐いた。
パラパラ… 
再び細かい破片が降り注いだ。
「やけに揺れているな…」 
「はっ、発掘隊の数名が生き埋めになった模様です」 
「救出作業急がせろ、」
「た…大変です!!」 
違う白スーツが大慌てで走ってきた。
「どうした?騒々しい…」 
「はあ…はあ…大変です… 
 発掘された異形が…数匹逃げ出し、 
 外に通じる穴に入り込みました…!!」 
「なんだと!? 外の部隊に伝えろ! 
 何としても逃がしてはならんと!」 
「はっ!」 
命令を受け、すぐさまに通信機で連絡を取り合う白スーツ達。 
片や黒スーツは爪を齧りながら額に汗を浮かべる。
「折角のサンプルを逃したとなっては…私の首が……」 
「駄目です!突破された模様です!」 
最悪の事態の訪れを告げる白スーツに、舌打ちする黒スーツ。 
「チッ!全部隊で異形捕獲を開始するぞ!」 
慌しくなる遺跡内。
執筆者…R.S様、is-lies

「冗談じゃねえ!!俺にはそんな趣味はねえよ!!」 
「クロノくぅ〜ん!待ってくれ〜!この薔薇を… 
 この僕のを受け取ってくれ!!」 
「いるか!ボケエ!!」 
クロノはいかにもキザな男に追い掛け回されていた。
「またやってるぽん。」 
「こりねーよなあ、白海の奴… 
 あ、おじさん、チャーハンおかわりねー」 
「おうよ」
クロノを追いかけている男…『白海駿二』と言う、 
この火星の大企業の御曹司である。 
成績優秀、容姿端麗、言う事無しのパーフェクトマンだが、 
どうやら趣味が変のようだ。 
「しかし…これじゃあ、頼みゴト所じゃねえな」 
クロノを呼んだところのオヤジが言う。
「まあ、すぐに戻ってくると思うよ」
どうしてこうなったか… 
それは、クロノのバイト先の店主(オヤジ)が、
クロノに、電化製品のパーツをジャンク山と呼ばれるところから取って来て欲しいと頼もうとした…
そこへ、運悪く白海に遭遇してしまったのだった…
「てめえ!いい加減にしろよ!! 
 俺は男と付き合う気なんてねえんだよ!!」 
「クロノ君!そんな事言わずにさ!」 
「うるせー!ホ〇野朗!!
ズボオ!! 
突如、クロノの足が地面にめり込んだ、 
と同時にクロノの足元が崩れていった。
「うあああああ!!」 
クロノは穴へと落ちていった。
「やっべー!!落ちてったぞ!」 
「や、やばいぽちょーん!!」 
ちょうどそこへ、飯を食い終わり、 
二人を追いかけてきた清達がやってきた。
「く…クロノくぅぅぅん!!」 
ズボ!! 
「「「うああああああ!!」」」 
再び、地面が崩れ、三人はあいた穴へと落ちていった。
執筆者…R.S様

ひゅ〜〜〜〜 
ドガ!! 
ぎゃうん!!
落ちてきたクロノ達は激しく岩に頭をぶつけた。
「おおおお〜〜!!ん…何だここ…?」 
広い部屋のようだ、あちらこちらに何か埋まっているものがある。 
「…遺跡か?」
「イタタタタ…服が汚れてしまったよ」 
クネクネと立ち上がって服の埃を払う白海。 
太った少年は辺りの壁にある紋様を眺めて呟く。
「…これ、旧火星文明の遺跡だ」 
一目で其れに気付く辺り、この少年、相当の知識を持っている様だ。 
「ホントなのかぽん?」 
「ああ。この赤い紋様…間違いない。
 ラグナロク時代のものだな……」
「ふぅん……って……誰か……居るぞ!」 
直ぐに隣の3人を伏せさせるクロノ。 
目の前の通路を、黒いスーツを着た男が通って行った。 
「あの服は確か……火星政府のエージェント… 
 何で、そんな連中が……」
「何かは知らねえけど…変な事に巻き込まれるのはゴメンだぞ…っと」 
立ち上がって辺りを見回して、クロノは初めて気付いた。 
隣の部屋に、何かが倒れているのが…
執筆者…R.S様、is-lies
「人…? 女の子?」 
そ〜っと部屋を覗き込むクロノ。
(さっきから頭の石が妙に疼く…こういう時は決まって好くない事が起こるんだ…)
が、何時になく慎重な彼を余所に、白海、清、ブーは臆すことなく女の子に歩み寄る。 
この三人、日頃からクロノの凶運のとばっちりを受けているため、 
トラブルに巻込まれることには慣れてしまっているようだ。
「お、かわいいぽん」 
「死んでいるのでしょうか?」 
「クロノ、何やってんだ早く来いよ」 
結局こうなる…  
自身の不運は自覚している。兄弟達の面倒も見なくてはならない。 
だがそこで卑屈になるつもりはない。体も鍛えている。勉強も(そこそこ)している。 
いつだって堅実に行動している(つもり)。真面目に、普通の生活を送るのが一番なはずだ。 
混乱した時代を生きているとはいえ、14才にしては立派に現実を捉えているクロノ。 
しかし、無意識の内に暴走する好奇心を抑える術を彼はまだ知らなかった。
「お前らなぁ〜」 
もうどうにでもなれと、クロノも輪に加わる。
「この辺の者じゃないな」 
「ぽん?」 
「何てゆぅか…服装が妙にクラシックだ。それに…」 
赤い髪にリボン、見たことの無い服装、右手にグローブ、左手はメカニカルな義手、 
スカートには深いスリットが…
「…………」 
地面に横たわるモノの正体を考察するつもりが、
スリットから覗く『フトモモ』についつい見惚れてしまうクロノ。 
直に白海の視線に気付くと白々しく目を逸らせる。 
「おやぁ〜クロノ君〜」 
「な、なんだよッ?」 
「ほら、アレ」 
と、クロノの背後を指差す白海。 
『ツッコミ』ではなかったことに安心しつつクロノが振返ると、 
一羽の白い鳥がクロノ達を見下ろしていた。 
薄暗い天井の配管の上でハッキリとは見えないが、翼を広げると、それは明らかに半透明であった。 
「鳥の、お化けぽん!?」 
4人が一斉に身構えるが、次の瞬間、鳥は大きく羽ばたくとそのままのように消えてしまった。
「…………………」
安堵と不安が同時に4人を包む。
「とにかく、早くここから出た方が良さそうだな」 
「そうだね、そろそろ日も暮れる頃だし」 
「この人はどうするんだぽん?」
「ん…そうだな………ってオマエ何する気だ?」 
考えを纏めるよりも早く、倒れていた少女に近付く白海。 
クロノの質問に振り返り笑顔で答える。白い歯が一瞬輝く様に見えた。
「そりゃ連れて行くに決まっているよ。 
 ほら、この遺跡…さっきの落盤とか、男達とか、 
 転がっている石とか見てヤバく思うんだ。 
 放っておいたら瓦礫に潰されちゃうかも知れないし… 
 クロノ君だってこんな可愛い子がそんなメに会うのは嫌でしょ?」 
人差し指をクロノに突き付け、何時に無く真面目な表情をする白海。
「そりゃあ…まあ…」 
尤もだと思い「こいつもたまにはマトモな事言うんだな」なんぞと思うクロノ。 
だが、其のクロノを見詰める白海の眼は潤みを帯びていた。
「…やっぱり、そうだったんだね…… 
 クロノくうぅうん!!僕という者がありながらァ!!
「だぁ!纏わり付くなホモ!!
感極まって抱き付いて来た白海をクロノは強引に引っぺがす。 
やはりコイツぁ何も変わっとらん。 
だが、其の時……
「………ん……」
今迄ぐったりしていた少女がピクリと動く。 
4人が息を呑んで少女の瞼に注目すると、少女は眦を決し、其の瞳でクロノ達を捉えた。 
「んんっ、久し振りの再起動ね。君達が起こしてくれたの?」 
まるで今の今迄眠っていた様に両手を組んで、頭の上へと伸ばす少女。 
クロノ一行は『再起動』という単語にも違和感を覚え、少女から1歩距離を置く。
「そんなに身構えないでって。私『ルビー』。 
 久々に動けて今日はかなり気分が良いのよ」 
少女…ルビーが妖しい笑みを浮かべ、クロノの方へと歩み寄る。
「お礼の1つ位しないとバチが当たるわね」 
己の唇に人差し指を一瞬だけ当てるルビー。 
指と唇が触れ合った瞬間、舌を鳴らした様な声を漏らす。 
蛇に睨まれた蛙…に近いが確かな差異がある。クロノ達自身も心の何処かで其れを望んでいた。 
一歩ずつ近付くルビーに対し、震えながら…其れでいて、この場を離れても良いのかと自問する。
なな…何しているのさクロノ君!早く逃げようよ!
………ホモの白海を除いてではあるが…… 
既に互いの鼻と鼻が接触するかという位置に迄達したクロノとルビー。 
ルビーの艶やかな唇が、頭の中の考えを纏め切れないクロノの口に………
    バゴォッ!!
落石であった。 
妖しい笑みを浮かべたままのルビーの頭頂部を直撃する。
砕けた。 
……岩の方が
そしてルビーも頭をフラフラとさせて床へと倒れ込む。 
「な…………っ…」
執筆者…Gawie様、is-lies

 

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