リレー小説3
<Rel3.キムラ1>

 

 ユーキン達がTAKEと遭遇していたちょうどその頃
アテネ・繁華街

 

暗殺者・キムラとハッカー・ジードは表通りを歩いていた 
101便事件から2日経った。口封じとして刺客が狙う事ぐらい2人には分かっていた。 
しかし、2人は狙われる事ぐらい慣れている。
何しろ、昔住んでいた街ではそれぐらい日常茶飯事だったからだ。 
人通りは多くも無く少なくも無く。それぐらいがちょうどいいのだ。 
もし多ければもしものときに動きにくい。 
だからといって少ないと「狙ってください」と言ってるのと同じだ。
「やっぱりあいつらだ、偽の情報に惑わされやがって。」 
と言いつつ、ノートパソコンを操作するジード。 
送られてきたメールは、101便に関する情報ばかり。 
だが、全部SFESが用意したダミーだ。
「仕方ねーぜ、誰だか知らねーけどもし知ってたら絶対あちらさんから要注意人物にされてるしな」 
と、マイペースのキムラ。だが、骨折がまだ治らないのが痛い。
彼らの行き先は、決まっていない。キムラもジードも、火星は初めてだ。 
キムラには暗殺者ギルドという味方もいるが、大体はSFES襲撃時に死亡。 
生き残っているのは、自分を含めてほんの僅かである。 
さらに、暗殺者ギルドの火星支部も所在どころか、あるかどうかも聞いたことがない。 
一応、アテはあるのだが。
「ところで、暗殺者でココ来てる奴っているのか?」 
と、ジードが口を開く。
確かに可能性はある。地球から火星に行く手段は101便だけではない。他の航宙機があるのだ。 
キムラは、 
「ああ、いるね。そいつは性格的にやばい奴だけどな。」 
と言いつつ苦笑いをして答えた。 
そして、直後に足を止める。 
「噂をすれば…か、」
キムラが足を止めたのに気付き足を止めるジード 
キムラの視線の先にいる男は、銀髪銀色のロングコート銀のピアス、そしてサングラスをかけた無表情な男だ。 
どうやらその男がキムラの言っていた”性格的にやばい奴”だろう。
男が口を開く。 
「生きてやがったか…」 
「ああ、生きてたよ、死にそうにはなったけどな」 
と、キムラは余裕の表情で返答する。
キムラと会話を交わすこの男… 
ジードには見覚えがあった、いや、過去にこの男の写真を見たことがある。
どこの国の政府も危険視しているこの男。 
名はジルケット・グリース 
通称、銀色の死神
最悪だ、とジードは思った。 
この男の事は耳が痛くなるほど聞いたことがある。 
子供の頃から人を殺していた、とか、血を毎日飲んでいる、とか… 
もちろん、ほとんどがデマなのは分かる。 
だが、そのデマが出来るぐらい、ヤバイ男なのだ、と考えてもいい。
「で、ちょっと質問がある」 
キムラが言い続ける。 
「他の奴らでココ来てるのはいるか?」 
ジルケットが苦笑いして、こう言った 
「着いて来い、案内してやる」
途中、暗殺者ジルケットはジードの事は全く聞かなかった。 
キムラと一緒に居たので無害と判断しているのか、そもそも興味がないのか。 
無用心とも思うジードだったが、 
このジルケットという男の…あまりの隙も無さに気付いて合点がいった。 
目の前の男は敵など恐れていないのだ。 
其れだけの強さを、近くにいるだけでジードは認識出来た。
執筆者…塩味枝豆様、is-lies

ジルケットに連れて来られた先は、 
繁華街の路地裏にひっそりと立っている、薄汚れた建物… 
『禁牙拉(ジンヤラ)』という看板を出している中華料理店であった。 
所々に蜘蛛の巣が張っている上、窓ガラスも無く、 
お世辞にも気軽に入れそうな雰囲気があるとは言えない。 
だが、中はそこそこ片付いている。予想通り客は1人も居ない。
「いらっしゃいませ、お客様は3名様でしょうか?」 
チャイナドレスを着たウェイトレスが笑顔で聞いてくる。 
「N1組とD2組」 
ジルケットの応答にウェイトレスは「こちらへ」とだけ言って厨房への道を開ける。
厨房を越えた先にある本棚をジルケットが動かし、 
其の奥に隠されていた地下への階段を露わにする。 
「………特撮の秘密基地じゃあるまいに……」 
ぼやきながらキムラとジードも、ジルケットに続いて階段を下りていく。

 

 

着いた先は、飾り気は無いものの掃除の行き届いた大部屋で、 
中央にどんと置かれたテーブルを囲む様にしてソファーが配置されている。 
其のソファーの幾つには既に何人かが座っており、 
どれも只ならない気配を漂わせている。
「ほぉ! 日本京都支部のキムラか、生きていたのか?」 
ソファーに座っていた男の1人、白髪の中年が、 
キムラの顔を見るなり驚きとも嬉しさともつかぬ声を上げる。
「えー、アンタは?」 
「アテネ支部長のアンダーソンだ。 
 2日前、地球を脱出した京都支部長から君の動きは聞いた。 
 英雄のお前が死ぬとは思えなかったんで、 
 手の空いてる連中に、お前を探しに出払って貰ってたんだ。 
 いや、無事で何より…」
「部長、無事に決まってるだろ? 
 キムラが死ぬトコなんて想像出来ないよ」 
「そうね。 
 大戦中の大名古屋国内に忍び込んでて 
 生き延びたって位だし」
ソファーに腰掛けていた暗殺者の男女が横から口を挟む。 
第四次世界大戦…詰まりは大名古屋国大戦の英雄であるキムラ達の名は、 
火星の暗殺者ギルドにも知れ渡っていた様だ。
「所で…そっちの彼は誰だ?」 
ジルケットとは違い、ジードの素性に疑問を持つアンダーソン。 
これが普通の対応だろう。 
だがジルケットや見張りであるところのウェイトレスが、 
ジードも此処へ通したという事から、 
知り合いか何かだろうという目星は付けている様で、 
あまり狼狽えた様子は無い。
「知人だ。そんな事はどうでも良いだろ? 
 …でアンダーソンさんだっけか? 
 アンタ……いや…ギルドマスターに聞きたい事がある」 
「ギルドマスターに?何を聞きたいというんだ?」 
キムラの唐突な質問にアンダーソンが訝しむ。
「SFESについて…」
数日前、キムラ達がタカチマン博士等と一緒に乗り合わせた航宙機101便…
其の中で彼等はSFESと名乗る組織に襲われたのだ。 
そして其のSFESの一員である子供が、 
暗殺者ギルドを半壊滅状態にしたのは自分達であると述べた。
以前、暗殺者ギルドは規模的にはプロギルドには劣っていたものの、 
其の統率の取れた動きや、構成員が少数精鋭であるという事から 
依頼も多く、極めて羽振りが良かった。
だが、今の暗殺者ギルドは見る影も無い。 
依頼は雀の涙程度。殆どが多角化したプロギルドに回っている。 
構成員の質こそ変わらぬが、人数は激減していた。 
大名古屋国大戦中、大きな仕事が暗殺者ギルドに舞い込み、 
其の作戦には数百人もの上級暗殺者が投入された。 
だが結果は失敗…多くの構成員を死なせてしまったという。 
プロギルドに籍を替える者も少なくない。 
更に今回、地球で起こった破滅現象で、 
構成員の大半が死去してしまったという情報もある。 
要するに今の暗殺者ギルドは虫の息なのだ。
組織SFESが最盛期の暗殺者ギルドの精鋭… 
しかも数百人を返り討ちにしたというのは信じ難い。 
実際に航宙機内でSFESと戦ったキムラも半信半疑だ。 
だが出来るだけ多くの情報が欲しい。 
いつSFESが嗅ぎ付けて来るか解らないのだから。
執筆者…is-lies
キムラ達は事の次第を説明する。 
思わぬ情報が舞い込んだとばかりに、その場にいた全員が静かにそれに聞き入る。
「…なるほど、大体のことは分かった」
キムラ達が一通り説明し終えたところで、 
聞きながら考え込んでいたアンダーソンは、少し間をおいてから口を開いた。
「つまり、そのタカチマン博士の依頼で、 
 スパルタの研究所を調査するための人手がいる、と。 
 そして、鍵を握ると思われるSFESに関しての情報収集か… 
 ちと難しいな、そりゃ。 
 それに、報酬はどうなんだ?」
「それは…」
「察するにアテはなさそうだな。 
 俺達は軍隊でもなけりゃ、どこぞの宗教団体みたいに大層な理想がある訳でもない。 
 金のために仲間同士で殺り合うことになっても恨みっこなしだ。 
 というか、そもそも仲間じゃない。 
 お互い合理的に仕事をこなすために、偶々集まっているに過ぎない。 
 忘れた訳じゃあるまいが、変な期待はしないことだ。 
 俺達の世界じゃ、そういう甘さは死に繋がる」
その通りである。 
アンダーソンの言葉に、キムラは暗殺者という自分の存在を再認識させられる。 
無論、忘れていた訳ではない。 
闘いになれば、相手を殺すことに躊躇いはないし、死ぬ覚悟も出来ているつもりだ。 
しかし、名古屋大戦や101便事件を通して、 
彼の中で何かが変わろうとしているのかもしれない。 
アンダーソンやジルケットに睨まれると、 
頼りにして来たはずの暗殺者ギルドが、 
何故か酷く居心地の悪い場所であるように感じられていた。
「お前…少し変わったか…? 
 まだまだ甘いところは変わっていないようだが。 
 そんなお前がSFESを狙うとはなぁ… 
 だが…やはり迂闊だぜ。 
 敵の名前をベラベラと口にするもんじゃねェ」
「な、何が言いたい…?」
「くくく、例えば… 
 俺がそのSFESの依頼を受けて、お前達を狙っているとしたら?」
「なにッ!?」
ジルケットに言葉に意表を衝かれた。 
ガタンと椅子を後に倒しながら飛び起きるキムラとジード。 
アンダーソンも周りにいる他の暗殺者も、ただ黙って状況を見つめている。
「くくく、いいねェ。 
 そっちのアンタ、ジードとか言ったか、なかなかデキそうだな。 
 キムラも腕を上げたみたいじゃねェか。 
 こうやって臨戦態勢になればよく解るぜ」
「くそ…、最初から尾けられてたって訳か」
「お前は目立ち過ぎなんだよ。 
 暗殺者が英雄だと? 笑うぜ」
またしても嵌められてしまったのか―――? 
ジードは袖に隠したナイフを探りながら周囲を警戒し、 
キムラも腰に提げた銃にそっと手を忍ばせる。 
「はっはっは! 
 そのくらいにしとけ、ジルケット」
笑いながら仲裁に入ったのはアンダーソンだ。 
物音一つ立てれば撃ち合いが始まりそうな状況で、 
声を上げるタイミングも流石と言えるかもしれない。 
直にジルケットもニヤリと笑みを浮かべ、争う気はないことを示す。 
だが、今の殺気は間違いなく本物だった。
「くくく、冗談冗談」
冗談にしてはタチが悪過ぎる。 
しかし、迂闊であったのは間違いなく、 
冗談も有り得ないことではないだけに、キムラ達は笑えない。
「安心しな、街でお前達に会ったのは偶然だ。 
 尤も、人ごみの中のお前達には直に気付いたけどな。 
 殺気の消し方は上手かったが、あの時は逆、 
 襲撃に脅えてビクビクしてる子羊みてェに… 
 獲物の臭いがしてたぜ」
「ジルケット、お前もSFESを知らんだろう。 
 あまり言い過ぎるとお前も同じだぞ。 
 キムラも気を付けることだ。 
 ジルケットが言う通り、確かに甘い。 
 それに、少し考えてもみろ。 
 いくらSFESと言えども、そこまで都合良く手を回している訳はないだろう。 
 お前の話が本当なら、お前達は死んだことになっているはずだ。 
 隠れていれば問題ないものを、 
 何故、金にもならんような事に首を突っ込む?
アンダーソンに問われても、その答えはキムラ自身も良く解らない。 
況してや、今まで多くの命を奪ってきた者に、 
正義や友情などという言葉は浮かんではこない。 
裏の世界に生きている者に、心休まる場所などありはしないのだ。 
アンダーソンの仲裁で事なきを得たものの、 
キムラは表情の曇らせるだけだった。
「…悪かったな。もう帰るよ」
「まぁ待てよ。話はまだ途中だ。 
 …で、SFESの事だが、 
 残念ながら俺達でも詳しい事は分からん。 
 それと、ギルドマスターの居場所も実は分からん。 
 どうしてもと言うなら自分で探すしかないな。 
 後は、正式な依頼ならば考えてみないでもない。 
 まぁ今日のところは、出直して来ることだな」
執筆者…Gawie様
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