リレー小説3
<Rel3.獣人村2>

 

ビタミンN達の相手をジュネーヴァに任せ、リツィエルは村に駆け戻った。 
最初に目に入ったのは逃げ惑う獣人達の姿。 
更に進むと、血を流して倒れている数人、その中にはランディナスの姿もあった。 
その先に立っていたのは、返り血が滴るサリシェラと対峙し立ち竦んでいるエーガ。
「お、おいイキナリ何なんだ…!?」
エーガの心配も聞き入れることなく、サリシェラは次の標的を見定める。 
戻ってきたリツィエルだ。
「首輪が…どうやって外した…?」
リツィエルの疑問にも、サリシェラに言葉で応える様子はない。 
互いの応答を待つ間もなくリツィエルとサリシェラが拳を交えた。
リツィエルの一撃をサリシェラは片手で受け止め、 
次の一撃を繰り出そうとするリツィエルを腕を、失った筈のサリシェラの片手が掴んだ。
「…………セイフォート…!?」
その瞬間、リツィエルの両腕は、まるでパンをちぎる様に潰され、もぎ取られた。
ぐッ………!!
「…倍返し…だね…」 
サリシェラは冷酷に言い、とどめを刺さんとその異形の腕を振り上げる。 
崩れ落ち、痛みで朦朧としながらもリツィエルがサリシェラを見上げると、 
その後ろに佇む、黒いオーラを纏った少女の姿があった。
「お前かァァッ!!!」 
そこへ叫びながら駆けつけたのはジュネーヴァだ。 
今の彼に先程のような笑顔はなく、鬼の形相で少女に襲い掛かった。 
だが、その黒いオーラの少女は避けもせず、ジュネーヴァの拳は空をきった。 
ジュネーヴァは決して怒りで戦闘の基本を忘れるような男ではなかった。 
怒りを傍らに留めつつ、あくまで確実に仕留めたつもりだった。だが……
「…無理…」
ジュネーヴァを、少女の笑顔がすり抜けた。 
次の瞬間、ジュネーヴァの背後からサリシェラの手刀が貫いた。
狂気じみた何かに目覚めたサリシェラに少女が寄り添い囁く。
「フフフ…… 
 貴女は望んだ… 
 貴女にはその力がある… 
 私はただ… 
 在るべき流れを指で少し掻き回しただけ… 
 貴女の望みは………」
「……うるさい……」
突然、サリシェラは腕はその少女をもなぎ払った。
「…怒った? 
 …気に入らなかった? 
 でも、これは貴女が望んだ…こ………! 
 ……………………? 
 ………あ、あれ……?」
サリシェラの手には削ぎ取った肉片のようなものが握られていた。 
少女の腹部にドッと血があふれ出す。 
今のサリシェラの腕の力に、例外はなかったのだ。
「…い、痛い…? 
 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い! 
 ア…アァァァァァッ!!!」 
苦しい悲鳴をあげながら、少女の姿はフッと消えてしまった。
執筆者…Gawie様
「サリシェラ……」 
その場に残されたエーガはただ言葉を失うだけだった。 
戦闘不能となったジュネーヴァ達を気に掛けながらも、サリシェラを見つめる。 
正直、恐怖が大半を占めていたが、どうにかこのサリシェラを救いたいという気持ちも確かにあった。
と、そこへ、エーガには妙に懐かしく思える声が届いた。
「エーガ様ー!!」
「セ、セート…? 
 アイツ等…… 
 バカ…来るな…何でこんな時に……… 
 逃げろサリシェラ…」
エーガの言に、其の倦んだ瞳を広げ振り返るサリシェラ。 
掌の中の肉塊を一通り弄んだ後、握り潰す。 
指の隙間から勢い良く飛び散る肉片と血…其れだけを見ても、 
彼女の握力が最早人間の域に無い事が解るというものだ。
「…………?何で……私に……? 
 …逃げろ……って………私……が…?」
「そうだ、早く逃げろ! 
 お前は逃げる積もりだったんだろ?ならもう十分じゃねぇか」
「………うん。十分。車もあるし地図もあった…… 
 けど、私が聞きたいの……其処じゃないよ。 
 …私が逃げる…ってトコ」
「?何だよ、何か変か?」
「うん。だって私は逃げちゃダメだもん。 
 私の後ろには、いつだってクリルが居るんだから。 
 其れに…………逃げる必要なんて無いもん」 
サリシェラがセート達の方へと向き直る。
「!止め…」 
エーガが上げた制止の声も遅かった。 
少女の腕の一振りは一直線に大地を抉り、 
まるで幾つも仕掛けた爆発物を一斉に起爆した様、 
巻き起こった砂嵐がセート達やジュネーヴァ達の姿を、 
濛々と立ち込める煙の向こう側へと隠してしまった。
「…今の私には……力がある。 
 もうクリルを泣かせたりなんかしないんだよ」
クリル…其れが何を意味するのか解らない。 
家族?仲間?恋人? 
唯一、間違いないと思われるのは、 
サリシェラを突き動かしているのが其のクリルという存在だという事のみ。
「良いか落ち着け。其のクリルとかいうのが何だかは知らないが、 
 ほら見ろ。お前に立ち向かって来る奴なんてもう誰も居ない。 
 後は立ち去るだけだろ?地図も車もある!無駄な殺しなんてするな!」
「………同じ事…言うんだねクリルと……。 
 …………解んない……… 
 えっと……かげ………かげま……だっけ?名前…」
執筆者…Gawie様、is-lies

「ちっ……セイフォートめ…… 
 何だこの力……前まではこんな……くっ、 
 おい、リツィエル生きてるか?」 
自身の深手も押してジュネーヴァがリツィエルを抱え起す。
「……何とか…な……。 
 どうやらバームエーゼルは完全では無かった様だ…… 
 …或いは………先ほど消えたあの娘……」 
両腕を失って尚、其の意識ははっきりとしている。 
やはり人間を遥かに上回る能力の持ち主である事は間違いない。
「…総帥……何故、あんな奴を例外だなんて… 
 ちっ、ランディナス!」
「……はっ」 
よろめきながらも立ち上がる老紳士ランディナス。
「残ってる奴等を直ぐに退避させるんだ…! 
 ………今の俺達の手に負える相手じゃない…」
其処で、煙に撒かれていたセート達がジュネーヴァとの接触を果たす。
「ごほっごほっ…ちょっと待って下さい! 
 貴方達、一体何者なのですか?エーガ様とどういう……其れに先程のあの娘は…」
「悪ぃな。其の疑問に答えてやる義務も余裕も無ぇんだ。 
 お前等も死にたくなきゃさっさと逃げるこったな」
「待て!お前達はSFESなのか!?其れとも…」
突如、砂煙を割って数台のジープが横から走って来る。 
いきなりの事で反射的に跳ね退くセート達を他所に、 
ジュネーヴァはリツィエルを抱えたまま最も近いジープ… 
即ちランディナス執事操るジープへ飛び乗り、あっという間に戦線離脱する。

 

「……随分元気な怪我人ね」 
呆れた様にフェイレイが呟くが、其れに頷き返す余裕は無い。
「そ…其れよりも!エーガ様は…」 
煙を掻き分けエーガを探し出すセート達。 
あちこちからパチパチと焼ける音が響きノイズとなる中から、 
エーガの其れと思しきものを探し出してみると…。
「……違う。俺の名前はエーガだ。 
 ……あー……エーガ・カゲヤマ」 
思いの他あっさりと、聞き慣れたエーガの声が入って来た。 
砂煙で視野を極端に狭められて解らなかったが、もう直ぐ側にいる。 
どうも先の娘に名…偽名を名乗っているらしく、 
其の口調にも敵意や焦りはあまり感じられない。
「そう…ならエーガ。 
 人殺しが好きじゃないクリルみたいな事言うエーガ。 
 …………教えてよ。…………私を心配するのは何で? 
 ……敵なのに………」 
今度は娘の声。無感情に見えて僅かな疑問を孕んだ口調の其の科白…
(………エーガ様がこの娘を心配した…だと?)
エーガの女好きは良く知っている。 
だが… 
(…これ程危険な力を持つSFESの人間に対して? 
  …………エーガ様は其処まで甘くは無い筈………)
何はともあれ、まずは合流だ。 
声のする方に向かって駆け出すセート。 
彼を追うようにしてイオリ達やビタミンN達も砂煙を割って出た。
エーガとサリシェラ、やっと二人の姿を確認出来たところで、セートは立ち止まった。 
エーガはセート達が直近くまで来たことに気付いていない。サリシェラの説得に必死だったのだ。
執筆者…is-lies、Gawie様
「…サリシェラ…敵じゃない…! 
 SFESとかセレクタとか、関係ない…! 
 俺は……………」
「エーガ様!!」
何が言いたいのかも分らず、言いかけたエーガのその言葉を遮り、 
セートがエーガの肩を掴んだ。 
セートも必死だった。 
出来れば二度と関わりたくなかった相手を何故か心配しているエーガ。 
状況から事情は少なからず想像出来なくもなかったが、 
今のセートにそれを許すことは出来なかった。
「セート、来るな…! 
 サリシェラ、逃げろ……!」
敵の増援が現れたと見て、サリシェラはゆらりとその異形の腕を振りかざす。 
対するビタミンNもここは退けない。 
肩に担いでいた大剣をブンと振り下ろす。
「やめろってェッ!」
直にエーガがその間に割って入り、サリシェラを庇うように立ち塞がる。
「サリシェラ、逃げろ… 
 頼む………!!」
「エーガ… 
 お前はやはり…」
「ああそうだ。 
 俺はお前等の下らない復讐なんかに興味はない。 
 セレクタを利用しようとしただけだ」
エーガは開き直った。 
この場で器用に言い訳する余裕はなかった。 
それなりに仲間だと認めていたエーガの裏切りにビタミンNも表情に影を落とす。 
少なくとも、彼はユニバースやガウィーなどよりは信用出来ると信じていたのだ。
「残念だな… 
 だが見過ごす訳にはいかない」
勿論、ビタミンN達の信念も簡単に引き下がれるものではない。 
セート達を窺いながらも、戦闘態勢を保ち、 
少しでも隙を見せようものなら斬りかかる勢いだった。
(ここで戦闘になれば、両者全滅………) 
 仕方ありませんね。 
 エーガ様がそう言うのなら…」
そう言ってセートはサリシェラに背を向け、エーガの援護に回った。 
ルキやイオリ達も黙ってそれに習う。
「双方、ここは退いてください」
そのまま暫く妙な膠着状態が続いた。 
その間、サリシェラはビタミンN達を警戒しつつ、ゆっくりと後退し、 
後ろにあったジープに乗り込み、黙って走り去った。 
その姿が見えなくなるまで、双方どうにも動けぬまま睨み合っていた。 
そして、脅威が完全にその気配を消し、 
残っているのはこの無意味な対立だけだと彼等が気付いたのには、それから更に数分を要した。
執筆者…Gawie様
「…やれやれだぜ」
先にビタミンNが剣を納めた。 
エーガ達も脱力したように肩を落とす。
「………………………」
「エーガ… 
 エーデルヴァイス、返してよね」
「そこの小屋にある… 
 勝手に持ってけよ…」
「それより説明しろ… 
 …まず、この村は何なんだ……?」
「…さっき逃げてった連中が作ってた獣人の村らしい。 
 俺も農作業してただけで詳しくは知らないけどよ」
「………獣人の村…道理で逃げてって奴等に獣人が多かった訳だ。 
 だがまさかこんな所にそんなものがあったとはな……」 
ビタミンNが呟く。 
自身も獣人の姿という事で様々な苦汁を味わった経験のある彼にとっては、 
恐らくこの獣人村は興味深い対象だったのであろう。
「…奴等が何故獣人達を抱え込んでいたかは解るか?」 
「其れよりだ…奴等は何者だ?」 
ビタミンNを遮り、今度はグレートブリテンの質問だ。
「………何か…お前等、随分と聞きたがり君になってんのな。 
 自分で言うのも難だけど…俺、裏切り者だぞ?」
「じゃあ正座させて膝の上に錘載せながら聞いた方が良いか?」
「イマノママデイイデスハイ。 
 ……ってもな…俺も詳しく知ってる訳じゃねぇからな… 
 まぁ……白き翼って奴等で…多分……SFESよりも上手の組織」
腕組みしつつグレートブリテンが深い溜息を吐き、 
「…………まあ…な。 
 こんな所に村一つ作って其れを完全に隠蔽してた連中だからな」 
農場や畑、半壊になった中枢施設を一瞥して言う。 
火星裏の不毛の大地に、これだけのものを… 
外部に全く悟られず作ると言うのは相当凄まじいものがある。
「あったわよー!エーデルヴァイス!」 
小屋の中からエーデルヴァイスを持ったフェイレイが駆け出して来た。 
其れを見、村の各所に向けていた視線をエーガへと戻すグレートブリテン。 
「…さて、エーガ。十分バカンスは楽しんだだろうし… 
 ………そろそろセレクタに戻って来て貰うぞ」
エーガはまだ彼等に必要とされている。 
八姉妹の結晶ではなかったエーデルヴァイス。 
そして早々に居場所を嗅ぎつけたセレクタメンバーの迅速さ。
「ちぇ…何がバカンスだよ…。 
 …なぁ、やっぱり俺はユニバースにハメられたのか? 
 ……アイツは何がしたいんだ?」
「知るか。 
 大体それはお互い様だろ」
「そう、私達はSFESを倒す。 
 それだけのことよ」
そんなものである。 
SFESを憎む動機は皆それぞれ、 
フェイレイやライーダのようにそれを仲間に打ち明ける者いれば、 
黙し、或いは誤魔化し、絶対に語ろうとはしない者もいる。 
彼等が戦う理由には、話合いなどでは絶対に成し得ない信念のようなものがあった。 
エーガもそうだった。 
サリシェラとの出会いで、エーガ自身の信念が揺らぎかけていた事にハッと気付いた。 
逆に余計な質問をされないうちにエーガは話を戻した。
「まぁ、それはそうと、 
 俺はどうなるんだ? 
 あ、それとこの村どうするんだ?」
「ユニバース達と合流してから考える。 
 まずはクルーザーのところまで……」
「ああーーーーーー!!!」
突然フェイレイが大声を上げながら空を指差した。 
見上げると、一機のクルーザーが飛び去っていくのが見えた。
「…あの女、ジープであっちに逃げて… 
 まさか…やられた…!」
飛び去っていってのは間違いなくビタミンN達が乗ってきたクルーザーだった。 
盗んだのは恐らくサリシェラだろう。
執筆者…Gawie様、is-lies
一同は呆然と辺りを見回す。 
先程の戦闘で建物が所々壊れているが、落ち着いて見ると長閑な村だ。
当然、火星を半周も移動出来そうな乗り物も見当たらない。 
遠くの方には逃げた獣人達がエーガ達を窺っていた。 
彼等にしても逃げるのなら乗り物くらい用意しているだろう。 
尤も、ここの獣人達はもはや逃げるところなど何処にもないのだが…
「仕方ない、ユニバースに連絡して迎えに来てもらうか」
「いや、それはマズいんじゃねェかなぁ。 
 出来ればこの村の事は… 
 あ、いや、どうせなら、この村セレクタで面倒見れないか?」
「――それには及びませんよ――」
突然、上空を巨大な影が覆い、 
同時に背後から聞き覚えのない男の声が応えた。 
何時からそこにいたのか、振り返ると、 
青いマントに仮面を被った男が立っていた。 
上空に浮かぶシルエットには砲門らしきものも見える。 
明らかに戦闘用の艦船だ。 
この男が乗ってきたのだろうか。 
――白き翼、そして宇宙戦艦。 
エーガ達は直感した。
「SFESの彼女は去ったようですね。 
 ここの被害も思ったより少なく、何よりです」
「…ジュネーヴァ達の仲間か。何の用だ?」
「この村の緊急事態に駆けつけただけですが」
「やっぱり、俺達をただで帰すわけにはいかねェって事か?」
「フフフ、いいえ。 
 貴方はエーガさんでしたか?この村を心配して頂いたようですが、 
 そのお気持ちだけで十分です。 
 この村の事は黙っていて下されば別に何も…口止めに何かするつもりもありません。 
 尤も貴方方がここの存在を知ったところでメリットなどないでしょうし、 
 貴方方は話のネタに、この村の事をマスコミに触れ回るような方でもないでしょうしね」
「…信用してくれてるのか? 
 でも秘密は秘密だろ」
「それは… 
 私の艦にいらして下されば、話せる範囲内でご説明致しましょう。 
 貴方方が帰るためのクルーザーもお貸しします」
仮面の男は、低い声で、淡々と、落ち着いた口調でエーガの問いに受け答える。 
どことなく知っている誰かに似たものを感じた。 
一戦交えようなどという雰囲気は微塵もなく、あくまで紳士的だった。 
だがしかし、もしもここで拒めば、 
上空の戦艦の砲が火を噴き、この村諸共機密を消し去らないとも限らない。
「分った。なら、お言葉に甘えよう」
全員の了解を得ないままビタミンNが答えた。 
警戒しすぎるに越したことはないが、今のセレクタには、 
白き翼という未知の情報を得られるのならば敢えて危険を冒す価値はあった。
仮面の男が腕を掲げ、指先で何かのサインを送ると、 
その場の全員を包むように、赤い光が照射された。 
トラクタービームに導かれ、ビタミンN達は上空の巨大戦艦に収容された。
執筆者…Gawie様

《収容完了。相転移空間、ループ。 
 総帥、お疲れ様です》
「ミルディール、客人をお連れした。 
 食事の用意を」
ビタミンN達が艦内に牽引されると、 
今入ってきた収容口は、立って歩ける透明のガラス状の床になった。 
これだけの巨大戦艦にもかかわらず、不気味なほど人の気配はない。 
艦内の構造も、知っている星間艦船とも全く異なり、 
どこか、大名古屋のアマノトリフネに近いものを感じた。
「ようこそ、白き翼へ…」
「…こんな艦が、今の今まで… 
 お前は一体…?」
「申し遅れました。 
 私はリヴァンケと申します。 
 貴方方セレクタの事も存じております。 
 実は、ユニバース殿とは、古い友人でしてね」
そう言われてみてビタミンNは気付いた。 
「相変わらず顔が広いな、ヤツも」 
第一印象で誰かに似ていると感じたのはユニバースだ。 
素顔を隠しつつも余裕を湛えた口元、
どこか胡散臭い雰囲気もよく似ている。
この巡り合わせもユニバースの計算なのか? いや、それはない。 
エーガとサリシェラの予想外の行動があったからこそだ。 
むしろ、予想外の行動を強いられたのは彼等白き翼の方だろう。 
そういう意味では一先ず信用しても良さそうだ。
執筆者…Gawie様

  数時間後、 
  白き翼宇宙戦艦ミルヒシュトラーセ、応接室

 

一同は切り出すべき質問の選択に迷っていた。 
一緒に食事を取りながら、仮面の男リヴァンケの方からは無難な所から親切な解説があった。
獣人村に関しては、見たとおり、秘密裏に獣人保護を続けるという事。 
ジュネーヴァ達は現在治療中で命に別状はないという事。 
ユニバースとの繋がり、ドイツ大統領との伝を紹介したのは自分だという事。 
この艦、ミルヒシュトラーセはアマノトリフネより小型ではあるが同型艦である事。 
核心である白き翼という組織、その目的に関しては当然ながら「秘密」と即答である。 
セレクタ自体がそうなのだから、直接訊いても無駄だろう。 
それはビタミンN達も承知している。
やはりこの男はユニバースに似ている。 
返す言葉にもいちいち隙がない。 
質問には率直に答えつつも、真意は悟らせない。 
誤魔化されている分っていながらも、まさに答えられる範囲の的確な応えを返してくる。 
聞きたい事が山ほどあるビタミンN達も言葉に困ってしまった。
結局、この手の心理戦を得意とするメンバーもおらず、時間は過ぎ…
《総帥、間もなくアレクサンドリア上空に到達します》
「そろそろ時間ですね。 
 我々もやるべき事がありますので、色々と」
「……………… 
 …そうだな。そろそろお暇しよう。 
 クルーザーは有難く借りるが、どこへ返せばいいんだ?」
「乗り捨てて構いませんよ」
「…では、そうさせてもらう。 
 オイ、行くぞ。エーガ達は?」
「あの方々なら先程、先に発ちましたが…」
「な、なにィ!?」
リヴァンケの事に気をとらせてすっかり忘れていた。
「いけませんでしたか?」
もう遅い。 
またしてもエーガに逃げられてしまったビタミンN達。 
これもリヴァンケの作戦だったのかは分らない。 
慌てて席を立つビタミンN達に、リヴァンケはこう告げた。
「あ、それと… 
 近々、SFESを倒すチャンスが訪れるかもしれません。 
 セレクタも迷わず行動してください。 
 必ず上手くいきますから。必ずね」
「…どういうことだ?」
「いえ、ただの私の予言ですけどね。 
 そのようにユニバース殿にお伝えください」

 

ビタミンN達は与えられたかのような引き際に従い、ミルヒシュトラーセを後にした。 
クルーザーを発進させ、直に後ろを振り返ったが、 
艦の外観を拝む間もなく、白き翼の戦艦ミルヒシュトラーセは忽然と姿を消していた。
執筆者…Gawie様
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