リレー小説3
<Rel3.H・F2>

 

社内のだだっ広い部屋の中央に佇むのはH・F。 
彼を取り囲む様、輪になっている席に座っているのは、組織SFESの重鎮達。
中には最高級幹部『SL』も数名混じっていた。 
後、この場に居ない幹部と言えば…総裁のネークェリーハ位であろう。
席の輪は幾重にもなってH・Fを包囲し、
又、彼から離れる毎に一段また一段と高くなっていた。
一見、会場に集まった観客達の注目を一身に受けるアイドルの其れか、 
或いは裁判所で判決を待つ犯罪者と彼の末路を見届けようとする傍聴人達の其れにも見える。 
だが部屋を包む重苦しい空気と、 お世辞にも好意的とは言えない視線が、 
この場が後者に属するという事実を示していた。
(本当なら…もう遺跡の調査に赴いている筈だったんですけど… 
  ……さっさと終わらせてしまいましょうかねぇ?)
最前列の席で、眼鏡を掛けた女が始まりを告げた。 
SFES最高幹部によって執り行われる審問会である。 
「では、始めましょうか。 
 通称H・F…キガワさん。 
 貴方は一昨日の午前2時45分に、 
 資料室からSFESの組織構成資料及び名簿資料を掠め取り、 
 巡回中のレギオン・フラールを攻撃・拘束した上、 
 SFEL内のアカシックレコードコピーSFES仕様… 
 オーラムアッシャーへ何度か接触を試みた。 
 …間違いありませんね?」
キガワ…少なくともSFESの人間に本名を名乗った事は無い。 
ならば彼等が何かしらの手段を用いて調べ上げたのであろうか? 
SFESの人間も馬鹿ばかりではないなと思いつつ、H・Fが断言した。 
「ええ、間違いありません」
「…君は自分が何をしたのか…ちゃんと理解出来ておるのかね?」
「勿論ですとも。 
 組織SFESの情報を少しリークしました」
「では其の行為で己が身に如何な災厄が降り掛かると思っていた?」
「何も降り掛かりませんとも」 
又もや自信たっぷりに断言するH・F。 
其の態度にいきなり1人の男が笑い出す。 
「ふふ…ふはははははははは!! 
 小童が良い度胸だ!」 
聞いていて不愉快になる様な馬鹿笑いをしているのは、 
軍服を着た中年男…SFESが擁する軍隊レギオンの最高司令官であった。
「SFESの…しかもSLまでをも含んだ名簿など流し、 
 更に我がレギオンに危害を加え…何も無いと来たか」
「左様。死を以て償うが道理」
「驚きました。少し撫でただけで倒れてしまったあの人が、 
 SFES最大戦力と名高いレギオンの一員ですか。 
 ちょっと訓練不足なんじゃありませんか」 
対するH・Fはというと余裕であった。 
見るからに猪武者然とした軍隊最高司令官をコケに出来る程。
「………私の軍を侮辱するか」
「ラフォーク君、挑発に乗るな。 
 …キガワ君。君は基本的な事を失念してはいやしないかね? 
 我々SFESは陰の存在。歴史の暗部に潜む影そのものなのだ。 
 隠れ蓑であるリゼルハンク用の名簿であるならまだしも、 
 SFESそのもののに不利益を及ぼしかねない資料を流すなど…」
「左様。死を以て償うが道理」
「其れに…貴方は所詮外部の協力者。 
 最重要機密に接触する事自体が禁忌なのですよ。 
 アカシックレコードコピーへの接触未遂も見過ごせるものではありません」
「左様。死を以て償うがど…」
「私は貴方達の味方ではありませんからね。 
 飽く迄対等な協力者なのですよ。ちょっと興味が湧いただけです。 
 ほら、其れに結果的には侵入を果たせていない訳ですからね。 
 この程度は大目に見て下さるのが大人物の器というものでしょう。 
 其れに資料流出だって良いではありませんか。どうせ誰が誰なのかなど解りませんよ」 
と、さっきから同じ事ばかり言っている幹部の科白を途中で遮ってH・Fが言う。
「いんや、そうは言い切れんわ。 
 総裁のネークェリーハはリゼルハンクの社長。 
 ジェールウォントはLWOSの副所長。 
 …表向き名の知れ渡った人間だって大勢おる。 
 キガワ…お前さんの行いは、 
 先ず間違いなくリゼルハンク=SFESの図式を外部に漏らしておる」
「……あの〜…左様。死…」
「序でに本気で対等な関係であると言うならば、 
 君が一方的に我々の懐に入り込む事自体おかしくはないかね?」
「全くですね。僕達にも納得出来る形で収めて欲しいですよ」
「そうだぞ!この私の名前をバラしおってからに! 
 これが所長の目に触れたら……LWOS内での私の地位が…」 
ネークェリーハとの親交があったという理由でSL入りとなった男… 
生体兵器研究集団LWOS副所長と、 
ジェールウォント財団代表の肩書きを持つジェールウォントが叫んだ。 
LWOSとリゼルハンク…表向きはリゼルハンクに吸収された事となっているが、 
其の実、LWOS内部では未だに反SFESの炎が静かに燃え盛っていた。
「…………さ……」
「まあまあジェールウォントさん。 
 貴方はSFESの頂点に位置する人間になっているのですよ。 
 今更LWOSでの地位がどうなったって痛くも痒くも無いでしょう」 
Mr左様の存在は完全に無視された。
「ジェールウォントさんのは兎も角、 
 アカシックレコードコピーへの侵入未遂と機密漏洩は言い訳出来ませんよ。 
 …死も覚悟の上だったという事で宜しいですか?」
「……ふふ、死ぬ覚悟と来ましたか。ストレートですね。 
 …参りました…其れだけはまだ御免なんですよ。 
 殺される前に殺るというのはどうです? 
 私なら…この場の全員……5秒頂ければ………」
「…………」
沈黙。
「…………ふふふふ、冗談ですよ☆ 
 …皆さんも冗談なのでしょう?」 
微笑みながら問い返すH・Fを見て…
「………プッ」 
今まで一言も喋らずに事の次第を見守って来た青髪の青年が吹き出す。 
其れにつられるかの様にして一気に場の緊張が無くなっていった。
「貴方々が本気で私にデスペナルティーを負わす気があるのなら… 
 問答無用で襲い掛かって来ている筈ですからね。 
 少なくとも…こんな話し合いの場なんて用意はしません。 
 詰まり…この審問会の目的は…代価の要求といったところでしょう」
「………」 
思い通りの結果を自ずと出して来た相手を見、 
口の端を歪めるSFESの重鎮達。唯、ラフォークのみが舌打ちする。
「何の仕事があるんですか? 
 今回はこの様な事もありましたし… 
 …出来る事ならば協力させて頂きますよ」
執筆者…is-lies

「で、なんでゴキブリすらいない牢屋に行かなければならないんですか?」
「・・・」 
先程から質問しているが、前を歩く青髪の青年ことライズは黙ったままだった。 
そのゴキブリすらいない牢屋に『仕事』があるというのだが。
ライズが突然、H・Fに問い掛けた。 
「セイフォートシリーズは知っているな?」
「・・・ええ。耳、鼻、角、脳、髪、眼、口、心臓、体、腕、脚、翼、尾・・・他にありましたっけ?」 
ズラリと様々な身体のパーツを並べる。全てが『セイフォート』と呼ばれる能力を表したモノだ。 
「何だか生物的には足りないと思いますけど、ね。
 呼吸に必要な肺、体を支える骨格とかも生物的には必要ですよ?
 骨が無かったらただの軟体動物になってしまいますよ♪」 
笑うH・F。それに対してライズは冷静だ。 
「あれは飽く迄も力の呼び名。全部揃えてやる必要なんて無い。
 ……だが、『そこまで』知っていたか」 
ライズはその部分を強調し、そして続きを語りだした。 
「『いた』んだ、セイフォートの肺はな。
 能力はエーテル吸収とエーテル放出・・・だったな、確か」
「・・・過去形?」
「お前の言った通り、『セイフォートの骨』は存在する」
「・・・」
「その『骨』が仕事だ」

 

誰一人いない牢屋に2人分の足音が響く。 
一つは冷静に、 
一つは陽気に。
一つの牢の前で足音が止まった。 
その牢屋の囚人は
「・・・当時、一匹のレギオンだったこの男は『骨』を与えられたが研究所を脱走した。 
 その際、当時の『セイフォートの肺』を・・・」 
そこでライズは言葉を切った。
続きは意外な所から来た。
「喰ったんだよ。オレがな」 
髭面の・・・二十歳ほどの男だった。 
まさに、牢屋の中の男だった。
「喰った?」
「セイフォートの骨の能力は『脳』や『尾』に近いそうだ。コイツを捕らえるのに苦労したぞ・・・」
「まさか、」
言いかけた言葉を、再びその囚人が言った。 
「オレは喰うんだ。喰った奴の運動能力、スキル、体質を『奪い取る』。
 セイフォートとかいうのも例外じゃねぇ。 
 ・・・オレはなぁ、自分の意識なんてどうでもいいんだ。 
 『器』になれさえすればな」
「・・・『脳』は結晶パターンを頭で覚える。『骨』はそいつの運動能力をその身体に刻む。そういう違いだ。 
 お前の仕事はこの男だ。 
 コイツを最終兵器に仕立て上げろ」
「随分無茶な仕事ですね・・・」
平然と、笑顔で言うH・F。
執筆者…夜空屋様

  リゼルハンク、地下闘技場

 

普通はレギオン達のテスト用などに使われるこの闘技場に、幾つかの人影とペンギン影(?)一匹があった。 
もちろんペンギンはペンギン太郎だ。隣には黒服の男、H・F。 
この二人は、まさに命がけの戦いを眺める観客だった。
観客席から舞台を眺め、ペンギン太郎がボヤいた。 
「まったく・・・アレを『最終兵器』だなんて・・・ライズは何考えてるんだペン?」 
恐らく『アレ』の能力は聞いていないのだろう。H・Fはそう思った。
もしアレの能力を聞いていたら・・・100%納得する。
「僕が思うには彼は前支配者用の最終兵器ではないかな、と思います」
「へぇ?あの男が前支配者用の最終兵器ペン?う・・・ププッ・・・ププブッ」 
こらえている。ペンギン太郎、堪えている。何が可笑しいのかは知らないが。 
H・Fはため息をついて、「仕方ない」と白状した。 
「彼の能力を見れば納得しますよ」
「はぁ?そりゃどーゆーことだペn・・・」
戦いが始まった。 
男一人と対峙するのは六名のレギオン。 
彼らは全て、SFESに反旗を翻した裏切り者の『不良品』。 
いわばこの戦いは罰ゲームなのだ。 
負ければ死、勝てば生き残れる。ただそれだけの戦い。
男は周りを囲む六人の男や女を眺め、呟いた。 
「『ゲーティア』は三発・・・三人は自力、か」
まず、一人が吹き飛ばされた。 
次に二人。突然その場で倒れる。 
男はただ立っているだけだった。いや、そう見えていた。
一瞬で四人目の目の前に来て、男は呟いた。 
「『魔王復活<ゲーティア>』・・・」

 

「どうです?納得しました?」 
H・Fが硬い表情で言った。 
ペンギン太郎は、
「・・・見えなかったペン」 
見えなかったらしい。
H・Fがあの男の資料だという物を取り出すと、物凄い勢いで引っ手繰った。そして叫んだ。 
「セイフォートの骨ぇ?!」
「やはり知りませんでしたか」
「知ってて言わなかったペンか?!」
「Yes,I do.」 
ペンギン太郎のH・Fに対する怒りが500P上がった!

 

六つの肉の塊を眺めながら、男は再び呟いた。 
「オイオイ・・・ゲーティアあと一回残ってるじゃねーか。弱すぎだろ」 
そして、『喰い』始めた。

 

「・・・何か能力がアズィムに似てるペンねぇ・・・おぇ」
「納得しました?」
「一応・・・でも危険じゃないかペン?」
「何がです?」
「前支配者と協力するかもしれないペンよ?」
「ああ、それは・・・」 
少し言葉を濁らせ、 
「多分、大丈夫だと思います・・・」 
自信無く言った。
執筆者…夜空屋様
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