リレー小説3
<Rel3.ガトリングガンズ8>

 

 

「………来ない…。 
 ずっと考えているのに…来ない…」
暗雲に包まれた夜空の見えるビルの屋上、 
1人で夜風を受けているのはナオキングだった。 
あの『闇』と名乗った少女は件の日以来、一度も姿を現していない。 
もしかしたら自分の願いを叶えてくれるかも知れない存在… 
無論、確証がある訳ではない。 
だが併し、あの時…ナオキングの弱さと願いを感じ取り、 
接触を仕掛けて来た……そんな彼女がする事というと… 
…ナオキングには『協力』しか思い浮かばなかった。
今度はタカチマン達に邪魔されぬ様、1人で彼女を待ち続ける。
待って現れるのかどうかは知らないが、
どちらにせよ彼に出来るのは其の程度である。
「………あんなに思わせぶりな事言ったんだから… 
 ……だから………助けてよ………!」
身勝手な願いだという事は解っていた。 
其れでもそう願わずにはいられない。 
SFESとの睨み合いの日々はナオキングの精神を著しく衰弱させ、 
冷静に決着の時を待つ程の余裕すらも無くさせていたのだ。
「……もう……来ないのかな…? 
 …僕は……打ち明けたいのに………!」
「そんな必要無いよ」
いきなり背中に氷柱を差し込まれたかの様に感じ、 
転げる様にして後ろを振り返るナオキング。 
目の前に佇むのは果たして、件の少女『闇』であった。
「打ち明ける必要なんて無い。 
 貴方が望めば全て済む事。そうでしょティミッドさん」
「………こんばんわ…必要ないなら其れは其れで良いや… 
 ……後、僕はナオキングだよ。ティミッド(臆病)なんかじゃない」 
出来るだけ落ち着き払って『闇』と対峙する。 
怖い。途轍もなく怖い。 
101便で見たセイフォート達が、マヌケなファンシーキャラに見える程。 
だが其処に死の恐怖は無い。其れだけは間違いない。 
ならば心の芯から響き渡る恐怖をどう表現すれば良いのだろうか? 
死への恐怖ではない。
訳の解らない…ナオキング自身にも説明出来ない畏怖である。
「名前は其のモノのカタチを明確にするものなの。 
 今の貴方がティミッドさんじゃなければ何なの?くすくす」
図星である。この様な挑発を受けて黙っている程、 
今のナオキングに精神的な余裕は無いのだが、 
『闇』の僅かな態度の差異に気付き、一先ずは怒りを沈める。 
其れは『闇』の挑発を誤魔化すという以上に、 
純粋な興味から来たものであった。
「…何?其の包帯?」
「くすくす。痛かったんだから。 
 癒着も出来なかったから周辺刳り貫いてクローンの肉で埋めたの。 
 垂れ下がった惰性の腕さんは……思ってたより凶暴な子だった、くすくす♪」
「………良く解らない…… 
 …と、兎も角……貴方は……僕の気持ちが解るんですよね? 
 ……………なら……僕はどうすれば良いと思います?」
「気持ちなんて、解るはずないじゃない? 
 私そんなにオトナじゃないもの。 
 貴方は貴方の思うままに…… 
 そうすれば私は貴方の願いを叶えられるの…」
「…何で僕に…… 
 僕なんかより、もっと願いを叶えたいと思っている人はいくらでも… 
 いや、人間全てがそう思っているのに、何で僕なんだ!?」
「…願いは人の数だけあるけれど、 
 その願いを叶えられる者はほんの一握り… 
 貴方には願いを叶えられるだけの力があるの…」
「願いを叶えられる力? 
 …僕自身どうしたいのか解らないのに? 
 君…何言ってるのか解らないよ…」
「貴方は一番大きな流れの中にいるんだ… 
 もうすぐ…大きな濁流が…来る……」
中途半端に言い残して、少女の姿はフェードアウトするように消えてしまった。 
少女が言った、流れ――― 
運命だとでも言いたいのだろうか?
誰かが階段を駆け上がってくる足音にナオキングはふと我に返った。
「ナオキ、誰と話している!? 
 例のがまた来たのか?」
ナオキングの様子がおかしいのに気付いていたのか、やって来たのはタカチマンだった。
ワザとらしく携帯端末を操作するフリをして誤魔化すナオキングだったが 
ワザとらしいのはバレバレであった。
「あ、博士、何です?」
「誤魔化すな、また来たのか? 
 何を話した?」
何を話した?と言われても、 
ナオキング自身何が何だか解ってはいないのだ。答えようがない。 
困惑して、言葉をなくしているナオキングを見て、 
タカチマンは少し間をあけ、ナオキング落ち着くのを待ってから、 
再度、答えやすい質問に切り替えた。
「相手は、最後に何と言った?」
「…僕の願いが…願えば叶うかも…… 
 そういう流れが… 
 でも、もうすぐ、大きな濁流が来るって……」 
ナオキングは搾り出すように答えた。 
何とも不明瞭な回答であるとは分っていたが、これが精一杯だった。
『もうすぐ大きな濁流が来る』 
タカチマンにもその言葉の意味は分らなかった。
…だが、翌日、早くもその予兆は訪れた。
執筆者…is-lies、Gawie様
inserted by FC2 system