リレー小説3
<Rel3.ガトリングガンズ5>

 

 

暗殺者ギルドまで巻き込んだタカチ魔導研究所の騒動から4日が過ぎ、 
ガトリングガンズ2号店では、また平常通りの営業が続いていた。 
タカチ魔導研究所の方は、
その後は何事もなかったようにリゼルハンクが落札したが、それ以外は特に動きもなく、
心配されたSFESの尾行、盗聴の可能性も薄れつつあった。
進展があったとすれば、 
まず、カフュが八姉妹の結晶に関わる情報を得た事だ。 
その情報とは、八姉妹の結晶である可能性のあるエーデルヴァイスと碧きイノセントに関するものだ。 
プロの情報筋なので信頼は出来るのだが、
これがガウィーの言っていた有力情報になるかどうかは分らない。 
詳しく調べるために、カフュは現地…火星地中海のクノッソスに向かった。
それと、ジードが皆のカードを裏マーケットで鞍替えしてくれたおかげで、
ある程度金の自由が利くようになったのが有り難い。 
とは言っても、元々手持ちの少ない者や碌な収入のない者もいるので、
資金的に苦しい状況に変わりはないのだが、
野良犬の寄せ集めのようなメンバーでは、それも致し方なかった。
「つい〜ん」 
「ただいま。今日も収穫なし。あ〜腹減った」 
「お頭…これでは僕等、ただの穀潰しなのでは…」
そして今戻ってきた野良犬代表ユーキン達。 
彼らは引き続きアテネ近辺で情報収集にあたっていた。 
情報収集、哨戒任務は名ばかりで、
単に散策楽しんでいるように思えてならないが、今となってはもう誰も咎めない。 
何気に皆、にぎやかな集団生活を楽しんでいるような雰囲気もあり、
店内では今日もテレビを見ながら午後のコーヒータイムをマッタリと過ごしていた。
「昨日から、どのチャンネルもセカイハ逮捕か… 
 メイちゃん、やったな」 
ニュースはネオス日本共和国軍部代表のセカイハ・ボーリョクがスパイ容疑で逮捕されたというものだ。 
タカチマン達からすれば今更とも思える事ではあったが、
最近は軍や政府の重役の不祥事が明るみになる事は滅多に無かったので、
ここぞとばかりに多くのマスコミが目を付けたようだ。 
名前こそ公表されてはいないが、恐らく裏ではメイの活躍があったのだろう。 
それに触発されてか、同じプロのカフュも、
「八姉妹の結晶の手掛かりを見つける」といって今朝クノッソスに出向いたという流れだ。
「しかし独立祭の中継は驚いたなぁ。 
 ミナちゃんが無事だったのは良いけど… 
 なんか、ああなるともう雲の上の存在だな」
セカイハ逮捕のニュースよりも彼らが驚かされたのは、 
独立祭でのアメリカ大統領の突然の発表だった。 
連合は本田ミナを議員に迎え、大名古屋国の復興と共に、
以前の戦争以来初の本格的な民主主義国家の建設を目指すというのだ。
「お得意のプロパガンダにしちゃ、随分と大きく出たな」
「それに、アメリカは八姉妹の結晶捜索にも本格的に乗り出したか… 
 ガウィーもコレを知ってたのかもな。 
 どうする? アイツそろそろ来る頃だぜ?」
「結局、返答は保留にしたまま… 
 我々のネタは、奪還した超結晶ライブラと、SFESの新情報、 
 後はカフュの報告待ちか… 
 リュージ、そっちはどうだ?」
「けっこう自信アリだな。 
 俺って銃だけなくて、剣とかもイケるかもよ」
今日は、ガウィーに依頼されていた槍も完成していた。 
我ながら良く出来たものだと、リュージは完成した槍を磨きながら職人の至福に浸っている。
「そういう武器に詳しくない私が言うのもなんですが… 
 それ…唯、単に折れた部分を繋ぎ合せただけに見えるのですが…」 
横で見ていた佐竹が心配そうに呟く。
「だな、貰った材料ケチったろ? 
 多分金返せって言われるぜ」 
佐竹とは対照的に厳しい指摘をするのはジードだ。
「バカ言っちゃいけねェな。 
 天然の木材ってのは扱いによっては最高の素材になるんだ。 
 素人は、武器は硬くて鋭けりゃ良いと思ってるから困るぜ。 
 穂先はアダマンチウムで決まりなんだが、 
 むしろ一番問題なのはこのシャフトの部分だ。 
 一見何の変哲も無い木製のショートスピア… 
 だが、実際手にしてみてよく分かった。 
 このバランス…この一体感… 
 こいつはそう簡単に作れるもんじゃねェ。 
 アダマンチウムとヒボタニウムの特性と、 
 この素の素材をどう生かすかが腕の見せ所って訳だ」 
リュージが職人の薀蓄を語る。 
確かにリュージは一流の銃職人ではあったが、 
この男、手を抜くときはトコトン手を抜くのだ。 
それを知っている一同は依然半信半疑でその話を聞き入れながら、 
解ったような解ってないような相槌を打つ。
執筆者…Gawie様
カランカランとドアベルが鳴った。 
一同が振り返ると、サングラスのヒゲ面が顔を覗かせていた。 
約束通りにやって来たガウィーである。
まだ例の依頼の応えが決まっておらず、気まずそうなタカチマン達を余所に、 
リュージは出来上がったばかりの槍を手に、満面の笑みでガウィーに歩み寄る。
「ほれ、槍は仕上げといたぜ。どうよ?」
ガウィーはリュージから槍を受取ると、 
いきなりブンッと一振り。そして暫く沈黙。 
一同がその評価の程を見守る。
「…刃とジョイントにアダマンチウムを使ったようだな。 
 折れた所をそのまま分解出来るようにしたのか… 
 その割にはブレもない、バランスも変わっていない」
「シャフトの中心を5oほどくり抜いてアダマンチウムの芯を入れておいた。 
 各パーツにヒボタニウムでコーティングしたのが相性的に良かったみたいだ。 
 それとオマケだが、石突の方にもちょいと細工をしておいたぜ」
「流石だ。何も言う事はない」 
ガウィーの反応は、声を上げて絶賛する訳でもなく、 
淡々としたリアクションではあったが、まずは気に入ってもらえたようだ。
「それはそうと… 
 先日の依頼のことだが…」
「あぁ、その前に紹介したい者がいる。 
 知ってる者もいると思うが…」 
そう言いながらガウィーが店のドアを開く。 
現われたのは、ポンチョを纏った男と、軍服姿の少女だった。 
少女の方は誰も見覚えはなかったが、 
ポンチョの男は、キムラとユーキンそしてタカチマンも知っている人物。 
素顔は知らないが、その出で立ちには見覚えがあった。 
大名古屋大戦の勇者の一人であり、タカチマンとも繋がりを持つ、ミスターユニバースだ。
「ご無沙汰ですなぁ、タカチマン博士。 
 行方不明と聞いて心配しとったんですわ。 
 早速ですが、例のSFES異形研究資料を頂きに参りました」
「ユニバース…! 
 どういう繋がりかは知らんが、もう嗅ぎつけて来たか… 
 相変わらずハイエナのような男だな」
「何気にヒドイ事を言いますなぁ。 
 それに、ガウィーさんとはたまたまご一緒しただけですよ」
「…まぁ丁度いい。ガウィーとユニバース、二人に提案だ。 
 ガウィーの言っていた八姉妹の結晶ではないが、 
 私の研究所、…いや隠しても仕方ないか… 
 SFESの手に渡った私の研究所から、 
 研究データが収められた超結晶ライブラを奪い返した。 
 異形研究資料もこの中にある。 
 それに、その時に得たSFESの情報… 
 これでどうだ?」
「…ほう。いいだろう。 
 有力情報として1万UD払おう。キャッシュで」 
と、ガウィーがカウンターの上に現金の束を置いた。 
タカチマン達は超結晶ライブラ奪還に至る経緯――― 
最初に立てた作戦、暗殺者ギルドの協力、SFESとの交戦、その詳細を全て説明した。

執筆者…Gawie様

「つまり、それ、失敗したというか、フロックですな」
「…まぁ、そうとも言うが…」
実際ユニバースの言う通り。作戦は一度破綻したのだ。 
言ってしまえば、暗殺者達の行動がたまたま上手くいっただけなのである。
「気になるのは、そのプロテクトを解除した直後のSFESの行動だ。 
 最初から君達がプロテクトを解除するのを狙っていたとも考えられる」
「それはあるかもしれないが、端末は直に破壊したんだぜ?」
「だが、隙はあった…」
「いくらSFESでもそこまで用意周到ってことはないだろ? 
 それとも俺達はそんなに信用されてないってことか?」
「いや、そういう訳ではないが…」 
妙に疑り深いガウィーである。 
しかし、それには理由があった。 
彼自身、超結晶に細工を施し、あえて盗ませるという手口には身に覚えがあったのだ。
「直にそのライブラを解析したい。 
 …だが、その前に場所を変えよう」
「確かにここじゃ、結晶とのインターフェースがないからな。 
 でも、どこに行くつもりだ?」
「3、4人来てくれ。 
 オレのヤサに案内しよう。 
 なに、車で30分くらいだ」 
言うが早いか、ガウィーはタカチマン達の返答も聞かずに店を出て行った。
「ワシも行ってみよ」 
と、ユニバースも席を立ちながら、肩越しにタカチマン達を手招きする。 
タカチマン、ジード、佐竹がそれに従い、 
「俺も。お前ら店任せたぜ」 
「じゃ、ボクも」 
リュージ、そして釣られてユーキンがその後を追った。
店の表に停めてあったワゴン車に計8人が乗り込んだ。

 

 

「あ〜、ところでガウィー。 
 そちらのお嬢さんは?」 
狭い車内で、ユーキンが後部座席から身を乗り出して、 
助手席のガウィーの肩を揺すりながら問う。
「運転手だ」
「ミスターガウィー。 
 私のキャラをゾンザイに扱ってはいませんか? 
 ちゃんと紹介して下さいよぉ」
「カタリナ…なんだっけ?」
「シュミットです」
「そう、カタリナ・シュミットだ。 
 あ、そこ右だ。 
 で、こっちはユーキン、昔の仕事仲間だ。 
 次の信号左」
バックミラーのユーキンの視線を意識しつつ、 
カタリナは前だけ見たままハンドルを握る。
「カタリナちゃんか… 
 ふ〜ん」
…と、そんな話をしている間に、 
「そこで停まれ」 
車は目的地に着いた。
執筆者…Gawie様

ガウィーに案内されながら、 
一行は古びたマンションの一室に足を踏み入れた。 
そこは部屋と言うにはあまりに生活感のない部屋だ。 
カーテンは閉め切ったまま、もう何年も日の光を浴びていないような様子で、 
ある物と言えば、パソコン、通信機器、無数の酒の空ボトル、無造作に積まれた段ボール箱。 
ベッドの上まで物置と化している。 
どうやらヤサとは言っても普段住んでいる訳ではなさそうだ。
「多少散らかってるが気にするな。 
 PCは3台ある。 
 内一台は結晶対応、ライブラでもいけるはずだ。 
 他に使えそうなものがあったら勝手に使ってくれていい」
早速行動に出たのは一番用がなさそうなユーキンだ。 
何か面白そうな物はないかと部屋を物色している。 
ここは任せたと、ユニバースとカタリナは何故かシャボン玉で遊び始め、 
そんな外野メンバーは気にせず、 
ジードを中心に、リュージ、タカチマン、佐竹、ガウィーが作業に取り掛かる。
「とりあえずは外部でいいですね」
「あぁ、そうしてくれ」
「いや待て、結晶の方が優先されたみたいだな」
「OSは?」
「結晶デフォ。つまりOSはライブラだ。 
 OSと言うのかどうかは解らんが」
「一種の人格プログラムみたいな感じだな。 
 見た目はゲームみたいだ」
喫煙者率が高くなった室内が紫に煙る中、 
作業班全員がタバコをふかしながらPCの設定に勤しむ。 
傍から見れば、大の大人が揃ってゲーム画面に集中しているようにも見える。
「SFES異形研究資料を先にお願いしますよ〜」 
ユニバースがシャボン玉を吹きながら催促する。
「分ってる。 
 まずは読めるものから順に、とりあえず全部俺のPCにおとす」 
漂うシャボン玉に煙を吹きかけながら、ジードが画面を探る。 
画面の中には長閑な田園風景が広がっており、 
落ち着いた口調の男性の声で音声ガイドが流れている。
「しかし、ほんとにRPGやってるみたいだな。 
 これがメインの操作画面なのか?」
「これはライブラの記憶がビジュアル化された… 
 言ってみれば結晶の夢みたいなものだ」
「データは何処探せばいいんだ? 
 建物みたいのが一応データの入れ物になってるようだが…」
「確かに、記憶装置としては、これでは効率が悪すぎますね」 
通常の結晶デバイスとは勝手が違い過ぎて、流石のジードも戸惑っているようだ。
「ガウィー、ここにはユーティリティのようなものはないのか?」
「あるにはあるが、結晶にはそれぞれ個性があるからな。 
 使えるかどうかは…」 
そう言いながら、ガウィーが別のPCを操作すると、 
映像だけだった画面に解り易い文字が表示された。 
だが、それでもまだ意味不明な文字列が多くを占めている。
「まぁ、これならかなりマシだ。 
 お、SFES異形研究資料発見! 
 木の裏の箱の中にあったのかよ」
漸くまともに操作出来るようになり、 
直にジードがデータの移植を試みる。 
ふとその時、画面の中を何かが横切った。
執筆者…Gawie様
「ん?」 
今まで風景のみだった画面の中に、 
現われたのは確かに人…女性のように見えた。 
ジードが其れを追って画面を移動させると、 
今度はその女性が振り返ってこちらに近付いてきた。
《ようこそ〜、魂の庭へ〜》 
女性のオブジェクトがジード達に向かって笑顔で挨拶をした。 
間延びした微妙なイントネーションだ。
「なんだこりゃ? PC初心者向けのアシスタントか?」
「微妙だなぁ。普通こういうのはもっとそれっぽいキャラ使うだろ? 
 なんかコイツ、あんまり若くないし、年齢不詳な感じだぜ」 
リュージさんそれ失礼デス〜》 
「ははは… 
 …って、なんで俺の名前知ってるんだ!?
「いや、待ってください…! 
 彼女の服装、この胸のリンゴのマークはちょっとして…」
「…レギオン…!」
「チッ、やっぱり入り込んでやがったか。 
 今すぐ削除してやるぜ」 
ジードがキーボードに手を伸ばした。その時だ。
突然、女性の手が画面からヌッと這い出して、ジードの腕を掴んだ。
「何ィ!!」
驚いたジードがその手を振り解こうとすると、 
更に画面から無数の触手のような物が飛び出してジードの体に巻きついた。
「ネットワーク越しに物理攻撃だと…!? 
 なんて奴等だ!」 
ネットワークからの物理攻撃… 
一体どんな技術・能力を使えばこんな事が可能なのか。
「わ!?じ、ジード!? 
 待ってろ、今すぐ助けてやるからな!」 
異変に気付いたユーキンが片腕でボウガンを射る。
ジードを拘束している触手の何本かに命中するものの、 
あまり効いている様には見えず、ジードは依然として掴まれたままだ。
「くっ…!」 
ジードは何とか片手をキーボードへと伸ばそうともがくが、 
其の前に画面に映る女の、もう片手が出て来、 
ジードの手が後もう少しというところで、キーボードを先んじて掠め取る。
《駄目デスよ〜。大人しくして下さイね。 
 其処のアナタも電源抜こうとしないデ! 
 私、別に喧嘩売りに来た訳じゃないんデスよ? 
 …えっと、御初に御目に掛かりますタカチマン博士ご一行様〜 
 そして大名古屋国大戦勇者の皆サン。 
 私、SFESの兵隊の1人でス》
SFESの兵を自称する女が、ジードの拘束を触手に任せ、 
画面の中で敬礼して見せるが、其の間延びした声からふざけた印象しか与えない。
「…喧嘩を売りに来たのではないそうだが… 
 ……ではSFESの兵隊…レギオンが一体何の用だというのだ?」
《……時間が無いのデ手短にイきまスヨ。 
 SFESはSFESでも私は現SFESの崩壊を望む者。 
 反SFES組織セレクタが貴方と共に居ると聞いて馳せ参じました。 
 是非ともセレクタにSFESを倒して頂きたい。 
 これは其の為のプレゼントとさせて頂きます》
何やら棒読みで女が喋り終えると同時に、 
リボンで飾られた箱が一つ新たに表示された。
ジードを拘束していた触手が其のまま画面内へと戻ると、 
既に其処には女の影も形も無くなっていた。
執筆者…Gawie様、is-lies
「何だったんだ、今のは…?」 
何らか視覚作用を利用した幻覚である可能性も考えられたが、 
ジードの腕や首に残った血が滲んだ痕からそれも否定された。 
やはり、何らかの手段を用いてネット越しに物理攻撃を仕掛けてきた訳だ。
「…恐らく、転送装置など使われている結晶通信、ジェミニ理論… 
 それプラス、電気的な信号を操る事の出来る能力者がいるだろうな」
とりあえず、この不可解な現象に関しては、 
ガウィーが言った推論に納得するしかなかった。
「しかし、それはそうと、あの女… 
 SFESでありながら、SFESの崩壊を望む者? 
 どういうことだ?」
「それに、反SFES組織セレクタというのは何でしょうなぁ? 
 ワシ等と共にいるとか言ってましたが… 
 タカチマン博士、心当たりまります?」
「…解らん… 
 が、今はそれよりも結晶のデータが先だ」
今はまだセレクタを名乗るのは早い―― 
と、ユニバースは何とか誤魔化した。 
『タカチマン博士ご一行』『大名古屋国大戦勇者』『貴方』… 
これらが誰から誰を差しているのかが曖昧だったおかげで、 
まさか、自分達がセレクタだとは思わせず、どうにか謎に保つ事が出来たのだ。
その後、 
約一時間ほどで必要なデータの移植作業は終わり、 
厳重なチェックを繰り返した後、SFES異形研究資料も無事ユニバースの手に渡った。 
残るは、レギオンを名乗った女が残していったプレゼントのみとなった。
「SFES異形研究資料も、 
 博士の研究資料も無事に残っていたな…」
「恐らく… 
 彼女等がその気になれば書き換えや削除も可能だったのでしょうが…」
「残るはこの箱の中身か… 
 信用できると思うか? 
 さっきにみたいなのが出てくるのはゴメンだぜ?」
「信用…? 
 出来る訳がない!」 
そう言いながら、箱のデータを今にも削除しようとしているのはジードだ。 
彼としては、ハッキングという彼自身の得意分野で出し抜かれたのだから、 
心中穏やかではなかった。
「勿論そんな信用など全くの無意味だ。 
 だが、情報屋としては興味がある。 
 そのデータ…」 
ガウィーが言い出すよりも先に、ジードが箱のデータを展開した。
「……………ッ!!」 
思わず一同が身構える。
執筆者…Gawie様
―――だが、箱は普通に開いた。
「うぅ…はぁ〜 
 おいジード、やるなら先に言えよな」
「そんなにビビるなよリュージ。 
 お、それより… 
 ガウィー、コイツ見覚えないか?」
SFESDB… 
 あれのデコーダか? 
 いや、更に上層部への鍵か…」
「行ってみるか… 
 奴等がこっちに物理攻撃を仕掛けて来たのなら、 
 その逆も有り得る訳だ」 
勢いに任せてジードはそのデータの内容を探る。
「待て!  
 恐らく向こうのも結晶だ。 
 しかもアレは精神領域… 
 インターフェイスもなしにアクセスするのは危険だ!」 
慌ててガウィーが忠告するが、遅かった。

 

「…何だ…ここは!? 
 宇宙の…? 
 レ、レ…ジア? 誰だお前は!? 
 なんだ、俺が溶ける……」 
突然ジードが幻覚でも見ているように訳の解らない事を言い始めた。
「ジード! 何が起こったんだ!?」
「…結晶とシンクロし始めたか… 
 ユニバース!」
「任しときィ!」 
ガウィーに言われ、 
ユニバースが超結晶ライブラに手をかざす。 
(…堪忍なぁ…)
…と、結晶の光が一時的に弱まった。 
同時にジードがその場に倒れこんだ。 
直に佐竹、ユーキン等が駆け寄って抱き起こすと、
「あ、あぁッ…! 
 な、何だったんだ、今のビジョンは…? 
 意識が…バラバラになりそうだった…」 
どうやらジードは無事だったようだ。
「…おそらく精神領域。 
 そこにアクセスするのは、魂を互いに接続するようなものだ。 
 オレがあの後仕入れた情報では、 
 その接続を仲介可能なDキメラが存在するようだ。 
 今のところ、SFES製だがな……」
「なんか解んないけど、やっぱりSFESか?」 
目の当りにしたユーキン達も、 
この現象もガウィーの解説も理解不能だった。 
唯一人、タカチマンを除いては…
(SFESのDキメラか… 
  情報屋ガウィー… 
  それにユニバース… 
  超結晶を制御出来る能力を持っているのか…? 
  いや、先程のは結晶の方がそれに応えたようにも見えた… 
  …まさか…)
多くの研究者達が未だ解明出来ていない結晶やキメラの情報を知る情報屋ガウィー。 
SFES異形研究資料を欲する謎の能力者ミスターユニバース。 
偶然ではない何かがある… 
噛み合わないキーワードの符合を求めるタカチマン。
(…いや、だが…そうだとしても、 
  …そんな詮索をして何になる…? 
  …私はただ…………)
執筆者…Gawie様
暫し不自然な沈黙が続いた後。
「…えーっと、 
 それで、何が起こってどうなったんだ?」 
ユーキンが能天気に口を切った。 
こういう時は無知も役得である。 
佐竹やリュージも実はそれが聞きたかったし、 
タカチマンとしてもユニバース達たちの反応を窺うにはナイスなタイミングであった。
「…まぁ、つまり、 
 SFESは初めからこの結晶に罠を仕掛け、 
 お前達が結晶のデータにアクセスするのを待っていた訳だ。 
 モニターから…しかもカメラもなしに、 
 こちらの面子を知ったのは、恐らく結晶通信によるものだ。 
 だが、どうやってネットワーク越しに物理攻撃を仕掛けて来たのかは解らん。 
 結晶通信を利用した物質転送もならともかく、ここにはその装置がない。 
 普通なら有り得ない。 
 それと、 
 グラッド…いやジードがああなったのは、 
 この超結晶ライブラが、何かと通信しようとした… 
 そこにジードの意識が飲み込まれたような感じだった。 
 これもオレでは上手くは説明できない…」
「う〜ん、結晶… 
 ボク等は訳のわからないモノを使ってる訳だ」
「しかし、その結晶通信… 
 まさか此方の居場所もバレてしまったのでは?」
「いや… 
 結晶通信は、 
 ある特定の結晶同士が互いの事象を共有しようとする性質を利用したものだ。 
 それぞれがどんなに離れていても、その物理的距離を超越出来るのだが、 
 非常に不安定で、まともに起動させるにも能力者の補助が必要だ。 
 ゆえに、互いの場所を数値的に把握することは出来ないと言われている。 
 私の今までの研究でも、それは実現出来てはいない。 
 だが………」
「そこに未知の異能力者の存在を仮定すれば、一概には言えませんな。 
 申し訳ないですけど、なんや面倒な事になりそうですし、 
 ワシ等は今日の所はこの辺で御暇させていただきます」
「オレも、 
 乗りかけた所で悪いが、ここは安牌。 
 SFESに目を付けられたら仕事がやり難くなるからな。 
 ここも引き払うか。 
 なんなら、ここの設備は譲るぜ。 
 博士の研究の足しにでもなれば…」
「そや、要るもんがあったらまた言って下さい。 
 ワシがスポンサーを仲介します。 
 では失礼〜」
「じゃあな… 
 手札が揃ったら、また連絡する」
「え〜、あの… 
 このような薄情者達で申し訳ありません。 
 ですが、私も失礼させていただきます」 
ユニバース、ガウィー、カタリナの三人は逃げるように、 
本当に逃げるように、あっさりとその場を立ち去った。 
あまりにあっさりとした対応に、 
主を失った部屋に残されたタカチマン達は唯呆気に取られるしかなかった。
「な、逃げやがった… 
 追うか?」
「いや、ここは退けと言っているのだろう… 
 退くべき時は、欲は捨てた方がいい。 
 こちらも仕切り直しだ。 
 取れるだけのバックアップを取った後、 
 ライブラのデータも一度白紙に戻そう…」
執筆者…Gawie様
inserted by FC2 system