リレー小説3
<Rel3.ガトリングガンズ4>

 

 

  翌早朝―――
「それでは皆さん… 
 お手伝い出来なくて申し訳ありませんが…」
火星に来て間もなく、 
メイ達は、当初のターゲットであるセカイハが日本宇宙ステーションにいる 
という情報により、直に宇宙ステーションに戻ることになった。
「正直…、宇宙船にはもう乗りたくないんだけどな…」 
ハチが小声でぼやくが、それは一同も同感である。 
誰も口にはしないが、101便事件のことは毎晩のように夢に出てくる。 
SFESと何らかの決着を付けるまでは、この悪夢は覚めることはないだろう。 
仕事とは言え、愚痴も言わずに出て行こうというメイのプロ根性には恐れ入る。
「一応… 
 八姉妹の結晶の事は、アメリカと日本にも探りを入れてみます」
「すまんな、頼んだで」
一同がメイ達を見送った後、 
一人落ち着きがないのはユーキンだ。
「言っときますけどお頭、ダメですからね。 
 ボク達には手続きをパスする術がありませんし、旅費もありません。 
 それに、なにより迷惑です」
「む、バンガス、最近生意気じゃないか?」
「知りません」
「そ、それに、考えてみればメイさんだって危険じゃないか」
「その点なら心配ない。 
 プロライセンス保持者なら公共の施設、交通機関は匿名で利用できる。 
 Aランクにもなれば、料金も半額、国境もフリーパスだ」
「ふ〜ん。プロってスゴイな。 
 そう言えばカフュってランクは?」
「ま、まだランクには入ってねェよ。うるせェな…」
「ねぇカフュ」
「なんだよ?」
「どうすればA級プロになれるんだ?」
「………… 
 功績とか、じゃないか?」
下心見え見えではあったが、 
ユーキンの素朴な疑問には一同もハッとする。 
確かにそんな特権があるならライセンスだけでも取っておいて損はない。 
しかし、途中まで説明しかけたカフュも誤魔化すように口を閉ざした。 
実はプロであるカフュ自身もあまり詳しくは知らないようだ。 
それもそのはず、
プロギルドの存在もプロの特権も国際条約等で保護されている訳ではない。
あくまで能力者に対して、中でもその存在を公にしているプロギルドに対して、
単に事を荒立てぬようにと、いつの間にか通例となった暗黙の了解に過ぎないのである。
「まずは、斡旋所に登録して、仕事をこなしていくのが普通だが… 
 今の俺達じゃ目立ちすぎる。ギルドがどう出てくるかは解らないがな…」
「だが、調べて見る価値はあるな」
早速とばかりにジードが自慢の情報網を展開する。

 

――しかし、事はそうそう順序良くは進まない。 
ジードがPCを起動させると同時に受信したメール。 
彼の仕事仲間からの知らせだった。 
その内容に、ジードがフリーズする。
「…どうやら、プロの事は後回しになりそうだ。 
 タカチマン博士、これを見てくれ」
今はSFESに対して隠れる事だけで精一杯だったタカチマン達だったが、 
当のSFESにとってはそんなことは取るに足らない問題であった。 
タカチマン達の心配とは無関係にSFESの計画は進行していく。

 

 

 

 『競売物件情報 
  ―タカチ魔導研究所―』

 

 

 

 

「………………」

 

切ない。流石のタカチマンも言葉を失ってしまいそうだ。 
スポンサーであった細川財団とSFESとの繋がりを知った以上、 
リゼルハンクが落札するのは間違いない。 
ただ、魔道科学の第一人者の研究施設ともなれば、大っぴらに独占も出来ない。 
態々競売を装ったのもそのためだろう。 
勿論タカチマンに対する罠である可能性も否定はできないのだが。
「…研究所は諦めるしかないな」
「でも、あの研究をSFESに悪用されたら… 
 なにより、研究が進めばSFESに対抗する手段だって…!」
「せめてデータだけでもあればな…」
データという言葉を聞いて、 
直にジードに注目が集まるが…
「そんな大事なもの、外部からアクセス出来るようにする馬鹿はいねェよ。 
 そうだろ? 博士」
「勿論だ。 
 ネットワークからは隔離し、厳重にプロテクトが施してある」
こうなってしまえばハッキングなど無力だ。 
ジードもそれが解っているからこそ己の技術を過信してはいない。 
仮に外部アクセスが可能であったとしても、 
独自のアドレス空間に独自のプロトコルが使用されている可能性もある。 
更にジェミニ理論等の結晶通信技術が使われていればお手上げである。
「けど、見す見すSFESに渡す訳にもいかねェよな?」
「プロテクトと言っても、 
 落札されてしまえば解除されるもの時間の問題だ」
「その前に、何とか忍び込んで、 
 プロテクトを解除し、接続を解放するしかありませんね…」
執筆者…Gawie様

「…………なあ…大丈夫だと思うか?」
「……俺に聞かないでくれよ、聞くならバンガ…… 
 …いや、あー…バンバンに聞いてくれよ」
「……リュー、あまり喋らない方が良いぞ。 
 もう直ぐ研究所が見えてくるからな」
薄汚れた服を着、虫篭や虫取り網を持った子供達… 
其の実、おトメさんの持つ変化の術で、 
一時的に姿を変えさせて貰ったタカチマン&リュージ&ジードは 
呑気な観光客達で溢れるタルシスのアミューズメント区画を抜け、 
タカチ魔導研究所の周辺へと慎重に近付いていた。 
これは単なる下見程度だ。SFESが見張っているか否か… 
何らかの罠を仕掛けているか否か。或る程度は見ておいた方が良い。 
タカチマンの研究所自体、中世ヨーロッパの洋館の様な外見もあり、 
タルシスの中でもちょっとした名所となっているので、 
この子供の姿なら変に怪しまれる事も無いだろ。 
見つかったところで、遊びに来たとでも言えば良いのだから。 
そもそもタルシス自体が観光スポットとして有名だ。 
…とはいえ敵SFESの能力は未知数。 
この変化の術をも見破る能力者が居ないとも限らない。 
一行は決して其の動き一つ一つに玄人っぽさを出さず、 
飽く迄、素人を演じながら併し確実に…偶然を装って人目を避け動く。
やがて古びた洋館『タカチ魔導研究所』が見えてきた。 
扉の傍には「競売物件」という看板が立てられており、 
あちこちに見張りのものと思しき視線を感じる。 
幸い、タカチマン達に気付いているものは無さそうだが。 
研究所の前には黒いベンツが止められていて、其の中には…
「………レイネ………!」
最も会いたくないSFESの一員…
ゼペートレイネ・フィヴリーザはベンツの助手席で、 
歯痒そうに顔を顰め、タカチ魔導研究所を睨んでいた。 
そして其の後部座席からは男とも女とも付かない顔の子供2人が、 
ゼペートレイネの機嫌を取る様にあれこれと口を動かしている。 
どうもSFES…少なくともゼペートレイネはあまり芳しい結果を得られていない様だ。
周囲を改めて見てみると、 
研究所付近の樹や街灯に監視カメラらしきものが設置されていたり、 
犬を散歩させている中年男や、アイスクリームを持った女子高生、 
果ては空き缶を置いて只管金が投げ込まれるのを待っているホームレス、 
其れらしい服装や小物でカモフラージュしてはいるものの、 
ジードが見た所、視界内のほぼ全員が、 
足運び、呼吸、気配の少なさ、そして隠し持った武器の膨らみから 
其の手合いの人間達であると見てとれた。
「………あのホームレス、鳩にエサやってるバーサン、 
 向こうのマンションから洗濯物干してる主婦、犬を散歩させてるオッサン、 
 女子高生、ジョギング親父、あっちの観光客っぽい一家も要注意だな。 
 最低でも3人は常に此処を見張ってる…。 
 ゼペートレイネが居るトコからして100%罠だなこりゃ」
罠であることが判った以上は長居は無用だ。 
タカチマン達はアジトに引き返し、直に作戦会議に入った。
執筆者…is-lies、Gawie様

「…結界か、厄介だな」 
「能力者や魔物なんかのことを考えれば、 
 その手のセキュリティは当然と言えば当然ですね」
タカチマンは自分の事となると全く語ろうとしないが、
今回のターゲットはそのタカチマンの研究所だ。
タカチマンの口から研究内容や研究所の特徴などが語られるが、
聞けば聞くほどに思い知らさせる。
タカチマンもエーテル先駆三柱と言われた研究者の一人である。
その研究所が敵SFESの手に落ちたとなれば、
これはもはや魔導要塞と言っても過言ではないだろう。
「ジード、そっちはどうだ?」
「あぁ、プロテクトと言っても今回は解除コードも分ってるしな。
 プログラムも明日までには組めるだろう。
 あとはコイツを直接繋いで無線で飛ばす。
 範囲は半径100〜300メートルってとこだ。
 これなら中継機が敷地外でも何とかいけるだろう。 
 問題があるとすれば電子機器の持ち込みが禁止されてる場合だな」
「後は堂々と正面から乗り込むか、密かに潜入するかだが、
 問題は誰が行くか、だな…」
「私が行く。それしかあるまい…」 
「ダメだ博士! それじゃ意味がねェよ! 
 キムラ、暗殺者ギルドの方はどうなんだ?」 
「あ、あぁ、話はしたけど… 
 別にアイツ等に頼らなくても…」
結局、作戦会議はここで煮詰まった。 
開店休業のガンショップは閉店時間を疾うに過ぎていた。 
その異様な殺気を察したかのように、今日は何故か一人も客が来ない。 
そんな中、店の外に集まる数人の人影に気付いた者はいなかった。
執筆者…Gawie様

「…本日の来客数ゼロ。外灯点けっぱなし。 
 アイツら店の売上ぜんぜん考えてないね」 
「だが、リュージって奴はなかなかいい仕事するらしいぜ」
話をしているのは、先日キムラ達がギルドで出会った、 
暗殺者の男女に、ジルケット・グリース、 
そして…
ポーザ、アンタも来ていたのか。 
 そう言えばアンタも名古屋大戦の勇者だったな。 
 色々と、訳ありか?」 
「…今回はギルドマスター殿の依頼でもある。 
 彼等を手助けしろ、とな。 
 メンバーの組み合わせも指示通りだ」 
「分らないね。キムラはともかく、 
 ギルドマスターもアンダーソン部長もなんで奴等に肩入れする?」 
「奴等にはSFESとの実戦経験がある。 
 それにタカチマン博士の研究。 
 裏の人間にとっては金には代えられないくらいの価値があるってことだ。 
 キムラを突き放しておきながら、こうして店を与えて手元に置く… 
 部長もえげつねェな」 
「それはそうと、 
 もう一人…今回のミッションのリーダー、 
 ツートンカラーアイズデス…知ってるか?」 
「さぁ? ギルドの人間じゃないね」 
「てか、遅刻だぜ…」
待ち合わせの時間が過ぎ、待つこと5分… 
一人の女性が真直ぐに彼等の方に向かって来た。 
その長身、歩き方も表情も、ネオン街の人ゴミの中でも一際目立つ。 
どちらかと言えばファッションモデルの様でもある。
「…こんばんは、ゴメン遅れた。 
 男3人、女1人、依頼通りね」
「……………」
「あの、なんとか言ったら?」
「…合言葉があっただろう…?」
「あ、それ忘れたわ。 
 でも見りゃ分かるでしょ? あたしがハウシンカよ」
状況からすれば確かに見れば分かる。 
だが、暗殺者と部外者が作戦行動を共にするのは彼等にとっても初めてのことだ。 
ギルドマスターの命令とは言え、流石の暗殺者達も不安を隠せない。
「ツートンカラーアイズデス… 
 どんな凶悪な野郎が来るかと思えば…これはこれは… 
 くくく、なるほどな、ギルドマスターも部長もよくやるぜ」 
「何考えてるか知らないけど、 
 一応、今回はあたしがリーダーって事らしいから、 
 命令には従ってもらうかんね?」 
「くくく、了解…」 
「じゃ、行きましょか♪」 
そう言って、不思議な雰囲気を持った集団は、一人、また一人と扉の中へと消えていく。 
後には、何も無かったかのような静寂だけが残った。
執筆者…Gawie様、you様

その様子を見ている人物が、傍のアパートの一室に居た。
「……………入っていった。」 
小さなボロアパートの一室。 
そこで少年は、先ほどからずっと窓際に張り付き、その集団を見ていた。 
そんな時、突然首筋にひやりと冷たいモノが当たった。 
その感触に、ひっ、と小さく声をあげ、体を固くする。
「た・だ・い・ま、って何度言わせるのさ、ミレン?」 
「あ、ケイム……おかえり。」
馴染みの声に振り返れば、そこにあったのは見慣れた顔だった。 
安堵の溜息をつき、首に当てられたジュースの缶を受け取るミレン。 
ケイムは、軽く肩をすくめながら近くのコンビニの袋をテーブルに置く。
二人は、博物館でタカチマン一行の尾行を開始し、最終的にこの店が拠点であることを付き止めた。 
そしてすぐに近くのアパート、つまりここを見つけ、交代で監視しつづけている。
「で、何をそんなに真剣に見てたの? 何か動きあった?」
言われて慌てて窓の外へ視線を戻す。 
しかし、特に変わった事はなく、先と同じ静寂があるばかり。
「はぁ、とりあえず襲撃じゃないみたい……」 
その言葉に、ケイムが飲んでいたジュースを思い切り吹き出す。 
「がはっ!げっほ! な、しゅ、襲撃!?」 
「汚いなぁもぉ……」 
「ああ、悪い。 
 で、襲撃って?」 
傍にあった布を投げてやりながら、自分も窓の外を見る。 
当然、其処にはミレンが見たのと同じいつも通りの光景しかない。
ミレンは布を受け取り、顔を拭きながら答える。 
「いや、さっき店の前にさ、いかにもその道の人っぽい人達が5人、集まってたからさ。 
 それで、もしかしたらって思ったんだけ………って、コレ、雑巾じゃんか!」 
投げつけられた雑巾を首を傾けてあっさりと避けるケイム。 
もう窓からは視線を外し、コンビニの袋を探っている。 
「ふーん。 
 ま、確かに特に騒ぎらしい騒ぎは起きてないみたいだね。 
 だからと言って襲撃じゃないと決まったワケじゃないけど。」 
「なんで?」 
「あの店、防音効果が結構高いみたいだし、ここは道挟んで斜向かい。 
 音が聞こえなくても不思議はないよ。 
 更に、出入り口はあの扉だけ。その人たちは5人居たんだっけ? 
 逃げ道を塞ぐのはそう難しくはない。 
 ま、あくまで可能性だけど。」 
言ってから、袋から取り出したおにぎりを食べる。 
それを見ながら、ミレンは低く呟く。 
「………そーいや、ケイムはあの店に入った事あるんだっけ。」 
「ああ、まーね。 
 ……そんなに睨むなよ。それについてはもう謝ったじゃんか。」 
「どーしてそーゆー勝手なことばっかり……」 
「ごめんってば。」 
「まぁいいや…… でも、どうする?」 
「ん。何が?」 
あっさり食べ終え、二つ目に手を伸ばすケイムをやや呆れた眼で見ながら、ミレンが続ける。 
「だから、襲撃かもしれないんでしょ? だったらのんびりしてる場合じゃないじゃないか。」 
「ああ、言ったろ。可能性の話だって。 
 わざわざこんなトコに襲撃する奴が居るもんか。」 
「はいぃ?」 
「出入り口が一つってコトは、自分達の逃げ道も一つってコトだろ? 
 そんなトコにわざわざ侵入してく奴が居るもんか。人を殺すのは外が定石。逃げる時楽だから。 
 まぁ、この街中じゃソレは無理か。」 
「だったら……」 
「最後まで聞きなサイ。」 
言いかけたミレンを制して続ける。 
「襲撃をしなければならない時は深夜すぎから明け方を狙う。 
 寝てる所を襲ったほうが簡単っしょ。」 
「それらを知らない人だったとしたら?」 
「お前がその道の人っぽいって言ったんじゃんか……。 
 プロならこれくらい知ってて当たり前。つーか、考えればすぐ解るじゃん。 
 そんなコトも解らないシロートなら、あの人達の相手にはならない。 
 俺らがどうこうする必要なーし。 
 他に質問は?」 
「……なんでケイムがそんなコト知ってるの?」 
「んー? 昔エーガさんに習ったんだよ。戦闘訓練の一環として。」 
「なんでそんな殺しの知識をエーガさんが……持ってても不思議じゃないか。」 
「んむ。 
 ま、それより、その5人組、何者なんだろな。」 
「……シロートサンじゃないの?」 
「なワケあるか。なんの意味があるんだよ。 
 つーか、その道の人っぽいって言ったのはお前だってば。 
 あの人たちのコト調べたんしょ? 誰か居ないの、そーゆー人たちと知り合いっぽい人は。」 
「全員そうと言えばそうだけど。えーと……」 
言ってミレンがつい先ほどまで使っていたPCの前へ移動し、何やら操作し始める。 
ケイムはそれを後ろから覗き込む。 
「うわ、間違えた。」 
画面に映ったのは全く関係のない情報だった。しかし、ケイムはそれに興味を示した。
火星独立記念パーティー?」 
「ああ、うん。なんか、今度の独立記念日に、火星帝邸に各国のVIPを集めて盛大にパーティー開くらしいよ。 
 火星各地でも、独立記念祭が開かれるみたい。」 
「へぇ、各国のVIPか……面白そうじゃん。」 
「………え゛?」 
その言葉に、ミレンは恐ろしく嫌な予感を覚えた。 
「…面白そうって、何が?」 
「いや、ほら、事件の匂いが…」 
「ないない、ただのお偉いさんのパーティーだよ。 
 第一、僕等招待されてないし」 
「それはもちろん忍び込んで…」 
「無理。こういう時の方が警備は厳しいの。 
 運良く忍び込んだとしても、宮殿に何かあるの? 
 それとも皇帝さんと友達にでもなりたいの?」 
「…面白そうって言っただけじゃん…」 
「面白くな〜い」
ミレンは努めて無表情に、ケイムが言わんとする事を却下した。 
目的はあくまで八姉妹の結晶に関する情報収集である。 
確かにVIPに接触するのが最も手っ取り早い手段ではあるが、 
八姉妹の結晶の事は誰が何を知っているかも分からないのが現状だ。 
情報屋に金を払う余裕もないし、旅費や滞在費も馬鹿にならない。 
折角タカチマン達に再会し、更に目的も同じであることを知ったのだ。 
面白そうだなんて理由でコロコロと目的を変える訳にはいかない。 
ミレンからすればそんなものは好奇心ではなく、バカの走行性である。 
ケイムのノリで行動するより、タカチマン達の動向を見張り、 
あわよくば便乗するという方が堅実だろう。
ケイムの強請るような視線にはなるべく顔を合わせない様に、 
ミレンは再び窓の外を見下ろした。 
怪しい5人組が入って行った店には変化はない。 
隣りのコンビニの前では暇そうな若者数人がたむろしている。 
何がそんなに楽しいのだろうか、時折ゲラゲラと笑い声が聞える。 
そんな若者達を蔑みの目で見下ろすミレンだったが、 
ふと思う「…自分も同じかも…」いやいや、今は違う。
「…暇だなぁ…遊びに行ってこようかな〜」 
「別にいいけど、無駄遣いはしないでね。 
 ここの家賃もタダじゃないんだから」 
「ちぇ、大体エーガさんも大物狙いすぎなんだよ。 
 八姉妹の結晶? 世界に八つしかないんだろ? 
 そんなもん地下のマーケットに流しても直に足が付くぜ」 
「エーガさんも考えがあるんだよ」 
「電力会社でもやるのか? 
 失敗したら食う金もなくなるぜ。 
 それより、もっと簡単、確実に… 
 成金っぽい家を狙って…どうよ? 昔みたいにさ」 
「…ダメだよ」 
物心ついた時にはもう一端の盗人だった。 
戦後の混乱した時代の中で、その日腹を満たす金さえあれば後はどうでも良かった。 
そんな自分を拾ってくれたのがエーガだ。裏切る事は出来ない。 
一方のケイムも内心は同じだった。 
少しはしゃぎ過ぎたと思いつつ、自ら双眼鏡を手に取り、 
二人はタカチマン達の監視を続けた。
執筆者…you様、Gawie様

同じ頃、 
ガトリングガンズ2号店では、暗殺者チーム5人を加え、 
タカチ魔導研究所潜入のための作戦会議が進められていた。
偶然とは言え、ケイムとミレンの尾行を許している。 
ガウィーも佐竹の証言をもとに、暗殺者サイトやユーキン達の目撃情報から 
この店の場所を割り出したと言っていた。 
タカチマン達も薄々勘付いてはいる。 
更に警戒するに越した事はないが、 
これからはSFESに見つかることも考慮に入れて行動するべきだろう。
「…作戦は以上だ」

 

A班(暗殺者5名) 
 1.バイヤーを装い潜入(武器や電子機器の持込不可の場合もあり) 
  もしくは、下水、地下道から潜入(セキュリティーに注意) 
  ↓
 2.目的のコンピュータを発見し通信機を接続 
  ↓
B班(ジード、タカチマン他) 
 3.リモートでプロテクトを解除 
 ↓ 
 4.データをコピーし、元データは消去 
 ↓ 
 5.撤収

 

「つまり、あたし達の仕事は研究所に忍び込んで、 
 メインフレームにこの通信機を取り付ければいいってことね」 
「そうだ。 
 プロテクトの解除とデータの転送は俺に任せろ。3分で済ませる」 
「贅沢を言えば、 
 記憶装置に使用しているライブラを結晶ごと盗み出せれば良いのだがな」
「ライブラがあるの? 
 それかなりのレアモノじゃん」 
「いや、やはりリスクが大きい。 
 残念だが、データを確保出来ればオリジナルは破棄する」 
「あっそ、それは本当に残念…」
話合いは思いの外スムーズに運んだ。 
タカチマンは記憶を基に描いた研究所の見取り図を手渡し、 
SFESに関する情報、容姿、能力、知る限りを全て説明した。 
敵がSFESである事を知っても5人には動揺する様子はない。 
タカチマン達が提案した作戦を黙って聞き入れ、 
失敗した時はどうするか?などの質問もない。 
おまけに報酬の話もない。 
こういうものなのだろうか。 
同じ暗殺者と言ってもキムラとは随分と雰囲気が違う。 
尤も、誰も暗殺者など雇った事はないので分からないのだが…
「何度も言うようだが… 
 絶対に無理はするな。 
 我々も出来る限りのサポートはするが、 
 万が一戦闘になった場合、どれほどの勝ち目があるかは分からない」
「くく…、勝ち目ねぇ… 
 何度も言うようだが、 
 俺達の仕事は、盗みでもない、戦いでもない、殺しだ。 
 それが任務遂行の手段。勝ち負けは関係ない。 
 データを確保したらアンタ等は先に逃げてくれても構わない」 
「仮に失敗して我等が敵の手に落ちたとしても、 
 貴方々の事は一切喋らない。 
 ギルドの信用に関わるからな、あくまでビジネス」 
「ま、やり方はあたし等に任せてもらいましょか。
 それじゃ、明日、待ち合わせの場所で、車は2台お願いねん♪」
執筆者…Gawie様
inserted by FC2 system