リレー小説3
<Rel3.ガトリングガンズ3>

 

 

 

「キミはそれでも客商売の人間かね!?」 
「はァ? 
 おっさんにHGマグナムは必要ないって忠告してやっただけだろ?」 
「まったく、これだからスラムは…」 
「いやなら帰れ。アンタに銃を持つ資格はねェ」
翌日の夕方、ガトリングガンズ2号店。 
この時間はリュージ、ジード、ナオキングの3人が店に立っていた。 
今さっき、リュージが気に入らない一般客を追い返したところだった。
「リュージさんって、商売向いてないですよねぇ…」 
「う、うるせェな。ポリシーなんだよ。 
 昔は、銃を持つのにも法的な資格が必要だった時代もあったらしいが、 
 今じゃ規制も曖昧で、ガキでも小遣いで買えるって時代だ。 
 トリガーを引けば子供も大人も関係ない。 
 だから俺は売る相手を選ぶ。ポリシーなんだよ」 
「ふ〜ん、あんまり根拠ねェな…」
昨日の話では、ほぼ全員が戦うことを決意したのだったが、 
まさかリゼンルハンクに直接殴りこみに行く訳にもいかず、 
依然情報不足な今はこれといった策もない。 
結局、進展のないまま、ガトリングガンズ2号店は営業二日目を終えようとしていた。
ナオキングが表のシャッターを閉めようと、ドアを開けて階段を上がろうとした時だ。 
大きなボストンバッグを持ったサングラスの男が階段の上に立っていた。
「…いいか?」 
「あ、はいどうぞ、いらっしゃいませ」
サングラスの男は店内を一通り見渡した後、 
カウンターにいたリュージの前で持っていたバッグを開けて見せた。 
中身はUD札束と、何かの金属片、そして二つに折れた槍だった。
「槍はいけるか?」 
「…経験はあるが、専門じゃねェぜ?」 
「構わん、ここにアダマンチウムとヒボタニウムがある。 
 これでアンタなりにやってみてくれないか?」 
「こんなレアな素材…一体どこから?」 
「出所は言えない。 
 ちなみにヒボタニウムの方はそれなりの結晶と反応させてある。 
 余ったら残りは好きに使っていい」 
「あ…アンタ、アレか? 
 え〜とだな、実はこの店は昨日から…」 
「知っている。 
 前金で12000だ。あと適当に代用を借りるぜ」
慎重に相手を見極めようとするリュージに対し、サングラスの男は強引に話を進めながら、 
徐にカウンターの上に乱雑に積まれていた拳銃を一丁手に取ると、 
店の奥に吊るしてある飾りの的に向かって引金を引いた。
「あ、そいつは…」
パン!パン!パン! 
銃声というよりは、爆竹に近い乾いた音が店内に響いた。 
その銃は何のこともない、倉庫で埃を被っていた安物をリュージが手入れしたものだ。
「うん、いいな。 
 サタデーナイトスペシャルでここまで仕上げるとは、いい腕だ」 
「…アンタもな」
弾は全て的の中央に命中。 
これにはリュージも悪い気はしない。思わず笑みがこぼれた。 
こういう酔狂な客は偶にいるが、相応に腕は立つようだ。 
おまけに前金で12000UDは美味しい。 
さっき言っていたポリシーとやらは既に忘却の彼方だ。
二つ返事で槍の依頼を引き受け、リュージが書類にサインを求めようとした時だ。 
先程の銃声を聞いたユーキン達が奥の部屋から顔を覗かせた。
「店の中で撃つかねフツー… 
 …って、あ、ガウィーだ」 
「よ、久しぶりだな」
「な、なにィ!?」 
「お前がガウィー? 
 …まさか、そっちから出向いてくるとはな… 
 前に世話になったな、俺が分るか?」 
グラッド
「ジードだ。本名はな。 
 …で、まさか偶然じゃないよな?」 
「あぁ、話は彼に聞いた。探すのに苦労したぜ」
『彼』という人物を連想する間もなく、その『彼』が店のドアを開けて入ってきた。 
知っている人物だ。驚きと言うか安堵と言うか、とりあえず笑って見せるしかない。
佐竹…!」
「はは、またお会いしましたね」
執筆者…Gawie様

(「…其れは……本当なのですか!?」)
(「本当も何も…… 
  航宙機事件の真っ最中…… 
  ほら、小泉首相が日本宇宙ステーションに行った時。 
  俺の見てたTVにゃ小泉首相の隣に居たよ。 
  軍部の…セカイハ・ボーリョクさん。 
  一瞬だけしか映ってなかったけどさ、あのイヤミな顔は 
  忘れようと思ってもそうそう忘れられるもんじゃないね」)
ショートヘアの少女は2人の少年を従え、 
ガラの悪いチンピラ達の坩堝…アテネスラムを歩いていた。 
其の少女はぱっと見、華奢で且つ美人。 
2人の少年も精々中学生程度の年齢しかなさそうだ。 
周囲のチンピラ達が絡んで来ても良さそうなものだが、 
飢えている筈のケダモノは誰一人動こうとしない。 
寧ろ少年少女達から眼を逸らし、或いは足早に其の場を立ち去る。 
チンピラ達は何となく感じ取っていたのだ。 
眼の前の少女達が只ならぬ手練であるという事を。 
そして少女に付き添っている少年達が放つ、警告の威圧を。
少女、敷往路メイは今は無き日本皇国からの依頼を受けていた。 
既に滅んだ国からの依頼とはいえ前金は既に貰っている。 
だが依頼内容は「セカイハ・ボーリョクの捕縛と皇国への引渡し」。 
日本皇国が滅んだ以上、引渡しは出来そうにもない。 
このセカイハ・ボーリョクという男は、 
日本皇国将校、大名古屋国幹部、ネオス日本共和国軍部代表という3つの顔を持っており、 
其々の顔で得た情報を次々に流して利益を貪っていた。 
其れに気付いた日本皇国がメイに依頼をした訳だ。 
これ以上、セカイハに情報漏洩をさせ続ける訳にはいかないと。 
引渡しが出来ない故に、発見したら適当に脅しを掛けて済ます予定だった。 
口封じとして殺すのではなく脅し…其れがメイの甘い所でもあるが、 
彼女とてプロ。無理と判断したらセカイハ抹殺も辞さないだろう。 
しかし、アテネで聞き込みを続けている内に、 
火星へ向かったと情報があったセカイハが、 
実は数日前から日本宇宙ステーションに居た事が解った。 
更にどうもネオス日本共和国はセカイハの悪行に気付いていないという事も。 
何とかしてセカイハに近付き、脅しを掛けねばならない。
まだ考えが纏まらぬ内、メイはガンショップの階段前に来ていた。 
メイが雇った暗殺者キムラが、此処で待機している筈だ。 
キムラは101便事件の際に腕を負傷し、此処で仲間達と共に居る。 
今すぐ動く訳ではないが、報告程度はしておいても良いだろう。 
メイ達は小走りに階段を駆け下りた。 
店のドアの前で一度立ち止まると、 
メイは顔の緊張を解し、軽く笑顔を作りながらドアノブに手を掛けた。 
恐らくユーキンあたりが真先に駆け寄ってくるのだろう。 
ハチやタクヤには内緒だが、実はメイも満更でもないのだ。 
確かに苦手ではあるし、好意とまではいかないが、それが解らぬ年頃でもない。 
せめて暗い顔は見せまいと、メイは精一杯女の子の顔をしてドアを開いた。
「こんにちは」
「あッ、メイさ〜ん!」
ユーキンの予想通りのリアクション。 
しかし、メイの目に入ったのは予想外の人物が二人。
「あ、佐竹さん? ガウィーさん? 
 どうも、皆さんお揃いで…」
これも何かの陰謀かと思ってしまうくらいにタイミングが良すぎる。 
こうなると、そのうちエースや青達まで偶然現れそうだ。 
よもや何者かが隠れて盗聴してはいないかと心配になった一同は、 
一先ず厳重に店の戸締りをした後、奥の部屋に集合した。
執筆者…is-lies、Gawie様

「ともかく、無事で何よりだ。佐竹」 
「ええ、どうやら、こちらの情報屋さんは最初からお見通しだったようで、 
 このとおり助けられました」 
「元々のクライアントは貴方だ。 
 オレとしても、こんな面子は想像してはいなかった。 
 募る話もあるだろうが、直に本題に入らせてもらう」

 

 

急激な温度変化と眩い光と共に、万物が消え去ってゆくという正体不明の現象。
破滅現象…」
「まずはそこからだな。 
 多少は知っているとは思うが、破滅現象は人為的に仕組まれたものだ。 
 これが天災の類ならオレの出る幕じゃないからな。 
 勿論、BIN☆らでぃんも関係ない。 
 たかだか輸送船に装備されたレーザーにそんなエネルギーがあるはずはない」 
「冷静に考えてみればそうやろな。 
 水爆でも自然のハリケーンの前には焼け石に水やし。 
 しかし人為的っちゅうのも解らんなぁ。 
 地球壊して何のメリットがあんねん?惑星規模のテロとでも言うんか?」 
「テロか…ある意味そうかもしれないな…」 
「あの、ジョニーさん、ガウィーさん、すいませんが端的にお願いします」
「あぁ、すまん、 
 端的に言えば、破滅現象は前支配者の仕業だ」
「なんだそりゃ、端的すぎるぜ」 
「いや、聞いたことがあるな… 
 カンルーク、アゼラル、アウェルヌス… 
 100年前に火星で発掘された石版に記されていたものだ。 
 当時は古代文明の王族か神話のようなものと解釈されたが、 
 どういう訳か、第3次世界大戦中にその存在が再び囁かれた…」 
「そう、正にそいつ等のことだ。
 タカチマン博士、アンタ、第3次大戦はどっちだった?」 
「…どちらでもない」 
「そうか… 
 だが、第3次大戦中に兵器として多くの魔物が召喚されたのは知っているな? 
 その中でも魔王クラスとされたのがこの前支配者だ。 
 古代文明の王族がなぜ魔物となって召喚されたのか…? 
 そいつ等が何を考えているのか…? 皆目見当が付かん。 
 分っているのは、破滅現象はこの前支配者というバケモノの仕業だということだ。 
 今のところは鳴りを潜めているようだが、再び動き出すのも時間の問題だろう」
佐竹は呆然とした。 
破滅現象の原因が神話に登場した神だか悪魔だかの仕業だというのだ。 
正直、真面目に聞いていいものなのかも分らない。 
態々火星まで来て得た情報は、あまりにも現実離れしたものだった。
「それはともかく、現実に地球は崩壊の危機に瀕している訳で… 
 私は、いや、我々人類は一体どうすれば…」
「地球を救う方法か…、いくらで買う?」 
「その情報がホンマやったら100億でも100兆でも払うで、国がな。 
 ッちゅうか、その前に俺がアンタ締め上げて聞き出してもええで?」 
「ふ…やってくれるならそれでも構わん。 
 国はアテにならんからな。事態は末期症状だ。 
 …3000でいい」 
「やっぱり金取るんかい」
最初にジョニーが財布の中身をテーブルに上にぶちまけた。 
しかし、130UDしかなかった。 
直に佐竹も金を出そうとしたが、財布がないことに気付く。 
「貧乏人だなぁ」と言っているリュージは一銭も出そうとしない。 
ナオキング、ユーキン、バンガス、カフュ、ジードを合わせてやっと1800。 
無理もない。全員手持ちが少なかった上に、カードも使えない状態だ。 
結局、残りを支払ったのはタカチマンだった。
執筆者…Gawie様
「商談成立。 
 まずはこれを見てくれ」
ガウィーはポケットから携帯端末を取り出し、壁に向かってボタンを押した。 
3000UDで買った情報が投影された。

 

 1.『ワイズマン・エメラルド』   
  八姉妹玲佳の結晶 大名古屋大戦の後、行方不明 
 2.???
 3.???
 4.『セラフィック・ラヴァー』  
  八姉妹ゼノキラの結晶 詳細不明 
 5.『ワン・オブ・ミリオン』 
  八姉妹セシリアの結晶 アテネ独立記念博物館 
 6.『シークレット・ウィズダム』 
  八姉妹オルトノアの結晶 アメリカ 
 7.『ファンタスティック・マイティ・ハート』 
  詳細不明 
 8.『イルフィーダ・トリスメギストス』 
  八姉妹イルフィーダの結晶 詳細不明
 『碧きイノセント』アテネ沖に水没
 『エーデル・ヴァイス』ドイツ
 『カルネージ・デモン・ブラッド』輸送中、火星衛星軌道上にて行方不明
 『レイナ・デ・ラ・ディアマンテ』詳細不明

 

「これは…八姉妹の結晶…? 
 それぞれ正式な名前を聞くのも初めてだな」 
「しかし、八姉妹と言うからには、結晶も八つなんだろ? 少し多くないか?」 
「可能性があるものも含めて10だ。 
 その内、八姉妹の結晶だと分っているものが五つ。 
 所在が明らかなものが三つだ」
「…で? まさかコイツでその前支配者とかに対抗するってのか?」
「破滅の力に対して再生の力だ。単純な理屈だろ? 
 今ある情報はこれだけだ。 
 ここからはオレの方からの依頼だ。 
 キミ達に、この八姉妹の結晶を探して欲しい。 
 結晶一つに100万有力情報には1万払う」
「まぁ、依頼されなくても興味はあるな」 
「確かに名前だけでも3000UD分の価値はあるかもしれんが… 
 その名称から色形が推測できるのは… 
 エメラルド、碧、ヴァイス、ブラッド、ディアマンテ。 
 さすがに情報が少なすぎるな」 
「手っ取り早く現物が見たければ、 
 ワン・オブ・ミリオンアテネの独立記念博物館で一般公開されている。 
 これは探す必要はないな。触れてみれば解ると思うが、どうせ誰も盗めやしない
用件を告げると、ガウィーは温くなったコーヒーを一気に飲み干した。 
そのまま、佐竹達の返答も聞かずに席を立とうとした時だ。
「話は解った… 
 流石は噂の情報屋だ。情報もスケールが違う。 
 …だが、それにしても知り過ぎではないのか? 
 いや、それよりも、情報屋が一体何を企んでいるんだ?」
タカチマンは当然のような疑問を投げかけた。 
それに対し、ガウィーは空になったボストンバッグをひょいと肩に担ぎながら答えた。
「第3次世界大戦中、オレは能力者側で戦っていた。 
 前支配者や八姉妹の事を知っていても不思議じゃないだろ?」
「罪滅ぼし…か?」
「まさかな、最初に魔物を使ったのは非能力者の方だ。 
 尤も今更どうこう言うつもりもないがな。 
 だが、今地球が崩壊しようとしているのは事実だ。 
 それを防ごうとするのは、人類として当然のことだろう? 
 無理にとは言わない。 
 一週間以内にまた来る。それまでに考えておいてくれ。 
 あ、それと、槍は頼んだぜ」
執筆者…Gawie様
inserted by FC2 system