リレー小説3
<Rel3.ガトリングガンズ2>

 

翌日… 
皆、昨夜はあまり眠れなかったようだ。 
リュージ達は、まだ眠い目を擦りながら、工房の埃を掃い、倉庫を整理し、 
漸く店を開けたときには、既に昼の3時を回っていた。 
とは言っても、所詮は非合法の地下武器屋だ。 
客足も疎らで、時折、常連と思しき客も顔を覗かせるも、 
いつもと違う店内に戸惑っている様子だ。
念のためと言って、全員、カツラとサングラスで変装してるのだが、 
その慣れない変装が余計に不気味な雰囲気を醸し出している。 
おまけに愛想もない。
皆、昨夜の話し合いの事で頭がいっぱいなのだろうか。 
思いつめたような表情で溜息ばかりが漏れる。 
唯一、リエだけが元気よく接客に励んではいるが、 
それも地下の武器屋には不釣合いだ。 
結局、客は何も買わずに帰っていく…
表の黒い扉には、白いペンキで、 
『Gatling Guns2』 
と、新たな店名が書かれている。 
当然、祝いの花輪などはなく、 
塗りたてのペンキの臭いが微かに漂っているだけだ。 
ガンショップ、ガトリングガンズ2。
店内は新装開店とは思えない重苦しい空気に包まれていた。 
そんな不安を紛らわせるかのように、 
店の隅では、ジョニーとリュージがジョイフルの修復作業に勤しんでいた。
「おっしゃ、完璧や」 
「駆動系のオーバーホール、ショートした電子部品の交換、 
 OSとデータの修復はジードに任せるとして、 
 後は、コアのクリスタルか… 
 記憶型の結晶っつってもPCのじゃダメなんだろ?」 
「そうやろな。 
 構造を見る限り、記憶、思考、そして動力… 脳ミソそのものや。 
 そないなレアな結晶はそうそう……」 
「いや、待てよ……」
何か閃いた。 
二人の視線の先にいるのはリリィだ。
「リリィ、ちょっとええか?」 
「何でしょうか?」 
「実は、ジョイフルの起動テストに、お前の結晶を…」
「お断りします」
「………………」
「…ハハハ… 
 …まぁ、アンドロイド言うても、女の子やしなぁ…」
再び店内は沈黙に包まれる。
執筆者…Gawie様
「…あの、 
 それより、いいんですかねぇ?」 
弾丸を磨いていたナオキングがボソっと呟いた。 
「あ? 何がだ?」 
「店の名前ですよ」 
「アンダーソンは俺に任せると言ったんだろ。 
 俺の銃職人としての腕を見込んでな。だったら好きにやるさ」 
「いや…そうじゃなくて… 
 リュージさんのガトリングガンズって言ったら、結構有名ですよね?裏では」 
「ま、まぁな」
「もしも…SFESに知れたら…」
ナオキングの言葉に、全員が言葉を詰まらせる。 
昨夜の話し合いの答えはまだはっきりしてはいなかったのだ。
「けッ、またSFESかよ。 
 しかし、博士もつれねェよな」 
「こういう事には不器用な人ですから」 
「まぁ確かに、中途半端な義理や正義感だけじゃ、戦えないだろうな」 
「でも、このままじゃ…」 
「解ってるって! 
 博士は…ありゃ一人でもやるつもりなんだろ。 
 だから俺も決めたぜ」
リュージはそう言うと、倉庫の中から布に包まれた筒状の物を持ち出してきて、 
それをドカッとカウンターの上に広げた。 
一見バズーカ砲のように見えるが、火薬を使用した武器とは明らかに構造が異なるものだった。
「何だそりゃ?」
「今朝、倉庫で見つけた。小型のレールガンだ。 
 おそらく、試作段階で放置されたんだろう」
「リュージ…やる気なのか?」
「いんや、俺は俺で、今まで通り武器屋をやる。 
 ただ逃げ隠れはしねェ。勿論お前等には全面的に協力するつもりだ。 
 戦いたい奴は言え、強力なヤツが必要になるだろ?」 
暗い雰囲気を打ち破るように、その決意を皆に伝えるリュージ。
「決まってる、俺はまだ仕事の途中だしな。 
 あと、飛び道具はいらない」 
「俺も…殺しが仕事だから… 
 あと、そんなデカブツはいらない。 
 俺にはこのシューティングスターがある」 
直に応えたのはカフュとキムラだ。
「片手で扱えるボウガンがあるといいんだけど…」 
ふと、ユーキンが呟く。
「つぅか、拳銃にすればいいだろ?」 
「いや、お頭はその前に腕を直さないと。 
 そういえば、レシルさんが、SFESの技術なら腕を直せるかもって…」 
「よし、そんじゃ、コイツはユーキン用にレールボウガンに改造してやる。 
 いっそのこと、腕に直接くっつけるのもいいか」 
「リュージさん、お頭を実験台にするつもりじゃ…?」 
「まぁ、ともかく、こうなってしもうた以上は、戦いからは逃れられんやろな」
リュージの言葉をきっかけにして、 
一同は口々にその根拠のない決意を語り合う。 
そんな様子をタカチマンは部屋のドア越しに聞いていた。
「…若いな。 
 だが、そういう力も必要だろう。 
 今は甘えさせてもらうか…」
執筆者…Gawie様
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