リレー小説3
<Rel3.ガトリングガンズ1>

 

 

タカチマン達の情報収集は収穫のないまま3日目の夜を迎えた。 
聞き込み調査を買って出たユーキン達も、 
SFESの情報どころか、ガウィーの居場所さえ掴めず、 
ガセネタに躍らされた挙句、余計な敵を作ってしまっただけだった。 
幸い、暗殺者ギルドでは情報は得られなかったものの、 
アンダーソンの紹介で、地下のガンショップで住込みで働けることになった。 
ユーキン達が出会ったヴァルクという男がどれ程の者かは判らないが、 
暗殺者ギルド御用達の武器屋ならば、並のチンピラでは手が出せないだろう。 
一行は一先ず、ここに隠れ家を移すことになった。
「しっかし汚い部屋だな」 
「ネットが使えるだけマシです。 
 それにお頭、宿を変える羽目になったのは僕達の所為ですよ」 
「気にするな。 
 それよりリュージ達は?」 
「リュージとジョニーは、 
 さっきジョイフルを担いで出かけたぜ」 
「また勝手な行動を…」 
「お前が言うなよユーキン。 
 それより、バンガス、 
 そのヴァルクとかいう奴はともかく、 
 『TAKE』を見たって…見間違えじゃないよな?」 
「間違いないです」 
「…あのバケモノが、なんで火星にいるんだ…? 
 俺達が火星に着いてからまだ3日しか経ってない。 
 俺達をマークしていたとするなら、名古屋大戦の後、ずっと尾けられてたってトコか?
 まあ、俺達やSFESとは関係がないとしても、 
 あんなのが野放しでうろついてるってだけでゾッとするぜ…」
あまりにも唐突な嘗ての敵の再来に、キムラ達はただ混乱するばかり。 
名古屋大戦には参加していなかったタカチマン達も、 
キムラ達の様子から、それが只事ではないということを感じ取った。
「…とりあえず、キムラのおかげで、 
 暗殺者の専用サイトにも堂々とアクセス出来るようになったんだ。 
 これを観ながら、少し話を纏めてみるか」
ジードがそう言いながら、PCを起動させ、 
全員がそのモニターを覗き込んだ。
「まずは、俺達のことだが…」
ジードが軽快な操作で手当たり次第に検索してみるが、 
101便事件に関しては、『テロリスト』『生存者』という表現だけで、 
詳しい事は一切公表されていなかった。 
小泉の対応としては、妥当なところと言えるかもしれない。 
タカチマン達にとっても、今はその方が都合がいいのだが、 
問題は、生存者の証言でも真実は一切語られていないということだ。
「御嬢様と、佐竹様の事は何か分かりますか?」 
「搭乗者リストはテロリストによって抹消…されたことになってやがる。 
 生存者の収容先は、アテネ第二病院か…」
調べてみると、生存者のリストだけは公開されていた。 
重傷の数名を残し、今日退院したことになっていたのだが、 
その中には、ミナと佐竹の二人の名前はなかった。 
その後、ジードが手を尽くしてはみたものの、 
101便事件に関して公表されているのはここまでだった。
「確かに気掛かりだが、仮に助け出せたとしても精神操作を受けている可能性がある。 
 逆に、俺達が死んだ事になっている以上、 
 俺達が下手に動かなければ、ある程度は安全ということだ」 
「既にバレている可能性は?」 
「そうだな、暗殺者ギルド専用サイトに 
 名古屋大戦の勇者と101便事件の関連を示す情報があるが、 
 ガセネタで上手くカモフラージュされてる。 
 どうやら、アンダーソンもなかなかいい奴かもしれないな」 
「じゃあ、それ以外で知ってるのは、ヴァルクって奴とTAKEだけか…」 
「お、ヴァルクって、コイツのことか?」
ジードがそう言ってカーソルを合わせたのは、 
暗殺者サイトの賞金首のリストである。
ヴァルカレスタ・フィンダム… 
 間違いない。コイツですよ!」 
「第3次世界大戦の戦犯、Bランクの賞金首、まぁそこそこってとこだな」 
「…あ、あれでそこそこですか…」
賞金首や犯罪人の戦歴、はたまた要人、有名人の家族構成から愛人まで、 
ヤバイ裏情報が続々と溢れ出してくる。さすがは暗殺者専用のサイトだ。 
中には、以前にジードがグラッドとして提供した情報も含まれている。 
ヴァルクという男のことは、八姉妹の結晶を狙っているのが気にはなるが、 
今の時点では保留ということにするしかなさそうだ。
次にキムラ達が気にしているTAKEの事だ。 
プロギルド、暗殺者ギルド、リゼルハンク、LWOS、 
名のある組織、研究機関、各国軍部、 
考えられる情報源を一通り当たってはみたが、 
それらしい情報は一切見つからず、唯一考えられる大名古屋国も、 
崩壊した今となっては、ハッキングで調べる術はもはや残ってはいなかった。
「やはりダメか、名古屋オリジナルと考えたほうが良さそうだな」
「…ところで、さっきのLWOSってなんだ?」 
「Living Weapon development Organizationsエルウォウズ。 
 主にクローンやナノマシン技術を応用した生体兵器専門の研究機関だ。 
 コロニー連盟の所属だが、LWOS自体がもはや独立国だと思った方がいい。 
 技術力ならリゼルハンクとタメ張れるくらいだからな。 
 タカチマン博士が調べようとしている精神操作チップも、 
 出所は十中八九、リゼルハンクか、このLWOSだろう」 
「それは今は後回しでいい。 
 それより、SFESのことだ…」
執筆者…Gawie様
しかし… 
いや、やはりと言うべきか、 
SFESに関しても、これといった情報は得られなかった。 
おそらく、ネットではこれが限界なのだろう。 
SFESという名称だけは其処彼処で見受けられるものの、 
肝心の組織構成やその目的などの具体的な情報は全くと言っていい程ない。 
今日、キムラ達が出会ったジルケットやアンダーソンの口振りからは、 
彼等も何も知らないということはなさそうではあるが、 
裏の世界でもSFESに関してはある意味タブー視されているような観があるようだ。 
むしろ、直接対戦した自分達の方が詳しいと割り切った方が良いのかもしれない。
「リゼルハンクにすらSFESの情報は皆無か… 
 なぁ、奴等のサーバーか携帯端末に直接侵入出来ないのか?」 
「簡単に言うなよ。 
 ハッキングは千里眼じゃねェんだ。出来ないものは出来ない」 
「ん? 
 でもお前、前にSFESのデータバンクに侵入したとか言ってなかったっけ?」
「…それは順を追って説明しよう。 
 一ヶ月くらい前だったか… 
 ある依頼と共に、旧式のクリスタルが送られてきてな… 
 依頼内容はそのクリスタルの解析、そしてその依頼主がガウィーだ。 
 早速データをサルベージしてみて、そのクリスタルの本来の持主が判った。 
 …ネークェリーハ・ネルガル…」 
「リゼルハンクの社長か…!」 
「そうだ。 
 で、そのアカウントでSFESデータバンクに侵入して、 
 出て来たのが、この『アカシックレコードコピーSFES仕様』 
 内容は見ての通り、意味不明だ。 
 ここで、俺も初めてSFESとリゼルハンクの繋がりを知った訳だが、 
 肝心のデータがこれじゃ、金にならないからな。 
 次の日にもう一度侵入してみたんだが、 
 その時には既にSFESデータバンクは存在していなかった。 
 こうなると、何の手がかりもなしに見つけ出すのは、もう不可能だ」
「…やっぱりガウィーか… 
 あいつ、何やってんだ…?」 
「さぁな、情報屋にもいろいろあるからな。 
 奴の連絡先は分らないが、専用のデコーダーは渡してある。 
 当然、暗号も俺が作ったものだ」 
「じゃあ、向こうが気付いてくれれば信用は出来るってことか、 
 まぁ尤も、そのガウィーという男が信用出来ればの話だがな…」
何にせよ、大体の状況は掴めた。 
SFESの事は分らないにしても、 
今なら下手に首を突っ込まなければ、然程の危険はないということだ。 
だが、ここで一同にはもう一つ決めておかなければならない事がある。
これ以上、深入りしても、金銭的な報酬はない。 
敵の正体は分らない。更に敵はSFESだけではない。 
いや、彼等にとっては敵と言えるのかも怪しいところだ。
それでも、戦うのか?
そう、此処に居る殆どの者にとっては、 
別に無理をしてまでSFESと戦う必要は無い。 
だが、SFESに誘拐された本田ミナ…佐竹… 
彼女等の奪取だけは遣り遂げなくてはならない。 
少なくとも、ミナの守護者たるアンドロイド・リリィ… 
そして佐竹に雇われた獣人少年のカフュは。 
又、正義盗賊を自称するユーキンも、 
知人(しかも可愛い女の子)を攫われたとあっては、 
其のまま引き下がる事など出来はしないだろう。 
併し、其の根性が裏目に出てしまう事も多々。 
付き合わされるバンガスやおトメさんが可哀想でもある。
ミナと佐竹さえ奪取してしまえばSFESに用は無い。 
だが、どう首尾良く動いた所で、 
SFESと全く衝突無しに終わるなど有り得ない。 
今でこそタカチマン達の生存は気付かれていない様だが、 
ミナと佐竹を取り戻す際には交戦は禁じ得ない。 
遅かれ早かれ対峙しなくてはならない展開なのだ。
併し、タカチマン、ナオキング、ジョニー、リュージ、リエ、ジードは違う。 
そもそも事の始まりはジョニーからだった。 
突如、ジョニーの研究所を襲った謎の魔物… 
偶然通り掛った友人タカチマンが何とかこれを倒し、 
魔物から検出された精神操作チップの解析を任されたのがリュージだった。 
タカチマンの助手であるナオキングや、
リュージの店のバイトであるリエと、常連ジードは、
殆ど成り行きで同行したに過ぎないと言っても良い。
又、彼等の中心となっているタカチマン自身も、
ジョニーに魔物を嗾けた者を絞めるのが目的だった。
だが、彼の中ではSFESを知るという事は、重要なものになっていた。 
タカチマンを執拗に狙うSFES。
タカチマンの失われた過去…其れを知るSFES。 
タカチマン以上にタカチマンを知るSFESの一員ゼペートレイネ
執筆者…Gawie様、is-lies
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