リレー小説3
<Rel3.リゼルハンク演習所>

 

  深夜、アテネ

 

引越しに使用したワゴンで演習場が見える丘まで来るナナシ達。 
孤児達や時田はマンションで居残りをしており、 
此方に来ているのはナナシ、ナナミ、ヨミ、スマウグの4名だった。
「内部はお前の方が詳しいだろう。 
 俺とスマウグはお前の後をつけていく形になる。 
 お前が目的を終えて帰るまで、お前の背中は守っておいてやる。 
 だが、お前が敵とぶつかった時に、 
 お前では無理と見たら、其の場は俺達が前に出させて貰うぞ」
「…好きにしろよ。 
 どーせ俺が嫌だっつーてもヨミ姉は勝手に来るんだろ」
「まあ良いじゃないですか。 
 ほら、ヨミさん達って頼もしそうですし…」 
あまりヨミの同行には乗り気ではない様子のナナシを宥めようとするナナミ。 
彼女は自分も或る程度施設内は知っているので、 
ナナシの力になれればと言って同行を求めて来たのだった。 
実際には兄が敵地の中に行くのを不安に感じた訳だが、 
其れを言ってはナナシが怒る事が眼に見えているので伏せておいた。
対するナナシは彼女に「勝手にしろ」とだけ言ったが、 
其の心の内では、妹への心配が渦巻いていた。
「さあ、行くぞ。 
 どんな連中が来るか解らないから、 
 用心だけは怠るなよ」
一行はリゼルハンク演習所へと向う。
執筆者…is-lies

リゼルハンク演習所正面入り口

 

「ふわ〜あ…眠い。メチャクチャ眠い。」 
入り口の門で警備をしている男が欠伸をする。
「駄目ですよ、みつおさん。見つかったら又減給されますよ?」 
横に居る警備員が彼の様子を見て言う。
「うるさーい!眠いモンは眠いんだ!!
 第一、クールで有能でカッコ良い上、将来はレギオン将校間違い無しのこの俺が、
 何でこんなしょぼい仕事をせにゃならんのだ?!」
「そんな事知りませんよ…」
「全く…幹部連中は何を考えてるんだ?
 この千年に一人の逸材であるこの俺に、こんな仕事をさせる等…」
みつおがブツブツと呟く。 
と、その時。
ズガアアァァァァァアアン!!
突如、数十m離れた道路脇から爆発が起こる。 
慌て慄く警備員&みつお01。
「な…何じゃこりゃー!?」
「何だって…これは……流れ弾って訳でも無さそうだし…」
「はっはー!何を言うカー! 
 これは敵襲に違いない!詰まりは俺の活躍の場! 
 此処でバッチシ目立って昇進と行くぜ! 
 不埒な賊め!この孤独の戦士みつお01が相手だ〜!」
「ちょ、ちょっと待って下さいよ、みつおさーん! 
 其れに何ですか其の孤独の戦士って!」
「知らんのか?ふっ…遅れてるな。 
 俺の愛する格好良い数字01を誰も理解しないからだ! 
 正に孤独の戦士みつお01!どうだ?格好良いだ…」 
何か言いながら爆音の方へと向っていくみつお01と警備員。

 

 

彼等が去った正面入り口付近へと来たのはナナシ達。 
ナナシは、騒がしく明後日の方向に行ってる2人を呆れた感じで眺めていた。
「アイツ…こんな簡単な陽動に引っ掛かるなよ…」
「正面戦闘は避けられたみたいだな。今の内に行くぞ」
「でもヨミ姉よぉ?マジで俺ってあんなのにも勝てねぇ訳?」
「……今なら僅差で勝てるだろうが、 
 さっきも言った通り、何が出るかは解らない。 
 無駄な労力は費やさないに越した事無いだろ」
みつお01達が戻ってくる前に一行は演習場への侵入を果たした。
執筆者…鋭殻様、is-lies

その頃…
  Dキメラ収容エリア

 

大量のDキメラが牢屋の中に入っている。 
無表情な者、檻にしがみ付いて喚く者。様々な者が居た。 
そんな場所の奥から笑い声が聞こえる。
くぺぺぺぺ!!やっぱこの番組は最高だペン!!」 
笑っていたのは…人間では無い者…率直に言うと、ペンギンであった。
ツヤのある皮膚、背中には大きな鉄の箱。片手には、そして頭には蝋燭。
とてもペンギンとは思えないが、
(言葉を喋ってる時点で怪しいのだが)その姿は紛れも無くペンギンであった。
「くぺぺぺぺぺぺ…ああ、笑い疲れたペン。何か飲み物を…」 
そういって、ビールを取り出し飲み始める。 
と、 
「大変です!!ペンギン太郎様!!」 
ぶーーーーっ!!
後ろから部下にいきなり声を掛けられ、思わずビールを吹き出すペンギン、もとい、ペンギン太郎。 
それを見て思わず後ろに引いてしまう部下。 
ペンギン太郎は口から吐き出したビールを拭くと、部下の方を向き直った。 
「な、何だペン!いきなり後ろから話し掛けるなんて!」 
「侵入者です!」 
「へ?」 
一瞬呆気に取られるペンギン太郎。しかしすぐに聞き返す。 
「み、見張りは?!見張りはどうしたペン!!」 
「行方が判りません!とりあえず、ペンギン太郎様も来て下さい!」 
「判ったペン!…僕のささやかな安息の時を邪魔するとは、少しは人の都合も考えろペン!!」 
怒りながら鞭を構え、部屋を出て行くペンギン太郎。 
そんな彼の後ろ姿を見ながら、先程の部下は呟いた。 
「やっぱり…ペンギンだよなあ?」
執筆者…鋭殻様

一方、ナナシ達は、 
嘗てここで育った時の記憶を頼りに目的の場所を目指していた。
施設の奥に進むにつれ、ナナシの記憶も鮮明さを増していく。 
再び目の前に分かれ道が現われるが… 
「どっちだ?」 
「右だ」 
ナナシは迷うことなく目的の進路を指し示す。
「…先に行け。 
 俺はここで退路を確保する」 
どういう訳か、突然ヨミが殿を買って出た。 
その行動に、ナナシも一瞬立ち止まったが、 
頼れる姉貴分だと素直に解釈し、ここはヨミを信じて先を急いだ。 
もちろん、ヨミの真意はそんな単純なものではなかった。 
ただ盲進するナナシの後姿を、フッと鼻で嘲笑いながら、 
その後、慌てる風もなく、ナナシ達が向かったのとは逆の左の通路に進み、 
近くにあったリフレッシュコーナーに腰を降ろした。
「…スマウグ…スマウグ…」 
《…何だ》 
「ナナシの場所はトレース出来ているな?」 
《あぁ、何かは知らんが、目立つ信号を発しているからな。 
 しかし良いのか? こんな無茶な作戦、お前らしくもない。 
 今なら僅差で勝てるだと? 本気か?》 
「まさか、当然負けるだろう。 
 手痛く、こっ酷く負けるさ。 
 たとえその潜在能力を発揮しようともな。 
 闘いは力だけ乗り切れるほど甘くはない。 
 あれが己の無力さを知り…まずは一歩と言ったところだ」 
《解らないのは其処だ。 
 何故そんなに肩入れする? 
 俺もお前も、そしてナナシも元は兵器として創られたモノ。 
 だが、ナナシは兵器としては欠陥品もいいところだ》 
「俺達とは違って、 
 あの『ハート』はプログラミングされたものではないのだろう。 
 もしかすると…… 
 いや、こんな希望的観測を優先的に処理するとは…俺もどうかしている」 
《…まったくだ》 
「…兎も角、死なぬ程度に様子を見て、 
 危険になったら直に脱出させよう」
ナナシに出会ってから、 
彼女の中にコンピュータウイルスの如き発生し増殖する希望というファクター。 
その漠然とした選択肢を処理出来ぬまま。 
ヨミは思考をノーマルに戻した。
執筆者…Gawie様

その頃、 
ヨミの思惑など知る由もなく、 
当のナナシはただ直走る。 
しかし、 
ヨミが予想した通り、無計画に敵陣に乗り込み、 
敵の虚を衝いたところで、それでは決定打にはなり得ない。 
突然の襲撃くらいは相手も当然警戒していたのだ。 
スマウグの砲撃による陽動で、上手く巻いたはずの警備の男――― 
みつお01が槍を構えてナナシ達の前に立ち塞がる。
「コラコラコラァ〜! 
 誰かと思えば予想通り何時ぞやのキメラの小僧! 
 ったく土日休みの暇人が! 
 ちょ〜っとムシャクシャしたからって、 
 随分ナメたマネしてくれるじゃねェか! 
 責任取れんのか!?コラ! 
 オメェ等の月3000円の小遣いじゃとても払いきれねェぜ? 
 ちなみに、俺は月250000円給料のうち、 
 100000円を田舎のばあちゃんに送金している…若者の義務だからなぁ… 
 いや!所詮、責任能力ねェガキに言っても仕方ないか。 
 オジさんちょっと大人げなかったよ。 
 まぁアレだ。 
 こういう時、俺みたいなオトナの男はお前みたいに無闇に暴力は使わない。 
 理知的に、そして合理的に、国家権力に訴えるのさ。 
 いいか?お前等は既に110番の方々に包囲されている。 
 まぁ、少年犯罪を厳しく見積もって5、6年か… 
 塀の中で、二度と戻らない青春を悔やむがいいさ。はっはっは〜!」
「うるせーハゲ!!」 
長々と口上を垂れるみつおに先手必勝とばかりに、 
両手に構えたサイで突き掛かるナナシだが、 
みつお01は余裕にもいちいちポーズ取りながら回避していた。 
端から見ると何かバカっぽいが、凄い事は凄い。
「はーっはっはー!不意を突かれさえしなけりゃ 
 お前なんかこの孤独の戦士みつお01の敵じゃなーーい!! 
 参ったか?参ったなら額に敗戦記念サインをしてあげよう! 
 言うまでもないけど01ってね。大人気間違いないぞ!」
「どやかましぃ!前にも言ったけどダッセーんだよ! 
 何が01だ、笑わせんなよこのヘッポコ太郎!」
「ぬわにぃ〜!?こんの…神をも恐れぬ不埒な発言! 
 たとえ天が許してもこの俺が許さーーん!!」 
見え透いた挑発に乗って特製の槍01ランスを振るうみつお01。 
怒りに任せた単純な連続攻撃… 
だが其の一撃一撃の威力も、そしして連撃の早さも、 
既にナナシの手に負えるものではなかった。
「に…兄さん!?」 
施設そのものに仕掛けられた対魔法措置により、 
魔法も封じられたままのナナミが、 
襲い掛かる警備員達を躱しながら叫ぶ。
(ま…マジで何とかなる相手なのかよヨミ姉ぇ〜!?)
連続突きの幾つかを防ぐだけで手一杯のナナシは、 
着実に蓄積されるダメージに舌打ちし、何とか退路を探ってみるが、 
通路は全て重武装の警備員達で封鎖されており、 
強行突破も出来ない訳ではないが、 
多少の被害は覚悟しなくてはならないだろう。 
だが此処で勝てるかどうかも解らない相手と戦い、 
運良く勝てたとしても、消耗し切った其の体では、 
ナナシの目的の場所に向うまで持ちそうにはない。
執筆者…Gawie様、is-lies

「………?」
瞼の奥に光が見えた。 
もう何十年振りかとすら思える程、久しい光。 
照明の冷たい光とは違う。 
彼女の眼を刺す残酷な実験用の光とも違う。 
もっと荒々しく力強い光… 
懐かしさを感じる。 
彼女と以前一緒に、この施設に住んでいた少年を思い出す。 
この施設の中、最もよく暴れていた少年だ。 
興味からか、珍しく彼女が瞼を開けてみると、 
眼の前には鞭を持ったペンギン… 
SFES生物学スペシャリストのペンギン太郎だ。 
彼女が先程感じた光は、其のペンギン太郎よりも、 
更に後ろ…ガラスで隔てられた部屋の扉から差し込んできていた。
「くぺぺぺぺ、あの小僧が来てるペンよ〜? 
 会いたいペンか?」 
いやらしい顔を近付けてペンギン太郎が言う。 
ペンギンの顔にはもう慣れた彼女だが、
「……あの…小僧……?」
寝惚けた瞼を強く閉じたり開いたりして何とか眼を擦ろうとする。 
彼女の両腕にはいつも通り、鋼の拘束がなされているからだ。
「…JK-112…今はナナシと名乗ってるペン」
「!!」
彼女の驚愕の表情を見、さも愉快そうに笑いながら、 
ペンギン太郎は端末を操作し、彼女の拘束を解いた。 
「……さあ、ついて来るんだペン」
執筆者…is-lies

「ったくよぉ〜、次から次へと…!! 
 ヨミ姉は何やってんだよ!」
同じ頃、ナナシ達はみつお01と戦っては負けると判断し、 
強引に警備員達を押し退けて通路を駆け抜けていた。 
少々遠回りにはなるはずだが目的の場所には着く筈だ。 
相手はナナシの目的にまでは気付いていない。 
ならばまだ希望はある。 
目的の部屋の扉が眼の前に迫った其の時、 
其の扉から何者かが出て来た。
…3体。 
1体は警棒のような物を手にし、軍服を着ている女。 
胸にはリンゴの描かれた徽章と多くの勲章を付けている。 
もう1体は頭に蝋燭を括り付け、鞭を持っているペンギン… 
Dキメラの調教師であるペンギン太郎だ。 
因みにこの格好は彼の趣味らしい。 
最後の1体はピンク色の髪をした華奢な少女であった。 
其の手足には無数の痣があり、 
着ている黒いワンピースは所々が破け、血で汚れている。
「くぺーっぺっぺっぺ! 
 良く戻って来たペンJK-112!RV-113! 
 いや…JK-112はナナシ・コールというべきペンか? 
 この研究所でボクに復讐する積りだったんだろーけど、 
 オマイ如きに倒せるボクじゃないんだペン! 
 でも折角戻って来たアフォな玩具は、 
 其れなりにもてなしてやるべきだペンな!」 
ペンギン太郎が何か勘違いをしてベラベラ喋っているが、 
其の声はナナシに全く届いていない。 
最後の少女に、ナナシは眼は釘付けとなっていた。
「す……スフレ……?」
「そうだペン!お前の幼馴染みスフレ・ヒューゴだペン!」
「…幼馴染み……兄さん、まさか兄さんの目的って…」
ナナミの言葉を遮る様にペンギン太郎が続ける。 
「でもお前は其の幼馴染みと殺しあう事になるんだペン! 
 くぺっぺっぺ!!こりゃ中々絵になるペンー!!」
「はいさい!!ゴーヤ茶!!」 
ぺなっぷ!!
何を思ったのか迷うことなく 
ナナシはペンギン太郎にパンチを入れた。
ドンウォーリドンウォーリドンウォーリドンウォーリ 
 マイフレーーーンズ!!
ペンギン太郎は意味不明な言葉を発しながら 
火花が散るかという勢いで床を滑っていった。
周囲は何が起こったかと状況がつかめず 
あっけにとられて口をあけて驚愕の表情を浮かべていた。
「ペンギンペンギン!!ペンギンキック!!」 
「ちょ…やめ…ゴブア!!
「せいせい!せいほぉー!」 
そしてこれでもかというくらいにペンギン太郎に蹴りを入れるナナシだった。
つか状況読めよ、ナナシ。
だが相手も其のまま指を咥えて見てはいない。 
軍服女が伸ばした警棒を振るってナナシを退かせ、 
ペンギン太郎への更なる連撃を食い止める。
「く、くのクソキメラぁ!調子に乗るなペン!」 
嘴から血をダラダラ流しながらブチ切れるペンギン太郎。 
手にした鞭で床を打って威嚇しようとするものの、 
ナナシの方はナメ切った表情でペンギン太郎を見下している。
「ペンギン、貴様も無駄話が多過ぎる。 
 遊んでいないでさっさと捕まえるなり処分するなりしろ。 
 一応貴様の管轄だからな、決定は貴様が下すんだ」
「ちっ、解ってないペン! 
 生意気なキメラには相応の罰を! 
 特にこいつには精神的な責めをする必要があるんだペン! 
 …其れに……」 
ペンギン太郎が長々と喋っている間にナナシは少しずつ間合いを詰め… 
そして一気に飛び掛る。
「こんのアホがぁ!ペン!」 
御見通しだと言わんばかりの嫌らしい笑みを浮かべ、 
ペンギン太郎は勢い良くナナシを鞭打った 
…積もりだった。 
だがナナシは其の尾でもって鞭の軌道を逸らし、 
同時に鞭の勢いを受けて空中で方向転換… 
スフレとの間合いを一瞬で詰め、彼女を担ぎ上げる。
「!??」 
「スフレ、しっかり掴まってろよ」
「お…お前アホかペン!? 
 この期に及んで逃げられるとでも思ってるんかペン!?」
呆気に取られるペンギン太郎達を無視し、 
ナナシは来た道をそのまま引き返して行こうとするも、 
5歩も行かない内に追っ手の警備員達の壁にぶつかってしまう。
そんなナナシを指差し、軍服女がペンギン太郎に問う。 
「おいペンギン。あれはそもそも廃棄品だったよな? 
 ならば斬り捨てても一向に構うまい?」
「ダメだペン。高津は兎も角、生け捕りにするのがライズからの指令だペン… 
 足ぶった切っても構わないから生きたまま捕らえるんだペン!」
執筆者…is-lies、R.S様
一方のナナシは既に警備員達を粗方打ち倒して活路を開いていた。 
流石にスフレを背負ったまま…更に彼女を庇っての戦闘は無理があったらしく、 
体中の至る所に軽い切り傷を付けられてはいるものの、 
其処で足を止める事無くナナシは出口に向かって走り続ける。 
だが其の前に立ち塞がったのは…あの強敵みつお01であった。
「おいコラーー!窃盗か!?強盗か!?誘拐か!? 
 だぁが、此処で終わりだぜキメラ坊や。 
 天に代わってこのみつお01が成敗してやるぞー!」
はっきり言ってかなりマズい。 
先の交戦で、この男に敵わない事はナナシにも解っている。 
だが今度は眼の前にみつお、背後には軍服女… 
――先の一太刀からして此方も勝てる相手とは思えない――が追って来る。
「…何だ、みつおか。態々私が追う必要も無かったな?」
「どうするどうする〜キメラ小僧〜? 
 前にはこの俺…レギオン将校候補のみつお01! 
 後ろには親衛部隊のねーちゃん! 
 諦めてお縄に付けぇ〜!」 
何か格好付ける様に槍を振り回し、ビッとナナシへ向けるみつお。
「……ちっ……スフレ、眼ぇ瞑ってろ」 
言うや否や覚悟を決めたナナシが神速でみつおへ向かって駆け出す。
「よし来い!華麗に倒して目立って…!?」 
ナナシを迎え撃とうとしたみつおが突如、其の場に倒れ込む。 
警備員達を一刀の下に切り伏せ、みつおの背後まで迫っていたヨミの仕業に他ならない。
「…ヨミ姉…?」 
一瞬の出来事にナナシが気を取られている間に、 
軍服女はナナシとの距離を一気に詰め、彼の後頭部へ警棒を振り下ろす。 
ナナシが気配に気付いた時…… 
眼の前には、手にした棒をナナシの肩越しに突き出したヨミの姿があった。 
ナナシの眼にも其の動きはまるで止まらなかった。 
恐る恐る視線を自分の後ろに向けてみると、 
ヨミの持った棒の先端には、まるで死神の鎌宜しく、 
光で構成された巨大な刃が取り付けられており、 
其の刃が、ナナシの背後で警棒を振り上げている軍服女を仕留めている事が解った。
「ば…かな………が……ガーディ……」
軍服女は目前のヨミを睨み付け、振り絞る様にそう呻いた後、其の場に崩れ落ちた。 
みつおも軍服女も、決してナナシが勝てる相手ではない。 
ナナシ自身も其れは感じ取れていた。
其れが一瞬、更に一撃で切り伏せられてしまったのだ。 
一瞬だけヨミに対し、畏怖にも近い感情を持ったナナシだった。
「俺の思い違いだったか。 
 どうやらお前はまだまだ教育が足りない様だ。不甲斐無い。 
 …何時までも子守をする訳にもいかない。 
 お前自身、もう少し自分の分を弁えてみるんだな」 
突き放す様にそう言うとヨミは踵を返して来た道を戻って行く。 
取り敢えずペンギン太郎はナナシを追い掛けて来ている。 
此処で追い付かれる訳にもいかず、ナナシとナナミも急いでヨミの後を追う。
執筆者…is-lies

一足遅れで通路へと来たペンギン太郎だったが、 
其の眼の前で横たわっていたのは、大勢の警備員達… 
そしてペンギン太郎も其の実力を認める2人の将兵である。
「…う……ちょいとリキ入れ過ぎたかペン? 
 みつおとヴェリーヌヒルトの戦死は予定外だペン」
「し…死んで…ねぇ……! 
 何…勝手に人…殺してん…だよ!」 
後頭部を押さえつつフラフラと立ち上がるみつお。 
其れを見たペンギン太郎の表情が一瞬凍り付き、 
今度は一気に青褪めてばつが悪そうに言う。 
「ゲゲ、みつお生きてたペンか? 
 あー…今の無しだペン。気にしちゃいかんペン」
「気にするぜ。予定外って何の事だよ?」
「…まぁ…廃棄品には廃棄品なりに役立って貰おうと……。 
 大まかにはライズの言ってた通りに事も進んでいるし…」
「何だぁ〜、ヤラセかよ? 
 んじゃ気張ってた俺等は何だぁ〜?」
「ぼ…ボクが悪いんじゃーないペン。 
 …そ、そそ…其れより外の警察達はどうなったペン」 
急いで話題を変えるペンギン太郎にあっさり乗せられ、 
みつおは「ちょい待て」と言ってから胸から通信機を取り出す。
「もしもし?俺、みつお01だ。 
 …其の台詞は聞き飽きた!ンなモンより外の警備は? 
 ……………おーおー……あいよ、解った。 
 まあ適当に切り上げさせろ」 
やれやれと脱力し切って通信を切るみつお。 
「なんつーか見事に役立たずって感じだ。 
 侵入者達4名全員逃亡。外の連中は煙に巻かれちまってるし、 
 中の連中は死傷者多数。 
 ……戦闘用のDキメラが相手じゃ其れもしゃーねーか… 
 …って待てよ。あの小僧には俺が負ける訳ねーし… 
 ………俺……何で倒れてたんだ?」
「別の侵入者に不意打ちでもされたんじゃないかペン? 
 取り敢えずはライズに報告ペン」
執筆者…is-lies

  リゼルハンク演習場外の道路

 

サイレンの赤い光によって彩られた道路では、 
ヨミ達によって突破された警察隊が、 
引き続き怪我人の搬送や聞き込み調査を行っている。 
流石に隊一つが僅か4〜5名に突破されたという事実を前に、 
警察隊も動揺を隠し切れず騒然となっていた。
「で、どうだったんだ?」
「あ、どうもマクスウェイ警部。 
 まあいつものアレですね。アンリゼらしいです」
「最近多いな。まあリゼルハンクじゃ仕方ないか」 
或る程度、事情に精通している彼等にとって、 
リゼルハンクの黒い噂などは最早聞き飽きている。
「マクスウェイさん、ちょっとマズいって… 
 …ホラ、周囲の皆さんの眼だってあるんですから」
「事実だ」 
キッパリと言い切った刑事の其の態度は、 
周囲のリゼルハンク社員からの不興を買うには十分過ぎるものだが、 
当の警部はまるで意に介さずといった感じで部下との話を進める。 
「……被害は?」
「陽動と思しき道路脇が壊されている以外は…… 
 人的被害も負傷者は多いものの死人は出ていません。 
 唯、演習場の中は社内機密とかで見せて貰えないらしく、 
 署長もあまり刺激するなと…」
「ったく…どーせヘーニル閣下様々辺りの命令だろ?」
「仕方ありませんよ。 
 最近、リゼルハンクはあの細川財団とも仲が良いですし… 
 ……宮仕えの苦しさですね」
「ちっ…… 
 …んで…アレだ。 
 逃げた連中ってのや、壊された道ってのは?」
「逃げた連中は5名。内1体が魔物です。 
 我々が強行突破された事から、 
 能力者か改造人間、獣人の類と思われます。 
 道路は此方です。見ての通り道路ごと抉られています。 
 ……爆発物ではなく、エーテル能力の類であるそうです」 
そう言って部下が指差した所には、 
ナナシ達が進入時の陽動として放ったスマウグの砲撃跡であるところの窪みがあった。
「………能力者か……気に入らん。 
 …この事件って此処に居るリゼルハンクの私設部隊がやらかしたんじゃねぇのか? 
 だとしたら道路の修繕費くらいは取ってやれそーだが」
「一応、此処の部隊員達から事情聴取は行いますが… 
 ……まあ、あまり結果は期待……」
「皆まで言うなよ。 
 …………くそっ、茶番だぜ」
執筆者…is-lies
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