リレー小説3
<Rel3.エーガ盗賊団2>

 

 

「あ〜……」
「……………。」
「ん〜……」
「……………………。」
意味不明な呻き声をあげる白コートの男と、ただ黙って眼を瞑っている黒ジャケットの男。 
二人が乗っているのはイオルコス行きのバス。 
窓の外にはのどかな自然が広がっている。
「うが〜〜〜」
「……ライハ、少しくらい黙っておけ。」 
ジャケットの男のほうが、冷たく言い放つ。 
コートの男―ライハは、そちらをチラと見ると、相変わらずのダルそうな顔で呟く。
「だってよ〜、暇じゃねーか?レオン。」
「だからと言って呻き声をあげても一緒だろう。」 
腕を組んだまま、さらに眼も瞑ったまま、レオンはぶっきらぼうに答える。 
ライハは、特に気にした様子も無く続ける。 
「そりゃそーだけどよ〜……ていうか、俺等はどーしてバスに揺られてるんだ?」
「イオルコスへ行くためだろう。当然。」
「それは解ってるって。そうじゃなくて、なんでイオルコスへ行ってんだって話。 
 ホントなら、高速艇に乗ってクノッソスだろ? 
 それが何でイオルコスに変わってるんだよ。 
 聞いた話じゃ、イオルコスってのはまだ開拓中の田舎町だっていうじゃねぇか。」
不満気なのを隠そうともせず、ライハがまくしたてる。
「聞いただろう? 
 SeventhTrumpetという団体が、そこへ地球からの難民を受け入れているらしい。 
 そこへ行けば、有用な情報が集まるかもしれない。 
 少なくとも、アテも無く情報を集めるよりも効率がいいだろう。」
「はぁ〜あ……アテネもロクに観光してないってのにイキナリ田舎町……」
「………そういうことか。 
 我々は遊びにきたわけじゃないんだぞ?」
「そりゃ解ってるけどさー。はるばる火星まで来たんだぜ?」
「そのうち、飽きるほど観光できるさ。 
 何せ、地球はあんな状態だからな。」
「それも……そうだな。」 
はぁ……と陰鬱な溜息をつき窓の外に眼を向ける。 
レオンは身動き一つしない。
二人を乗せたバスは、一路イオルコスへ。
執筆者…you様
バスに揺られ、2時間程北上した頃だ。 
アテネ北部の住宅街を抜けると辺りの風景は一変した。 
長閑な田舎でもなく、雄大な自然ともいえない風景だ。 
街道沿いの商店も人気はなく、 
所々に打ち捨てられた建設重機と廃材の山、 
赤い荒野と灰色の空も相俟って、なんとも閑散とした雰囲気を醸し出している。
目的地のイオルコスは火星北部未開地域開拓の最前線だ。 
人口2万人のポリスと言っても、ほとんどは労働者に技術者、そしてSeventhTrumpet関係者。 
観光目的でやってくる者などはまずいない。
「イオルコス… 
 北部アネクメーネ開発拠点…そんだけかよ」 
車内ではライハが未練がましく観光ガイドを捲りながら呟く。
「…2年もすれば立派なポリスになるだろう。 
 それに、地球からの避難民を一時的に受け入れる予定もあるそうだ。 
 下調べしておくだけでも損はない」 
レオンはさらりと返答を返す。 
窓枠に頬杖を付いたまま、ライハの方を振り返ることもなく、 
黄昏の地平線を眺めながらデカダンスに浸っている。
「折角だから記念撮影でもしとくか?」
「…やめろ」
ライハが茶化すように携帯端末のカメラを向け、 
嫌がるレオンを正面から撮ろうと立ち上がった時だった。 
突然バスが急停車し、ライハは勢い余って前の座席に転がり落ちた。
「いったぁ…… 
 …ちょ…な…何何ッ!? 
 ………あ、ごめんなさい…」
前の座席に座っていた男性客と頭がぶつかってしまったにも関わらず、 
今、起きた事への興味が先走ってしまっていたライハだが、 
男性客にギロリと睨まれて流石に縮こまる。
見るとバスの運転手がうんざりといった表情で其の顔を窓から外に出して叫んでいた。 
「ちょっとちょっと困りますよ。 
 ……お金はあるんですよね? 
 解りましたよ。でもこんな事、もうコレっきりにして下さいよ。 
 こっちのお客様にも迷惑なんですから」
乗客達が見守る中、バスのドアが開き、 
薄汚れたマントを纏った男が乗って来た。どうも途中乗車らしい。 
確かにこの辺りはバス停も人気も無く、辺りにはあるものといったら、 
放置された重機や建築資材の山、シャッターの下りた商店程度しか無い。 
地球崩壊の危機で一気に火星に移民して来た人々は、 
大した予備知識も無いままイオルコスへ向かい、 
そのまま迷ってしまう事が多いと最近はよく聞く。 
見たとところ男はあまり荷物を持っていない様にも見える。 
この男も準備が足りないまま北上した手合いなのだろう。
奇異の視線を向ける乗客達も居るには居るが、 
良く見てみると殆どの乗客は無関心そうに窓の外を見遣っていた。 
恐らく、彼等も慣れているのだろう。 
男は無言でライハ達の直ぐ後ろの席へと座る。
「…なーんか…感じ悪い奴だなぁ。 
 無愛想っつーか……」
「…………」
「あ!べ…別にレオンの事云々じゃないぜ!?」
「………………」
「…………」
何となく気まずい雰囲気の中、バスは再びイオルコスへと向かう。
執筆者…Gawie様、is-lies
すっかり日も落ち、完全なる闇の中をバスは北に向かって走る。 
途中で乗車してきた怪しい男のこともあってか、バスの車内は無言… 
なんとなく演歌でも歌いたくなるような雰囲気の中… 
漸くイオルコスの灯が見えてきたのは、更に一時間ほど経った頃だった。 
バスは街の中心部に到着すると、ターミナルをゆっくりと一周して停車した。 
田舎で何もないという情報とは裏腹に、街は独特の賑わいを見せていた。 
確かに街並みは雑多であり、道路整備も行き届いてはいない。 
駅前には怪しい雰囲気の酒場やカジノ、売春宿等が堂々と軒を連ね、 
そして何より、獣人が多い。
なるほど真っ当な観光に力を入れているとは言い難い。
ここイオルコスは火星北部の開拓地であるが、 
昔のアメリカ西部開拓時代とは多少訳が違う。 
こんな所に来るのは訳アリでこの地に逃れてきたか、 
もしくはゴールドラッシュ宛らに未開地で一山当てようと夢を求めて来る者だ。 
バスの乗客達も大半はそんなところだろう。
「さて、いきますか…!」
乗降口が空くのを待ってから、ライハ達は席を立った。 
高だか3時間ほどバスの旅ではあったが、 
ライハには街の灯が妙に愛しく感じられた。 
逸る気持ちを抑えながら順番を待っていると、 
ふと、前方の視界をマントで遮っている長身の男に気付いた。 
途中で乗ってきた怪しい男だ。 
いや、ここで怪しいと決め付けてしまうのもどうかと思われるが、 
ライハ達は職業柄そういう匂いには敏感であった。 
下手に警戒心を見せぬようとした、その時だ。 
前の男のマントが不自然に動いたかと思うと、襟元から何かが顔を出した。
「照合! 該当あり!」
「な、なんだ?」
見るとそれは御伽噺に出てくる妖精のような姿をしたフィギュアだった。
「…構うな、アルテミス…」
男が制すと妖精は直にマントの中に潜り込んだ。 
あんな小さな獣人は見たことがない。どう見ても妖精だった。 
おそらくロボットであろうが… 
こうなるとこの男も何となく違う意味で怪しすぎる。 
一瞬どう言葉をかけて良いか迷ったライハだったが、思い切って声をかけてみた。
「ア、アンタ、どっかで会ったっけ?」
「…知らん…」
「そうか? 俺の名前は…」
「関係ない、俺に構うな…」
男は無愛想に答えると、黙ってバスを降りていった。
「…うわ、感じ悪いな〜」
「お前が無駄に馴れ馴れしいだけだ。 
 無意味に他人に関わるものじゃない。 
 …それより、俺達も行くぞ」
執筆者…Gawie様
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