リレー小説3
<Rel3.エーガ盗賊団1>

 

 

「……はぁ」 
クノッソスへと向かう船上で、セートは小さく溜息をついた。
「どーしたんですか、溜息なんてついて。」
声のほうへ肩越しに振り向くと、
ルキが缶ジュースを両手に一本ずつ持って立っている。
「いや……別に……」 
ルキはジュースを一本受け取ると、視線を再び海のほうへ戻す。
エーガさんのこと、そんなに心配?」
「っ!? な、何故それを……」
セートがあからさまに動揺する。あやうくジュースを落としそうになるほどに。
「セートさんの心配事なんて、エーガさん絡みしかないでしょ」 
フフッと笑ってから、セートに習って船縁へもたれかかるルキ。 
それを見ながら、セートも微苦笑する。
「フ…まぁ、それもそうだな。」
「エーガさんなら大丈夫ですよ。 
 あの人なら何とか上手くやるでしょうし、
 それに、地球が破滅に近づいてるってことは元々知ってたんでしょう?」
「ああ、まぁな。」
言って蓋を開け、ジュースを一口飲む。 
と、同時にセートの顔色がみるみると変わっていく。
「ル、ルキ……これは………?」
「ん?ただのグレープサイダーですよ?」
グレープ………
セートの声音が、一転陰鬱に変わる。
「え゛、ニガテなんですか?」
「あ、あんまり好きじゃな……」
ピピピピピピッ―ピピピピピッ!
言いかけたセートの言葉を遮って機械音が鳴り響く。
「携帯電話…ですね。」
「! もしかして……!」
ピッ
《お、セートか?》 
「エーガ様っ!!」 
《何だよ、大声出して。 
 皆無事か?》
「え、ええ。大丈夫、全員無事です。 
 今は、クノッソスへ向かう船上です。」 
《そーか、よかったよかった。 
 全員そこに居るのか?》
「いえ、ミレンとケイムは情報収集のためにアテネへ残しました。 
 レオンとライハは、別の街に向かわせました。今はイオルコスへ行っているはずです。
 カイトとルキとは例の調査にアレクサンドリアへ…」 
《そーか、OK. 
 他に何かあるか?ねぇなら詳しい話はクノッソスで……》
「一つ、大事な話が。」 
《あン?》
セートは、一呼吸置いて、
101便内で情報を得るため、セレクタのメンバーにエーガの部下として接触したことを話した。
「申し訳ありません、勝手な事をして……」 
《いや、そうするのが最善だとお前が思ったんならそうだったんだろ。 
 それに…まぁ別に問題はねーだろ。》
「ですが、どうやら私達のことを怪しんでいたようです。 
 人事ベースなどで調べられて嘘とわかればエーガ様の立場が危うくなりませんか?」 
《けど、俺の部下って言っただけでセレクタメンバーだとは言わなかったんだろ? 
 ンなら、私的なエージェント……ってコトにすりゃ大丈夫だろ。 
 まぁ、相当不信感を買うことになるが、元々大した信頼感もねーからな》
「そうですか…本当に申し訳ありません」 
《いいって。 
 まぁそんなトコか? んじゃ、クノッソスでな。 
 街の何処かはまた電話する。そんじゃーな》
「はい、お気をつけて」
ふぅ、と溜息をついて、電話を切る。
「ね?大丈夫だったでしょ?」 
横からルキが微笑みながらこちらを見ている。
「…ああ。」 
セートも安心したような微笑を漏らしながら、再びジュースに口をつける。
「あ、ちょっと!?」 
ルキが止める間もなく、再びセートの顔色が変わっていく。
「うぅぅぅ………」 
セートの苦い呻きと、ルキの呆れた溜息が、海上に切なく消えていった。
執筆者…you様
  数分後―
「大丈夫ですか?」 
ルキが心配そうに顔を覗き込む。
「あ、あぁ………」 
対してセートは、まだ顔色が少々悪いものの、元気を取り戻したらしかった。
「そんなに苦手なんですか?葡萄。」
「色々…あってな。」
「へ、へー……」
非常に何があったのか気になったが、
なんとなく聞いてはいけないことのような気がして、聞かないでおいた。
「私は部屋へ戻るが…ルキはどうする?」
「僕はもうちょっと海眺めてます。」
「そうか。」
それだけ言うと、セートは船室のほうへ歩いていく。 
ルキはその背中をしばし見つめて……言うかどうか少し迷ってから……呟いた。
「セートさんは……」
「ん?」 
その呟きにセートが振り返る。
「知ってるんですか?この盗賊団の…エーガさんの、目的を。」
「どうした?急に。」
「本当の……目的を。」 
噛み締めるように、試すように、ルキの瞳がセートを射る。
八姉妹の結晶の……奪取。」 
セートがこちらを真っ直ぐ見ながら、しかしやや伏目がちに答える。
「それは、知ってます。それを手に入れてどうするんです?」
「………………。」 
一旦視線を外し…… 
どこか悲しげにも見える瞳で、少し困ったような、しかし安らぐ微笑みを浮かべて、こちらを見た。 
その表情にルキは一瞬動きが止まり…… 
セートは再び歩き始めた。 
その姿が完全に消えてから……
「ずるいよなぁ。あの笑顔は。」 
ルキは、上手く誤魔化されたのだと理解した。
執筆者…you様
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