リレー小説3
<Rel3.エーガ5>

 

  火星裏側 未開発領域

 

「あー……腰痛ぇ…」 
慣れない畑仕事が祟ってしまって腰を痛めたエーガは、 
鍬を投げ出すと、すぐ側に置いてある角材の上にどっかりと腰を下ろす。 
見てみると、畑では数人の獣人が未だに精を出していた。 
エーガは自分自身でも体力の無い方ではないと思っていたが、 
やはり超人兵器・獣人の体力は侮れず、又、畑仕事は此処の獣人達に一日の長がある。 
視線を、汗水流しながら働く獣人達からサリシェラへと移す。 
彼女の方はと言うと、持っている鍬どころか足元も見ず、ぼーっと空を見上げながら、 
手首だけを軽く動かして機械的に畑を耕している。疲労の色は全く無い。
「…やっぱ力持ちなんだよなぁ…」 
以前、彼女に絞められた首に手をやりながら呟くと、 
彼女が人外である事を思い出して軽く身震いする。 
(……良く生きてたよな俺。 
  …そういやセート達もSFESと戦ってたんだっけ。 
  あいつらも良くやってくれたもんだ。早く帰って元気な顔見せてやらねーとな)
ふと、僅かな違和感。 
高々身体能力強化程度の力でSFESの執行官足り得るのか。 
確かに驚異的なまでの身体能力は恐ろしいものがある。 
併し能力研究集団であるSFESの中に於いては、 
特に抜きん出た存在では無い様にも思える。 
あまりにも有り触れているし、力さえ解ってしまえば特に脅威は感じない。 
(他に何か隠してんのかねぇ…)
「………?」 
エーガの視線に気付いたのか、サリシェラが鍬を動かす手も止めずに振り返る。
「よぉ、疲れたら適当に休んどけよ」
「………」 
無言で再び空を眺めるサリシェラ。 
相変わらずな其の態度にエーガは溜息を吐く。 
(こんな状況だから…か。 
  いや、違うな。船の中でだって……。 
  あの娘は誰も信じていないんだろうな。 
  何も信じてない……笑っては…くれないんだな)
そして未だにサリシェラに笑顔を求めている自分を冷笑するのだった。
執筆者…is-lies

深夜、エーガは村を当ても無く散歩していた。 
特に深い理由は無い。
「やけに騒がしいな…何かあったのか?」
確かに深夜なのに人が多い。 
だが、エーガは面倒臭いので聞かなかった。
エーガとサリシェラは鶏小屋で寝ている。 
・・・変な想像は禁物。 
一応ルールを決めてあり、少しでもサリシェラに触れたら即半殺し。
某ワニ型遊具は幾つもの歯のうちの一本がスイッチだが、こちらは全部が起爆装置だ。
鶏小屋に戻ろうとした時、村の隣の森に人影が見えた。 
一人は金髪の・・・サリシェラだ。だが、いつもの眠そうな表情は消えている。まるで、怯えているような。 
もう一人は、暗くてよくわからない。
(・・・?!)
近付いてみると、暗くてよく分からなかった方が、よく見えるようになった。 
肩くらいの黒髪と、奇妙な笑顔の少女。 
いつ壊れても可笑しくないような笑顔でサリシェラに近付く。 
その度、サリシェラは後退した。
(誰だ?この村の奴…じゃあないな。それに…何か変だ…)
エーガは気付かれないように近付いた。 
誰だか知らないが、気付かれたらヤバイ。 
その少女はそれだけの『気』を持っていた。 
会話が途切れ途切れに聞こえる。
「…でしょ?弟さんを……大丈夫だから、さ?」 
サリシェラが腕を伸ばした。 
その腕は少女に触れる、
寸前に、少女は消えた。
(瞬間移動!?…あいつ何者……ってか何を話してたんだ?)
執筆者…夜空屋様
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