リレー小説3
<Rel3.アリエス1>

 

 

クロノ達が汗水流して働いている其の頃…

 

  イオルコス北西部、オリュンポス山脈

 

開発途上地区のイオルコスの更に向こう側… 
完全な未開発区域である其の山の頂上にアリエスは居た。 
球形のオブジェらしきものの前に佇み、 
何をする訳でもなく、じっと下へ視線を向けている。
(………トル?聞こえてる? 
  ……訳ないか… 
  アレが無事ならサーヴァントが蘇る事も無かったんだし。 
  ったく、故障で済んでりゃまだいーけど…… 
  面倒な事にだけはなって欲しくないわよね)
やがて眼を象ったブローチを件の球体の上へと掲げるアリエス。 
一瞬、球体がうっすら光ったかと思うと、 
球体の上の虚空に幾つかの文字が浮かび上がる。
(……えっと…… 
  アースガルズへは……行けない!? 
  ンな馬鹿な事が……… 
  …って、そっか。ビフレストはアメ公に……。 
  ったく忌々しいったらありゃしない。 
  ………しゃーないなぁ…メンドーだけど直接行くか…)
文字の幾つかにアリエスが触れると、 
球体の横の地面が左右に割れ、隠されていた地下への階段が顕わとなった。 

 

躊躇無く其の階段を降りて行くアリエス。 
暫く降りて目の前に現れた扉を開け、小さな個室へと入り、 
壁にあったボタンをトンと一押ししてから椅子へと腰掛ける。
(さて…簡単に直ってくれりゃいーけど……… 
  さもなかったら…………まあ良いや。 
  トルが直ればサーヴァント共の波長も読み取れて便利だけど… 
  絶対に直さなきゃいけないって訳でもないしね。 
  …サーヴァントが何処から襲って来るか解らないっていうのは…… 
  ………ま、後で考えるとしましょ)
彼女が頭の中で或る程度考えを纏めたのを見計らったかの如く部屋の扉が独りでに開く。 
其処から見える風景は先の階段とは違う… 
今で言うところのエレベーターみたいなものだったのか? 
エレベーターから出ると其処はドーム状の広大なホールとなっていた。 
幾つもの結晶柱が林立し、ホール中央には…… 
………何も無かった。
(………………オイオイオイオイ… 
  冗談キツく無いコレって…? 
  何でトルが無いんよ!?……アイツ此処から出れたっけ? 
  ……そんな訳ないし…。誰かが持ち去った? 
  …としたらサーヴァント復活はそいつの所為だけど…… 
  うーん、考えても解んない…! 
  兎も角トルを頼りには出来ないって事らしいわね)
執筆者…is-lies

それから数日をかけて、アリエスは心当たりのある遺跡などを当たっては見たが、 
多くは跡形もなく風化し砂に埋れているか、 
或いは既に人の手によって発掘されてしまっていた。 
事態を治める手立ては最早アリエスの記憶の中には残ってはいなかった。
一度クロノ達の様子を見るためにアリエスがアテネに戻ったのは、 
それから更に数日後のことだった。 
一方のクロノ達も同じく進展はなし。 
修行も未だ最初の課題もクリア出来ず、 
肝心の情報収集もこれといった成果もなく、 
それどころか、別れたその日にキャバクラで借金を作ってしまうというダメっぷり。 
ホテルにいなかったので、もしやと思ってピンクドラゴンを訪ねてみれば、 
そこでタダ働きをしているクロノ達を見つけたという訳だ。 
どことなく複雑な表情でクロノ達の言い訳を聞くアリエスだった。
執筆者…Gawie様

 

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