リレー小説3
<Rel3.『青』編9>

 

 

  イオルコス北西部、オリュンポス山脈

 

未開発区域であるオリュンポス山脈に『青』達が到着し、 
件の遺跡があると言う麓の林へと到着したのは15時丁度。 
鬱蒼と繁る木々の枝を掻き分け道無き道を進む一行。
「うっわぁ…随分と辺鄙なトコまで来ちまったぜ」
「グダグダ言うな。デルキュノ、例の遺跡と言うのはまだなのか?」
「安心してくれ。もう入り口が見え始める」
数分後、彼等の前に遺跡への入り口らしきものが見えて来た。 
傾斜のきつい山肌に、ダイナマイトでも使ったのか巨大な穴がぽっかりと開いている。 
だが其の穴の中から外の木々を照らす程の光が差しており、 
遺跡内部の機構が未だに動いているという事を実感させる。 
取り出しかけたハンドライトをバッグに仕舞い、イルヴ達は遺跡内部へ入り込む。

 

遺跡内部は壁面に埋め込まれた結晶が照明となっており、メタリックな通路全体を輝かせていた。 
これが既に滅んだ文明の遺跡とは到底思えない。
「お…オイオイ、遺跡ってこんな……」
「どうかしたか?」 
柄にも無く驚いている『青』を見、イルヴが問う。
「いや、火星の遺跡って… 
 もっとピラミッドみてーに石とか積んだモンを想像してたから。 
 ほら…デルキュノが前に来た時も石版云々言ってましたよね?」
聞いてデルキュリオスは一瞬、意外そうな顔をした。 
「…知らないのか?まあ良い。この際だから教えておくぞ。 
 火星古代文明は2つある」
「1つが超高度古代文明。もう1つが原始的古代文明…じゃろ?」 
イルヴが絶妙のタイミングで割り込む。
「其の通り。『青』の言うような遺跡があれば、此処の様な遺跡もある」
「…其れって別々の時代にあったんだよな?」
「違う。シュリスが言うには、ほぼ……いや、全く同じ時期、同時にあったらしい」
「……?原始人と未来人が同じ時に其々繁栄してたって事?其れって変じゃねぇか?」
「ああ変だ。この辺りを明かす為にも調査が必要…という事じゃな。 
 ……文明の抜け殻のみを遺し、自身は骨一つ残さず消滅した古代火星人…… 
 彼等は何を見、彼等に何があったのか……」 
歩きながら呟くイルヴ。 
「………」 
そんな彼を、じーっと見やりながらデルキュリオスも後に続く。
執筆者…is-lies

「で、此処ぁ何なんだ?」
魔物や罠を掻い潜り『青』達が辿り着いたのは、 
如何にも触れると危ないですよと言わんばかりに点滅しているバリアの前だった。 
緑色に光って透ける壁の向こう側には、奥へと進む通路… 
そして其の左右に設置されたバリア発生装置と思しき小型の機械が目視確認出来る。 
バリアからの光を受けている機械は、まるでつい最近に取り付けたかの様に美しく輝いている。
「……こんなものは…… 
 …シュリスの言っていた連中か……。 
 ん………ああ、此処か… 
 どうやら行き止まりの様だし、この辺りで探索は一旦中止とする」 
デルキュリオスは妙にあっさりと探索打ち切りを言いだす。 
先程から罠は幾つも解除して来たし、このバリアにしても簡単に解除出来るのかも知れない。 
だがデルキュリオスは解除を試みようとすらせずに中止と言ったのだ。 
幾ら『青』でも腑に落ちない。
「…?なぁ…ちょっと粘ってみないか解除に。 
 もしかしたら案外簡単に……」
「いや、この見たところ…相当厳重なバリアだ。 
 専門家の意見も仰ぎたいし、今日はもう十分だ」
確かにバリアは見るからに危なそうだし、イルヴも相当に凄まじい魔力を感じる。 
だが、其れにしてもデルキュリオスの態度は不自然だ。
「?何か歯応えねーんだけど…こんなんで良かったんか?」
「勿論。良くやってくれた。 
 だが、もしかしたら又お前達に探索を手伝って貰うかも知れない。 
 其の場合、受けては……貰えるか? 
 言うまでも無いが、今回の報酬はちゃんと出させて貰うから安心してくれ」
「そりゃ、この程度の遺跡だっつーんなら喜んで…」 
「いや、其の時の場合にもよりますからな、約束は出来ません」
『青』を遮ってイルヴが言う。世界は一刻一刻と変化している。 
この遺跡にしても、次にデルキュリオス達が依頼した時、今回と同じ姿を再びイルヴ達に見せるとは限らない。
「…まあ良い。取り敢えずは出るとしよう。 
 地図はと……」
探索中に書き起こした遺跡の地図を片手に、 
来た道を沿って帰路に就こうとするイルヴ達を他所に、 
アルベルト・ジーンはじーっと遺跡の奥を見つめていた。
(似ている。あの場所に…)
執筆者…is-lies

遺跡から出た途端、変な連中に囲まれた。 
彼ら四人ならこの程度は楽勝だろう。だが、理由が無い。 
囲まれる理由が無いのだ。
人数は全部で五人。
一人は禿頭のゴツい男、一人は異常に細い男、一人は黒いスーツに黒いコートの青年、
一人は長い銃を持った灰色のコートの長身の男、最後の一人は長いトンファーを片方だけ持った金髪赤眼の少女。 
その遥か向こうに数人の妙に豪華そうな服を着た男達がいる。
禿頭のゴツい男が口を開いた。 
「そこの四人組!その遺跡は『SeventhTrumpet』の所有物だ!」 
(おっ、結構マッチョ…ってそんなこと考えてる場合じゃないか)
  おいおい、何時セブンバイオリンの所有物になったんだよ!」 
『青』が反論する。楽器名が違うぞ、『青』。
「一時間前」 
長身の男がボソリと返す。
「な…?!」 
アルベルトとデルキュリオスが驚愕した。一時間前なら丁度バリアの前にいた頃だ。
「ウヒャヒャ!死んでもらうぜぃぇ〜〜〜!」
異常に痩せた男が飛び掛る。 
「俺の名は『狂速の…』 
「五月蝿い黙れ」 
『青』のバズーカ型ヒボタンXで、痩せた男は地平線のかなたに飛んでいった。 
それに巻き込まれ、禿頭の男も吹っ飛んでいった。
「よっしゃ!後三人…ゲフッ!」 
「何やっとるんじゃ!!相手の正体も分からず攻撃するとは!!」 
「ヒィッ!すいません!ごめんなさい!」 
イルヴに説教される『青』。 
一瞬でアルベルトとデルキュリオスは「イルヴ>『青』」という構図が生まれた。実力的には逆なのだが。
「余所見をするな」 
「余裕かましていると死にます♪」 
「依頼だから消えろ」
残りの三人が一斉攻撃を仕掛けて来た。 
長身の男は弾丸を装填しておよそ0.01秒で撃ち、 
黒いコートの青年は小さな炎の柱を放ち、 
金髪赤眼の少女はいつの間にか傍らにいた黒い狼を放った。
執筆者…夜空屋様

遥か向こうで傍観していた男達…SeventhTrumpetの幹部や法王ラ・ルー・ヌース。 
そしてその横には…ペンギンがいた。
「くぺぺぺぺ、これであの遺跡はこちらのモノだペン♪
 H・Fがあの片目莫迦…
 …じゃなかった、ネークェリーハの趣味部屋から連れてきた奴だからどんな奴だと思ったら結構強いペン♪
 それにしてもさっき飛ばされた二人…弱いペン。
 やっぱりただの殺し屋じゃダメペンね〜♪」 
変な笑いを上げながら踊る謎のペンギン。 
「え〜と?男は『エドワード』でただの非能力者で、女は『翠羽(すいは)で獣を召喚する能力者…なるほどペン♪」 
「あの、ペンギン次郎様?」 
「太郎ペン!ボクは『ペンギン太郎』!オンドレわナメとんのかオラアァ!ペン!」 
ペンギン太郎…長いので太郎は、その弱気そうな幹部を鞭で叩いた。 
「ヒィィ!すいません!…あの、ところであの、H・Fとは?」 
「企業秘密ペン」 
あっさり返された。
答えを教えて貰えずに不満げな顔をする幹部を他所に、 
ペンギン太郎は勝利を確信した様な笑みを漏らし、 
さぞ焦っているであろう獲物達の方を注視してみる。 
「んんぅ?アイツ…もしかして『青』じゃないかペン? 
 ぺなっぷ!?イルヴ・ロッド・ヴェインスニークまで! 
 あいつらこんなトコで何してるペン?」
ペンギンの叫びに周囲の男達からも驚きの声が次々上がる。 
「あ…あれが大名古屋国大戦英雄のッ!? 
 ……え、あ…お、恐らく…火星ロボット技研が雇ったのかと」
「……うぅむ……マヂィペン。 
 唯の素人なら其のまんまブッ潰して口封じも出来るけど、 
 連中だと…全力戦闘になると遺跡が壊れかねんペン。 
 敵に回して面白くなる相手でも無いし。 
 ロボット技研の連中も…何か強そう……ってアルベルトまで!?
 んぬぬぬぬぬぬぬ……!」 
遺跡内部の遺産見学が目的の彼等からすれば、 
此処で荒事を起して後々目立つのはバカらしいし、 
何かの拍子で遺跡に傷を付けてしまう様な事に発展してしまうのは、 
組織SFESに属するペンギン太郎にとっても御免であった。
「ふむ…侵入を許してしまった時点で失敗でしたね。 
 『流れ』の源泉が見れると思ったのですが…余計な……」 
溜息を吐く法王ラ・ルー・ヌース。 
本来、彼は法王庁のあるコリントスから外出するような人間ではなく、 
懇意であるSFESからの誘いでなければ、 
きっとこんな未開発区域にまで来てはいなかっただろう。
「下手に排除は出きんペンね…適当にあしらって帰って貰うペン。 
 どーせ『デリングの扉』に阻まれて最奥までは行ってない筈だし大丈夫大丈夫。 
 法王様、ボクに口裏合わせて貰いますペン」
執筆者…夜空屋様、is-lies

3人の手練と魔物達と戦うイルヴ一行。
「うわっ!!」
黒服の青年は何処からか剣を取り出し、『青』に斬りかかった。
「さっすが、今の斬撃に反応できるとは♪」 
ヒボタンXを剣に変化させ、相手の剣を受け止める。 
「ですが…僕の能力はわかりますか?」 
『青』が突然、競り合いに押された。 
「な?!」 
男がニヤリ、と笑う。 
「次は『貴方の』能力を使わせてもらいます」 
その男の…H・Fの手が、『青』の肩に触れる。
イルヴは銃を持った男と戦っていた。 
相手がただの銃使いなら問題ない。 
が、その装填からトリガーを引くまでのスピードが異常に速かった。 
魔法壁を左手で作り出し、右手に氷を溜める。
デルキュリオスとアルベルトは金髪の少女の『影』から次々生まれてくる狼と戦っていた。 
二人とも、本体である少女を倒さないとダメだということは分かっていた。
が、狼の数が多すぎて中々進めない。 
「消えろ」
物騒な言葉を吐きながら、少女はその影から、『ある』獣を出した。
「…獅子に熊にサイ、か。とんでもない組み合わせだな」 
「呑気に言ってる場合か!」
其処へ…
「止めるんだペン!」
突如、冗談染みて甲高くマヌケな声が響き渡る。 
其の場の全員が動きを止めざるをえない。 
果たして林の奥から現れたのは大勢の男達… 
先程、遥か向こうに其の姿を確認出来た連中だ。 
そして其の先頭に居る…先程の声の主は…ペンギンであった。
「君達、悪かったペン。 
 こいつらちょっと血の気が多いんだペン。 
 彼等はSeventhTrumpet特別チームのアークエンジェルズの一員だペン。 
 この遺跡付近に悪辣な能力者が逃げたから何とかしてって依頼が来たんだペン」
3人の手練は暫く顔を見詰め合うと、 
無言で武器を収めイルヴ達から離れた。 
どうやらペンギンが一応は司令塔らしい。
「はぁ?つーかオマエペンギン?どっかで見たよーな…」 
「…ペンギンの獣人なんて珍しくもないペンよ。 
 まあ兎も角人違いだったぺン。済まんペン」
「いきなり問答無用で襲い掛かって来るとは… 
 正義のアークエンジェルズとは到底思えんな」
「…特A危険人物なのですよ。 
 其れに私を護るという事もあって過剰反応してしまったのでしょう。 
 私達の指導が足らず本当に申し訳ありませんでした」 
横から話に入り込んで来たのは男達の一人。 
特に豪華そうな装いからも其の地位の高さが容易に伺える。 
いや、イルヴにはもう何者なのかすら解っていた。 
(法王…ラ・ルー・ヌースか……)
火星に、其の顔を知らない人間は居ないだろう。 
SeventhTrumpetどころの話ではない。法王自ら出て来ているのだ。 
イルヴといえど、この様な大物を前にして動揺を隠せずにいる。
「1時間前に遺跡を所持したと聞いたが… 
 私達、火星ロボット技研は、火星保安部の命で動いたのだぞ。 
 其れが私達が居ると知ってそんな事を許すと」 
対照的にデルキュリオスは毅然とした態度を崩さず、 
畏敬の念を満身に受けている筈の法王に堂々と向き合って話をする。
「いえいえ、そんな所持だとか1時間前とかは流石に冗談でしょう。ねぇ? 
 大体考えても見て下さい。 
 SeventhTrumpetが火星帝国に喧嘩売っても自滅行為でしかありませんし、 
 こんな未開発区域の遺跡を所有したって何もありません」 
「其の何も無い遺跡に何故、コリントスの法王様が態々御出座しに?」
「…今回の事件には私と其れなりの事情がありましてね。 
 ………これは貴方々が襲われた理由とは別ですのでお話しする意味はありません」
…………
「……まあ良いでしょう。百歩譲り襲い掛かってきた事には眼を瞑ります。 
 で、法王様やアークエンジェルズ様達はこれからどうするのですかな?」
「……遺跡の中を一通り調べてみます。 
 ターゲットがいるかも知れませんしね。 
 貴方達も用心して下さいませ」 
法王の言葉が終わるのを待っていたかの様に、 
SeventhTrumpetの連中は、ペンギンや3人の手練を護衛として遺跡へと入っていった。 
法王もイルヴ達に再三、頭を垂れて彼等に続く。
「イルヴさん…」
「…もう此処に用は無い。帰るぞ」
『青』の言いたい事は解る。 
いきなりの攻撃にしても法王の登場にしても臭いのだ。 
だが、興味本位で法王程の人間へ深入りするという事が何を齎すか… 
それが解らないイルヴでも無い。 
態々藪を突付く必要性は無いのである。
結局、店へと帰れたのは夕食時であった。
執筆者…夜空屋様、is-lies
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