リレー小説3
<Rel3.『青』編7>

 

 

 

「ぅ今の世界は間違っておるぅ〜〜!!!」
闇の中、天井のライトで照らし出されたのは1人の男、 
チビで痩せで白髪…白衣に片眼鏡を付けていると言う、 
其の外見といい、先の巻き舌な叫び声といい… 
マッドサイエンティスト 
そんな言葉がピッタリと当て嵌まりそうな中年であった。
「最近の事件の数々を見よ! 
 航宙機がジャックされたり、地球に破滅現象が起きたり、 
 火星に移民が溢れ、衛星が何か光ってたり、 
 燃えるゴミと燃えないゴミが分別されてなかったり、 
 ネオス日本共和国がアメリカの奴隷になってたり、 
 デリング大統領が魔女フェチだったり、サッチーが行方不明になったり、 
 ワシの髪の本数が減って来たり、コンビニの弁当が賞味期限切れてたり…ッ!! 
 そう!この世は間違っておる!間違いは是正されて然りッ!! 
 今日、このワシが救世主となって世界を改変するのぢゃーーーッ!!! 
 わーっひゃっひゃっひゃっひゃ!わひゃーーーひゃひゃひゃひゃひゃッ!!!」
執筆者…is-lies

  イルヴ何でも屋

 

「…うーん………」 
PCの前で『青』が唸る。 
インターネットでリゼルハンクやLWOSの情報を集めたものの、 
そう眼を引くようなものはない。探せば怪しげな情報は幾つも見付かったが、 
其れが信用に足るものではないという事は流石の『青』にも理解出来た。
「駄目だなこりゃ…… 
 本格的な情報屋………か…… 
 ……ガウィー、今何処にいんだ?」
『青』はキーボードから手を離し、椅子に寄りかかると、窓の外の空を見た。
夕暮れ時なのか、空は赤かった。 
ガウィーは一流の情報屋なのだが、大名古屋国大戦以来、消息が不明なのである。
おそらく彼に会えれば今自分が求めている情報は手に入るだろう。『青』はそう考えていた。
「まさかくたばってはいないだろうが…
 それにしても、アイツ、何処に行ったんだ?」 
あの時、アマノトリフネからギリギリ脱出し、
地上に戻った際には、既に何名かの姿は消えていた。ガウィーもその一人だった。
「あの時はエースが完全に暴走してたからな…
 そっちに気をとられてる内に居なくなっちまったのか…?」 
『青』は窓の外の赤味を帯びた空を見ながら呟いた。
「ただいまー」 
蝶番の軋む音につられて視線を向けた先には、青の予想通り、エースが居た。
「おかえり」 
青は素っ気無く言ってから、PCへ視線を戻した。 
幾つか開いていたブラウザを纏めて閉じてから、体を後ろに反らして伸びをする。
「収穫はありました?」 
片手に提げていたコンビニの袋をテーブルに置きながら、エースが尋ねる。
「全然。やっぱ情報屋とか当たらないとダメだなこりゃ」 
特に意味無くテレビに視線をやりながら、青は肩を竦める。
「情報屋、ですか……。ガウィーさん、今何処に居るんでしょうね」 
エースも倣うようにテレビを見る。 
画面の中では女性キャスターがテロのニュースを淡々と伝えていた。
「俺も同じこと考えた。火星には来てるだろーけどなぁ。」 
「火星って言っても広いですからねぇ……」
なんとなく沈黙が落ちる。 
しばらくお互い無言で考え込んだ後、
沈黙に耐えられなくなった、というわけではないだろうが、エースが口を開いた。
「そういえば、イルヴさんとシェリアさんは?」 
「イルヴさんは散歩。一緒に行こうとしたら即座に却下された」
物悲しそうに言う青に、エースは当然だろうな、と思いつつ、口には出さないでおいた。
「んで、シェリアは飯の支度してる。」 
言われてみれば、キッチンの方から物音が聞こえる。 
たまに機嫌が良さそうな鼻歌が混じっているのは、今の所何も無いが注意しておいたほうがいいかも知れない。 
視線だけ向けていたテレビのニュースは、いつの間にか動物園で生まれた小動物の赤ちゃんが画面に映し出されていた。 
特に見る気も沸かないし、かと言ってすることも無いので夕食の支度の手伝いでもしようかとエースが思っていた、その時。
轟音が、店を揺るがした。
「なっ!?」
何の前触れも無く響いたその大音響に驚きながら、
咄嗟にキッチンを――というか、シェリアの居るほう――を見るが、そちらに特に変化は無い。 
それに、よく考えれば音は店の外でしたような気がする。 
扉のほうを見ると、既に青が扉を開けて外に出る所だった。エースもそれに続く。
「何だ、コレ……」
青が呟く。当然の反応だろう。 
何せ、店の前の道路が、蜘蛛の巣の如くヒビ割れが入り、
その中心には獣の爪跡のような、ただそれより何倍も巨大な破壊跡が有ったのだから。
《わーっひゃっひゃっひゃっひゃっ!!》
状況の飲み込めない青達に追い討ちをかけるように、その笑い声は、上空から聞こえてきた。 
そういえば心成しか辺りが暗い。 
慌てて上を見上げた『青』達の視界に入ったのは、 
赤い夕空に一箇所不自然に浮かぶ黒い影… 
気球であった。 
実際にはそんなに大きくない小型の気球なのだが、 
流石に真上ともなるとかなりの威圧感がある。
執筆者…is-lies、鋭殻様、you様

「見ろ!人がゴミの様じゃ!」 
オマイはムスカか!?
と突っ込みを入れたくなりそうな事をのたまわってるのは、 
気球に乗っているチビで痩せで白髪なマッドサイエンティスト風の男であった。
「はっ、全くで御座いますラムノーバ博士」 
ボスと並ぶ側近はボスよりも大柄という法則に則った長身の側近Aが答える。
「こー…何じゃ。世界はワシのもんってな感じじゃな! 
 ノって来たから一曲演るか?」 
マッドサイエンティストことラムノーバがマイクを取った。

 

  『革命紳士』詩・曲 ラムノーバ・ゴウィルド
「ワンダバダバダバ ワンダバダバダバ ワンダバダバダバ 
 Expert 孤高の天才ラムノーバ 
 Execution 月月火水木金金 
 Explosion 胸に秘めたるこの想い 
 ラはらっきょのラ 
 ムはムツゴロウ先生のム 
 ノは濃縮トルエンのノ 
 ーはーのー 
 バはバングラデシュのバ 
 哀愁の背中で漢は語る さあ今こそ時が来た 
 行け我等が発明王 行け我等が救世主 
 行け我等が革命紳士 行け我等がラムノーバ 
 (俺の後ろに立つな ヤケドするぜ) 
 シャバダバダバダバドゥッビドゥッバー 
 歯ぁ磨けよ 風呂入れよ また来週 
 来週を皆で待っていよう 彼はまた来る革命紳士ラムノーバ」
何か歌いながら奇怪に…或る意味艶かしくカクカク踊るラムノーバ達。 
だが悲しいかな、遥か上空の彼等の踊りを見た者は居ない。
執筆者…is-lies

大音量で演じられたアフォ歌を聴き、 
さしもの『青』達も一瞬の思考停止を余儀無くされていた。 
「………何だありゃ?キチ○イ?」 
「……と、取り敢えず怪我人が居ないか見……」
やっと立ち直った彼等が一歩前に出た其の時、
《ほーれ、革命の礎となれぃ。 
 て〜んば〜つ、てっきめ〜ん♪》
気球からエースの眼の前へ、 
ドクロマークの付いた黒い球体が投じられた。
「……あの色、形……あれってやっぱり…」 
落ちてくる球体を見たエースが呟く。 
「ああ、爆弾だな。」 
「………」 
二人は沈黙する。 
そして、
「逃げますよッ!!」
すぐさま落ちてくる球体から離れていく。 
落ちてきた球体……(言うまでもないが)爆弾は、
先程まで二人が居た所に落ちると、閃光を発し、爆発した。 
爆発音が響き、辺りに砂煙が立ち込める。 
その見かけ以上の破壊力に、エースと『青』の頬に汗が流れる。
「一体何なんですか……」 
エースが呟く。
《むむむ……吹き飛ばし損ねたか。ならばもう一発!》
再び気球から爆弾が投じられる。しかし今度は一発では無く、何発も、雨の如く。
「ぬ…ぬおおおをおぉ!!?」 
「うわぁあああ!?しゃ…洒落になってない!」
次々と爆発する爆弾の雨の中に入ってはひとたまりも無い。 
屋根のある家の中へと慌てて逃げ込む2人。
其れを見下し愉快そうに大笑いをするのは件のマッドサイエンティスト。 
《わーひゃひゃひゃひゃひゃ!! 
 聞いておるか下界の愚か者共〜! 
 ワシの名はラムノーバ!ラはラッパのラでムは虫歯のムでノはノリスケさんのノで……》
「ラムノーバ博士。先程の歌と相違がありますが」
《おお、そうじゃったか? 
 まあ良いわ。よく聞け民達よ!! 
 今の世界は混沌としておる! 
 航宙機がジャックされたり、地球に破滅現象が起きたり、 
 火星に移民が溢れ、衛星が何か光ってたり、 
 燃えるゴミと燃えないゴミが分別されてなかったり、 
 ネオス日本共和国がアメリカの奴隷になってたり、 
 デリング大統領が魔女フェチだったり、サッチーが行方不明になったり、 
 ワシの髪の本数が減って来たり、コンビニの弁当が賞味期限切れてたり、 
 今の爆弾をマトモに喰らってくれない奴が居たり…ッ!! 
 ……そう!この世に迫った終末的危機の仕業に他ならぬ! 
 この乱れきった浮世を正し、世界を救済出来るのは、 
 救世主たるラムノーバ・ゴウィルド…… 
 詰まりはこのワシしか居らんのじゃァーーー!!》
執筆者…is-lies、鋭殻様

  イルヴ何でも屋居間

 

「あ〜…やっぱフレーグちゃんはええわ〜」
調理も今は煮えるのを待つのみ。シェリアは居間で横になり、 
歌っているアイドルが映し出されたTVを見ていた。
「確かこの子もアプリットプロダクションやったな。 
 うちがアプリットに入ったら色々教えて貰うかも知れへんわ」 
アテネでのオーディションはまだまだずっと先。 
併し彼女の中では延期となってしまったも同然なアイドルへの夢に思いを馳せ、 
ぼーっとTVの画面を見ていた其の時、 
彼女の耳にも漸く外からの爆音が聞こえて来た。
「な、なんや?! なんでいきなりテレビが消えるんや?!」 
どうやら、今の爆発によりテレビが壊れたらしい。起き上がり、テレビをペチペチと叩く。
「あああああ、せっかくフレーグちゃんの勇姿を見ていたのに… 
 なんでやぁ〜 テレビ局のお兄さん。うちがなんか悪い事したんかぁ〜」 
まったくもって見当違いの事を言っている。しかし、いつもの事だ。
「もしかして、うちの日ごろの行いが悪いから… えぇっと、何をやったっけ… 
 あ、そういえば一週間前ネコさんのしっぽを知らずに踏んだ事があったような… 
 いや、それとも5日前にアリさんの巣にチョコレート(特大サイズ)を入れた事とか…」 
『今まで自分が覚えている限りの悪事』を思い出している最中に、もう一度爆音が響く。
「というか、さっきからなんやの。 ドッカーンドッカーンって… 
 うるさいったらあらへんわぁ…」 
今更とも思えるセリフを言いつつ外へと出て行くシェリア。
執筆者…is-lies、深樹様

彼女の眼の前に広がったのは、 
まるで玩具箱を引っ繰り返したかの様、 
辺り一面に瓦礫が散乱した、変わり果てたイオルコスの風景であった。 
其の中には爆風で吹き飛ばされ、 
片膝を突く『青』達の姿もあった。
「あー、アオさーん。あかんよ。 
 店が変な場所に来ちゃっとるわ。 
 イルヴさん帰って来たら困るんとちゃうか?」
「何訳解んねェ事言ってやがる!? 
 其れよりも早く店の中に隠れろ!危険だ!」
《…という訳で今日からこのイオルコスは、 
 SeventhTrumpetに代わってこのラムノーバが拠点として支配するッ! 
 イオルコスなんてダサい名前も止めて、 
 ラムノーバランドというイカした名前を付けてやる! 
 このラムノーバランドが新たな火星の中枢となるんじゃーーー!! 
 ……反対する奴はこーね》 
更にラムノーバが爆弾を投下する。 
体の痛みを押し退けて『青』とエースが店の中へと避難する。 
其の途中エースの方はシェリアを抱える様にして店内へと連れ込んでいた。 
『青』の性格からしてシェリアに触ろうとはしないだろうという予想に基づいての行動だ。
《わーーーははははは!!溜まらんなァ、この高揚感!!》
「あんの野郎…調子こきやがって!!」 
『青』がヒボタンXをマシンガンに変え、 
爆発の隙をついて上空の気球に向って発砲すると、
呆気無く弾丸の雨を受けた気球が徐々に墜ち行く。
「へっ!様ぁー見やがれ!!」
「…やっぱり凄いですね『青』さん。 
 まだ警察やSeventhTrumpetは動いてないみたいで、 
 見た目程被害も大きくはなさそうですし、 
 大事になる前にけりがついて良かったですね」
エースがそう言っている間にもう気球はイルヴ何でも屋前に不時着した。 
其の中には2人の男が両袖に腕を突っ込んで仏頂面で突っ立っている。 
見たところ武器を隠し持っている様にも見えず、殺気も感じない。
「へっ、諦めたか? 
 …ったく電波系は大人しく部屋の隅でブツブツ何か言ってりゃいーんだよ。 
 ………ってオイ?さっき演説かましてたラムノーバってなどいつだ? 
 …………………声からして……ジジイだよな?」
『青』の眼の前に居るのはどちらも若い長身の男。 
声でも変えていたのかと『青』が訝しんだ其の時…
ズドドドドドドドドドドッ!!!
「なぬぅ!?」 
「これは!?」 
「な…何や!?」
いきなり『青』の傍の地面が爆ぜた。 
爆風に吹き飛ばされながら『青』が上空に見たのは、 
黒い箱型のジェット噴射装置を背負い、 
『青』に向って異様に捻れた三椏の槍を構えたラムノーバ老人の姿であった。
「わひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!!わしの兵器の力を見よぉぉぉっ!!! 
 エクスプロード・ランス・ザ・メシア9改! 
 ……ゆーとくが特許じゃぞ!?パクるなよ!?」
「ちっ、ジジイのクセに飛んでんじゃねー!!」
『青』が再び銃を向け様とした其の時、アテネの空から4つの人影が向って来た。 
其れ等は凄まじい速さで飛び、 
あっという間にラムノーバの前まで来て滞空する。 
翼を持った4人の人間… 
天使… 
エースはそう錯覚した。 
だが彼(彼女)等の着ている派手なスーツやヘルメットを見、 
一瞬だけ浮かんだ馬鹿げた案をすぐさま一蹴する。
執筆者…is-lies
よく見ると子供くらいの背丈しかない4人の翼ある者達の内、 
とりわけ小柄な1人が前に出て、少年の様な声で叫ぶ。 
「オイお前等、何やってんだよ!? 
 この大惨事の原因はお前等か!」
「バカアレクセイ!何話し掛けてンのよ! 
 私達の目的は状況の確認………」 
此方は少女の様な声だ。恐らくどちらも…或いは全員子供なのだろうか。
「ってもよ姉ちゃん、コイツ等、 
 STのイオルコスを此処まで……」
いきなり現れたそんな彼等のやりとりを眺めつつ、 
先程墜落した気球に乗っていたラムノーバの側近Aが嘲笑する。 
「ふっ…SeventhTrumpetの特殊部隊『アークエンジェルズ』か。 
 あんなガキ共がメンバーだったとはな…高が知れる。 
 ラムノーバ博士!遠慮は要りませぬ! 
 偉大なる貴方様の理想に沿わぬ愚か者に裁きの鉄槌を!」
「うははははははっ!解っておるわ側近A!だが少し待てぃ! 
 小娘達!このイオルコスがワシ…ラムノーバのシマになった事を、 
 SevenTrumpetやアテネに伝えて回るが良い! 
 そしてワシがこの俗世を浄化・救済する事を知らせよ!」
「な…何訳の解んない事を………」
「調子こくなよ!お前等なんか俺達だけで十分だ! 
 姉ちゃん達、アークエンジェルズ本隊を呼ぶまでもねぇ! 
 俺達だけで片付けちまおうぜ!」
お前等…そう言ったアレクセイの… 
ヘルメットのバイザー越しにではあるが、 
彼の眼は『青』達をも睨んでいた様にエースは感じ取れた。
「あかん… あかんわ…… 大変なことになってもうた…」 
 ぽつりと呟くシェリア。 
「ええ… どうやら彼らはラムノーバ達と一緒にこちらをも攻撃するつもり……」 
 相槌をうつエース。しかし、彼女の返答は 
「………うちは…なんて事を…」 
まるでこの騒動が自分のせいで起こってしまったかのような発言を返した。 
しかし、この状態に至ったのは明らかに 
あの自称革命紳士、ラムノーバがこの騒動を起こしてしまったせいであって、 
彼女に非はない。むしろエース達と同じ被害者になるハズだ。

 

 

さて、ここで時をさかのぼって彼女の思考回路を探ってみよう。
『あー、えらい派手な格好した子どもたちやなぁ… 都会の子ってみんなこうなんやろか… 
 背中に羽根があるけど… あれは今時話題の『こすぷれ』っちゅーのなんやろかー 
 空も飛べるなんて最近の都会っ子は発達しとるんやなー
 特殊部隊……? 戦隊モノの一種なんかな…
 せやったらこれってテレビ番組の最中なんかなぁ… せやけどカメラは見当たらんし…
 側近AとかBとか名前が付くのって大抵悪役なんやろなぁー…
 やっぱり戦隊モノなんやろか… なんか悪役っぽいセリフ言ってるし…
 片付け… 片付けると言うたら、うちはさっき確か料理をして……』

 

 

「うち……鍋に火ぃつけたまんまやった…! 
 今から店に帰っても間に合うんやろか……」
「………無理でしょうね…」 
先ほどの爆撃で鍋の中身すら無事かどうかも怪しい。 
第一、相手がこちらをも敵視している以上、店の中に戻れる訳もない。
「この人、緊張感ってものがないんだろうか…」 
軽い脱力感に見舞われるエースだった。
執筆者…is-lies、深樹様
「オラオラ、行くぜ〜!」 
「あーもー仕方無いわね〜!」 
アレクセイ達は4手に別れ滑空する様にして首謀者ラムノーバへ襲い掛かる。 
ラムノーバの方はというと手にした槍… 
エクスプロード(略)を振るって発生させた衝撃波で、 巧くアレクセイを牽制し接近戦を避けている。 
だが4人のアークエンジェルズも見た目通りに機動力が高く、 
衝撃波を余裕で回避しながら何とか隙を伺おうとしている様だ。
「博士、今援護致し……ッ!?」 
側近達が気球から銃器の様なものを取り出し、アークエンジェルズを狙おうとするが、 
此方は『青』達にも手の届く範囲…エースの手刀で簡単に気を失う側近AとB。
「ん?何だお前等、仲間割れ?」
「ちげーよ、俺等は敵対してるだけだ! 
 其れよりお前、余所見すんな!」 
『青』の科白を受け、何とか間近に迫った衝撃波を回避するアレクセイ。 
今の会話で或る程度誤解は解けただろう。後は目前の脅威であるラムノーバを排除するだけだが… 
4人のアークエンジェルズと、背負ったジェット噴射装置で飛び回るラムノーバは、 
目まぐるしく位置を変え、入り乱れ、 
更には『青』達の視界に入るのもほんの一瞬であり、 
此方から狙いなど碌に付けられそうに無い。 
となれば今の『青』達に出来るのは、4人を応援する程度… 
だが、羽を手裏剣の様に使用する4人の線攻撃に対し、 
ラムノーバは広範囲を一気に攻撃する衝撃波攻撃…徐々に4人が劣勢となっていく。
「ありゃヤバイなー」 
「あー」 
「呑気に呟いてる場合じゃないでしょう。どうするんですか?」 
エースは言いながら、テキパキと先ほど伸した側近二人組を店から持ち出したロープで縛る。
「お前も充分呑気だと思うがね」 
青は横目でその様子をチラと見て、呆れ気味に呟く。 
エースは反論を思いつけないのか、むぅ、と小さく呻いた。
「けど……」 
「おおー」 
「あぁ、まぁ、確かに……」 
彼等は何処か白けたような目で頭上の空中戦を見上げ、
「『アレ』ですから……」 
「『アレ』だからなぁ……」 
と、その言葉を見事ハモらせた。 
そう、敵はなんといっても「わーひゃっひゃっひゃ」とか奇声を上げる電波なジーサンである。 
爆撃に晒され、攻撃対象になってる間はともかく、
一時といえど当事者から外れ、客観的立場になってみると
「なんかすっごいアホらしくなってくるよな」 
「うわぁ」 
「ですね。 
 ……あーゆーの、なんていうんでしたっけ」 
「んー? 『バカと天才はなんとやら』、とか?」 
「ほぇぇ」 
「いえ……ああ、そうそう『バカに刃物』」 
「……お前、結構言うね」 
「そうですか?」 
エースは本当に意外だという風に目を瞬かせる。 
青は更に視線を移し、
「ところで」 
「あ〜っ」 
「シェリア、さっきからうるさい」 
「へ?」 
エースの隣で、上空を見上げながら奇妙な声を上げていたシェリアが、
さっきのエースと似たような表情で振り返る。
執筆者…is-lies、you様
そんな話をしている間にも、上空の4人は更に追い詰められていた。
「うひゃひゃっひゃ!! 
 最早このわしを止められるモノはおらぬ! 
 わしこそ救世主! 救世主は世を救う者であるからして、わしに世を救えぬハズがない! 
 そーゆーワケで! わしは負けぬわっ!! 
 わーひゃっひゃっひゃ!!!」
ラムノーバのほうには演説をかます程の余裕すら生まれていた。 
まぁ、本人が思ってる程余裕ではないのか、内容は意味が通っていない。 
もっとも、余裕無い状態でなくとも、電波な演説しかしていなかったが。
「むぅ、その通りや……!」 
「納得すんな」 
その電波な演説に何故か納得するシェリアへ、冷たくツッコミを入れる青。
「それより、ヤバくないですか。 
 『本隊』ってのを呼ぶ余裕は無さそうですよ?」 
エースが不安げに言う。 
そう、彼等とて何の考えもなしに呑気にしていたワケではない。 
さっき四人組の一人が言った、『本隊』という言葉に期待していたのである。 
呼ぶまでも無い、と豪語していたが、
流石に自分達が不利になれば助けを呼ぶだろうと踏んでいたのだ。 
だが、既にその間も取れない程追い込まれているようである。
「ヤバイな。けど、こっからじゃ何も……」 
言いかけた青の動きが止まる。
「?」 
視線を向けられたシェリアは?マークを浮かべた。 
対して青は、ニヤリと口の端を歪める。
「歌え、シェリア」 
「はぇ?」 
彼女はただキョトンと、青の表情を見つめた。
「ちょ…ちょっと『青』さん、 
 イルヴさんから言われた事忘れたんじゃ…?」
シェリアが強盗ゴレティウを謎の力で撃退してからまだ数日しか経っていない。 
然程殺傷性の高い能力ではなかった様だが、其れでも不確定要素は山程ある。 
実戦で下手に能力を使用すれば余計に状況を悪化させるだけだという事をエースは理解していた。
「忘れてねーよ。でもこれはチャンスだぜ。 
 あのデブ野郎を倒したシェリアの力ってのがどんなのか… 
 お前だって興味無い訳じゃないだろ?」
「そ…其れはそうですけど。だからって……」 
確かに『青』の言う様にエースも、 
身内が本人にも自覚の無い謎の能力を持つ事は危うく感じていた。 
一緒に暮らしているのだから或る程度の情報は得ておきたいところだ。
「何より、指咥えてアイツ等が負けるのを見てるよかマシだぜ! 
 さぁシェリア、歌え。兎も角歌え。何が何でも歌え。どーでもいーから歌え」 
一方の『青』は好奇心丸出しで、一気にシェリアへと捲くし立てる。
「んー、いきなり歌え言われても… 
 何歌ったらええのかさっぱりや」
「うーん、取り敢えずこの場を何とか出来そうな歌…は?」 
イマイチ困惑気味なシェリアにエースが提案する。 
彼としても『青』の意見には賛成半分反対半分。 
取り敢えずは自分達が出来るだけの事をやるのが最良と判断したらしい。
「あー、ならこんなんどーやろ? 
 えっと……こほん」 
瓦礫の舞台へ上がり、今尚上空で激戦を繰り広げる5人をバッグにシェリアが歌い出した。
「独〜りぼ〜ち〜で貴方を〜待つ〜♪ 
 時計〜の〜針が〜静〜かに〜時を紡ぐ〜♪シランス♪ 
 静寂〜に〜包〜まれ〜る〜♪世界〜と僕〜の〜心〜♪シランス♪」
「!!?」 
「!!」
執筆者…you様、is-lies
瞬間、静寂が辺りを支配した。
爆音も泣き声も悲鳴も怒号も全て消え去った。 
『青』達もアークエンジェルズもラムノーバですら、 
何が起こったのかまるで解らないという困惑の表情を浮かべ、 
金魚の様に、何の言葉も紡がぬ口をパクパクさせる。 
シェリアの方も似た様な状況だが、彼女は歌う事に集中している為か、 
自分の口が全く声を出していない事にも気付かず、声無き歌を歌い続けている。 
普通は自分の歌声が無くなったら直ぐ気付きそうなものだが、 
其の普通をシェリアに当て嵌めるとキリが無いだろう。
(こ…これが……シェリアさんの…能力 
  でも…あの強盗を撃退したっていうものとは違うみたいだけれど… 
  ………まさかコントロール出来ていないのか?)
(ちょ…どうなってるのよアレクセイ!?)」 
「(…わ…解んねぇよ!)
(ぬぬぬぬ!?何じゃこれは? 
  ワシのスウィートプリティーヴォイスが台無しではないか!?)
慌てふためく一同だが、やはり一言も発する事が出来ずうろたえるばかり。 
だがそんな中、アークエンジェルズの4名だけは、 
或る程度、落ち着きを取り戻している様にも見える。
(あ、そだ。貰ったーーー!!)」 
「(へ?あ……ぎゃ〜(棒読み))
アレクセイが放った不意打ちの羽手裏剣で、 
背負っていた飛行装置を破壊され、真っ逆さまに落ちてゆくラムノーバ。
(姉ちゃん達、頼んだぜ!)」 
「(こんのォ〜良いトコ持ってって〜!!)
まるで打ち合わせたかの様にアークエンジェルズ他3名が急降下し、 
落ち行くラムノーバを保護拘束する。恐ろしいまでのコンビネーションの良さである。
(お!やったぜアイツ等!)
(やった!…けど……あの… 
  僕達、いつまでこのままなんでしょうか?)
確かにこのままではいられない。 
併し具体的にどうすれば良いのかも解らずに困惑する『青』達に、 
アークエンジェルズの1人が歩み寄る。 
(ねぇ貴方達)
耳を介さず、『青』達の頭の内へと直接声が響く。
(?い…今お前ら喋ったのか? 
  確かに今聞こえた…いや…頭の中に…直に…)
テレパシー…詰まりこれこそがアークエンジェルズ4人の能力なのだ。 
これならば声を出せなくなった状況でも即座にやり取りが出来るし、 
先程の様な連係プレーも軽々と行えるのだろう。 
だが、ラムノーバとの交戦中でも此方を彼の仲間と勘違いした事から、 
此方の意志を読み取る事は出来ないらしい。 
多分、意志を伝えるだけの能力なのだろう。
(取り敢えず、この状況何とかしてくれるかしら? 
  原因、其の娘でしょ?其の娘が歌ってからこうなっちゃったんだもの)
(いや…僕達にもどうすれば良いか……)
(ほら、このままじゃ不便でしょ? 
  …?何困った顔してるの?もしかして解らないとか?)
やはり此方の意志を読むテレパシストではないらしい。 
身振り手振りで何とか意志疎通を図るが、そうそう巧くいく筈も無く…
(はぁ…困ったわ。…まあ、取り敢えず… 
  私達が来る前に或る程度敵戦力を殺いでくれていたみたいね。アリガト。 
  でも重要参考人としてちょっとSeventhTrumpetまでご同行願うわ)
執筆者…is-lies

こうして『青』達は、ラムノーバを捕縛した4人に連れられ、 
最寄のSeventhTrumpet施設へ行く事となった。 
途中、シェリアの能力の効果が消えたのか、喋り出せる様になってからは、 
『青』は愚痴を零しまくるわ、ラムノーバは電波を垂れ流すわ、 
シェリアはまだ歌っていたいとか言うわ、エースの頭痛を深刻化させる。 
警察の尋問を終え、漸く開放された時には既に夜は明けており、 
目の下にクマを作って朝日の出を拝んでしまう破目となってしまった。

 

「ま、兄ちゃん達も災難だったな。 
 でも…まさか大名古屋国大戦の勇者様がイオルコスに居たなんて初耳だな」
SeventhTrumpet施設から出た『青』達を、 
昨日のアークエンジェルズの4人…其の一人にして唯一の男性… 
アレクセイ・ピメノス少年が出迎えるが、 
『青』の方は不満たらたらな態度そのままに再び愚痴る。 
「ったく、やってられないぜ。 
 テロを食い止めようとしたのに拘束されちまうなんてよ」
「だからそりゃ悪かったって。けど解ってくれよ」 
 『有難う御座いましたじゃあさようなら』じゃ済まされないんだ。 
 其れにあの時は…ほら、そっちのシェリア姉ちゃんが起こした事件もあったし」
「え〜?うち何も事件なんて起こしとらんでー」 
能天気に言い放つシェリアは、事情を理解したSeventhTrumpetが何度説明しても、 
一向に、自身が能力者である事を自覚せず、 
SeventhTrumpet側は、何を言ったところで堂々巡りになると結論し、 
現状での保護者である『青』達を注意するに留まった。
「……ま、居候の身だってゆーし、くれぐれも監視は怠らないでくれよ? 
 (でも惜しいよな……結構綺麗な歌声だったし…パルテノン出れば其れなりに…)
「あーはいはい。耳がタコ踊り」
こうして『青』達は無事にイルヴ何でも屋へと帰還出来た訳だが、 
休む暇を与えず、新たな仕事が彼等を待っていたのだった。 
やはりこの店には碌な依頼が来ない。
執筆者…is-lies
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