リレー小説3
<Rel3.『青』編6>

 

  ホテル・アステレクメン

 

「………用意は良いか?」 
支度を整えてロビーへと出て来たレオン&ライハを出迎えたのは、 
其れなりに身嗜みに気を付けた積もりであろう『青』とエースだ。
「あれ?貴方達も来るの?」
「ちょっと俺達も聞きたい事があってな。 
 其れに折角、情報通と御近付きになれそうなんだし」
『青』が知りたいのは無論、前支配者… 
…そしてLWOS・SFESの仔細情報であったが、 
エースの方は仲間である『青』にもハッキリとはさせず、 
知りたい事があると言っただけで付いて来たのだった。 
恐らく彼も『青』同様、あまり話したくない事情があるのだろう。 
其れに付いて『青』がどうこう言える筈が無かった。
「………まあ良い。確か時間は7:30丁度だったな。 
 …場所が難だ……早めに行くとしよう…」

執筆者…is-lies


  喫茶店バネン・エフルム前

 

7:30分約5分前にレオン一行は指定の喫茶店前に到着していた。 
ガラス越しに窺える内装は割と落ち着いた印象があり、 
細かい箇所にも掃除が行き届いた小奇麗な感じの店である。 
情報提供に応じてくれたリゼルハンク社員はもう来ているのだろうか。 
目印としては在り来たりながらも、 
御互い薔薇を胸ポケットに飾る事としているが……
「…居た、多分アイツだ」
店内の客の中では、レオン達を除き唯一薔薇を胸に飾った人物… 
其れは一行の予想に反して女性だった。 
どうやら相手もライハ達に気付いたのか、 
視線を窓の外へ向けたまま、自分が座っているテーブルを指差す。 
席に着けという意味だろう。 
レオンを先頭としてソファーに座る一行。 
少々キツいが情報提供者の隣に座る訳にもいかない。
「…遅刻しなかった事は結構。 
 ですが人数は2人とお聞きしていました。 
 4人ならば連絡頂ければもっと広い場所でお話し出来たのですが…」 
掛けている黒縁眼鏡の位置を指でくいっと直し、 
4人を品定めするかの様な眼で凝視する女。
「あ、お気遣い無く。 
 人数の指定はされてなかったから付いて来ただけで… 
 ああ……お二人とも先にどうぞ」
「…八姉妹の結晶についての情報……知っている限りで良い。 
 ……………幾ら必要だ?」
「……ご心配無く。貴方々に代価を要求する事はありません。 
 既にイルヴ・ロッド・ヴェインスニークとは話をつけていますので。 
 ………全部で8つある八姉妹の結晶は其々… 
 ワイズマンエメラルド、カオス・エンテュメーシス、 
 セラフィック・ラヴァー、ワン・オブ・ミリオン、 
 シークレット・ウィズダム、 
 ファンタスティック・マイティ・ハート、 
 イルフィーダ・トリスメギストス… 
 後、早々に消失してしまった為、 
 正式な名も付けられていない1つですが、 
 これには便宜上LostGoddesという名が付けられています。
 ワイズマンエメラルドは比較的巨大な結晶ですね。 
 大名古屋国大戦後に火星の一組織が入手したそうです。
 カオス・エンテュメーシスはとても小さな菫色の結晶ですが、 
 これが最後に確認されたのは日本皇国の皇居金閣寺… 
 其の後の所在は情報が錯綜していて確かな事は言えません。
 LostGoddesは其の色形大きさ所在に至るまで全て不明。
 セラフィック・ラヴァーも同様。名前のみの知られている感じですね。 
 唯、此方は意図的に情報が抹消された節があります。
 ワン・オブ・ミリオンは形は黒い八面体で大きさはリンゴ程度です。 
 此方はアテネの独立記念博物館に展示されていますが… 
 …まああまり近寄らない方が賢明ですね。不幸を齎します。 
 又、見た目以上に重量があり、もはや重機でも動かせないでしょう。
 シークレット・ウィズダムは… 
 灰色のクリスタルの上に緑色の線を走らせた感じですね。 
 アメリカが火星に来たのと一緒に持ち込まれ、 
 今はアメリカ大使館内にあると噂されていますが… 
 所詮噂は噂。あまり信用の於けるものではありません。
 ファンタスティック・マイティ・ハートは 
 ワイズマン・エメラルドに次ぐ巨大さがある赤い結晶です。 
 現在はSFESという闇組織が掌握しています
 最後のイルフィーダ・トリスメギストスですが… 
 どうも此方は既に火星帝の手に渡っているみたいですね。 
 大きさはファンタスティック・マイティ・ハートと同じ位の蒼い結晶。
 八姉妹の結晶はどれも無限の魔力を秘めていると言われ、 
 其れを利用したエーテル技術の凄まじさは、 
 大名古屋国大戦の例を取っても容易に御理解頂けるでしょう」<Rel3.ao5:6>
執筆者…is-lies
「ふむ…成る程な。大半が何処かの組織の手に落ちている訳か。」
「そうです。……私が知っているのは此処までです。」
「そうか……解った。感謝する。」
 女はレオンと短い会話を交わし、そして『青』達の方を向いた。
「さて……次は貴方達の番です。」
その言葉に、『青』とエースは緊張する。 
刹那、時間が止まったように思えた。 
しかし、それも一瞬の事であった。
「………『青』さん、先にどうぞ。」 
エースの言葉に、『青』は黙って頷き、目の前に居る女を見て、一言、言った。 
「前支配者、SFES、LWOSについての情報を…教えてくれ。」
レオンとライハが『青』の顔と女の顔を交互に見遣るが、 
其れに気付けた者は此処に居なかった。
「LWOSはコロニー連盟所属の生体兵器研究機関です。 
 其の規模は最早1国と言っても差し障りは無いでしょう。 
 つい最近、リゼルハンクの傘下に収まりましたが… 
 詳しい事はインターネット上のHPでも御覧下さい。 
 前支配者は古代火星神話の魔物ですね。 
 確か最近は何か噂がありましたが、私は詳しくありませんので、 
 プロかフリーか…まあ兎も角、術士の類に話を持ち掛けてみては如何です? 
 SFESは大規模な闇組織… 
 …そうですね…既に各国公認の悪党といったところでしょう」
「公認の悪党だぁ?」
「ええ。どの国にでも暗部というものはあるのですよ。 
 其処に巣食っているのがSFESという訳です。 
 各国政府要人とSFESとの癒着は相当深いものがあります」
「……ちっ、これだから政府ってのは」 
以前から反政府的思想の持ち主だった『青』が、 
手にした水のコップをドンとテーブルに叩き付ける様にして置く。
「そう言わずに。奇麗事だけで世界は機能しませんよ。 
 其れにこれはSFES以前からの話でしたしね…」
「…マハコラとかいう奴ですか…?」
「…………良くご存知ですね。其の通りです。 
 遡ればカルナヴァルという組織であり、 
 又、更に以前はエンパイアとも呼ばれていましたが…」
「んなのはどーでも良い。 
 其れより…そのSFESってのは何やってんだ? 
 何かさっきから悪い組織ってイメージしかねーが…」
「……結晶能力の研究ですね…… 
 結晶学に於いては最大手でしょう。 
 能力の実験などと称して人殺し人攫いetc… 
 …まあ思い付く限りの悪行を働いています」
世界に結晶が齎されてからというものの、 
各国は挙って結晶科学に着手して其れを解明しようと試みた。 
そんな彼等にとって闇組織の非人道的研究は貴重だったのだろう。 
だが闇組織や各国の斯様な研究の成果の上に、 
今の安定した結晶能力、結晶技術があるのも事実。
「………… 
 …SFESの居場所は?」
「さて、其処までは…… 
 第4次大戦直後に火星に渡ったと言われますが… 
 まあ地球に残っている筈はありませんね。 
 案外、この近くに潜伏しているのではないでしょうか」 
女が少々投げやりそうな態度で答える。 
恐らく何も知らないから、聞かれて嬉しくないのだろう。
「まあ良いや。でだアンタ……リゼルハンクの人間だよな? 
 LWOS所長のバルハトロスが今何処にいるか知ってるか?」
「リゼルハンクの会社内に居ると思いましたか? 
 彼は現在、月面基地でコロニーのメンテ中です」
「………ちっ、月かよ…… 
 …ってコロニーのメンテぇ?」
「……………何か?」
「SFESと戦ったんじゃねぇのか?LWOS」
「噂の類では? 
 最近、戦闘演習があったとは聞きましたが」
兎も角、もう聞ける事は無さそうだ。 
『青』は一息吐いて… 
そして今自分が話していた相手が女と思い出し、 
少々顔を青褪めさせたのだった。 
ホモですから。
そして次はエースの番である。 
女の前に座り、深々と御辞儀をし、要件を言った。 
「火星古代文明について御願いします。」
執筆者…鋭殻様、is-lies

「はぁ……」 
帰りの路上でエースが溜息をつく。
「まあ、元気出せよ。
 あの女が言ってたように、別の場所当たればいいだけだし。な?」
「はい…」 
先程の返答はこうだった。
  「私は生憎、歴史学者ではありませんので、他を当たってください。」 
という事だった。情報通でも判らない事はあるのだろう。
しかし、エースは何かすっきりとしなかった。
情報が手に入らなかったのもあるのだろうが、質問をした際の女の表情が気になったのである。
その時、女の顔が少し強張ったのである。
『青』の時もそんな雰囲気だったが、あの時は単純に知らない事を聞かれて不愉快だった、というだけだろう。 
しかし、自分が火星古代神話について聞いた時は…
「…考えすぎかな。」
「あ?どうかしたか?」
「あ、いや、ちょっと考え事をしてただけです。」
「そうか。それにしてもよ、あの女。」 
『青』の言葉に、エースが驚いたように声を出す。
「え、『青』さんもやっぱり怪しいと…」
「キモかったな。」
「…。」 
エースは頭を抑える。自分の横に居る男がどんな人物が忘れていたのである。
「…貴方に何か期待していた僕が間違っていました。」 
エースが『青』の言葉に頭を抑えながら、小声で言った。
執筆者…鋭殻様
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