リレー小説3
<Rel3.『青』15>

 

 

 

  イオルコス南門近く 喫茶「アベル」

 

 

「本当に有難う」
「いいですよ。これが俺の仕事ですから。報酬も貰えましたし」
『青』がルークフェイドから金をもらう。
事は穏便に済みそうだと『青』は思った。

 

 

だが、事は穏便に行きそうになかった。
喫茶店の端の席には、青髪の眼鏡をかけた青年と法衣を纏った大男、
黒髪のピアスをした青年と緑髪で手に包帯を巻いた少年がいた。
ライズ、ヘイルシュメル、シルシュレイ、リヴンだ。
だが、奇跡的に『青』達と彼等はお互いの存在に気付かなかったようだ。
「樹川のバック、何だと思う?」
「どーせロクな組織じゃねーだろ」
ライズの問いにシルシュレイは窓の外を眺めながら答えた。
「サリスさんやクリルのことが心配?過保護だね。
 まぁ、サリス さんは変に能力が強化されているし、クリルの奴は今は戦闘不能だしね」
リヴンが無愛想に、しかし機関銃のように言う。
「うっせーこのウニ頭」
確かにリヴンの髪の毛はウニみたいにボサボサだ。
「そんなことより…諜報員の奴ら遅いな」
ライズが呟いた。
その呟きが聞こえたのか、ヘイルシュメルの携帯電話が鳴った。
「何だ?……そうか。分かった。…ライズ様、樹川を発見しました」
「兄?弟?」
「兄の方です」
そう告げると四人とも立ち上がり、『青』達に気付かないまま喫茶店を出て行った、
だが、その時現れたソレが、お互いを認識させてしまうとは誰が思うだろう?
突然、大量のエネミーが現れたのだ。 
「エネミー? こんなところに…
 まさか、こちらに気付いたのか…?」
「いや、違うね。
 こいつ等ガラクタばっかりだよ。
 きっとまたどこかのテロじゃないの。
 どうする?目障りなら消しとく?」
「放っとけ。
 それより今はアイツ等…
 いや、アイツ等というよりあのジジィの独断か…
 性懲りもなく樹川なんか遣してやがってたとはな」
「アイツ等の方こそ放っとけばいいじゃないの?
 下手に相手にすると気付かれるよ。
 今はイイ気になって付録で遊んでるんだしさ」
「…付録か…ククク…」
「何が可笑しい?」
「いや別に…」
店員も逃げ出し無人のカウンターの上に、ライズは勘定を置き、店を出た。
店の外でエネミーが暴れているのも、まるで戯れる子猫でも見るような様子だ。
エネミーといえば、
結晶の影響で異形と化した野生動物か、以前の戦争で造られた生物兵器の生き残り。
または、SFESのような非合法組織や一部の国の軍部などが極秘で開発しているものという認識が一般的だが、
いずれにしても、街中で突然出現するようなものではない。
ヘイルシュメルが最初に思ったように、
誰かを狙って何者かが街に放ったとも考えられたが、
それにしては低レベルであると彼等は判断した。
こんなものを相手にするバカはいないとばかりに、
落ち着き払って店を出て行く4人もまた異様に映った。
だが、バカはいた。
何を思ったかエネミーに向かっていくのは『青』である。
店の出口の小さな階段でぶつかりそうになりながら、シルシュレイ達4人と『青』はお互いに気付いた。
すり抜けざまに、一瞬眼が合い、互いに眼を丸くし数秒の沈黙、そして、
『青』はそのままエネミーに向かっていき、
シルシュレイはそれを横目で見ながら、微かに笑っていた。
執筆者…夜空屋様、Gawie様
10分後―――
「な、なんだ、あの青い服のヤツ」
「バケモンにも驚いたけど、
 アイツ、一人で片付けちゃったぜ」
群がる野次馬、散乱するエネミーの死体残骸。
『青』はその中心に立っていた。
周囲の視線を浴び、誇らしげな顔をしながらも、
内心、「またやっちまったぜ」と自嘲した。
シルシュレイ達の姿を探したが、当然彼等の姿はなく、
またしても警察の厄介になってしまうのではと、流石の『青』も焦りがこみ上げて来た。
「危険ですので、皆さん近付かないでください。
 直に警察の者が来ますので」
そう言いながら、
咄嗟にルークフェイドが後ろから袖を引き、群集を掻き分けて『青』を路地裏に連れ込んだ。
「し、しかし、貴方も見境がありませんね。
 あんなにバラバラにしてしまっては、
 エネミーを放った犯人の手掛りも無くなってしまいますよ」
「どうもすいません」
「はぁ…噂どおりと言えば彼女も…
 二人も相手にすると流石に疲れます」
「彼女?」
「いえ、すいません。こちらの話です。
 それより、先程の4人組は……」
「あぁ、アイツ等だ。SFES…」
「…やはり」
「すいません。アイツ等を追うのが先だったのに…」
「いえ、いいんです。
 追いかけてどうこうなるような相手ではないでしょうし。
 それはそうと、『青』さんアテネで他にも用があったのでは?」
「あ、そうだ、ある依頼で俺と同じ英雄を探してるんだが、
 今日その英雄の何人かに会うつもりなんですよ。
 でも、この依頼って、ひょっとすると……」
「なるほど……
 その件、もし詳しく分ったら、教えていただけませんか?
 そちらの依頼の違約にならない程度で構いませんので」
「分った。そうさせてもらいますよ」
「では、私もこの後がありますので、今日はこれで。
 あ、それと…サリ…
 SFESの事は一度忘れてください。
 勿論私も手は打ちますが、焦っては元も子もありませんので」
イルヴにもいつも酸っぱく言われている事だ。
分ってはいるのだが『青』にそれを実践できる自信はなかった。

 

 

 

 

ルークフェイドに別れを告げた後、
『青』は、地図を片手にアテネのスラムを歩いていた。
(…ガトリングガンズ、この辺なんだけどなぁ。
  しかし、まさか探してたガウィーの方からメールが来るとはな。
  まぁあれだけ警察沙汰になったら向こうが見つけてくれるわな。
  とりあえず、ユーキン、バンガス、キムラ、ジョイフルは確保だな。
  でも、イルヴさんに黙って来たのは不味かったかなぁ。
  まぁ情報が正解なら直連絡すればいいし、偵察偵察)
ブツブツと呟きながら、青は地図に示された目的地に到着した。
階段を降りると、入り口付近で一人の少年がうろうろしていた。
落書きだらけのドアに、どうにか『Gatling Guns2』の文字を発見し、
青は前の少年に話かけた。
「おい、ガトリングガンズってここだろ?」
「そうらしいんだが、やってんのかこの店?
 ……って、お前は…!?」
「ツヨシン…!?」
「青…!?」
「……と、兎に角、入るか」
執筆者…Gawie様
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