リレー小説3
<Rel3.『青』14>

 

 

 

ここはイルヴの何でも屋の前。
そこには骨の男が立っていた。
「あいつらの言いなりになる道理なんて無いしな…何か就職のクチでも見つけてもらうか…」
そうして扉をノックし、店に入った。
「…いらっしゃいませ〜」
かなりダルそうな声が響く。
 ─ん?この声…
そして丁度、目があった。
「ああーーーっっ!!」
「何でオマエがここにぃ!?」
『青』と骨の男が、再び接触した。 
「あの時はあのヘラヘラ野郎に邪魔されたからな!外に出ろ!」
「アンタからいろいろと聞きたいしな!」
早速店の外に出る二人。
そこへ、いつの間にそこにいたのか、エドワードが言った。
「店の前でやられると他のお客様に迷惑です。
 …シェリアさんやイルヴさんにも迷惑になるから、街の外にでも行ってくれ」
それを聞いたのか聞かなかったのか、二人の姿は一瞬で遠くに移動していた。
執筆者…夜空屋様

十分後。
「すいませーん!さっき髭面の男が来ませんでしたかー?」
店に樹川がやってきた。
「…樹川か。そいつならさっき来た。
 ところで…お前の身柄を確保してくれという依頼が来てるんだが」
「え゛!?」
「依頼主は樹川聖二。…どう考えても親類だな?」
苦虫を噛み潰したような顔のまま、樹川が言った。
「…それの報酬の倍額で、その依頼を取り消してくれません?」
「…お前、ハーフなんだってな。母方がギリシャ出身…」
エドワードが書類を棒読みするような口調で言う。
「父親はすでに他界、母親は持っていた結晶能力で周りから疎まれる…妹もいたらしいな…」
「…聖二が言ったんですか?」
「母親の名はマチルダ。そういえば八姉妹の一人に同じ名前の人物がいたような気がするな…」
センブリを味わって食べたような表情で、
「…口止め料、いくらですか?」
そう言った。エドワードは表情を変えず、続けた。
「マチルダ女史は殺されたそうだな。愛情かけて育てた息子に」
何かが切れた音がした。
樹川の握りこぶしから血が流れ落ちる。
「…それ以上は、あなたの人生を終わらせることになりますが」
だが、エドワードは無表情のままで、
「残念だったな。俺が死ねば今の情報を様々なところへ撒き散らすことになる。
 …そうだな、たとえばネットワークの世界とか」
「何が望みですか!?」
声を荒げる。だが、エドワードは一切の表情を、全く変えなかった。
「SFESの情報…生物兵器あたりがいいな。あと、例の黒丸についても教えてもらおうか」
「…いいでしょう。黒丸は『セイフォート』と呼ばれるものです」
「セイフォート?」
「…明日にでも書類を作り、渡します。ですから…」
「分かってる。…なるべくガセネタはやめてくれ。俺もいろいろと流すことになってしまうからな」
相変わらずの無表情で返した。

 

樹川が出て行った後、エドワードは思わず安堵の息を吐いた。
(何て殺気だ…あんなの普通に受けたら絶対負けてた…)
「す、すごいんやね〜エドさん…」
いつの間にいたのか、シェリアが驚きの眼でエドワードを見ていた。
「あ、ああシェリアさん…本当に今のは苦しかった…死ぬかと思った…」
どっ、と力が抜け、ソファーに倒れこむ。
「…そういえばシェリアさん、もう大丈夫なのか?」
「あ、もう大丈夫や。心配してくれはったんか?」
エドワードの頬が赤らむ。
「別に…」
執筆者…夜空屋様

  イオルコス郊外

 

すでに『青』と男の戦いは始まっていた。
「俺が勝ったらお前の前支配者の情報、全部教えな!」
「いいぜ。勝てたら、な」
それを合図に、両者は動いた。
『青』はヒボタンを鞭に変化させた。
「喰らえ!」
「いや、喰らわん」
不規則に襲い掛かる鞭を片手で受け止め、それを引き千切った。
だが、その引き千切ったヒボタンが変化した。
針の玉に。
「うお!」
「どーだ!いつかのギター野郎に言われて結構考えたんだよ!」
ちなみにそのギター男とはシルシュレイである。
「ふーん…だが、能力の使い方が単純すぎるぞ」
そう男は言うと、一気に間合いを詰め、『青』に衝撃を与えた。
「太極拳、小林拳、空手、柔道、居合い…今まで喰った奴のスキルの組み合わせだ」
『青』が間合いをとる。腹には何発もの拳の痕があった。
「く、喰う!?」
「俺は『セイフォートの骨』だ!まともに戦って生き延びられると思うな!」
「うっせぇボケ!」
『青』がメタルコントロールの力でもって、
針の玉を己の手の内へと戻し、長大な槍へと再構成する。
「そりゃお前だろ!」
対する髭面男も闘気を噴出させながら『青』へと駆け出す。
一瞬で間合いを詰めてきた髭面男の攻撃を、
棒高跳びの要領で避け、髭面男の後頭部に蹴りを叩き込む。
確実に脳を揺さ振ったであろう其の一撃をも気に留めず、
髭面男は笑いながら再び『青』の許へと迫る。
「ぐ…!」
男の指が『青』の腹に食い込む。
だが、すぐに異変に気付き、指を離した。
金属同士がぶつかり合う音がする。
「チッ…厄介だな、その金属操作能力。鼠捕りまで作りやがったか」
「当たると思ったんだがなー」
『青』の傷が回復する。金属の糸が身体を縫合していくのだ。
「しかも金属…喰えないなこりゃ」
「喰う…って、まさかお前もホモ?!」
「違うわい!…おい、お前「も」って、お前ホモかよ!」
お互いが構える。
「安心しろ。お前は好みじゃねぇ」
「へぇ…じゃあどんなのが?」
「ムキムキマッチョメンかな?」
(ゲ…)
『青』はヒボタンを巨大な剣に変えた。
それと同時に男の腕も変化した。
巨大な、骨のような腕。
「その腕…!」
「言ったろ?俺はセイフォートだ、って」
『青』が剣を振り下ろす。
男はそれを軽く受け止めようとした。
が、
「うお!?」
突然剣のスピードが上がり、男の異形の腕が地面に抉りこんだ。
よく見ると剣にブースターのようなものがついているらしい。
「少しはやるようだな…(ゲーティアは街で一発やっちまったからあと二発…)
「おりゃ!」
さらに『青』が鞭を振るう。
だが、男は異形化した腕を一度持ち上げると、一瞬で間合いを詰めた。
「これでも喰らってな!魔王復活≪ゲーティア≫!!」
その瞬間、『青』の中に何かが通り過ぎたような感覚が起こった。
そして、身体中に重いような感覚が伝わる。
次の瞬間、身体が崩れ落ちそうになった。
「おいおい…生きてやがる…」
「な、何を…しやがった…」
執筆者…夜空屋様、is-lies
「くそ…てめぇ…何だか良く解らんが
 奇天烈な技かましてくれやがって……」
「驚いたな。今のをマトモに喰らって……なぁ。
 …そうか。確かお前、改造人間だったんだよな。生身とは訳が違うか。
 だが其れにしたって生きてんなよ。死ねよ」
「やかましい!…くそ……何なんだ一体、
 そんな俺に恨みでもあんのかよ?」
『青』にとっては唯単に道端でぶつかって喧嘩しただけの相手。
それがこんな化け物染みたものであると誰が予想出来るだろうか。
挙句、イオルコスの家に帰っても
この髭面男すら意図せず偶然にも再会を果たしてしまう始末。
世間というのは其処まで狭いものではない。
何よりも一番最初に出会ったアテネと此処イオルコスにはそこそこ距離がある。
あまりにも凄まじいニアミスに、流石の『青』も眉を顰める。
「恨み?別に。ただ単にお前を食えば其れなりに力が付きそうなんでな」
「ケッ!改造人間でも何でもなく唯の化け物野郎か。
 ……だったらこっちも全力で………」
「動くな。『青』の兄ちゃん。
 そっちの髭面も。アテネじゃ随分と暴れたらしいじゃんか」
聞いた声に振り向くと、其処には以前会ったアークエンジェルズ見習いの少年アレクセイが佇んでいた。
更に言うならば『青』の手には、
何時の間にやらかミスリル金属繊維製のロープが巻かれていた。
一方、髭面男の方もアレクセイの姉3人によって取り囲まれ、
アテネで起した数々の破壊行為をつらつらと読み上げられている。
尤も人外の髭面男にはそんな事は取るに足らず、
戦いに水を差されたという怒りしか浮かばなかった。
「何だお前等?邪魔するなら女だろうが容赦しねぇぞ?
 最後の一発だが雑魚を一掃する程度なら容易いもんだぜ!」
髭面男に異様な気が充満していく。彼がゲーティアと名付けた、
一級の破壊力を有する攻撃能力が発動されようとしているのだ。
「来た、報告にあったアレ」
3人のアークエンジェルズが背の翼を展開して空へと飛び立つ。
其の侭、素早さでもって髭面男を攪乱するが…
「や…止めろ。アイツの技は……そんな事じゃあ……」
だが『青』のそんな心配を他所に、
髭面男はあろう事か全く見当違いの方向を向いて能力を発動した。
確かに3人のアークエンジェルズは素早い。圧倒的に。
だが其れでも髭面男がアテネの街や先程『青』に放った広範囲攻撃技であれば、
多少、照準がずれようが確実にアークエンジェルズを仕留める事が出来た筈。
にも関わらず、明後日の方向を向いて技を発動する髭面男。
其の隙を突いた3人が、彼をミスリル繊維製金属で縛り上げ、
睡眠薬か何かを嗅がせて完全に拘束するまで、そう掛からなかった。
「ほんじゃま、ご同行願いますかね」
呆気にとられる『青』を尻目にアレクセイが任務の完了を告げる。
こうして『青』は再びSeventhTrumpetの世話になってしまうのだった。

執筆者…is-lies

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