リレー小説3
<Rel3.『青』12>

 

  早朝

 

「…駄目だな………これといった情報ねぇぞ」 
名簿をパラパラ捲りながら答える『青』。 
そもそも『青』が欲しいSFESの情報と言うのは、 
憎き前支配者と関連するもの…其れだけに過ぎない。 
構成員の名簿如きでは大した事が解らないのも道理である。
「何とか使えそうなのってったら…この辺か… 
 前支配者管理職員のアヤコ・シマダ……女か? 
 ……こいつに会ってみる必要があるな」
其れに、直ぐ側で銃の手入れをしているエドワードが返す。 
「言っておくが、直接SFESの施設に乗り込もうなんて馬鹿な考えはよせ。 
 俺や翠羽…ああ、お前等も遺跡で会った女だ。 
 其れが態々閉じ込められていたんだ。どれだけ警備が厳重だと思う。 
 SFES総裁のネークェリーハとかいう奴も…バケモノ染みて強い」
「でもよ、樹川って奴はそんなトコからお前等を連れ出せたんだろ? 
 正攻法で何とかならねーか?」
「ならない。樹川にしろ内部…SFESの連中と話を付けて俺達を出したんだからな。 
 ……まあ樹川だけでも出来たのかも知らんが……あいつは別格だ」 
『青』もそう感じてはいた。 
戦闘中であるというのにあの余裕。そして異常なまでの力。
「確かになぁ…俺も力負けしたし… 
 所で…この名簿…一部黒い丸があるよな?これ何だ?」

 

   ケーニッヒスティーガー
    一等兵員 
     ファクシオン・マクリール 
     エディー・カイマン 
     ノール・クワイエット 
     龍崎・浩輔 
     エレノア・クロックケイブ 
     シルシュレイ・セディルム● 
     ロズリン・ポイニャント 
     フランク・ディレイニー 
     神取・早苗 
     アズィム・シュトランゼ● 
     フィリア・リノークス 
     ンドア・ナライ 
     ヒンメル・フリューガー 
     アシュレイ・アイザック 
    二等兵員 
     ロバート・ハミルトン 
     紅・聖竜 
     カール・ベーム 
     トーマス・クラーク 
     サリシェラ・リディナーツ● 
     ………

 

「…知らないな。…樹川辺りが書き加えたのか? 
 そうすれば…何か注目するモンがあるって訳…か…?」
「ふぅん……注目ねぇ……ん?」 
突然、『青』がじーっと名簿の一角を凝視する。
「…この名前……どっかで…… 
 …! そうだ、思い出した! 
 リディナーツ!」
「? 何だ、知り合いか?」
「違うよ。依頼受けてるんだ。ルークフェイド・リディナーツってのから。 
 弟と妹探して手紙渡すんだってさ。 
 んで其の妹の方だなこれ、サリシェラ・リディナーツ。 
 ……何だよ、SFESだったんかよ…… 
 あ、弟の方も衛生兵に居た。 
 ……………こいつ等は……SFES本部常駐の警備隊か。 
 …本部は………南アテネのスラム街の元デパート。 
 結構大きな組織って聞いたが…こういうトコに居るモンなんか…?」
呟きつつ『青』はファイル片手に立ち上がり、 
軽く伸びをしてからカウンターの側に置いてある電話を使う。 
取り敢えずは依頼人であるルークフェイドに連絡を入れておかねばならない。
執筆者…is-lies
《もしもし、ルークフェイドです》
「あ、俺…『青』ですけど、依頼の妹と弟を発見しましたよ」
《…ほ…本当ですか!?》
「はい。南アテネスラム街のSFESって組織に入ってたみたいです。 
 ちょいと俺、南アテネに行って手紙………」
《……あの『青』さん、済みませんが少々お待ち頂けますか?》
ルークフェイドの声が遠くに行くと、 
何やら小声で話し合う様な声が聞こえる。 
『青』ですら耳を澄まさないと聞き逃してしまいそうになる程の小声だ。 
《………だか………そん……法王とは…… 
 ……一概には…………兎も角………… 
 …………………ならば…………………… 
 ………………解りましたヨミ…………なる… 
 ………にも後で………………… 
 ……………… 
 もしもし『青』さん》
「あ、はい」
《お待たせしました。情報は有難く頂いておきます。 
 …ですが其の南アテネには近付かないで下さい。危険です。 
 依頼は完了したという事にしますので、以前に渡した手紙は破棄して下さい》
「は?ちょ……良いんっすか…?」
《はい。寧ろ良くぞ其処まで突き止めてくれたものだと感謝しています》
「…そんな感謝なんて…俺、殆ど何もしてないっすよ?」
《いえいえ、其の情報だけでどれだけ私の助けになった事か… 
 …成功報酬は是非ともお手渡しでさせて頂きたいのですが宜しいでしょうか?》
「あ、はい。そんじゃ…何処で……」
《『青』さんは今、どちらに? 近い方が良いでしょうし》
「一応、イオルコスに住んでます。店開いてるんですよ」
《ではイオルコスの南門の側にある喫茶店で… 
 ………3日後の12時頃にお会い出来ますか?》
「ええ…そりゃもう」
《良かった。では3日後に又お会いしましょう。 
 其れでは…失礼致します》 
ほぼ一方的にルークフェイドが喋り、纏め、話を終わらせた。 
多少、面食らった表情で『青』は電話を置く。
「…?何か…遺跡といい捜索といい…煮え切らねぇなぁ。 
 ………ま、いっか。金は入るみたいだし」
居間へと戻り、広げていた資料を片付け始める『青』に、 
シェリアが雑誌を読みつつ、しっかりと釘を刺す。
 「アオさん、アオさん、依頼忘れとるでー。 
 昨日、英雄集めるとかそんな…」
「あれって期日は無いんだろ? 別に今からやんなくたって…」
「……そんなで大丈夫か? 仕事なんだろ?」 
エドワードの言う事も尤もだと思いつつ、 
やはり『青』が乗り気になれる仕事ではなかった。 
元々彼は戦闘でもって糧を得ていた人間だ。 
何々を探すとか誰々を説得するなどと言う仕事は苦手であり、 
其れを引き受けるにしても、相手に一定の理解を示さなくてはならない。 
理解出来ない相手から持ち掛けられた仕事など受けないのだ。 
そもそも件の仕事の依頼主は議員となった本田ミナ。 
反政府思想の根深い『青』には無理のある仕事と言えよう。
「そりゃそうだけどよ、プロギルドにいる連中以外は手掛かり無しだぜ? 
 …俺はそっちの依頼よりも……このアヤコって奴が気になるが…な」
「やれやれ……地道にやるしかないだろ」
「イルヴさんも体調悪い言うてるし…… 
 ……エイスさん、はよ帰って来ぃへんかな?」
エースが向かった仕事であるところの、
プロギルドによるクノッソス海の捜索は2日前に終わったとニュースでやっていた。
まだ後片付けでも残っているのか、エース個人に何か用事でもあるのか…。
何にせよエースはまだ帰って来そうにもなかった。

執筆者…is-lies

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