リレー小説3
<Rel3.『青』編1>

 

冒険者・青は自問していた。
目の前には10人ほどの、ガラの悪い男達。 
そして背後には壁。 
要するに、追い詰められている。
彼は自問した。 
「(なんでこんなことになってんだ…?)」
だがその答えは、ある意味判りきっていた。

 

遡ること1時間前― 
青やエース、セレクタメンバー等を載せた航宙機は、さしたる問題もなく火星へと到着した。 
セレクタメンバーは行く場所があるとかで、先ほど礼を言って別れた。 
イルヴやゼイノ、デルキュリオスも、
どこか行くアテでもあるのか、別れの挨拶をかわすと其々行ってしまった。 
かくして、行くアテも、具体的な目的もない、青とエースの二人は、
特に理由もないが、なんとなく共にアテネの街を歩くことと相成った。
初めて見る火星の街。 
エースなどは物珍しそうな視線を各所に這わせ、様々なものに興味を示していた。
A+級プロとはいえ、まだまだ子供なのだ。 
一方青は、最初こそ街を見回してはいたが、今はぼんやりと思考にふけっていた。
―これからどうするか、地球そして破滅現象のこと、それから宇宙ステーションで受けた依頼…
そんなことを考えているうちに、並んで歩いていたエースは消え、
それどころか周りの風景もガラリと変わり、数人の男につけられていた。
「(どうやら…スラム街に迷いこんじまったみてぇだな…)」
気付いたときには後の祭。しだいに尾行している男は増えてゆき、殺気も漂い始めた。 
そして― 
今や、10人以上の各々凶器を持った男達と対峙することになった。
仮にも冒険者、本気で戦えば10人などものの数ではない…だろう。 
だが、下手に騒ぎを起こしてさらに囲まれては流石にマズイ。 
かと言って、現状を打破する方法を思いつくわけではなく… 
しかたなく青は、覚悟を決めた。
「…兄ちゃんよぉ…アンタ、能力者だろ? 
 ちょっと俺達と付き合ってくれねぇかな?」
殺気を漂わせて『青』へと近寄る男達。 
其の態度には有無を言わせぬ威圧が込められているが、 
『青』は全く動じず「何?」とだけ言う。
「ちーっとばかし兵隊が欲しいのさ。 
 金になるぜぇ?了承してくれるとすっげぇ助かるんだけどさ…」
要するにヤクザ事の片棒を担げという事だ。 
周囲の男達も凶器を見せびらかす様にちらつかせる。 
断ると命は無いと言いたいのだろう。 
併し『青』は「ハァ?」と如何にも人をナメきった顔をしてみせる。
「誰がするか礼儀知らず!ウゼぇんだよ!」
男達は何も言わずに無言で『青』を殺そうと襲い掛かって来た。 
どうやら、こういった仕事にも慣れている様だ。 
併し英雄『青』に勝てる筈も無く、5秒で男達は全滅した。 
嘗て大名古屋国で900人の兵士を、 
たった1人であっという間に倒した『青』… 
況してや今、彼の能力は大きく成長しているのだ。 
最早、下手な軍隊では歯が立たないだろう。
スラムの人間は、こんな事も日常茶飯事なのか、 
特に『青』に何の関心も示さず、 
寧ろ彼等の眼は、倒れた男達に注がれていた。 
そう。気絶している今の内に身包みを剥がそうというのだ。 
強かな者が勝利する。 
其れがこのスラムであった。 
『青』も別に止めさす義理も無いと、其の場を早々に立ち去った。
執筆者…you様、is-lies

スラムから少し離れたビルから3人の男がその戦いをながめていた。 
「…オイオイほんの数秒で全滅か……あいつは何者だ?」 
と、斧を持った大柄の男が仲間に言う。
「HAHAHA奴WA強TNE♪(ははは奴は強いね♪)」 
精神異常者と間違われそうな小柄な男が続く。
「ふむ…やはり荒んでいるな…火星も……。」 
とリーダー格の金髪の男は二人と違う視点でものを見ていた。
「雇い主様の野望が達成なさればこんな事もなくなるだろうよ。」 
大柄な男が力強く笑う。
「火星帝の息子か………はたして奴に政治的才能があるのか…。
 よし、英雄『青』と思われる男が火星に来たと伝えろ。」 
金髪の男は平然と仲間に命令すると、剣を腰に指し下に下りていった。
「ぉぃ、待て!!幾らお前でも敵うはずが無いぞ!!」 
と大柄の男が止める。
「阿呆…偵察だ……『青』が来てるってことは
 もしかしたら他にも英雄さんが来てるかもしれない。
 まぁお前らは目立つからなぁ…俺だけでいく。」
執筆者…タク様

「『青』さん!何処行ってたんですか!?」
やっとスラムから抜け出し、更に数時間歩き回った『青』を、 
漸く見付けたエースの一言である。 
併し、火星の景色に気を取られるあまり、 
『青』が居なくなった事に気付かなかった彼も彼だが…
「いや…ちょっと………考え事してたら… 
 そ…其れより、これから何処行く?」 
話題を切り替えようと、今後の予定を聞く『青』。 
だが、此処で会話は途切れた… 
そう。彼等は好き好んで火星くんだりへ来た訳ではない。 
地球で起きた、謎の大災害… 
『破滅現象』と呼称された現象に追われる様にして、 
崩壊を始めた地球から去ったというだけの事なのだ。 
当然、火星の事に付いては碌に知らない。 
右も左も解らぬまま、無為に時間だけが過ぎるかと思われた其の時…
「…全く……これだからお前等は……」
『青』達の背後で、情け無さそうに呟いたのは、 
先程、別れた隻腕の老術士イルヴであった。
「い…イルヴさーーーん!!付いて来てくれたんで……」 
ホモの『青』が嬉しさのあまりイルヴに飛び付こうとするが、 
老術師は口の前に人差し指をやり「しー」と言う。 
「煩いぞ。お前等、気付いてないかも知れんが… 
 ……何者かに、つけられているぞ?」
イルヴの言葉にハッとして周囲の気配を窺うエースと『青』。 
確かにイルヴの言う様、自分達に粘つく様な視線が向けられていた。 
しかも相手もかなりの使い手なのか、 
何処から見ているのかまでは掴めない。
「全く…此処は獣人、能力者の星…火星だぞ? 
 地球以上に警戒しておいて損は無い。 
 で、お前達…行く宛が無い様だが…… 
 イオルコスで私の仕事を手伝う気は無いか?」
「イオルコス?」
「お前等、火星の地名も知らんのか? 
 アテネの北北西にある開拓中のポリスだ。 
 あのSeventhTrumpetの連中が、 
 地球難民の為、塒を提供しているというからな。」
「「??」」 
益々混乱するエースと『青』。 
アテネという単語はしばしば耳にしたものの、 
自分達の居る辺りとしか理解していない程だ。
「…解った、1つ1つ説明してやる。 
 ポリスとは火星に於ける都市の事を指す。 
 説明するまでも無いと思うがアテネとは、 
 今私達のいる、このポリス(都市)だ。 
 SeventhTrumpetというのは新興宗教みたいなものと覚えておけ。 
 世界の終末云々言っているが、まあ気にする事はないだろう。 
 其の連中が慈善活動で、 
 前々から開拓しようとしていたイオルコスを分けてくれるそうだ。 
 まぁ…私は幾らか金を取られる事になるがな。 
 兎も角、私はイオルコスに行き、店を開く積りだ。 
 破滅現象とやらで日本にあった店はもう無くなってるだろうし。 
 お前達に行く宛が無いなら、雇ってやっても良いぞ?」
「あの…店って…?」 
「お前達は知らなかったかも知れんが、 
 私は京都で魔術用具店を営んでいた。 
 此処では『プロ』の連中の様、何でも屋を始めようと思う。 
 そっちの方がお前達は気楽だろ?」
確かに『青』もエースもタイプとしては戦士系で、 
本格的に魔術関係のものを扱うには色々と学ばなくてはならない。 
其れにエースは能力者の何でも屋『プロ』の一員でもあった。 
そういった仕事には直ぐに慣れる事が出来るだろう。
「そう…ですね。僕からは異存ありませんけど、『青』さんは?」 
「ンなもんあるかー!イルヴさん、一緒に行きましょう! 
 イオルコスだろーが何だろーが!」
「良し。それじゃあ…私に掴まれ。 
 お前達についてる追っ手を撒く」 
イルヴが差し出した手に掴まる『青』とエース。 
この老術士の瞬間移動能力は何度も体験している。
「ところで…追っ手って… 
 ……やはり日本宙港の………」 
思い出した様に、エースが以前巻き込まれた事件の話を出す。 
日本宙港に避難していた時、一緒に居た『エーガ』という男… 
詳しく話を聞くと、彼の所属する『セレクタ』という組織は、 
何らかの組織や魔物と敵対している様だった。 
其の彼が何故か日本宙港で警備員に追われ、 
直ぐに此処、火星へと逃げて来て今に至る。
「さぁてな。今の火星は移民やらで混乱している。 
 昔からあった獣人の問題もあって何が起こってもおかしくは無い」 
「獣人…ですか………」
第三次世界大戦時、非能力者が能力者に対抗する為、 
地球の西日本が創り上げた生体兵器・獣人… 
彼等の活躍があって非能力者は大戦の勝者となれた。 
だが終戦後は使い道に困った政府により、 
使い捨てとして火星での労働を強制させられている。 
彼等を解放しようという獣人のテロリストもある程だ。 
地球に居た獣人解放テロリストも火星に来るとしたら、 
火星のきな臭さに更なる拍車がかかる事だろう。
あれこれと考えている内、イルヴと一緒に転送されるエースと『青』。 
其の場に残されたのは、謎の追っ手であるところの金髪男だ。
「…テレポート能力……か… 
 だが収穫はあったな。大戦の英雄エースとイルヴも確認…」
執筆者…is-lies
 
inserted by FC2 system