リレー小説2
<Rel2.タカチマン1>

 

「で、どうなのかね?」
飛行機の機内であろうか?幾つもの椅子が並べられ、其の上に老若男女、数多くの人々が座っている。
或る者は機内食を腹に収め、或る者は仮眠を取り、或る者は子供と戯れる。
其の中、指定席と表記された椅子に腰掛ける老人が、隣の青年にそう問い掛けた。
年は50後半程か。オールバックにした白髪、染み一つ無い白いドレスシャツとベストが老人の潔癖さを思わせる。
対する青年は20代半ば位、白いロングコートにサングラスという出で立ちをしている。青い髪が印象的だ。
「…ユーキン、バンガス…この2名は放って置いても問題はないな。
 勇者の一味だか何だか知らんが、所詮は非能力者の弱小盗賊。
「だが、其の非能力者の弱小盗賊に本田宗太郎が遅れを取ったのだろ?」
青髪の青年の後ろの席から、黒服の男が身を乗り出す。
「非能力者と言えど侮るとこういう場合もある…という事だ」
「違います。宗太郎様が敵を侮ったのではなく、カンルークが敵を侮ったのです」
緑色の長髪をした女性が老人の向かい側の席から静かに答える。
「…ネオス日本共和国のジョイフルも問題は無い。データは既に回収済みだしな。
 イルヴ・ロッド・ヴェインスニークが右腕を負傷したというのは幸いか…
 だが、敷往路メイ…そして其の従者はごとりん研究所地上部を全壊させた事もある。
 この『パンデモニウム』という力は少々やっかいかもな。
 後は不完全ながらセイフォートの口を破ったツヨシン、ビタミンN。
 ヒボタンの継承者、『青』。ギルドでも1、2位を争う暗殺者ポーザ、キムラ。
 併し、何よりも注目すべきはこの男だ。フライフラット・エース」
「土魂号の大剣に、戦艦数隻を同時に沈めるイワンのサイコキネシスを上乗せした一撃を
 まさか、防ぐどころか跳ね返すとはな……」
「純粋な人間ではないのでしょう。案外、我々と同じ穴の貉かも知れません…」
青髪の青年の前の席から、浅黒い肌をした隻眼の男が口を開く。
「…記憶はJHNで失っているとはいえ、看過する事は出来ないな…
 だが情報屋ガウィー、ごとりん博士、ミスターユニバースにはJHN自体が効果を発揮していない。
 流石、八姉妹直下『原初の能力者』。これにも何らかの対策が必要だろう」
「……ほれ、手が止まっとるぞ」
そう青髪の青年に言って、白髪の老人が前の座席から引き出した小型テーブルを指差す。
テーブルの上にはチェス盤が置かれていた。白も黒も均衡を保った状態だ。
「ん…ああ、済まない」
老人に指摘され、暫しの黙考の後、駒を動かす。
「くくく、悪手だ。能力は使わないのか?」
「…もし全知全能の神とやらが実在するなら、さぞ退屈なのだろう。
 先の見えたゲームは面白くないからな」
「だが、お前の腕では、ワシの方が聊か物足りんがの。ほれ」
戦況は呆気なく老人の側に傾いた。そして同時に機内へアナウンスが始まった。
《御乗船の皆様、御疲れ様でした。間も無く…火星宙港》
執筆者…is-lies

「SFESの異形研究資料…これが欲しいんですわ。
 ああ、セイフォートの情報は、どうせくれないでしょうから別に良いですええ」
其れが待ち合わせ場所の火星宙港内喫茶店へと訪れた青髪の青年達に向けられた最初の一言だった。
「……本気で言うておるのか?」
笑顔を浮かべる老人。航宙船内とは違い、車椅子に座っている。
「そりゃぁ…本気ですとも」
『SFES』を自称する非合法組織のトップメンバー達を前にしても
男は…『ミスターユニバース』は一歩も引かない。
「成程、態々我々を呼び出しての用件が其れか
 で、見返りは何かあるのか?」
「ワシ等、『原初の能力者』は、
 大名古屋国大戦に於けるアンタ達の動向を
 一切、見なかった事にする……どや?」
「ふむ……解った…
 ………………と、このワシが言うとでも思うたか?」
瞬間、ユニバースの周囲に圧倒的な殺気が満ちる。
余りの殺意にユニバースは一瞬、自分が殺されたと感じてしまった。
殺気の出所はSFESのメンバー達だ。
恐らく白髪の老人が「殺せ」と一言言えば
ユニバースは一瞬で肉塊…もしくは更に悲惨な姿にされるのだろう。
「そんなものは御主を今、此処で締め上げて
 他の連中の居場所を聞き出してから全員殺せば済む事じゃろ?」
口は笑っていても老人の眼は殺意に染まってユニバースを睨んでいる。
「今、此処に盗聴器が仕掛けられていたとしてもですか?」
「ほう、其の盗聴器というのはコレの事か?」
其の声に驚いてユニバースが黒服の男の方を見ると、
彼の手には、テーブル下に仕掛けた筈の盗聴器が乗っており、
数本のコードが接続されている。偽の情報やらが送信されているのだろう。
「………解りました…もう無理は言いまへん。
 まあ、ちょっと見て欲しいもんがあるんや」
やれやれと言った感じでユニバースは席を立ち、老人の隣へと行き…
「ユニバース、其のオヤジに奇襲なんて通用しないぞ」
「……お見通しですか…」
落胆して袖に仕込んだ短刀を床へと落とす。
老人を人質に取る算段だったのだろう。
焦った表情を、直ぐに胡散臭い笑顔で誤魔化す。
「ははは、騙す事は出来ませんか…いや、流石」
「言い残す事は其れで終わりか?」
老人が右手の人差し指と親指の指先を合わせる。
「いやいや、参った。
 ホントは出来る限り『この人』は出したくはなかったんですが
 仕方ないですわなぁ……。もう来て良いですええ」
老人が指を鳴らすより早く、ユニバースが物陰から何者かを呼ぶと
観葉植物の影から、黒いコートを纏った青髪の男が姿を現した。
其の姿を確認し、SFES達が初めて動揺を見せる。
「貴方は…『タカチマン』!?」
執筆者…is-lies
「これは……大物が出て来たましたね…
 魔導科学研究の第一人者タカチマン所長…」
「噂は聞いた事があったが…成程、この男がそうか」
直ぐに落ち着いたSFES達を見ているのか見ていないのか、
タカチマンは真っ直ぐ、ユニバースの隣へと向かう。
「条件変更だ。お前等の異形研究資料と引き換えに、
 ユニバース達はSFESを見なかった事にし、私のこれまでの研究資料を半分………不服か?」
詰まりはこれがユニバースの奥の手という訳だ。
強請りの連続失敗で、真面目に交換条件を出した。
「クク……ユニバースよ、良い伝を御持ちだな。
 レイネやごとりん博士、そしてタカチマン…
 エーテル先駆三柱とも呼ばれたのう。
 其の1人の研究資料……どうして拒めようか。
 ……良いだろ。交渉成立だ」
ハンカチで額の汗を拭うユニバース。
この交渉が失敗していたら後が無くなっていた。
2人でSFESの5人と戦う程、無謀ではない。
SFESもタカチマンという才能を、此処で断ち切る事は出来なかった様だ。
「レイネが居たら喜びそうだったのにな…
 『タカっち、おひさ〜』とか言って……」
「…馴れ馴れしく呼ぶな」
黒服の男の声をピシャッと遮るタカチマン。
「そういえば、レイネさんはどちらへ?」
「地球の日本だ。少し、やりたい事があるそうだ」
「…相変わらずな奴だ……」
口の端を筈かに歪めた老人を見、どうせ碌でも無い事だと考え、タカチマンは眼を伏せる。
「そうそう、資料だが…何に使う気だ?」
「其れは条件に入っていまへんが?」
「ふっ、予想通りの答えだ」
執筆者…is-lies

太陽系第4惑星・・・火星。
人類の長い期間をかけてのテラ・フォーミング計画により、
この星は第2の地球とも呼べる環境に変化していた。
人々は「ポリス」と呼ばれる都市郡を形成し、独自の文化を築き上げていった。
火星、タルシス高原。
この地には「火星の顔」と呼ばれる人面岩が存在し、観光スポットとして有名な地である。
そのタルシスのポリスの一角にその研究所は有る。
「タカチ魔導研究所」中世ヨーロッパの古い洋館のような建造物。
近代的な街の風景とは完全に浮いている。
その怪しげな研究所で魔導科学の研究を行なっている者達。
研究員はたった二名。天才と言われる所長タカチマンと、
助手の少年『ナオキング=アマルテア』である。

 

ユニバースとタカチマンがSFESと接触する3時間前・・・

 

「一人で危険じゃないんですか?(ズルズル)」
カップ麺を啜りながら高校生くらいの歳の少年が言う。
「構うな・・・」
30歳前後であろうか。無精髭を生やし眼鏡を掛けた青髪の男が答える。
「もし交渉が決裂して、
 最悪、戦闘にでもなったりしたら・・・(ズズズ〜)」
カップ麺の汁を飲み干し、カップを机に置く少年。其の目は不安そうだ。
「人数的に不利だ。いくら私とて奴等と戦って勝てると言う保証は無い。
 最悪な場合、死ぬ。其れだけだ。」
「・・・・」
「もし何かあれば最終手段として、空間をを一時的に次元レベルで
 冷凍させる13番目の力『ジュ−ダス・プリースト』を発動させるしかない。
 もっとも、自分自身も行動不能にはなるが。」
「3次元空間冷凍能力・・・」
「まあ・・・『何も無いように終わらせる』事だな。其れが一番だ。
 歴史から消された「13番目の力」が何故私に備わっているかはわからんが。」
青髪の男は立ち上がり、玄関の方へ歩き出す。
「ナオキ。結晶の経過を調べておけ。最低でも1週間は戻らん。」
「分かりましたタカチマンさん。気をつけて。」
「SFES・・・久しぶりだ・・・
 レイネは何をしているか・・・・」
タカチマンは煙草に火を付け、ユニバースとの待ち合わせ場所へと歩き出す。
ユニバースとタカチマンがSFESと接触する3時間前の事だった。
執筆者…しんかい様

数時間後、火星未開発ポリス

 

人類は未だに火星の全てを手中に出来た訳ではない。
開発真っ只中のポリス工事現場。
其処がタカチ魔導研究所資料とSFES資料の交換場所であった。
「これが異形研究資料だ」
ケースに入った一枚のディスクを懐から取り出し、ユニバース達に見せる。
其れを見てタカチマンもディスクを翳す。
双方が同時にディスクを投げ、同時に受け取った。
SFESの研究員が老人からディスクを受け取り、持って来た携帯端末にセットする。
「…間違いありません!魔導研究資料を確認しました」
「此方も確認しました」
両組織がデータを確認したと同時に、一機のヘリがSFES側に降りて来た。
「無事、終わった所でワシ等は帰らせて貰うよ。
 これでも何かと忙しい身でね」
「忙しない御人ですなぁ」
SFESメンバーの乗り込みを確認し、再び空へと舞い上がるヘリ。
「(思ったよりあっさりと終わったな)」
「では、ワシもそろそろ御暇させてもらいましょ。
 SFES異形資料は、其方が不要になったらワシ等が貰う…という形で頼んます」
そう言ってタカチマンにディスクを渡し、
SFESの方向とは逆へと歩き出すユニバース。
「止まっていた研究が進めば良いのだがな…」
手の中でディスクケースを弄びながら、タカチマンも工事現場から立ち去る。
彼は研究所に戻るついでに、知人の研究所に立ち寄るつもりだった。
帰り…とは言っても其の研究所はタルシスのポリスとは幾分か離れた場所にあり、
其処で何日間か研究の成果を実験する予定だった。
執筆者…is-lies、しんかい様

其の研究所が有るポリス『スパルタ』。
火星でも首都の『アテネ』に次ぐ第2の都市である。
夜間電車でスパルタに到着し、研究所を訪れるタカチマン。
すると、白衣を着た茶髪の少年が研究所から飛び出してきた。
「クッ・・・・あいつは一体何なんだ・・・」
少年は両手で十字架型の巨大な武器を握っている。其の顔は真っ青だ。
「どうした『ジョニー』・・・」
少年の名はジョニー。タカチマンと同じく魔導科学者で
タカチマンの数少ない研究仲間の一人である。
名はあまり知られていないが、実力はあるらしい。
18歳という歳で所長を務めている事からも、その才能が窺い知れる。
「ああタカチマンさん!あの変なの・・・
 いきなり研究所に入ってきて襲いかかってきよった! 
 おかげで大事な資料がメチャメチャや!」
グオオオオオオォォォォ・・・・・
研究所内から咆哮が聞こえる。どうやら中々の大物らしい。
緊張感が場を包んだ次ぎの瞬間、研究所の窓を突き破り一匹の異形が現れた!
「こいつは『バーニング・ホイール』・・・?」
四つ這いのべヒーモスのような姿で、四肢の先が車輪のような形をしている。
その車輪からは絶え間無く炎が噴出され、車輪を包み込んでいる。
「・・・・やる・・・か。」
タカチマンは懐から拳銃を取り出す。 
「あんたが居れば百人力や」
ジョニーも十字架型の武器を構え直し、二人は臨戦体制に移る・・・・ 
バーニング・ホイールが車輪を急回転させ接近して来る。
どうやら2人を敵として認識している様だ。
すかさず横っ飛びになり巨体の突進を回避するが、
異形が走ったまま脚を真横に開き、後輪から一層激しい炎を吹き出す。
「相手の動きを見ての戦闘…中々だ」
まだ着地していない…即ち、攻撃を躱せない状態だと言うのに
至極、平然としているタカチマン。
そして、炎に包まれた…
「うわ・・・やってもうた・・・」
ジョニーが呟く。炎に包まれるタカチマン。しかし・・・
「良い攻撃だな。しかし、この程度の炎ではこの結界を破る事は出来ん・・・」
着地し、平然と銃を構えるタカチマン。空中で瞬時に結界をはり、敵の攻撃を防いだのだ。
「では此方から行かせてもらおうか・・・」
執筆者…しんかい様、is-lies
高速で敵に接近するタカチマン。その光景を見ていたジョニー・・・
「ひゃあ、俺の出番は無さそうやな。良かった良かった。では見物しましょか」
そう言いながらジョニーは持っていた十字剣をつるはしのように使い、
穴を掘り始める。そしてジョニーは瞬時に全身の間接を外し、
掘り終えた小さな穴に潜り込んでしまった。彼はヨガの達人なのだ。
「土の中は気持ちええわ〜」
自分のすぐそばで戦闘が起きていると言うのに、何処までものん気な男だ。
「見物見物〜♪」 
タカチマンの持つ魔銃『プルート』が放つ魔法弾が
バーニング・ホイールの前足に命中し、其の速度を落とす。
「(何故、こんな奴がジョニーの研究所を襲った?)」
考えながらの戦闘というものは極めて危険だ。
このバーニング・ホイールの様な上級異形なら尚更。
だが併し、タカチマンの動きには無駄が無い。
既に体が戦闘に慣れてしまっているのだ。
敵の四足を全て潰し、本体へと攻撃を叩き込む。 
ボヒュッ!
小気味良い音と共にバーニングホイールの頭部が拉げる。
プルートの放った重力弾が頭に命中したのだ。
地を揺るがして倒れる異形の巨体。
「さて…ジョニー、出て来い!こいつを調べるぞ」
穴の中に退避していたジョニーが、直ぐに顔を出すが、どういう事か解らないという表情だ。
「え?」
「こんな異形がこのポリスに居る筈は無い。誰かが持ち込んだと考えるべきだ。
 そういった操作生物や機械兵器は、動かなくなってしまえば自分自身が情報の塊だ。
 徹底的に調べればヒント位は出る」 
「なーるほど!」
タカチマンの言葉に関心を示したジョニー。
「よし!運ぶぞ!」
「任せときぃや!」
そして2人の男はバーニングホイールの体を研究所へ運び込んだ。
幸い生命機能は停止していたため、無事に強化カプセルの中へ収容することができた。
執筆者…しんかい様、is-lies、A夫様

カプセルの中に異形を押しこんだ二人。
ジョニーは嬉しそうにコンピューターを操作しているが、タカチマンは異形を眺めているだけだ。
「この肩部の紋章・・・どこかで見た記憶がある・・・・」
「こう言うのは電流を通す瞬間がおもろいんや」
ジョニーはカプセルの中に電流を流し始める。
「お前・・・何をしてる」
「ショックを与えて反応を調べるんや」
ジョニーは何故か楽しそうだ。彼は電流マニアらしい。
激しい電流がカプセル内に流れ、異形の体が震えだす。
バチィッ
すると、異形のこめかみ部から何か小さい物が剥がれ落ちたのが見えた。
すかさず駆け寄るジョニー。
「・・・・これは・・・精神操作チップ・・・」
「やはり意図的に送りこまれた物のようだ」
だが、其れ以外の事はまだ分からない・・・・ 
「企業名やシリアルナンバーが巧く消されてるな…
 こういう物は大抵が横流し品だ。
 企業名、シリアルナンバーが解れば、流通ログを調べてから
 横流しした奴を縛り上げて黒幕を突き止める事も出来るが…」
「これじゃあ駄目ですか…」
コンソールに手を付いて溜息を吐くジョニー。
研究所を好き勝手に蹂躙されて収穫も無いというのは頭にくる。
だが、
「…いや、待て。………そうだ…私の知り合いに
 消された跡を調べてナンバーを完全に近い形で復元出来る奴が居た。そいつに頼もう」
「…其れ危ない系とはちゃうん……」
即座にツッコミを入れるジョニーにタカチマンはさらりと返した。
「安心しろ。堅気の銃砲店を経営している。
 『リュージ』という男だ。
 何でも削除跡の復元は遊び心で始めたものらしいが、腕が確かな事は保証する」
タカチマンが其処迄言うとは、信用出来そうだ。
「そんじゃ、早速電話でも…」
「……済まん。番号を控えていない」
ジョニーはズッコけた。
「アイツはPCも持っていない。直接会いに行く」
「……何処の御人なんや?」
二度目の嫌な予感を感じて聞くものの……
「地球の東日本だ」
地にガックリと膝を突く少年。
何日待ちゃいーちゅーねん。 
「…さて、どうしたもんか…」
「…一度私の研究所へ戻る。ナオキも連れて行く」
「ああ、助手さんかいな」
「…多人数行動は好かんがな…」
執筆者…is-lies、ごんぎつね様

「えええっ、僕も行くんですか?オロオロオロ」
「そうだ。もうすぐ出発する。
 茶漬けの素は忘れるな」
「うっ…、わ、わかりました。
 それにしても、お茶漬け好きですねぇタカチマンさん」
「…で、どんな方法で行くんや?
 宇宙ステーションか、それとも…あんたの発明品でも何かあったやろ。
 …何ちゅう名前やったかな〜…」
防護用ジェット付脱出用シェルター
 タカチマン「略して『まもるさん』だ」
(略になってないがな…)
「まもるさんは大気圏突入も可能ですからね」
「…もう1つ、発明品あったやろ。それは?
 …『ぶっとびさん』とか言ったっけ」
超絶時空転移装置の略、ぶっとびさん。
 …あれは失敗作だ」
(だから全然略になってねえよ)
「…で、どうします?」
「取りあえずシェルターを見てみるか・・・・」
タカチマン達は研究所のガレージへ向かった。
執筆者…ごんぎつね様、しんかい様

ほこりっぽいガレージの中を進む一向。
と、其処には青いシートに包まれたシェルターがあった。
「これも3年動かしていないからな・・・・」
「そ・・・そんなんで大丈夫なんか?」
ロケットのような形状をしたシェルター。
中に入ったタカチマンがスイッチを入れる。
ブゴゴブゴブオウゴフボウゴ〜
周囲にほこりを撒き散らし、シェルターが小刻みに振動する。
「動くは動く。だが、命の保証はできん。
 いつ爆発するか分からん。そんな状態だ。どうする?」
「ゲホッゲホッ、どっ・・・どうもこうもせんて!
 アテネの宙港へ行きましょ!」
「その2人入るのがやっとな狭いロケット棺桶の中で
 爆死するのはごめんです」
「分かった。しかし、航宙機代は自分で出せ」
タカチマンはシェルターのスイッチを切るため、
再び中へ入った。が・・・・・
ズゴオオオオオオオオ!!!!!!
すさまじい煙とほこりをを撒き散らし、突如シェルターは崩壊してしまった。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・行くぞ
そして3人は、最も近い宇宙港がある火星首都アテネへ向かった・・・・
執筆者…しんかい様

3人は宇宙港へ辿りついた。
「ふぅ〜、またお金がなくなる…どうしよう…」
ナオキングは自分の財布の中を見ながら溜息をつく。
「…ナオキ、茶漬けの素は持ってきただろうな」
「…あっ!!!…すみません、忘れ…ました」
「………」
タカチマンは厳しい表情になる。
「茶漬けなんてどうでもいいがな。
 こっちで食料は少し持ってるけど」
「…何だ」
「え〜〜〜…『干ししいたけ』と『チーズ』、
 …おっ、『しいたけ茶漬けの素』もあるで」
「…いらん」
「…タカチマンさん、しいたけとチーズ、嫌いですもんね」
「…軽く言うな」
「…すみません」
天才と呼ばれるタカチマン。しかし、嫌いな食べ物はしいたけとチーズ。
なんとも雰囲気ブチ壊しな感じだ。
「ナオキ、売店で茶漬けの素を買って来い。
 …しいたけ以外でな」
「は、はい…(またお金が…)」
そして、3人は地球行きの船に搭乗したのであった。
執筆者…ごんぎつね様

<宇宙船内>
3人は雑談をしていた。
「お金が…」
ナオキングはまたも財布の中を見ながら溜息をついていた。
「過ぎたことや。忘れんなさい」
一方のジョニーは、チーズをぱくついていた。
「…この臭い……
 いつまで食べるつもりだ」
タカチマンはどうやら、チーズの臭いにも弱いようだ。
「おっと悪かったの」
ジョニーはチーズをしまう。そして消臭スプレーを周りに噴射する。
「そんなものまで持ってるんですねジョニーさん」
「…しかし、あのままシェルターに乗らんでよかったわ」
「爆死でしたね、間違いなく」
「…」
「『まもるさん』は乗っていても揺れますからね。
 僕、何度か酔ったことが…ウッ」
ナオキングは思い出し酔い(?)をしている。
「『まもるさん』を打ち上げる時のキメ台詞なんてありそうやな」
「実際にありますよ。
 『ジェット、オン!ファイアー!!』って」
「…少しは静かにしろ」
…と、どうでもいいような事を喋っていたのだった。

 

そして4日後。

 

《当機は間も無くワープ航行を終了致します。衝撃に備え、シートベルトを着用して下さい・・・・》
機内アナウンスが流れ、機体が軽く振動する。
赤い景色が通常の宇宙空間に戻る。そして・・・・
「地球や・・・・」
「目の前で見ると、思ったより綺麗な星ですね。」
「・・・・・・」
窓の外には、青く美しい命の惑星、地球が輝いていた。
「俺のじいちゃんはな、火星移民の第一世代なんや。
 じいちゃんは、いつも俺に地球の話をしてくれた。
 人が作り上げた火星とは違う・・・自然の星なんやて・・・・」
いきなり真面目な顔になって話し始めたジョニー。
「この星は汚したらあかん・・・絶対に・・・」
《間も無く、日本宇宙ステーション。日本宇宙ステーション。
 3番ゲートから日本宙港迄、直通です》
そして3人は地球、日本宙港へ降り立った。
執筆者…ごんぎつね様、しんかい様
inserted by FC2 system