リレー小説2
<Rel2.SFES1>
京都の帝国ホテル中庭組織SFESの構成員であるピアス男と中性的な少年の目の前に、突如黒い穴が現れた。前支配者…堅気の世界の住人は名すら知らないだろう。 世界の消滅を目的とする異界の魔王… 其々が精神体のみの存在であり、現世の肉体に寄生する事で活動している。 併し、彼等は自由に寄生出来る訳ではない。 現世での儀式によってシンボルとしてのみの身体を得、 寄生する者の『同意』があって初めて可能なのだ。 何故、この関係を共生と呼ばないかと言うと、 前支配者が徐々に、寄生した者の精神を蝕むからだ。黒き穴から白い帯の様なものが現れたかと思うと、 螺旋を描いて激しく上下し、ミイラの様な形を取る。 無論、帯そのものが前支配者なのだろう。 前支配者が一柱『モイシス・トコアル』である。「…………歓迎されている様には見えねぇな」顕現し終えたモイシスに突き刺さるSFES2名の殺気。「当たりめぇだろ?」 「自分達の立場解ってるよね? それとも大名古屋国大戦の事、もう忘れた?」前支配者は組織SFESによって保護されている。 無論、好事家によるエーテル実験と異界研究の為だ。 このSFESこそが彼等の宿主と言っても良い。 世界消滅という彼等の思想を物とも思わず、 自分達の実験に沈潜するSFESは良い手足であった。 だが、大名古屋国大戦後…前支配者の立場は弱くなる。 大名古屋国の支配者である本田宗太郎が 強大な力と、世界破滅の手段を持っていると知るや否や SFESを裏切り、宗太郎に寄生して大戦を始めたのだ。 併し、世界破滅は勇者達によって失敗に終わった。 彼等は一度裏切ったSFESに 再度、身を寄せなくてはならなくなったのだ。 世界破滅等に協力してくれるパトロンは彼等しか居ない。 今ではSFESに全ての行動を管理されてしまっている。一連の事件はSFESが仕組んだものだという事に気付かぬまま…「……忘れてねぇよ… お前等のルールーに俺達も従う」苦々しく言葉を発するモイシスを凝視する少年。「そお?貴方達はプライド高いからね そして信用出来ない」「先ず、俺への個人的な話ってのを聞かせて貰うぜ。 ザケた事ぁヌカすなよ?」「ま、良いけど。…貴方が使いでしょ? おじちゃんからの伝言も聞かせて」執筆者…A夫様、is-lies「・・・いいぜ。まずはアウェルヌスの件からだな。 まず『シルシュレイ』よ、あの行動をお前は勝手だとかほざいていたが あの行動を止めたのはどうかと思うぜ。 せっかく、アウェルヌスがいつか邪魔者になる確率の高い『青』とかいうアホを 抹殺するためのエネミーをダシにする事の方が問題だと思うぜ。 で、結果だが・・・奴はしばらくの間自主的に謹慎する事で落ち着いた。 ・・・こっちの立場もアレなんでな・・・。 おっと、こっちはあくまで貴様らに研究させてやってるんだ。 無暗に俺達前支配者の行動に関わるのはタブー・・・これだけは覚えておけ。 そして指令関連の伝言だが、数名東日本の東京の方へ向かえとさ。 なんでも、怪しげな「反乱軍」と名乗る連中が活動を始めたらしい。 あくまで偵察程度で、頼むぞ・・・。」シルシュレイと呼ばれたピアス男はやや荒れ気味の様子で会話を始める。「おいおい、いきなり私情からそれかよ。ったく、ザケてるじゃねーか! てめえら自分の立場、わかってないとは言わせないぜ。」それに大して少年の対応は、冷静であった。「伝言ご苦労様。じゃあ、今夜あたりにメンバー決めるね。」「ボウズ、ご苦労。あんたは帰還してていいぜ。」「・・・うん。」自分が無視されてやや怒り気味のシルシュレイ。「おい!俺の事は無視か!」「・・・全て、忘れたいのか?」・・・その時、突如モイシスから邪悪な気合が発散された。 その感覚は異様に重苦しく、一瞬シルシュレイにただならぬ気配を感じさせる。「・・・・・・・・」無言になったシルシュレイ。そしてモイシスは語る。「自分の周囲の人物や、つきあってる奴にご用心しておけよ・・・ さもなきゃ、命は長くないかもしれないぜ・・・。」そして、モイシスは闇の中へと消えていく。「・・・ケッ!随分と偉そうな態度取りやがって・・・」不機嫌気味のシルシュレイはその後、ズカズカとした足取りで中庭を去っていった。執筆者…A夫様
「・・・良かったのか?」「何がだ?」「挑発的な態度をとって奴等を敵に回しかねん事をして良かったのか、と聞いているのだ。 奴等も「セイフォート」とやらを所持している。下手をすれば我々とて敗北しかねないのだぞ?「それに奴等も馬鹿では無い。 以後私達の行動をそう黙認する訳が無いだろう・・・以後は行動に気をつける事だな・・・」「へいへい・・・」「フフフフ・・・しかし奴等にはわかる筈も無い。 たとえ私達の行動がわかっていてもその真意はわかる筈もない。そうでしょう?」「その通り。たとえ実力が人間離れしていても人間は人間。 我らの真意等わかる筈も無いだろう・・・」執筆者…鋭殻様
自分達の部屋へと入り、ドアを閉めるシルシュレイ。 部屋の中で雑談している4名のSFESに対し目配せした。 同時に室内の空気が変わる。「……どう見る?」先程とは打って変わって、真剣な眼差しで聞く。「おかしい。真摯過ぎだよ」「くぺぺ。でも反省は無いペン。随分と思い上がってるペン」どうやら既に話は伝わっている様だ。ペンギンの頭に血管が浮かぶ。「そーねー。アタシ達にちゃんと報告していれば避けれた問題よ〜」「問題は其処だ。 アイツ等…俺が自分達の部下と戦った事、知ってやがった」「………でも、其の時に部下を止めなかった…詰まり…」「彼等にとってボク達は其の程度の存在でしかないって事だね」率直に、併し的を得ている発言だ。 もし、前支配者が真にSFESを気遣っていたのならば、 部下にもSFESに対する注意を与えていただろう。手を出すなと。「甘く見てるペンね…………ちょっとムカつくペン…」眼を細め、嘴を歪ませるペンギン。其の小さな体から殺気が漏れる。「そうだアイツ…一丁前に俺に殺気かましてくれやがった。 しかも周囲の奴に注意しろだとかもな…」「で、なーんでアンタはペラペラ話してる訳?」聞いて呆れた様な声を出す大女。だがシルシュレイからの返答は単純だった。「お前等とは付き合い長いからな」「相変わらず、勘で物言うのね〜。 ま、アタシもアンタのそーゆートコ好きよ〜」「其の俺の勘だ。アイツ等…そろそろ動く」「…………消す?」シンプル且つ禍根残さぬ手段を提示する少女。 なまじ無表情なだけに凄みもある。だが其れは通らない。「止めとくペン。後でオッサンが煩いペン」SFESという組織が未だ前支配者を必要としているからだ。「でも、前支配者の不穏な動きは無視出来ないね。 此処は纏まって行動………!? …もしかしたら東日本跡での反乱軍自体が虚構で、ボク達を分断する腹かも……」「有り得ない話じゃないわね」腕を組んで考える大女。 場合によっては前支配者をも切り捨てようと…「オジサンから直に確認を取ってみる方が良いかも…」執筆者…is-lies