リレー小説2
<Rel2.ロバーブラザーズ3>

 

 

「さて、何から手を付けたものか…」
「名前」すら知らなかった彼女だ。
手下にするにも、色々と教えなくてはならない。
「…バンガス、お前をおトメさんの教育係に任命する!」
ユーキンには育児の経験等絶無であった。
というか、彼に育児させれば、其れは其れで恐ろしい事になるだろう。
「うーん…其れじゃあ…
 取り敢えず、街に連れて行きません?
 ホラ、色々見せて教える方が効率良いっぽいし、
 人間の生活とかにも慣れさせないと…」
「そういうものか?まあ良い。
 ヨーシ!では早速、付近の街へ行くぞォ!」
「??…まちってなんですか?」
執筆者…is-lies

日本皇国…過去の大戦に於ける最功労国だ。
だが其れに故に一部の人間が増長し、
「日本は神の国である」
…等と宣い、反対派を東へ追い遣り、西に王制の皇国を建ててしまったのだ。
これが日本皇国(通称、西日本)。
だが、天皇は傀儡に過ぎず、実質的な支配者は摂政「藤原」である。
おトメさんを連れてユーキン一行は日本皇国首都「京都」に辿り着いた。
西日本最大の都市、京都。それは栄華を誇る都市。
残った昔の建築様式の建物と、最新的なビルの並ぶ都市。
・・・そして表の面と裏の面を持つ都市である。
(栄華を誇る都市と暗黒街が同居するような環境である。)
「いやー、凄い賑わいだな・・・噂には聞いてたが。」
「・・・迷ったなぁ。どこから回った方がいいかなぁ。」
「!!!
 に、にんげんいっぱいいます。いやですいやです。
 かえりたいです」
無理もない。人間に暮らしを荒らされ、傷までつけられたのだ。
ユーキンは、暴れ、終いには石に化け、硬く動かなくなっているトメを持ち上げた。
「仕方ないなぁ。…好物とかってあるのかな?」
「狐…ですから……油揚げでしょうかねえ」
「お前なぁ。『いなりずし』とか『きつねうどん』とかって言うけど、
 狐って、本当に油揚げが好物か、分かってるのか?
 昔の言い伝えからの『イメージ』になってると思うんだけど」
「まあ、いいじゃないですか。豆腐屋か揚げ屋かスーパー探しましょう」
「スーパーは雰囲気ブチ壊しだと思うけど」
豆腐屋か揚げ屋かスーパー。
「え〜と、まずはスーパーに行ってみるか・・・。」
ユーキン・バンガスの両名はホログラム掲示板に写った地図を眺めていた。
「確か中央から左手に回ったほうに一軒あるな。バンガス、まずここから行くか?」
「じゃ、そうしましょうか。」
そして2人と1匹は、スーパーに寄ってみることにした。が・・・。
「垂れ幕多めだな・・・ゲ。大丈夫なのか、この店は。」
「金ピカでその上全然センス無いですね・・・どうします、御頭?」
兎も角、入ってみる事にした一同。
執筆者…is-lies、A夫様、ごんぎつね様

「あ、10円無いや…。じゃあ、100円で」
「はい。丁度御預かりします」
油揚げを籠に入れてレジ待ちするユーキンの前から
何処かで聞いた様な女性の声が聞こえる。
緑色の洋服を着た茶髪(頭頂部は黒)の少女…
「め…『メイ』さん!」
 ユーキン達と共に大名古屋国大戦を収めた勇者の1人
 『敷往路メイ』其の人だったのだ。
「ユーキンさん? わぁ、御久し振りです。
 バンガスさんも……アレ…?其れ…何ですか?」
ユーキンの持った、リボン付きの石(序に狐尻尾あり)を指差すメイ。 
「ああ、えっと…これは………」
「こんな所に居られましたか」
ユーキンが答えるよりも早く、背後から軍服を着た男がユーキン達に声を掛ける。
「ユーキン様、バンガス様ですね。随分と探しましたよ。
 …っと、此方は敷往路メイ様ですね。これは都合が宜しい」
「えーっと、軍服から見て、日本皇国の将校さんみたいですけど…何か?」
「此処では難ですので此方へ…」
ユーキン達はレジの支払いを終えてから、男の案内する場所へと付いて行った。
其処には…何と言うか…日の丸国旗を付けた金ピカの大型ワゴン車が止めてある。
無論、上部にはスピーカーが幾つも設置されていたのだった。
先行した軍服男に手招きされたので、ユーキン達も渋々乗り込む。
執筆者…is-lies

「私、日本皇国将校『矢部』と申します。
 今回、皆様に集まって頂いたのは『依頼』の為です」
「依頼…?何かあったのですか?」
「はい。『セカイハ・ボーリョク』という人物を御存知でしょうか?
 以前、ネオス日本共和国の軍部に属していた男です。
 『青』さんが大名古屋国の地下迷宮から脱出した時がありましたよね?
 其の際に敷往路メイさん、貴方やイルヴさんに再依頼をした男がそうです」
「え?…だって、彼は東日本の人間じゃなかったんですか?」
「……再依頼の時、彼はごとりん組織にも詳しかったですね。彼は……」
「スパイ…ですか?」
話を整理したバンガスが言うが…
「いえ、そんな立派なものではありませんでした。
 東西日本に大名古屋国と、私利私欲の情報リークに奔っていただけですから」
「じゃあ依頼というのは、そいつを……」
「…大名古屋国戦争のドサクサに紛れて、逃亡されました。
 最近の情報を纏めると、どうも『日本宙港』に向っている様でしてね…
 亡命するにしろ何にしろ、彼が日本皇国の機密を多数掌握しているという事には変わりがありません。
 詰まりは……お解りですね?」
矢部の顔が引き締まる。
「………情報を漏らされる前に捕まえろという事ですね」 
 …解りました。敷往路家の一員として…
 そしてA+級プロとして、其の依頼を受けさせて頂きます」
大名古屋国大戦での功績を認められA+の称号を得たメイが即答する。
「…うう……ボク達は今ちょっとなぁ…
 いや、仕事が嫌とか面倒とかではなく…今、別の問題を……」
「御頭、そうでもないですよ。
 簡単そうな仕事ですし、初仕事って感じで……」
「まあ…狩猟位は出来そうだが…人間社会に溶け込めるかどうか…」
無論、今も石に変化しているおトメさんの事を話しているのだ。
メイや矢部には解る筈も無いが……
「ふむ…どうも御都合が悪い用ですね。
 まあ、メイ様だけでも十分な仕事でしょうから
 ユーキン様、バンガス様の御手を煩わせる迄も無いでしょうし…」
…と、メイが何かを思い出したようにハッとする。
「あ…ちょっと済みません。
 買ったナマモノが傷むと良く無いですから、
 一度、家に帰らせて頂いて宜しいでしょうか?」
「ああ、御邪魔をしてしまった様ですね。申し訳ありません。
 良ければ、御送りしましょうか?」
キュピーン!
ユーキンの瞳が怪しく光る。「メイの家」に反応した様だ。
執筆者…is-lies

反応したユーキンが「メイさんの家を訪ねたい」というもので
ユーキンと敷往路家の邸宅に向かうことになった・・・。
しかし、当のメイ本人は好意的であった。
・・・だが、メイの家に待ち受けていたのは血も凍る猟奇的な光景であった・・・。
「………?」
自分の眼が信じられなかった。夢か冗談だとでも思いたかった。
だが、其れが夢でも冗談でも無い事は
A+級プロである彼女自身が良く解っていた。
辺りに散乱している従者達の『残骸』、異形の死骸から出て来る腐臭が
伝統ある敷往路家の屋敷を包んでいた。
「ぬおわぁ!?何だこれはァ!?」
「……おじい様…探さなきゃ…!
 皆さん、協力してくれますか?」
プロとしての能力が、彼女に取り乱す事を許さない。
一同は気配を消して、慎重に屋敷を探して回る。
数分後、寝室にて放心している敷往路家当主『敷往路進』を発見した。
肋骨を数本痛めている様だったので、メイが応急処置の回復を施す。
だが、意識が戻って来ない様であり、すぐに病院へと連絡する。
その後、メイは屋敷の中で息も絶え絶えになっていた2人の子供も発見した。
『ハチ』『タクヤ』…この2人はメイの使役する精霊神の仮の姿であり、
大名古屋国大戦中に於いても大いに活躍した者達だ。
「・・・一体、誰がこんなことを・・・他のみんなは?」
「う、突然何者かがこの場所に襲撃して・・・き・・・て・・・ゴホッ!」
「タクヤ!!無理しないで!!」
「我々も他の者と・・・共に・・・応戦したので・・・すが・・・駄目でした・・・。」
「ハチ・・・・・・何故、ここが襲撃されなければならないの?」
「・・・うっ、バラバラ・・・何てやな風景なんだよ・・・。」
「だめだ、もう吐きそうです・・・」
その後警察や病院、そしてメディア陣の関係者がぞくぞくと敷往路邸へと集結した。
結局其の日、メイ達は警察署で夜を過ごしたのだった。
執筆者…is-lies、A夫様
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