リレー小説3
<Rel2.LWOS 3>

 

  隔壁前通路の一室

 

少しだけ開いたドア。そこから見える異形の姿。 
その部屋の中に座り込む三人の人物・・・・・ベリオム達である。 
どうやら異形に見つかり、隠れているようだ。
「クソ・・・・・・・隔壁のスイッチがあるってのに・・・」 
ドアの間からは何かのスイッチが見えている。おそらく隔壁の開閉用のスイッチだろう。 
「・・・・・落ち着いて、ベリオム・・・・・・・・・」 
マリーエントはそう呟き、溜息をつく。
「どうしたんだ・・・・・?」
マリエルは先程ライズと交わした会話・・・・
LWOSではSFESに勝てないという発言、彼等が投降を要求した事を話した。
「………確かにな。戦力に違いがあり過ぎる。 
 オマケにこっちは図体デカイから色んな意味で良い的だぜ? 
 …だが、これでSFES連中が本気じゃないって事が解ったな。 
 この攻撃の目的は技術・情報奪取とLWOSの戦意を挫く事だ」
併しマリーエントは少女を抱きながら、微かな疑問を吐き出してみた。 
「でも、さっきのSFES異形の攻撃は 
 完全に私達を殺す気だったわ。 
 SFESはどっちでも良いんじゃないかしら? 
 私達が寝返っても、LWOSに殉じても……」
だが、だとしたら攻撃の甘さはどうだ? 
圧倒的な戦力があるのにも関わらず、 
白兵戦のみで掛かって来るというのは理解し難い。 
やはり技術・情報は欲しいのだろう。 
其れともマリーエント達の能力を見抜いた上で 
「この程度で死ぬ筈が無い」と考えているのだろうか? 
………慎重な性格のSFESとしては大雑把過ぎる。
ドジュウ…ドジュウ!
異音に気付き、音のした隔壁の方を見るベリオム達。 
ミュルメコレオは隔壁をも蟻酸で溶かしてしまっていた。 
「くそっ……こっちの道は向かえないな…… 
 ちょいと遠回りになるが、西の転送リング室へ向かうぜ!」 
マリーエントの手を引き、西へと向かうベリオム。

 

 

  タワー30階・所長室

 

モニターに映る報告を聞き、唖然となる幹部衆。 
先程、特攻された4箇所より侵入した蟻型異形は 
『箱舟』の壁や床…人間…生物兵器を問わず食い荒らし、急激に増殖。 
既に特攻された階の下部は100分の1程がモニター不可となっていた。 
たった数分でこれである。
(こりゃ、此処迄来られるのも時間の問題だな。 
  そういや、人事関連のデータは確か下の階だったか? 
  …………もし、この情報をSFESが入手したら、 
  芋蔓式で俺達も見付かる……とまではいかずとも『謎の組織』として怪しまれる。
  僅かな疑問の余地も与えるべきじゃないな。
  既に世界の基盤を築き上げちまってるSFESの捜査網からは逃れられはしない……
  食い止めるべきだ。 
  併し、総帥の言っていた外の異形も気になるな…… 
  命令を遵守して、こっちから先に片付けるべきか……)
謎の組織『白き翼』のフレディックが静かに動き始めた。 
(・・・・・よし、行くとするか・・・・・)
フレディックは部屋の外へと出て行く。 
タワー内は慌しかった。量産型の兵士が通路を行き、研究員が部屋を往復する。
以前視察した時とは明らかに違っていた。 
(・・・こういう時こそ落ち着けっての・・・・)
そんな事を考えながら彼はタワーの外へ出て行く。

 

 

外壁裏格納庫

 

奥へ進むフレディック。そこにあったのは人型のロボット。 
どうやら二人乗りのようだ。 
更にその機体へ近づくフレディック。 
と、その時、
「・・・・遅かったわね。」 
機体の陰から白衣を着た女性が出てくる。
「悪ぃ悪ぃ。
 ・・・・さて、これからどうするべきか、大体の計画は出来た
 ・・・・・行動開始だぜ、「クレージェ」。」 
クレージェと呼ばれた女性は無言で頷いた。
執筆者…is-lies、鋭殻様

  「箱舟」周辺宙域

 

『箱舟』内部のチューンドキメラが端末から送信する情報を 
次々と火星のSFESへと届ける異形衛星。 
其れを他所に、『箱舟』のハッチが静かに開こうとしていた。
併し、ハッチに気付いた異形衛星が、口吻の様な棒を向ける。 
放たれた灼熱の杭がハッチへと突き刺さった。 
SOLの一撃を喰らったハッチは一瞬で気化…… 
中の戦闘機も溶解する暇も無く蒸発したのであろう。 
だが…
「ま、SFES生物兵器の知能じゃ、こんなモンか」 
ハッチでもなんでもない…『箱舟』の外壁を破壊して現われたのは、 
フレディックの駆る人型ロボットであった。
完全に不意を突いたであろう攻撃、
だが異形衛星は紙一重で其の攻撃を回避する。 
どうやら熱源探知をしていたのであろう。 
反撃の為、3体程の異形衛星『フギン・ムニン』が、 
白き翼のフレディックの乗った人型ロボット『ラウ・レーガ』に接近し、其の蛇目を開く。
「おかしいな…ラウ・レーガの反応が鈍い……」 
移動能力は変わらずだが、何故か敵の捕捉が鈍っている。 
本来なら先の奇襲で確実に1体は破壊出来ていた筈なのに… 
一方、フギン・ムニンは素早くラウ・レーガの視界から離脱する。 
フレディックが直ぐにセンサー類で敵を補足しようとするが、
何故か数瞬のタイムラグがある。 
敵衛星を捕捉した時には、既に相手のチャージが済んでいた。
「くっ!」 
急いで3体のフギン・ムニンの予想攻撃範囲内から離脱するラウ・レーガ。 
ほぼ同時に発射された3条のSOLがラウ・レーガのボディーを掠めた。
「あれは…大名古屋国大戦でも使われた……… 
 ……厄介だな」
ラウ・レーガのボディーの半分は、 
世界最硬の希少金属アダマンチウムと耐魔法金属ミスリルで出来ている。 
だが其れも物理法則からは逃れられない。 
原子の周囲の電子が弾き飛ばされれば、一瞬でプラズマと化してしまう。 
SOLの直撃を食らったら終わりだ。 
気を引き締め直すフレディックを他所に、
他のフギン・ムニンは着実に情報を送信し続けている。 
直ぐに蹴散らしてやりたいところだが、目前の3体が其れを阻む。

 

 

  タワー30階・所長室

 

「白き翼の機体か……全く、考えの読めん連中だ」 
交戦域の映像を捉え、バルハトロスが静かに席を立つ。
このまま白き翼の言いなりになっていては駄目だ。 
今回のフレディック無断侵入でハッキリとした。 
相手はこちらと対等な関係を築こう等とは微塵も思っていない。 
己の組織の正体、技術はバラさずに、此方からは情報を搾取… 
自分達は白き翼の手足ではないのだ。 
施設内の全センサーを起動させ、『箱舟』内への無断侵入者を検索し始める。
登録情報にヒットしないSFES異形が無数に… 
……そして、黒髪白衣の女の映像が検出された。 
「この女……マークしておけ… 
 後、フレディックが戻って来た時は身柄拘束だ。 
 其れと、早々にSFESの生物兵器も始末しろ」 
人型量産生体兵器『LWH−Ver2.3』総員に命じるバルハトロス。

 

 

「箱舟」周辺宙域(遠方)

 

黒い。果てしなく黒い宇宙。
その中をもう少しで溶け込んでしまいそうな色をした航宙機が移動している。
その機体はあまり大型では無く、強いていうなら小型というべきだろう。
その甲板に乗っている男・・・・宇宙服で顔は判らない。 
航宙機の動きが止まる。 
男の向いた先には「箱舟」がある。 
男が不意に呟く。 
クレージェよ、アイツはどうやら苦戦してるようだぜ?
 助けなくていいのかァ?」
茶化すような口調で話す男。
《・・・・・彼なら大丈夫よ。いつもの事だもの》
返事が返ってくる。但し、男の頭の中にである。
「そーだったな。・・・・・それにしても、いつもながら便利だねェ。
 この「記憶連結能力」ってヤツは。」 
《詳しく言えば、「精神連結能力」よ。「ジュネーヴァ」
ジュネーヴァと呼ばれた男が頭を掻くような仕草を取る。 
「ま、気をつけろよ。こっちはちゃーんと送ってくれたデータを保存しておくからよ。」 
《ええ。頼むわ》 
男は返事を確認すると、甲板に座り込む。 
執筆者…is-lies、鋭殻様

  「箱舟」周辺宙域

 

「くのっ!」 
ラウ・レーガの繰り出した刀剣の一撃が、 
異形衛星を真っ二つに切断した。そう思えた。
だが異形衛星は分裂しただけだったのだ。 
ラウ・レーガの大剣を巻き込んで結合……剣が封じられる。 
其の間にもう1体がラウ・レーガの腕に取り付き、胴をがら空きにさせる。
「…まさか……」 
其のまさかであった。3体目が口吻の先端を光らせ、 
ラウ・レーガの胴体に張り付き、眼の周囲にある4本の小さな手で固定…
「ちぃ!」 
ラウ・レーガ腹部に装備された荷電粒子砲を撃とうとするが、 
一瞬のタイムラグでフギン・ムニンが勝った。 
口吻がラウ・レーガの胴体に打ち込まれる。 
パイルバンカーの一撃でラウ・レーガ胴体に口吻が軽く減り込む。 
SOLの熱で装甲を弱体化させたのだろう。 
と同時に荷電粒子砲が破壊された。 
爆発しなかったのが何よりもの幸運だろう。
「コイツ等…妙に連携が巧い……」 
ラウ・レーガ頭部のコクピット内で呟くフレディック。 
だが幾ら数で劣っていようとも、ラウ・レーガとてやられっぱなしではない。 
肩に装備されているエネルギー砲を発射… 
両腕に取り付いていたフギン・ムニンが消し炭となって飛散する。 
ラウ・レーガの両腕は無事だ。世界最硬金属と世界最高対魔法金属は伊達ではない。 
一方、ラウ・レーガの動きが全く止まらぬのを見、 
胴体に張り付いていたフギン・ムニンは頭部に移動していた。
ガンガンッ!!
フギン・ムニンが頭部を叩く。 
「っ!!」 
頭上の敵に気付き、ラウ・レーガを動かし、振り払おうとするが、
しっかりと密着され、離れない。
「こうなりゃ・・・・賭けだ・・・・・」 
ラウ・レーガの背中からスピアが出される。
ラウ・レーガは敵の探知の為レーダーやセンサーを装備している。
だが、直接敵の姿を見ることは出来ない。
つまり、敵の微妙な位置に関しては確認出来ないのだ。
そして今はその「微妙な位置」に敵はいる。 
そうやらフレディックはそれを承知で、
頭部に付いたフギン・ムニンをスピアで破壊するつもりらしい。
無論外せば一環の終わりである。
「・・・頼むから当たってくれよ・・・・」 
操縦桿を握る手に汗が滴る。 
そして。
 ガキッ!!
呆気無く3体目の異形衛星もスピアに貫かれ、 
体内から青い血液を垂れ流しながらSOLの暴走でか爆発する。 
3体全てを破壊したと同時にラウ・レーガの調子が良くなり、 
直ぐに異形衛星から退避…爆発には巻き込まれずに済んだ。 
「あのシーカー異常……妨害電波か… 
 ……って…待てよ………」
そう。フギン・ムニンは3体で終わりではない。 
第二波、第三波合わせて15体のユニコーンズホーンから持ち込まれた、合計30体である。 
仲間を破壊され、外敵の排除を優先した10体の異形衛星がラウ・レーガに近付く。 
残り17体は相変わらず『箱舟』の情報奪取に精を出していた。 
尤も、其の数でも巨大な『箱舟』に比べれば人間とダニの背比べだ。 
情報の奪取にはまだ時間が掛かると見て良い。
「げっ……」 
フギン・ムニン達が目視可能な程に近付いて来ているというのに、 
センサーは全く反応しない。妨害電波が強過ぎるのだ。

 

 

  『箱舟』人事データバンク

 

無数の端末の並ぶ近代的な作りの一室… 
其処でLWOSの人事データを閲覧しているのは、 
白き翼のクレージェ・ライデラル女史である。 
其の目的は…人事データの抹消。
白き翼はLWOSに協力している組織である。 
主に人員提供を受け持っているが、 
白き翼は決して己をLWOSの下部組織だとは思っていない。 
寧ろ逆である。LWOSこそが白き翼の隠れ蓑なのだ。 
だが制御し損ねた…LWOSではSFESに勝てそうもない。 
このままでは白き翼の情報をSFESに漏らしてしまいかねない。 
今、其れは困る。力を求めているSFESの事だ。 
白き翼を吸収しようとするか排除しようとするに違いない。
人事データをバックアップ…そして一時的に消去するのだ。 
一時的というのは、万が一LWOSが生き残っても 
再び取り付く事が出来る様にする為であろう。
だが外の異形が気になって情報の送信は躊躇っていた。 
もし相手がこの通信を傍受してしまえるのであれば、 
同志ジュネーヴァにのみ送った筈の情報を 
丸々SFESに渡してしまう事になってしまう。
《おいおい、クレージェ、何手間取ってる?お前らしくねえ。》 
「黙ってて。今どうしようか考えてるの。」 
《・・・・なあ、さっきから思ってたんだが、
 記憶連結でこっちに回せばいいんじゃねえか?》
「・・・・・!・・・・・気付かなかった・・・」 
《ハァ・・・応用力をもうちょっと鍛えろよ。
 折角そんないい頭してんのによ・・・・》
ジュネーヴァの呆れたような声が彼女の脳内に響く。 
しかしクレージェはそんな声を気にせず、作業を始めていた。
せっせとデータを閲覧し、其の情報を片っ端からジュネーヴァの脳内に送る。 
だが、この方法は極めて時間が掛かる。 
この膨大なデータを処理し終えるのが先か… 
SFESの異形が此処に来るのが先か…かなり危ない賭けだ。 
気を引き締めてデータ処理に勤めるクレージェ。 
だが併し、敵の動きは早かった。
ガチャ
扉が開く音に反応し、咄嗟に其の身を机の下に隠すクレージェ。 
入って来たのは甲殻に包まれた三頭獣…チューンドキメラである。 
《…………其処に隠れてる奴…出て来い》 
異形から放たれた青年の声…生体通信なのだろう。 
其れに腹を括ろうとしたクレージェが出る前に、
彼女と異形を挟む地点の机の下から現われた男達… 
クレージェ監視を命じられていた生体兵器LWH達であった。 
外敵の排除を優先してLWH達がチューンドキメラに戦闘を仕掛ける。 
下手なプロよりも勝る身体能力を有した集団に掛かれば、 
チューンドキメラの1体等は直ぐにでも排除出来るであろう。
併し、異形はLWH達の攻撃に退くどころか前に跳躍。 
LWH達と擦れ違う。 
同時に3体のLHWが腹部から血液を噴出しどっと倒れる。 
擦れ違った一瞬で攻撃されていたのだろう。 
メイ精霊神に比べりゃ可愛いものだな。 
 見えるんだよ、オマエの軌跡》
チューンドキメラの背後の六爪が真新しい血を滴らせながら、 
端末を次々に操作していく。このままでは見付かるのも時間の問題だろう。
執筆者…is-lies、鋭殻様

「箱舟」周辺宙域(遠方)

 

「・・・なんじゃこりゃ!?」 
宇宙服の男・・・・・ジュネーヴァが思わず声を上げる。 
もっとも、宇宙空間の為聞こえる筈もないが。 
ジュネーヴァは驚いていた。チューンドキメラにでは無い。その戦闘能力にである。
仮にもLWOSの主力生体兵器LWH。異形一体に苦戦するとは思えなかった。
だが、現にクレージェから送られてくる記憶には
その異形が三体のLWHを瞬殺する情景が見えたのだ。
「おいおい・・・待てよ・・・・・・
 あれじゃあ情報のコピーどころか脱出すら出来ねえじゃないか
 ・・・・・総帥に連絡しようにも、傍受される可能性もあるしよ・・・・・」

 

 

  『箱舟』人事データバンク

 

既に半分以上の人事データを送信されてしまったが、 
幸いと言うべきか、まだ白き翼の情報には手を付けられていない。 
併し、このままでは時間の問題だろう。 
とはいえ下手に動く事も出来ない。クレージェ自身、全力で気配消しに集中している。 
あのチューンドキメラ…何かが違う。 
まるでLWHの動きを知っていたかの様に動いていた。 
そのまま無為に時間が過ぎるかとも思われた其の時…
《カキッ……誰………ヴァンフ……… 
 アカシック…だと!?………リピカを……かッ!? 
 ………かった。す…に向か…………》 
チューンドキメラが其の動きを止め、何事がブツブツ呟く。 
そして又直ぐに端末操作に取り掛かるが、 
先程よりも操作の速度は格段に下がっている。

 

 

転送リング室前通路

 

「ようやく、ってトコか・・・・・・・」 
転送リング室前の扉の前にやってきたベリオム一行。
「マリエル、それと・・・・・・なんていうんだ?お前?」 
ベリオムがマリーエントの抱いている少女に声をかける。
少女は少し黙っていたが、口を開く。 
「・・・・・オルフィエ・ルゥエルといいます。」 
「そうか。・・・・・二人とも、もうあの転送リング室へ行けばここから出られる。
 だが・・・・・万が一の場合を考えて慎重に行動しろ。」 
ベリオムはそういうと、転送リング室の方へと背を向ける。 
そして、ドアのロックを解除し、開けた。 
部屋に入り、内部を見渡す一行。幸い、機器に損傷は無いようだ。
「・・・・・大丈夫みたいだな。速いトコ起動して脱出するか・・・・」
執筆者…鋭殻様、is-lies

破損区域

 

通路を歩く数人の男女・・・・・LWOS幹部「ロネ」とLWH達である。
と、突然ロネが壁の方向に向け指を指す。そして、
「撃てっ!!」 
それに聞きLWH達がライフルを発砲する。壁に多数の穴が空く。
そして、壁の影から何かが倒れてくる。SFES生体兵器「ミュルメコレオ」であった。
「・・・・・・まだ周囲にかなりいるな・・・・お前達、気をつけろ。」 
ロネはLWH達に目配せをした。
ロネ達がミュルメコレオを数匹を数で畳み掛け排除しながら、 
或る程度進むと、光景がガラリと変化する。
折り曲げられたパイプや、何処からか切り取って来たであろう鉄板を 
蟻酸で接着させた蟻の巣であった。 
「…好き勝手やってくれる…… 
 …早く『女王蟻』を潰さなくてはな…」
収集した情報によると、敵異形の増殖は決まった場所で行われている。 
最初に出現した異形の特攻地点付近であると推測された。 
蟻型異形の行動も、食い千切った生体や金属片を『拠点』に持っていっていた。 
この事からバルハトロスは、蟻型異形には『女王蟻』が存在し、 
其れによって増殖していると仮定したのだ。 
ロネ達の目的は、この女王蟻の討伐…異形の増殖を抑える事である。
「D班は人事データバンクへ向かえ。 
 所長の最優先保護命令が出ている。 
 BC班は私達と合流だ。これから先は敵も多くなるだろうからな」 
通信機で連絡を取り合い、徐々に奥へと進むロネ達。
執筆者…鋭殻様、is-lies

  タワー30階・所長室

 

「ふ…むぅ……」
バルハトロスはモニターから研究員の報告を受けていた。 
モニターには傷だらけの研究員達と蟻型異形の死骸が映っている。 
《表皮にエンヴィロケム液に似た成分が検出されています。 
 いやはや…どうやってこんな甲殻作ったんでしょうかね? 
 道理でウイルス兵器が通じない訳ですよ…》 
敵に勝つには敵を知るべきだ。
研究員達が必死で生物兵器を1匹捕獲したのだ。 
《又、所長の推測通り、胚が出来ませんでした。 
 間違いありません。消耗品の兵隊蟻です》
「!?こ…このエーテル値は何だ!?」 
送られて来た資料を指差し、不思議に思うバルハトロス。 
其処に示されたエーテル値はA+。 
人間としては世界でも稀に見る程のクラスだ。 
《其れなのですが…何に使うのかが全然解からないんです。 
 猫に小判、豚に真珠って奴ですかね?》 
そうは思えない。SFESがそんな無駄な事をするだろうか… 
…情報に乏しい。エーテル学や霊魂学はSFESの専攻だ。
執筆者…is-lies

「箱舟」外壁

 

赤い「箱舟」の外壁の周りを飛びまわる物体。
そしてその周りに集る小さな物体・・・・・「ラウ・レーガ」と「フギン・ムニン」である。 
攻撃を避けながら、ビーム砲で応戦するラウ・レーガ。
しかし、センサー等が殆ど反応しない為、簡単に避けられる。 
そして一体の異形がラウ・レーガの背後でSOLをチャージする。 
ラウ・レーガがそれに気付き、後ろを向く。
しかし、その時すでにチャージは終了し、ラウ・レーガに向けられていた。 
「ち・・・・・・」 
フレディックは舌打ちをする。 
(まだ、高みも見えてないってのに・・・・クレージェ・・・・皆・・・悪ぃ・・・・)
覚悟を決めるフレディック。
しかし、次の瞬間。
「・・・・・・?」 
フギン・ムニンは打ち落とされていた。
「箱舟」外壁からのミサイル攻撃であった。
更にもう一発。他の外壁からも次々とミサイルが発射される。
フギン・ムニンが次々と落とされていく。
それと同時に、センサーの反応力が回復していく。
ラウ・レーガを襲おうとした10体のフギン・ムニンの内、5体は既に破壊された。
だが残り半数は『箱舟』が攻撃を仕掛けて来たと見るや否や、 
すぐさま『箱舟』に対しても妨害電波を放つ。
同時に攻撃時の信号を傍受、司令室の位置を大雑把に検出。 
内部の部隊へと情報を転送。司令室へと乗り込む気だ。
相手が減ったといえど、数の上では圧倒的に不利。 
だが『箱舟』からの援護も受け、態勢を立て直すラウ・レーガ。
「ようやく「箱舟」も動き出したってトコか。さて、反撃開始と行くか!」 
フレディックは操縦桿を握り、
迫り来るフギン・ムニンに照準を合わせ、エーテル凝縮砲を放つ。 
その砲弾は、他のフギン・ムニンをも巻き込み一気に三体のフギン・ムニンを破壊する。 
「よっしゃ!・・・・・って喜んでも居られないよな・・・」

執筆者…鋭殻様、is-lies

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