リレー小説2
<Rel2.京都焼き討ち4>

 

「ふはは!どうした!?其れで終わりか?」
昆虫系異形と共に空竜達を攻める人型魔物。 
其の機動力を生かしてヒットアンドウェイで攻めて来る。 
「お前等……何者だ?」 
「フフ・・・・貴様等がそれを知った所でどうになるものでもない。それに答える必要もないだろう・・・・」 
「・・・・・ならば力づくでも聞き出すまでだ!」 
デルキュノは剣を持ちストグラに突進していく。ストグラも黒刀を構え応戦する。 
ゼイノ達は飛び掛る怨霊に攻撃しながら言う。
「おい!これじゃキリが無えぞ!」 
「確かに・・・・・・・」 
そう言っている間にも炎の勢いが強くなっていく。 
「チッ!早い…!」 
耳障りな羽音を響かせながら空中を飛び回る昆虫型異形。 
空竜の放ったクナイの幾つかが空に消え、当たったものも、甲殻に弾かれる。 
生半可な攻撃は効きそうにない。 
「ハン!ちまちま煩ェ奴だぜ!」 
持った三日月型の剣をグッと握り締め、 
姿勢を落とすゼイノ。彼目掛けて空中から急降下し、攻撃を仕掛ける昆虫異形。
そして…
「フン!!」 
ゼイノは、物凄い力で剣を振り上げ、 
高速で接近する昆虫異形の顔に突き刺した! 
もう少し遅ければ、ゼイノのほうがやられていただろう。 
昆虫異形の隙をついたとも言える、攻撃だった。 
昆虫異形は大きな叫びを上げ、空中に飛び上がる。 
「?! 
 まだ終ってない?!」 
引き続き攻撃の体勢を続ける空竜。 
だが、ゼイノのほうはゆっくりとしていた。 
「心配いらねえ。 
 ・・・手応えあり、だったさ」 
「?」 
ゼイノが喋り終わった後、 
上空に上がっていた昆虫異形の動きが止まり… 
体中が崩れながら、地上に落ちてきた…。
執筆者…is-lies、鋭殻様、ごんぎつね様

「くっ!多勢に無勢か…」 
黒刀でデルキュノの剣を防ぎながら 
天から降り注ぐ異形の破片を見て、悔しそうに歯噛みするストグラ。 
「此処迄だな。 
 さあ、死にたくなければ答えて貰おうか。 
 お前達が何者なのか…」
ストグラは少し沈黙した後、喋り始めた。 
「・・・・・・我々はお前達とは存在次元が違う者・・・・・そして全てを破滅へと誘う存在
 ・・・・・だがこれを知った所で貴様等にそれは止められん・・・
 ・・・なぜならもう既に全ての終わりへと世界は動き始めているのだからな・・・・・・・」 
一同は驚愕の表情を見せる。 
ストグラは喋り終えて立ち上がる。と、その背には先程は無かった黒い翼があった。 
ストグラは翼をはばたかせ飛び上がる。 
「!・・・・・貴様、やはり人間ではなかったか・・・・」 
「私の名は『ストグラ』!いずれまた会う事になるだろう!
 その時まで・・・・・・・・・・さらばだ。」 
そう言うと、ストグラは一同に背を向け、飛び去っていった・・・・・
「………逃がしたか」 
周囲の炎で赤く照らされた夜空を眺め、忌々しげに呟くデルキュリオス。 
「くっ…勝った……のか…」 
「ああ。全部片付いた」 
既に周囲の怨霊達も全員が倒されていた。 
「有難う御座います。 
 愚王六条の束縛から西日本は解放されました。 
 ……これで…少しは獣人に対する見方が変われば良いのですが……」
執筆者…is-lies、鋭殻様

空に浮かぶ影。 
1人はゼロという名の男。肩に小竜の使い魔グレイを乗せ、 
空中に…まるで椅子に座っているかの様に静止している。 
「いやはや、楽しめました。貴方々はどうですか?」 
隣の空間に浮かんでいる、異形の翼を生やした少年。 
そして、其の翼に掴まっている少女はつまらなさそうな視線を向ける。 
「…っと聞く迄もないですね」 
「そりゃね。彼等が獣人達をどうするかが問題だからね」 
「……今迄虐げられて…これからも虐げられる… 
 そんな彼等に…力ある者は……理想を翳す者は 
 …現実を目の当たりにして…何を為すの…?」 
肩を上げるジェスチャーをした後、 
ゼロは付近のビルの残骸へと脚を下ろす。 
「さて、私はそろそろ去らせて頂きますよ。もう見るものは無さそうですから」 
無言の姉弟。2人にやれやれという態度を見せ、 
ゼロは煙の中へと消えていった。
執筆者…is-lies

 地上

 

「新たな王は…せめて獣人に寛容であって欲しいですね」 
人員の点呼を済まし、出発の支度を整える獣人解放戦線。 
事情を知らない日本皇国人に見付かると厄介と考えたのだろう。 
其の時。 
「すいません、お待ちください!」 
数人の民間人が獣人たちを呼び止める。 
そして彼らは司令に接近し、意外な言葉をかけたのだ。
「有難うございますっ・・・あなた方のお陰で多くの民衆が助かりました! 
 このことに関しては、何とお礼を言えば良いのか・・・ううっ・・・。」 
意外なことに、民衆の避難に一役買っていた彼らに感謝の言葉が送られる。 
お互いの態度は、実に幸せそうなものだった。 
「・・・司令。なんか、うれしくなってきましたよ。」 
そして彼らが感激にざわめいているその時、恐るべき事態が発生する。

 

        ゴ ゴ ゴ ゴ・・・!!

 

「う、うわーっ!何だぁー!?」 
「ああっ、か・・・体が!俺の体がっ!」 
それは・・・破滅現象であった! 
「う…っ!?」 
長峰が脇腹に熱さを感じた。
彼は知っていた。破滅現象は急激な温度変化の前触れがある。 
そう。長峰が破滅現象の空間に巻き込まれたのだ。 
「うわああぁぁああっ!! 
 ……あれ?」 
だが、長峰の体が消滅する事は無かった。 
見ると、先程立っていた場所とは違う所に自分が立っている事に長峰は気付く。 
「これは…」 
いや、長峰だけではない。破滅現象に飲まれようとした者の大半は、 
飲まれる直前で、まるでビデオテープを飛ばしたかの如く 
僅かに其の居場所が変わっていた。宛ら破滅現象から回避する様に。 
「何なんだ一体?…っと」 
言った側から、腕に熱さを感じて咄嗟に回避する。 
暫くして…破滅現象は収まった。
執筆者…is-lies、A夫様

焼け焦げた民家の柱にストッと着地し、 
眼下のエース達を忌々しげに睨む少年。 
其の横顔からは、一筋の汗が見える。 
「…ボクは…ボクはあの人達に何を期待してたの? 
 結局、理想を吐くだけ吐いて…何もしていない…ッ!」 
「……落ち着いて……能力使って疲れてる…」 
少年の頬をハンカチで拭く少女。
「……計画に組み込むから…伝えて来る… 
 『井上さんを殺した人が居ます』って…!」 
再び翼を広げ、彼等もこの場から撤退した。 
新たな火種を作る為に……
執筆者…is-lies

結局、今回の破滅現象での死者は2名程度で済んだ。 
其の場に居合わせた獣人解放戦線や民衆の数… 
そして破滅現象の規模にしては、奇跡的に低い数値だ。 
一同は、連続した戦いや破滅現象との遭遇でクタクタになっており、 
安全になったと見るや否や、脱力して地面に倒れ込む。
「ふう・・・つ、疲れた・・・・そ、そういえば・・な、長峰さんと司令さん。」 
エースは立ち上がり二人に話し掛ける。 
「なんですか?」 
「僕が今回の戦いにケリをつけて、また会った時に・・・
 ・・・『理想郷』を一緒に創りませんか?」 
「『理想郷』?」 
それを聞きエースは『理想郷』についての詳しい話をする。 
エースの理想郷…人種民族思想差別の撤廃……
「成程…『理想郷』……ですか… 
 ですが其れは飽く迄、理想………」 
「違います!理想とだけ思っていては何も変わりません! 
 僕達で創るんです!『理想郷』を!」 
熱の入った言い方をするエース。 
どうやら獣人解放戦線拘束の一件が相当効いた様だ。 
だが、其れでも獣人司令の表情は冷めている。 
「残念ですが今の世に 
 私達、獣人が入る余地はありません…」 
「……………」 
エースは沈黙する以外の術を失った。 
其れを見、獣人司令も悲観的になり過ぎたと思い、 
直ぐに微笑を浮かべて、言葉を続けた。 
「…でも、有難う御座います…… 
 そうですね…理解者を集めて決起するもの良いかもしれませんね…」 
獣人解放戦線の司令『尹(いん)とエースは、其の後も暫く話を続けた。
「ふぁ…流石に…疲れた…ぜ……んあ?」 
瓦礫に寄り掛かったゼイノを他所に、空竜が立ち上がる。 
「明日が『六色仙花』の集会なんでな。 
 …今日はもう去らせて貰うぞ」 
其れだけ言って、彼は夜風と共に消えた。
執筆者…is-lies、鋭殻様
エースは獣人達と挨拶を交わしている。 
「では、皆さんお元気で。機会があったらまた会いましょう。
 ・・・・・戦いの無い世界で。」 
「はい。では、私達はこれで。」 
獣人一行は去っていった。 
獣人達が見えなくなったを見て、エースは街の方へと歩いていった。 
「・・・・・俺も、まだまだだな・・・・・・
 もっと努力しないと・・・・・いつか、理想を現実にする為に・・・」 
エースは独り言を呟く。

 

京都市内

 

まだまだ火が燻っている京都。 
エースはそんな街の一角の宿の前で足を止める。 
「さて、皆さんどうしてるかな?」 
エースは宿へ入っていく。
執筆者…鋭殻様

「遅かったな」 
「もう飯は出来てるぜ」 
部屋に入ったエースを迎えたのは2人の男、デルキュノとゼイノ。 
先の戦いで協力してくれた能力者達だ。 
異形化した天皇に泊まっていた宿を壊されたりしたらしい。 
戦友という事でエースが宿を用意した訳だ。 
「電話は?」 
「おう!来たぜ。 
 あの『青』って奴…相当ヤバイらしい…  
 まあ、当たってる医者は腕が確からしいし… 
 此処はそいつ任せて、俺達は体を休ませようぜ」 
グツグツと煮立った鍋の中から、柔らかくなった肉を取り出すゼイノ。 
其の光景に食欲を刺激され、エースも箸を割る。 
デルキュノは部屋の隅で本を読んでいるだけだ。 
どうやら腹は空いていない様だ。
こうしてエース達は夜を過ごし、泥の様に眠りに就いた。
執筆者…is-lies

――月明かりのみに照らされる荒野で、何かが飛んでいた。
先程の男、ストグラである。
「・・・アゼラル様、どうやら京都は全焼しなかったようです。申し訳有りません。」
彼は飛びながら手に持った水晶球でアゼラルと会話している。
≪仕方ないですねえ・・・それよりも、気になる事が有ります。≫
「・・・あの蒼髪の男ですか。あの顔には見覚えがあります。」
≪そう。彼の事は私も知っています。・・・あまり思い出したくありませんが。≫
≪「デルキュリオス・・・」≫
二人が声を合わせてその名を呟く。
「嘗て、我々に叛旗を翻した男・・・まさか、こんな所で再び遭う事になるとは・・・」
≪それは私もですよ、ストグラ。
 しかし、心配には及びません。彼の本来の力は復活していない筈です。≫
「確かに・・・あの時、「私自身」が奴の力を封じたのですから。」
≪しかし、我々の事を知る者の一人には変わり有りません。
 次に遭った時は・・・判っていますね?≫
「はっ。了解しております。」
アゼラルに一礼すると、ストグラは飛ぶ速度を速め、夜の闇へと消えていった。
執筆者…鋭殻様

――その頃、宿にて

 

窓の外を見つめる蒼髪の男が居る。
他の者は皆寝静まり、寝息を立てている。
「・・・ストグラ。まさかこんな形で出会う事になるとはな。
 初対面の振りをしたが、確実にバレているだろうな。」
窓から見える月を見上げ、頬杖を付く。
「・・・・・・眠れないんですか?」
「・・・起きていたのか。」
声の主――エースに彼は問い掛ける。
「ええ。眠れなくて。」
「そうか・・・」
少しの間、二人は沈黙する。
「・・・お前は、私を怪しまないのか?
 いきなり現れ、そして今、何かを隠しているような独り言を言った。」
「・・・怪しく思ってませんね。
 貴方は、動機がどうであれ、街の人を守った。それで十分ですよ。
 それに、今の御時世、余計な事に態々首を突っ込むのは、余程人がいいか、物好きな人だけですよ。
 ・・・尤も、僕に人の事は言えませんけどね。」
そういうと、エースはクスクスと笑った。しかし、すぐに真顔になる。
「・・・それに、隠し事をしてるのは貴方だけじゃありませんよ。」
「・・・お前は・・・いや、何でも無い。」
「あ、もうこんな時間。早く寝た方がいいですよ。それじゃ、お休みなさい。」
そう言うと、エースはまどろみの中へと沈んでいった。
「・・・物好きか。・・・フッ、確かにな・・・」
デルキュリオスは静かな寝息を立てている少年の顔を見つめながら、静かに呟いた。
inserted by FC2 system